1/35ページ
カタログの表紙 カタログの表紙 カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(6.9Mb)

材料評価の第一歩。 Keysight 誘電体測定の基礎ハンドブック

ハンドブック

誘電率・誘電正接(tanδ)の基礎から 周波数帯別の測定手法までをわかりやすく解説

本資料は、誘電体測定の基本概念と代表的な測定手法を体系的に解説した入門向けハンドブックです。
誘電率・誘電正接(tanδ)の意味や材料特性との関係、低周波から高周波までの測定アプローチの違いをわかりやすく整理。
電子材料、基板材料、高周波材料の評価に携わるエンジニアが、測定手法選定の基礎知識を身につけるための必読資料です。

このカタログについて

ドキュメント名 材料評価の第一歩。 Keysight 誘電体測定の基礎ハンドブック
ドキュメント種別 ハンドブック
ファイルサイズ 6.9Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 キーサイト・テクノロジー株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

この企業の関連カタログ

このカタログの内容

Page1

A P P L I C AT I O N N O T E 誘電体測定の基礎 www.keysight.co.jp 1
Page2

目次 概要 ........................................................................................................................3 誘電体の理論 ..........................................................................................................5 誘電率 ................................................................................................................5 透磁率 ................................................................................................................7 電磁波の伝搬 ..........................................................................................................9 誘電のメカニズム ...................................................................................................11 配向(双極子)分極 .............................................................................................12 電子分極と原子分極 ..........................................................................................12 緩和時間 ..........................................................................................................13 Debyeの関係 ....................................................................................................14 Cole-Coleプロット ..............................................................................................14 イオン伝導率 ....................................................................................................15 界面/空間電荷による分極 ................................................................................15 ネットワーク・アナライザ .....................................................................................16 インピーダンス・アナライザ/LCRメータ ...............................................................17 フィクスチャ ......................................................................................................18 ソフトウェア ......................................................................................................18 測定手法 ................................................................................................................18 同軸プローブ法 .................................................................................................18 伝送ライン法 ....................................................................................................21 フリースペース法 ..............................................................................................24 空洞共振器法 ....................................................................................................27 空洞共振器摂動法(ASTM D2520) ......................................................................29 平行板コンデンサー法 .......................................................................................30 インダクタンス測定法 ........................................................................................31 方法の比較 .............................................................................................................32 キーサイトのソリューション ......................................................................................33 参考資料 ................................................................................................................34 www.keysight.co.jp 2
Page3

概要 開発期間の短縮、受け入れ検査、プロセスモニタリング、品質保証の向上を実現するために は、扱っている材料を理解する必要があります。誘電体材料は固有の電気/磁気特性を 持ちます。これらの特性を正確に測定することにより、材料をアプリケーションに合わせて 適切に用いて、デザインの信頼性を向上させたり、製造プロセスを向上させるための 有益な情報を得ることができます。 誘電体測定により、多くのアプリケーションに必要不可欠な設計パラメータの情報が 得られます。例えば、ケーブルの絶縁材の損失、基板のインピーダンス、誘電体共振子の 共振周波数は、誘電体の特性と関係しています。この情報は、フェライト、電波吸収体、 パッケージのデザインの改良にも役立ちます。航空宇宙、自動車、食品、医療の分野に おける最近のアプリケーションでも、素材、食品、人体の誘電率に関する知識が有効である ことが分かっています。 キーサイトは、誘電体材料の特性を測定するための測定器、フィクスチャ、ソフトウェアを 豊富に取り揃えています。ネットワーク・アナライザ、インピーダンス・アナライザ、LCR メータなどの測定器は、1.1 THzまでの周波数レンジに対応しています。また同軸プローブ 法、平行板コンデンサー法、同軸/導波管伝送ライン法、フリースペース法、空洞共振器法 用に被試験材料(MUT)を固定するためのフィクスチャも提供しています。下表に、キー サイトの材料テストソリューションで測定できる製品を示します。 www.keysight.co.jp 3
Page4

表1.材料測定のアプリケーション例 業界 業界アプリケーション/製品 エレクトロニクス コンデンサー、サブストレート、PCB、PCBアンテナ、フェライト、 磁気録音ヘッド、電波吸収体、SARファントム材料、センサ 航空宇宙/防衛 ステルス材料、放射線吸収材料(RAM)、レドーム 工業用材料 セラミック/コンポジット:ICパッケージ、航空宇宙/自動車部品、 セメント、コーティング、バイオインプラント ポリマー/プラスチック:ファイバ、サブストレート、フィルム、 絶縁材料 ヒドロゲル:使い捨ておむつ、ソフトコンタクトレンズ 液晶:ディスプレイ ゴム、半導体、超伝導体 これらの材料を含む他の製品:タイヤ、塗料、接着剤など 食品/農業 食品保存(腐敗)に関する研究、食品開発(マイクロ波加熱/ パッケージ/水分測定) 林業/鉱業 木材/紙の水分測定、油分分析 製薬/医療 薬の研究/製造、含水率、バイオインプラント、ヒト組織の特性 評価、バイオマス、化学成分濃度、発酵 www.keysight.co.jp 4
Page5

誘電体の理論 ここで説明する材料特性とは、誘電率と透磁率です。抵抗も材料特性ですが、ここでは説明 しません。抵抗およびその測定については、Application Note 1369-11を参照してください。 誘電率と透磁率は一定ではないことに注意してください。これらは、材料の周波数、温度、 向き、混合、圧力、分子構造によって変化します。 誘電率 材料は、外部電界が印加されたときにエネルギーを蓄積できる場合に、「誘電体」に分類され ます。DC電圧源が平行板コンデンサーの両端に配置されている場合(図1)、プレート間に 誘電体があると、蓄積される電荷は、プレート間に材料がない場合(真空中)に比べて多く なります。誘電体は、電極の電荷(通常は外部電界の一因となる)を打ち消すことにより、 コンデンサーの蓄積容量を増やします。誘電体のキャパシタンスは、誘電率と関係がありま す。DC電圧源Vが平行板コンデンサーの両端に印加されている場合(図1)、プレート間に 誘電体があると、蓄積される電荷は、プレート間に材料がない場合(真空中)に比べて多くな ります。 図 C = A + 0 t A C= C κ' 0 V - - - t + - - - + - + - + + κ' = ε' = C + + + r C 0 – 1. 平行板コンデンサー、DC電圧の場合 CとC0は、誘電体がある場合とない場合のキャパシタンスで、k’=ε’rは実際の誘電率、Aとtは コンデンサープレートの面積とそれらの間の距離です(図1)。誘電体は、電極の電荷(通常は 外部電界の一因となる)を打ち消すことにより、コンデンサーの蓄積容量を増やします。上の 式から分かるように、誘電体のキャパシタンスは、誘電率と関係があります。AC正弦波電圧源 Vが同じコンデンサーの両端に配置されている場合(図2)、結果として生じる電流は、充電電 流Icと誘電率と関係のある損失電流Ilで構成されます。材料の損失は、コンデンサー(C)と並 列に接続されたコンダクタンス(G)として表すことができます。 www.keysight.co.jp 5
Page6

I I = IC + II = V (jωC + 0K' + G) If G = ωC0K'', then A I = V ( jωC V - - - - 0 ) K' – jK'') = V( jωC0 ) K t + - + - - + - + C G + + + + ω = 2πf – 図2. 平行板コンデンサー、AC電圧の場合 複素誘電率kは、蓄積を表す実数部k’と、損失を表す虚数部k’’で構成されます。下の 表記法は、複素誘電率として区別なく用いられます。 κ = κ* = εr = ε*r . 電磁学の理論では、電気変位(電束密度) Df の定義は次のとおりです。 Df = εE ここで、 ε= ε* = ε0εr は絶対誘電率(または誘電率)、 ε ε r は比誘電率、 1 9 0 ≈ x10− F/mは 36π 真空の誘電率、Eは電界です。 誘電率は、電界Eが印加されたときの材料の相互作用を表し、複素量です。 K = —εε = εr = εr – j εr'' 0 誘電率(k)は、比誘電率(εr)、すなわち絶対誘電率(ε)と真空の誘電率(ε0)との比です。誘 電率の実数部(εr’)は、外部電界から材料へのエネルギーの蓄積量を表します。誘電率の 虚数部(εr’’)は、損失係数と呼ばれ、外部電界に対する材料のエネルギー消費(損失)の 指標です。誘電率の虚数部(εr”)は、常に0より大きく、通常は(εr’)よりはるかに小さくなりま す。損失係数には、誘電損失と伝導率の両方の影響が含まれています。 www.keysight.co.jp 6
Page7

複素誘電率を簡単なベクトル図(図3)で表すと、実数成分と虚数成分は位相が90°ずれてい ます。ベクトル和は、実軸(εr’)に対する角度δを形成します。材料の相対「損失」は、損失した エネルギーと蓄積されたエネルギーの比です。 ε " r εr ε '' tan δ = —r = D = —1 εr Q Energy lost per cycle = ———————————————— Energy stored per cycle δ ε ’ r 図3. ロスタンジェントのベクトル図 ロスタンジェント(tan δ)は、誘電率の虚数部と実数部の比と定義されています。Dは損失係 数を表し、QはQ値を表します。ロスタンジェント(tan δ)は、タンデルタ、タンジェントロス または損失係数と呼ばれます。「Q値」という用語は、電子マイクロ波材料に対して用いられる こともあり、ロスタンジェントの逆数です。超低損失の材料では、tan δ ≈ δなので、ロスタン ジェントは角度、m rad、μ radで表される場合があります。 透磁率 透磁率(μ)は、磁界が印加されたときの材料の相互作用を表します。抵抗付きのインダ クターを使用して磁性体のコア損失を表すことにより、透磁率についても同様の解析を 行うことができます(図4)。DC電流源がインダクターの両端に配置されている場合は、 コア付きのインダクタンスは、透磁率と関連付けることができます。 L =L0 µ ' R L µ ' = L0 L 図4. インダクター www.keysight.co.jp 7
Page8

式の中で、Lは材料のインダクタンス、L0はコイルの真空のインダクタンス、μ’は透磁率の実 数部です。AC正弦波電流源が同じインダクターの両端に配置されている場合は、誘起電圧と 透磁率に関連する損失電圧で構成される電圧が発生します。コア損失は、インダクター(L)と 直列に接続された抵抗(R)で表すことができます。複素透磁率(μ*またはμ)は、エネルギー 蓄積項を表す実数部(μ’)とエネルギー損失項を表す虚数部(μ”)から構成されます。比誘電 率μrは、真空に対する誘電率です。 m µr = = µr – jµ m r' ' 0 μ0 = 4π x 10-7 H/m は真空の透磁率 鉄(フェライト)、コバルト、ニッケル、およびそれらの合金などの材料は、はっきりとした磁気特 性を持っていますが、多くの材料は非磁性体なので、透磁率は真空の透磁率(μr=1)に極めて 近い値になります。一方、すべての材料は誘電体としての特性を持っているので、ここでの 説明は主に誘電率測定を対象にします。 www.keysight.co.jp 8
Page9

電磁波の伝搬 電圧が時間変動する(正弦波の)場合、電界と磁界は同時に発生します。このような電磁 波は、真空中(光の速さ、c=3×108 m/s)や材料の中(より低速で)を伝わります。さまざまな 波長の電磁波が存在します。信号の波長lは周波数に反比例し(λ=c/f)、周波数が高くなる ほど、波長は短くなります。例えば、真空では、10 MHz信号の波長は30 mになりますが、 10 GHzでは3 cmです。波動の伝搬の多くは、材料の誘電率と透磁率によって決まります。誘 電体の特性の「光学的な側面」を考えてみます。空間内の材料(MUT)のフラットスラブについ て検討します。TEM波が表面に入射しています(図5)。入射波、反射波、伝送波が生じます。材 料の波動インピーダンスZは真空のインピーダンスη(またはZ0)と異なる(低い)ので、イン ピーダンス不整合が発生し、反射波が生じます。エネルギーの一部がサンプルを貫通します。 スラブでは、波の速度vが光の速度cよりも遅くなります。以下の式から、波長λdは、真空中の 波長λ0より短くなります。材料には常にいくらかの損失があるので、減衰または挿入損失が 生じます。簡単にするために、2番目の境界での不整合については考えません。 または η µ Z= η = Z = 00 = 120 π ε ' ε 0 r = λ 0 空中 空中 λ d v= c ε ' ε ' インピイーンダピンースダがン低スいが低い r r 波長が波短長いが短い 速度が速遅度いが遅い 振幅が振減幅衰が減衰 図5. 反射信号と伝送信号 www.keysight.co.jp 9
Page10

図6は、被試験材料(MUT)の誘電率と無限長サンプルの反射係数|G|の関係を示したものです (サンプルの後方からの反射は考えません)。反射係数が小さい場合は(およそ20未満)、誘 電率のわずかな変化で、反射係数は大きく変化します。この範囲では、反射係数を使った誘 電率測定の方が感度が高く、正確です。逆に、誘電率が高い場合は(例えば、70~90)、反射係 数がほとんど変化しないので、測定の不確かさが増加します。 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 誘電率 ε' r 図6. 反射係数対誘電率 www.keysight.co.jp 10 反射係数 Γ
Page11

誘電のメカニズム 材料には、全体の誘電率に寄与するいくつかの誘電のメカニズム(分極効果)を持っている 場合があります(図7)。誘電体は、電界によって変位する電荷キャリアを持っています。 電荷は、正電荷と負電荷がそれぞれ反対の方向に移動して分極することにより、電界を打ち 消します。 微視的なレベルでは、いくつかの誘電のメカニズムが誘電体の特性に寄与します。マイクロ 波周波数では、双極子の向きとイオン伝導が強く相互作用します。例えば、水分子は永久双 極子を持っていて、回転して交流電界に追随します。電子レンジで食物が加熱されるのは、 このメカニズムの損失が極めて大きいからです。原子メカニズムや電子メカニズムは比較的 弱く、通常はマイクロ波領域では一定です。各誘電のメカニズムは「カットオフ周波数」特性を 持っています。周波数が高くなるにしたがって、低速なメカニズムはドロップアウトし、より高 速なメカニズムがε’に寄与するようになります。損失係数(εr’’)が各臨界周波数でピークにな ります。各メカニズムの振幅および「カットオフ周波数」は材料ごとに固有です。水は低周波で 双極子の影響が強くなりますが、誘電率は22 GHz付近で急激にロールオフします。これに対 して、PTFE*には双極子がないので、誘電率はミリ波領域まで一定です。 共振は通常、電子分極または原子分極と関係があります。緩和は通常、配向分極と関係があり ます。 ' 双極子 r (回転) + + + - - - イオン 原子 電子 '' r 3 6 9 12 15 10 10 10 10 10 f, Hz MW IR V UV 図7. 誘電のメカニズムの周波数応答 www.keysight.co.jp 11
Page12

配向(双極子)分極 原子が結合して1つまたは複数の電子を共有すると、分子が形成されます。こうした電子の再 配置により、電荷分布に不平衡が生じ、永久双極子モーメントが発生します。これらのモーメ ントは電界がない場合はランダムに配向するので、分極は生じません。電界Eにより電気双極 子に対してトルクTが生じ、電気双極子が回転して電界と平行になり、配向分極が発生します (図8)。電界により配向が変わると、トルクも変化します。 T E – F F + 図8. 電界による双極子の回転 双極子の配向に伴う摩擦は、誘電損失に寄与します。双極子の回転により、εr’とεr’’の両方が 緩和周波数で変化します。これは通常、マイクロ波領域で発生します。上述のように、水は 強い配向分極を有する物質の1つです。 電子分極と原子分極 電子分極は、電界によって原子核を取り囲む電子に対して原子核が変位することにより、 中性原子で発生します。原子分極は、電界を印加することにより隣接する陽イオンと陰イオ ンが「広がる」ことにより発生します。乾燥した固体では、これらはマイクロ波周波数におい ては支配的な分極メカニズムですが、実際の共振ははるかに高い周波数で発生します。 赤外/可視光線領域では、軌道電子の慣性を考慮する必要があります。原子は、ばね-質量 系に似たダンピング効果を持つ発振器としてモデリングできます(図7)。発振振幅は、 共振周波数以外の周波数では小さくなります。共振よりずっと下では、電子メカニズムと 原子メカニズムは常にεr’にごくわずかしか寄与せず、ほとんど損失はありません。共振周波 数は、εr’の共振応答とεr’’の最大吸収のピークにより特定できます。共振より上では、これ らのメカニズムによる寄与はなくなります。 www.keysight.co.jp 12
Page13

緩和時間 緩和時間τとは、材料に存在する分子(双極子)の移動度の指標で、電界によって整列された 系がランダムな平衡状態の1/eに戻るまでに要する時間(または双極子が電界によって配向 されるのに要する時間)です。液体材料と固体材料は、電界が印加されたときに自由に動く ことができない凝集状態にある分子を持っています。一定の衝突により内部摩擦が生じ、 分子はゆっくり回転し、緩和時定数τで配向分極の最終状態に指数関数的に近付きます。 t = 1 = 1 ωc 2πfc 電界がオフになると、順序は逆になり、ランダム分布が同じ時定数で復元されます。緩和周 波数fcは、緩和時間に反比例します。 緩和周波数より下の周波数では、交流電界は低速なので、双極子は電界の変化に追随でき ます。分極が十分に発生するので、損失(εr’’)は周波数に正比例します(図9)。周波数が高 くなるにつれて、εr’’は増加し続けますが、双極子配向と電界の間の位相の遅れにより、蓄積 (εr’)は減少し始めます。緩和周波数より上では、双極子の回転に影響を与えるには電界が 高速過ぎて、配向分極が発生しなくなるので、εr’’とεr’はともに減少します。 ' , '' r r ' 60 r Debyeの式: ε(ω) = ε +εs − ε∞ ∞ 1+ jωτ 40 ω = 0で, ε(0) = εs ω = ∞で, ε(∞) ε 20 ∞ " r 0.1 1 10 100 f, GHz 図9. 30 ℃における水のDebye緩和 www.keysight.co.jp 13
Page14

Debyeの関係 単一の緩和時定数を示す材料は、誘電率の特性応答を周波数の関数として表すDebyeの 関係により、モデリングできます(図9)。εr’は緩和の上下では一定で、緩和周波数(22 GHz) 近傍で遷移が生じます。さらに、εr’’は緩和の上下では小さく、緩和周波数で遷移領域内の ピークに達します。 上の曲線の計算では、 誘電率の静的な(DC)値はεs= 76.47、誘電率の光学的な(周波数が 無限大のときの)値はε∞= 4.9、緩和時間τ = 7.2 psです。 Cole-Coleプロット 複素誘電率は、周波数を独立パラメータとして、縦軸に虚数部(εr’’)、横軸に実数部(εr’)を それぞれプロットすることにより、Cole-Coleプロットとして示すこともできます(図10)。Cole- Coleプロットは、少しスミスチャートに似ています。Debyeの関係で表される単一の緩和周波 数を持つ材料は、縦軸のεr’’=0を中心とする半径として現れ、損失係数のピークは1/τになり ます。複数の緩和周波数を持つ材料は、縦軸のεr’’=0より下を中心とする半円(対称分布)ま たは円弧(非対称分布)になります。 εs – ε∞ 図10の曲線は、x軸と半径 2 を中心とする半円です。誘電率の虚数部の最大値 ε’rmaxは、半径と等しくなります。周波数は、曲線上を左回りに移動します。 ε" r 30 ε ε ε GHz) " s - f ( ∞ r max = =35.8 の増加 20 2 10 中心 ε' 0 10 20 30 40 50 60 70 r ε∞ = 4.9 ε = 76.47 s 図10. 図9のCole-Coleプロット www.keysight.co.jp 14
Page15

イオン伝導率 材料の損失は、実際には、誘電損失(εrd’’)と伝導率(σ)の両方の関数として表すことができ ます。 '' = '' σ εr εrd + ω ε0 低周波では、全体の伝導率はさまざまな伝導メカニズムで構成できますが、湿潤材料では イオン伝導率が支配的です。εr’’は、溶剤(通常は水)内に存在する自由イオンに起因する 電解伝導の影響を最も強く受けます。イオン伝導率は、材料に損失を生じさせるだけです。 低周波では、イオン伝導率の影響は周波数に反比例し、εr’’曲線の1/fの傾きとして現れます。 界面/空間電荷による分極 電子分極、原子分極、配向分極は、固体または液体の原子や分子、構造に電荷が局所 的に結合した場合に発生します。低周波の電界を印加したときに、一定の距離にわ たって材料内を移動できる電荷キャリアも存在します。界面または空間電荷による 分極は、こうした移動する電荷の動きが妨げられた場合に発生します。電荷が材料の 界面に閉じ込められる可能性があります。電荷を電極で自由に放電または置換でき ない場合にも、動きは妨げられます。 これらの電荷の蓄積により生じた電界の歪み は、εr’の増加として現れ、材料全体のキャパシタンスを増加させます。 互いに接触していない(非伝導領域によって分離されている)伝導領域を持つ材料の混合 物は、低周波でMaxwell-Wagner効果を示します。電荷層が薄く、粒子の大きさよりもはる かに小さい場合は、電荷は、隣接する粒子の電荷と関係なく応答します。低周波では、電荷が 伝導領域の境界に蓄積するのに時間がかかるので、εr’が増加します。高周波では、電荷は すぐに蓄積されるので、伝導領域の大きさに比べて電荷変位が小さく、分極は生じません。 周波数が高くなるにしたがって、εr’が増加し、損失は通常のイオン伝導率と同じ1/fの傾きに なります。 他の多くの誘電のメカニズムはこの低周波領域で生じるので、誘電率に大きなバラツキが生 じます。例えば、電荷層の厚さが粒子の大きさと同程度か大きい場合は、コロイド緩衝が生じ ます。この場合、応答は隣接する粒子の電荷分布による影響を受けるので、Maxwell-Wagner 効果は当てはまりません。 www.keysight.co.jp 15
Page16

測定システム ネットワーク・アナライザ 寸法が既知であることに加えて、材料からの反射や材料による伝送を測定することにより、 材料の誘電率や透磁率を知ることができます。PNAファミリ、ENAシリーズ、FieldFoxなどの ベクトル・ネットワーク・アナライザにより、9 kHz~1.1 THzの高周波掃引スティミュラス/ レスポンス測定を行えます(図12)。ベクトル・ネットワーク・アナライザは、信号源、レシーバ、 ディスプレイから構成されています(図11)。信号源は、単一周波数の信号を被試験材料に 送ります。レシーバは、材料からの反射/伝送信号を検出するために、その周波数に同調さ れます。測定した応答から、その周波数の振幅/位相データが得られます。信号源は次の周 波数に変更され、測定が繰り返され、反射/伝送応答が周波数の関数として表示されます。 ネットワーク・アナライザの機能およびアーキテクチャの詳細については、Application Note 1287-12および1287-23を参照してください。 低周波用のコンポーネントや接続リード線は、高周波では異なる動作をします。マイクロ波周 波数では、デバイスの寸法よりも波長が短くなるので、2つの近接するポイントの位相差が大 きくなる可能性があります。低周波での集中定数の代わりに伝送ライン理論を用いて、デバ イスの動作を高周波で解析する必要があります。放射損失、誘電損失、静電結合などの高周 波効果により、マイクロ波回路はより複雑でコストがかかります。完全なマイクロ波ネットワー ク・アナライザをデザインするのは、時間とコストの面で不経済です。 フィクスチャ 入射 伝送 MUT 信号源 反射 信号分離 入射 (R) 反射 (A) 伝送 (B) レシーバー/ディテクター プロセッサ/ディスプレイ 図11. ネットワーク・アナライザ www.keysight.co.jp 16
Page17

代わりに校正機能を使用して、システムの不完全さに起因する系統的な(安定性/再現性の ある)測定誤差をなくします。雑音、ドリフトまたは環境(温度、湿度、圧力)に起因するランダ ム誤差は、校正によって取り除くことはできません。このため、マイクロ波測定は測定システ ムのわずかな変更によっても誤差が生じやすくなります。こうした誤差は、全コネクタの汚れ や損傷を目で検査するなどの注意深い測定操作や、校正後のテストポートケーブルの物理 的な移動をできるだけ少なくすることにより、最小限に抑えることができます。ネットワーク・ アナライザ校正の詳細については、Application Note 1287-34を参照してください。 インピーダンス・アナライザ/LCRメータ 図12に示すインピーダンス・アナライザやLCRメータは、低周波で材料特性を測定するた めに使用します。材料にAC信号が印加され、材料全体の実際の電圧がモニターされます。 材料の寸法が既知の場合は、キャパシタンスや損失係数を測定することにより、材料のテスト パラメータが得られます。 PNAファミリ ネットワーク・ アナライザ ENAシリーズ FieldFoxハンドヘルドVNA インピーダンス/ E4991B マテリアル・アナライザ 4294A インピーダンス・アナライザ E4980A , 4285A LCRメータ DC 101 102 10 3 10 4 10 5 10 6 10 7 10 8 10 9 1010 1011 1012 f (Hz) 図12. キーサイトの誘電体測定に使用される測定器の周波数カバレージ www.keysight.co.jp 17
Page18

フィクスチャ ネットワーク・アナライザやLCRメータを使って材料の誘電体の特性を測定するには、予測可 能な方法で電磁界を印加して、測定器への接続を行うために、測定フィクスチャ(またはサン プルホルダー)が必要です。必要なフィクスチャのタイプは、選択した測定手法と材料の物理 的な特性(固体、液体、粉末、ガス)によって決まります。 ソフトウェア 測定器の実測データは、最適なフォーマットで表示されるとは限りません。このような場合、 実測データを誘電率または透磁率に変換するのにソフトウェアが必要です。フィクスチャと MUT間の相互作用をモデリングして、バルク材料の特性を抽出するために、ソフトウェアが 必要な場合もあります。 測定手法 同軸プローブ法 方法の特長 • 広帯 • 簡単で使いやすい(非破壊) • Erの確度が低い、tan dの損失分解能が低い • 液体または半固体に最適 材料の前提条件 • 「 半無限」の厚さ • 非磁性 • 等方性および均質 • 表面がフラット • エアギャップなし オープンエンド同軸プローブとは、伝送ラインの切断面です。材料は、プローブを液体の 中に入れるか、固体(または粉末)材料の平面に接触させることによって測定されます。 プローブ端での電界は、材料の周囲に入り込み、MUTと接触すると変化します(図13)。 反射信号5(S11)を測定して、εr*に変換することができます。 同軸プローブ法の代表的な測定システムは、ネットワーク・アナライザまたはインピーダンス・ アナライザ、誘電率を計算するためのソフトウェア、同軸プローブ、プローブスタンド、ケーブ ルで構成されています。85070E誘電体プローブキットには、同軸プローブ、プローブスタ ンド、ケーブルが付属しています。ソフトウェアは、N1500A材料測定スイートが使用できる ようになりました。アナライザによっては、ソフトウェアを外部PCにインストールして、GPIB/ LAN/ www.keysight.co.jp 18
Page19

USBインタフェース経由で接続することができます。ENA/PNAシリーズ ネットワーク・ アナライザの場合は、ソフトウェアをアナライザに直接インストールできるので、外部PCは 不要です。 固体 半固体(粉末) 反射 (S1 1 ) 液体 S11 r 図13. 同軸プローブ法 図14は、85070Eキットに付属する高温プローブ(a)、スリムプローブ(b)、高性能プローブ(c)の 3種類のプローブを示したものです。高温プローブ(a)の右側には、ショートブロックが示され ています。(b)の一番下に3種類のスリムプローブ、一番上にショート、この他にアクセサリが 示されています。高性能プローブ(c)の上には、ショートブロックが示されています。 (a) (b) ショート (c) ショート フランジ 開口部 ショート 高性能プローブ 高温プローブ スリムプローブ 図14. 3種類の誘電体プローブの構成 堅牢なデザインの高温プローブ(a)は、密閉型のガラス金属シールによる、腐食性/研磨性化 学物質に対する耐性が特長です。このプローブは、-40~+200 ℃の広い温度範囲で使用で きるので、周波数や温度に対する測定が可能です。また、フランジが大きいので、 www.keysight.co.jp 19
Page20

液体や半固体だけでなく、表面が平坦な固体材料の測定も可能です。スリムプローブ(b)はス リムなデザインが特長で、発酵タンク、化学反応室、その他の開口部の小さな装置に簡単に 入るだけでなく、サンプルサイズが小さい場合にも使用できます。このプローブは、液体およ び柔らかい半固体に最適です。鋳造可能な固体の場合は、このプローブは経済的なので、 材料にはめ込んでそのまま残しておくことができます。このように使い捨て可能なデザイン なので、これらのプローブは3個セットで販売されています。スリムプローブキットには、密閉 型のスリムホルダーが付属しているので、2.2 mmの外径を、キットに含まれている内径 10 mmのブラケットや、市販の「Midi」サイズのアダプタ/ブッシングで使用できます。高性 能プローブ(c)は、スリムなデザインながら、プローブチップとコネクタ端部の両側がシールド されているため、非常に堅牢です。また、-40 ℃~+200 ℃の広い温度範囲で使用でき、さま ざまな周波数、温度範囲での測定が可能です。このプローブは加圧滅菌処理が可能なので、 滅菌が不可欠な食品、医療、化学の分野のさまざまなアプリケーションに最適です。スリムな デザインで、発酵タンク、化学反応室、その他の開口部の小さな装置にも簡単に入れられま す。表面が平坦な固体材料だけでなく、液体や半固体の測定にも有効です。詳細につい ては、誘電体プローブのTechnical Overview6およびソフトウェア・オンラインヘルプ7を参照し てください。 誘電体プローブは、キーサイトのネットワーク・アナライザおよびE4991Bインピーダンス・ア ナライザで使用できます。インピーダンス・アナライザで使用する場合は、10 MHz以上では 高温プローブを使用してください。 測定前に、プローブの先端で校正を行う必要があります。3タームの校正により、反射測定の 方向性、トラッキング、ソースマッチ誤差を補正します。これらの3つの誤差項を求めるた めに、3つの既知の標準を測定します。予測値と実際の値の差を用いて、測定から系統的な (再現性のある)誤差を取り除きます。3つの既知の標準とは、空気、ショート、蒸留水/脱イ オン水です。プローブを校正しても、さらに測定確度に影響を及ぼす可能性のある3つの誤 差の原因があります。 • ケーブルの安定度 • エアギャップ • サンプルの厚さ (プローブをネットワーク・アナライザに接続する)ケーブルが安定化するまで十分待ってか ら測定を行うこと、校正と測定の間にケーブルが曲がってしまっていないことを確認するこ とが重要です。自動電子校正リフレッシュ機能は、測定の前に、システムを数秒で自動的に再 校正します。このため、ケーブルの不安定性やシステムのドリフト誤差がほとんどなくなり ます。 www.keysight.co.jp 20