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ランダムジッタとデターミニスティックジッタを理解し、 高速デジタル設計の落とし穴を回避する
高速デジタル回路やシリアル通信では、わずかなジッタが重大な誤動作を引き起こします。本資料では、ジッタの基礎概念から、ランダムジッタ(RJ)とデターミニスティックジッタ(DJ)の違い、ビットエラー発生のメカニズムを直感的な例で解説。
さらに、ヒストグラム、TIEトレンドプロット、アイダイアグラムを用いたジッタ解析手法を紹介し、設計段階で問題を特定・低減するための実践的な測定アプローチを学べます。高速・高信頼なデジタル設計を行うエンジニア必読の入門ホワイトペーパーです。
このカタログについて
| ドキュメント名 | 左に曲がる?それとも海に突っ込む? “ジッタ”がシステムを誤動作させる本当の理由 |
|---|---|
| ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
| ファイルサイズ | 2.2Mb |
| 登録カテゴリ | |
| 取り扱い企業 | キーサイト・テクノロジー株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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W h i t e Pa P e r
左に曲がる?
それとも海に突っ込む?
ジッタを理解し測定する
信号がクリーンであることは重要です。測定している信号にジッタが多すぎると、レシー
バーは送信されたものとは全く違うものをデコードしてしまいます。開発中の自動運転車 Keysight eZJit infiniium
オシロスコープ
のプロトタイプに乗っていることを想像してみてください。この車のGPSシステムは十分 ソフトウェア
に試験されておらず、たまたまGPS受信機への送信信号にジッタが多いとしましょう。こ
ボタンをタッチするだけ
のような状況では車のレシーバーは「左折」コマンドを「右折」と誤って解釈してしまい、 で、ジッタを自動測定。
安全に目的地に向かうはずが、海の中にいるという状況になりかねません。最悪の場合、せっ
かくの設計が承認されないという事態すら起こります。 詳細はここをクリック。
現代の開発エンジニアは、多岐にわたる検証要件に沿いつつ、よりクリーンで高速なデジ
タル回路を、より短い期間で設計する必要があります。その過程で鍵となるステップは、ジッ
タを理解し、適切に測定し、その原因を見つけることによって、ジッタ量を減らすことです。
ジッタが少ないほどデザインは安定し、開発サイクルの次の段階へ移ることができます。
ジッタを完全に理解することは、安定した回路を設計する上で重要です。ジッタとは何か、
なぜ注意すべきなのか、そしてどのように解析するのかを見てみましょう。
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ジッタとは
エッジのタイミングで発生するノイズや位相の変動がジッタの原因となり、タイミング誤差を
引き起こします。ジッタとはエッジのタイミングで発生するノイズや位相の変動によって引き
起こされるタイミング誤差です。簡単な例として、単純なデータ信号(図1のオレンジ色のトレー
ス)を考えてみましょう。シリアルデータ用の組み込み機器を解析するためには、入力データス
トリームから抽出したリファレンスクロックをレシーバーへの入力信号に適用し、データを復
元します。リファレンスクロックは、クロックリカバリー回路で生成され、原則として、レシー
バーが時間軸上に理想的に配置されたポイントで信号を「見る」ことができるようになります。
これらのポイントで信号の電圧値を見ます。これらの電圧値に基づき、最終的にはトランスミッ
ターが送信したデータストリームと合致するデータを復元します。
(a)クロック基準
時間
(b)信号源波形
測定しきい値
0
時間
(c)タイム・インターバル・エラー(TIE)
0
時間
図1. クロック、波形、結果として表示されるtie
しかし、信号に相当量のジッタが加わると問題が発生します。受信した信号のビットにジッタ
が多いと、リファレンスクロックと適切に同期しません。つまり、結果的にレシーバーは各クロッ
クサイクルのビットを誤認し、データを正確にデコードできない可能性があります。 エッジ交差が実際に起こ
図1に表示されている、オレンジ色のトレース上の赤色の「x」マークは、信号にジッタがあ る時間と、起こるべき理
想の時間の差をタイム・
る時に発生するタイミング誤差を表しています。信号の立ち上がりや立ち下がりのエッジが早 インターバル・エラー
すぎ、または遅すぎる場合があることに注目してください。これは、図2に示す残光表示モー (TIE)と呼びます。
ドを使用してオシロスコープに表示することができます。立ち上がりエッジが遅すぎると、レ
シーバーはビットを誤って解釈します。エッジ交差が実際に起こる時間と、起こるべき理想の
時間の差をタイム・インターバル・エラー (tie)と呼びます。
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タイミング
誤差 電圧
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図2. 残光表示ディスプレイを使用し、信号のわずかなタイミングエラー (tie)を表示
信号には当然、常にある程度のジッタが含まれます。実際、ほとんどのデザインにはジッタ耐力
の仕様があります。そこで重要な疑問が生じます。その仕様を超えてしまったらどうなるので
しょうか?
ジッタが引き起こす問題とは
前述したように、信号がリファレンスクロックと同期せずジッタが許容量を超えた場合、結果的
にレシーバーはビットを正しく解釈できません。図3に、簡単な例を用いて何が起こるか示してい
ます。送信されたデータはバイナリーデータ列、100です。しかし、受信波形にジッタがあるため、
送信されたビットは0にも関わらず、レシーバーでは、2番目のビットが1となってしまいました。
つまり、レシーバーは信号を110とデコードしたのです。
送信波形 1 0 0
1 0 0
受信波形
レシーバーが
解釈した波形 1 1 0
図3. レシーバーは、ジッタを含む送信パルスを正しく解釈できない
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ドローンの例を考えてみてください。図3の最上段の送信波形は、ドローンを基地に戻るように命
令するコマンドだとします。ところが、同図中段の受信波形に示すジッタ成分によりレシーバー
がビットを誤認すると、結果的に最下段に示すように、デコードされたコマンドはドローンを東
に進路をとるように命じます。苦労して設計したドローンが、指定した位置には着陸せず、あさっ
ての方向に飛んでいくかもしれません。この様な不具合が起こると、開発を先に進めるための
承認を得ることはできなくなります。
どんなに優れたデザインでも、すべてのビットを正確に受信することはできません。送信された
全ビット数に対する、誤って解釈されたビット数の比をビット・エラー・レート(BERまたは「バー」)
と呼びます。もちろん、BERはできるだけ低い方が良いのですが、少なくとも該当する規格で規
定された値を超えないようにしなければなりません。例えば、USB 3.0の場合、BERは1E-12です。
BERを抑えるためには、ビットエラーを引き起こすジッタを分類して理解する必要があります。
ジッタの種類と発生要因
ジッタによる誤動作を確実に防ぐために、ジッタの種類とその発生要因を理解することが重要です。
ここで参照されているモデルは、ジッタのDual Diracモデルと呼ばれるものですが、あくまでも
モデルであることにご注意ください。このモデルではジッタを2種類に分けます。デターミニステッ
クジッタとランダムジッタです。この2種類のジッタを理解することは非常に重要です。
このモデルでは信号の全ジッタ(TJ)はこの2種のジッタから成ります。
1. ランダムジッタ(RJ):排除するのが難しい回路にもともと生じるジッタで、熱雑音、ショッ
トノイズ、ピンクノイズ等が原因です。デバイス内でRJを抑制する方法はいくつかあります
が、完全に除去することは決してできません。
2. デターミニステックジッタ(DJ):機器のデザイン上の欠陥と物理限界に起因します。デュ―
ティ・サイクル歪み(DCD)、符号間干渉(ISI)、正弦波(または周期的)ジッタ(PJ)、クロストー
ク、インピーダンス不整合等が含まれます。この種類のジッタは抑制し除去できる可能性が
あります。
ジッタの種類とさまざまな発生要因が分かりましたが、ジッタの原因となる問題を解決するため
にジッタを解析するとき、オシロスコープをどのように利用すればよいでしょうか。
ジッタを測定し、その特徴を理解する
オシロスコープを使用してジッタを視覚化、測定する方法はいくつもあります。ジッタを測定す
るための最初のステップは、信号を複数の周期にわたり捕捉できるようにオシロスコープのタイ
ムベースを調整することです。そうすると、オシロスコープはこれらの各周期をリファレンス
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クロックと比較します。リファレンスクロックはクロックリカバリー回路で生成されることを
思い出してください。このリファレンスクロックを基に理想的なビットレートにおけるタイミ
ングが決まり、そのタイミングと実際の信号を比較することで、オシロスコープは信号が理想
的な波形か、または誤差が生じているかを判断します。この比較を基にオシロスコープはTIE値
を求め、その結果を種々の形式で表示します。
ここで用いる理想的なビットレートは、オシロスコープが自動的に算出するか、入力された概算値
をもとにオシロスコープが算出するか、または仕様に基づく正確な値を入力することにより決定し
ます。最初の方法が簡単ですが正確さに欠けます。最後の方法が最も正確になります。
ビットレートを設定したら解析が始まります。Infiniium オシロスコープ用にキーサイトが提
供するEZJITアプリケーションは、さまざまな表示形式によるジッタの測定と解析を容
易に行うことができます。
ヒストグラム
ヒストグラムは、X軸にTIEタイミング値、その値が発生する頻度をY軸に表示したものです。ヒ
ストグラムを見れば、ジッタがランダム性かデターミニステック性か、その程度も含めてわかり
ますが、このことはとても重要です。
信号がRJのみ有する場合、図4のように分布はガウシアンとして現れます。なぜならランダムジッ
タは通常、ガウス分布になるからで、TIEが零点近傍に収束します。発生頻度の高いTIE値のほと
んどは零点に近く、遠く離れるほど低い値になります(言い換えれば、大きな値のTIEの出現頻度は
下がります)。つまり、RJの場合、極端に大きなジッタが発生する確率は低いと言えます。
発生頻度
TIE
0
図4. rJに起因するガウス分布のヒストグラム。
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一方で、信号に相当量のDJがある場合、ガウス分布とは違った分布で現れます。1つの例として、
図5に示すようなニ峰性分布があります。ヒストグラムは、1つだけでなく、2つのはっきりと異
なるポイントに集まります。これは、この例でいうと、DJに正弦波変調ジッタあるいは周期的ジッ
タがあるからです。これについてはTIEトレンドプロットの項でご覧いただけます。TIE値は零
点近傍を中心とするのではなく、零点の下側や上側にピークを持つ分布となります。このため、
DJは信号に悪影響を及ぼしやすくなります。
発生頻度
TIE
0
図5. DJに起因する二峰性分布のヒストグラム。
ジッタは決して完全にランダム、あるいは完全にデターミニステックというわけではありませ
ん。およそすべての場合において、図6に示すように、ヒストグラムはガウシアンと非ガウシア
ンの両方の特性を持ちます。しかしヒストグラムを見ると、ガウシアン(改善がきわめて困難な
RJ性を示す)、あるいは非ガウシアン(改善の可能性があるDJ性を示す)に近いかを判断できます。
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図6. キーサイトのeZJit アプリケーションを用いると、rJ性とDJ性を共に有する信号のガウシアン分布と
二峰性分布を観察することができます。
tieトレンドプロット
TIEトレンドプロットはジッタ表示形式の1つで、TIEをY軸に、それぞれのTIEが発生した時間をX軸
に表示します。時間軸上でのTIEトレンドを表示し、変調やエラーのパターンの繰り返しがないかを
見ることができます。図7では紫色のトレースのTIEトレンドプロットを確認することができます。
この例では、トレンドプロットは対応するオシロスコープのトレース(オレンジ色)と並んで表示さ
れています。DJによるTIEの正弦波変調が、実際にあることがはっきりとわかります。
図7. eZJit アプリケーションを使用して生成されたtieトレンドプロットが、tieの正弦波変調を表示。
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アイダイアグラム
アイダイアグラムはジッタ表示形式として頻繁に利用されます。信号が伝わると、ビット遷移の
組み合わせ(すなわち連続した3ビット分)のトレースに分割され、これらのトレースを1つずつ重ね
ていきます。図8のように、可能なビット遷移の組み合わせは8通りあります。
0 0 0 0 0 1 0 1 1
1 0 1 1 0 0 1 1 0
0 1 0 1 1 1
図8. ビット遷移の8通りの組み合わせと、それらを重ね合わせて生成するアイダイアグラム
アイダイアグラムは、ダイアグラム上の各点に信号が出現する頻度をカラーコレクションを用い
て表示するもので、TIE頻度を別の角度から表示するものと言えます。アイの開口部を測定するこ
とで、どれくらいジッタがあるかを把握することができます。アイの幅が広いほど、信号のジッ
タは少なくなります。閉じているほど、よりジッタが多くなります。
図9でこの例を確認することができます。このアイダイアグラムを見ると、大きなタイミングエラー
が発生していることが分かり、ヒストグラムの色からそのエラーのおおよその頻度が分かります。
測定器に自動設定することができ、RJおよびDJ(またはPJ)がどのように機器に影響を与えてい
るかが容易に分かります。
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図9. キーサイトのリアルタイム・アイ・ソフトウェアは信号に対し自動的にアイダイアグラムを設定します。
上の例では、見やすいように画面の色が反転していることにご注意ください。
アイダイアグラムは時間と共にトレースを重ねていくので、測定を長い時間続けると「埋まって
いく」ように見えます。長い時間をかけると、アイ開口部が徐々に狭くなることがありますが、
これは単に出現頻度の低いジッタが捕捉されたということにすぎません。非常に安定な回路の場
合、このような変化が起こることはないはずです。
重要ポイント
ジッタについて多くを学びましたが、重要な点を4つ押さえておきましょう。
• ジッタは、信号の不要なタイミング誤差として定義されます。ジッタはエッジ交差のタイミン
グを少し早め、または遅らせます(TIE)。
• ジッタが大きすぎると、レシーバーがビットを正しく判別できず、結果的にシステムレベル
でエラーが発生する可能性があります。
• ヒストグラムがガウス分布の場合、ランダムジッタを示しており、できることはほぼ何もあ
りません。しかし、非ガウス分布の場合、デターミニステックジッタや周期的ジッタを示し
ており、これらは比較的用に制御し、低減することができます。
• オシロスコープのヒストグラム、TIEトレンドプロット、アイダイアグラムを使用して、
信号にどれくらいのジッタがあるか、そして許容範囲であるかどうかを十分に理解しましょ
う。許容範囲にない場合、デザインを修正する必要があります。
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まとめ
ジッタとその測定方法の理解は安定した回路の設計につながります。ジッタを無くすことはで
きませんが、原因を特定すれば低減する可能性が見えてきます。ジッタが少ない程、ビット
を誤って解釈することも減り、誤って海に入る回数も減ります。さらに、効果的にジッタ解析を
行うことができれば、正確なテストができ、デザインの承認を得やすくなります。その結果、
開発の次の段階へ早く進むことができ、より早く製品を市場に出すことが可能となります。
ジッタ解析の設定方法を知るには、Scopes Universityシリーズの2つのビデオをご覧ください。
• How to Measure Jitter with an Oscilloscope(オシロスコープを使用したジッタの
測定方法)
• How to Set Up an Eye Diagram on an Oscilloscope(オシロスコープでアイダイア
グラムを設定する方法)
製品情報
キーサイトのEZJIT ソフトウェアは、わずかなキー操作で自動でジッタ測定を行うことができ
ます。測定設定にかける時間を減らし、イノベーションにより多くの時間を費やしましょう。
詳細については、こちらのページをご覧ください:
• EZJIT
• EZJIT+
• EZJIT Complete
真の信号表現を、最高のシグナルインテグリティーで表示しましょう。キーサイトの高性能な
Infiniium オシロスコープにより、より良い測定が可能となり、完全に安定したデザインが保
証されます。詳細情報については、こちらのページをご覧ください:
• Sシリーズ オシロスコープ(500 MHz~ 8 GHz)
• Vシリーズ オシロスコープ(8 GHz~ 33 GHz)
• Zシリーズ オシロスコープ(20 GHz~ 63 GHz)
• UXRシリーズ オシロスコープ(13 GHz~ 110 GHz)
詳細情報:www.keysight.co.jp
キーサイト・テクノロジー株式会社
本社〒192-8550 東京都八王子市高倉町9-1
計測お客様窓口
受付時間 9:00-12:00 / 13:00-18:00(土・日・祭日を除く)
TEL:0120-421-345 (042-656-7832) | Email:contact_japan@keysight.com
本書の情報は、予告なしに変更されることがあります。© Keysight Technologies, 2018, Published in Japan, December 17, 2018, 5992-3560JAJP 10