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エミュレーション機能で進化する ADAS/自動運転(AV)テストの最前線

ホワイトペーパー

シーンエミュレーションで実現する 高精度・高再現性なレーダー/ADAS検証手法

自動運転(AV)および先進運転支援システム(ADAS)の高度化に伴い、車両に搭載されるレーダー、LiDAR、カメラなどのセンサーは急速に進化し、それらを統合するアルゴリズムの複雑さも飛躍的に増しています。実環境で想定される膨大かつ多様な走行シナリオを、安全かつ効率的に検証することは、自動車OEMやティア1サプライヤーにとって大きな課題となっています。

本ホワイトペーパーでは、シミュレーション、エミュレーション、公道試験を組み合わせたDevOps的アプローチの中で、特に「エミュレーション」が果たす重要な役割に焦点を当てます。実際のハードウェアを用いたハードウェア・イン・ザ・ループ(HIL)テストにより、シミュレーションと実車試験のギャップを埋め、再現性と信頼性の高いADAS/AV検証を実現する方法を解説します。

具体的には、NCAPやNHTSAで定義される衝突被害軽減ブレーキ(AEB)や交通弱者(VRU)保護といった標準化シナリオを、ラボ環境で高密度かつリアルに再現するためのレーダー・シーン・エミュレーション技術を紹介します。ポイントクラウド、レイトレーシング、リクセルアレイといった技術により、複数対象物、近距離(最小1.5 m)、高速移動体を含む複雑な交通状況を忠実にエミュレートできる点が特長です。

これにより、従来は公道試験に頼らざるを得なかったコーナーケースをラボで早期に検証でき、テスト期間とコストの削減、品質と安全性の向上を同時に実現します。本資料は、ADAS/AV開発に携わる設計者、テストエンジニア、アルゴリズム開発者にとって、次世代自動運転テストの指針となる内容です。

このカタログについて

ドキュメント名 エミュレーション機能で進化する ADAS/自動運転(AV)テストの最前線
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
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取り扱い企業 キーサイト・テクノロジー株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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WHITE PAPER エミュレーション機能で ADAS/AVテストは 進化する
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レーダーセンサーの進化: ADAS/AVシステムに不可欠な要素 安全で信頼性のある自動運転(AD)システムの構築は、複雑な作業です。自動車メーカーは、未来の自動走行モビ リティーの実現に向けて、当面の課題の解決に取り組んでいます。 自動運転車(AV)には何百ものセンサーが搭載されており、車両内部はもちろん、他のスマートカーとも連携して 動作しなければなりません。自動運転機能を可能にするソフトウェアアルゴリズムは、車が適切に反応できるよう、 最終的にこれらのセンサーから集めた全情報を統合する必要があります。これらのアルゴリズムには、さまざま な運転シナリオをカバーする、何百万もの複雑なシーンを考慮したテストが求められています。自動車メーカーは、 自信を持って新しい先進運転支援システム(ADAS)とAVの機能を承認し、市場投入していかなくてはなりません。 自動運転を次のレベルに進めるにあたって、多くのイノベーションや進歩を成し遂げることが重要です。レーダー、 LiDAR、カメラなどセンサーテクノロジーへの継続的な投資により、周辺環境スキャンの質が向上します。どの タイプのセンサーにもそれぞれ長所と短所があるため、互いに補完し合うことで、対象物を検知する正確性を高 めています。 2
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レーダーセンサーのテストの 複雑さを認識 vehicle-to-everything通信の入力信号のような、大容量で高解像度センサーデータを統合して伝送するには、 強力なソフトウェアアルゴリズムが必要です。アルゴリズムを自己改善するトレーニング法として、機械学習が 確立されました。自動車メーカー (OEM)は、複雑な交通状況における意思決定を強化するためのアルゴリズムを 採用しています。 こういった現実的な刺激を有したアルゴリズムを、再現性のあるコントロールされたやり方でラボで検証するこ とは、導入後の正確性や安全性を確保するうえで非常に重要です。自動車の設計/テストエンジニアは、テスト のシナリオを確認し、それらのシナリオを3Dシミュレーション環境からレーダーモジュールへの実信号入力にレ ンダリングしてから、路上でテストを行います。 車両が認識する正確な世界の3Dマップを作成/更新し、それをECU用に変換する作業は、自動運転の重要なステッ プです。レーダーテクノロジーは昔からずっとありますが、新しいレーダーセンサーのフロントエンドは進化を 続けていて、以下のような機能により複雑化しています。 • 76~ 77 GH(z 現在では77~ 81 GHz)の広い帯域幅 • 複数の送受信アンテナの使用したマルチ入力マルチ出力(MIMO)によるマルチパス伝搬で確度を向上 • 4次元(高さ方向)、4Dイメージングレーダーによる分解能の向上 古い2Dレーダーや3Dレーダーは、限られた機能と大規模MIMOの欠如により、高さ寸法を認識しません。大規 模なMIMO構造を採用した広いアンテナ開口面を有する新世代のレーダーセンサーは、4次元センシング、高さの 認識を可能にしています。これらのレーダーセンサーは、分解能の向上と最大4 GHzの帯域幅により、認知機能 が向上しています。そのため、自動車テストソリューションは、既存のセンシングテクノロジーを革新し、測定 機器によってテストが制限されることがないように、機能の向上を行っています。 こういった現実的な刺激を有したアルゴリズムを、再現性のあるコントロールされたやり方でラボで 検証することは、導入後の正確性や安全性を確保するうえで非常に重要です。 3
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センサーの背後では、検出アルゴリズムの複雑さが増しており、それに対処するため、検出アルゴリズムのテス トや検証の要件がより厳しくなっています。 これらのセンサーを訓練するには、点対象だけでは不十分です。実際の道路上でレーダーセンサーは、他の車、 トラック、自転車、歩行者を見分けなければなりません。対象物を識別して分類するプロセスは、車両の反応や 同乗者の安全に影響を及ぼすので非常に重要です。これが、現在のラボ内ソリューションで不足しているところ です。1ターゲットを1点で構成する最大8つの移動ターゲットのロボットオートメーションでは、さまざまな 対象物の分類方法を自動車が学習するのに役立つ十分な情報は得られません。 テスト戦術の再考 研究開発エンジニアは、ソフトウェアアプリケーションの開発サイクル全体(開発とテスト、デプロイ、開発に 戻る)を通して、DevOp(s 開発と運用)モデルを使用します。このサイクルは、研究開発エンジニアがフィード バックを収集し、繰り返すたびに製品が改善するというループでつながっています。DevOpsモデルはソフト ウェア業界では一般的ですが、自動車会社でも、車両のソフトウェアベース化が進むにつれて、このプロセスを 採用し始めています。次のセクションでは、DevOpsモデルをさまざまな反復過程(シミュレーション、エミュレー ション、デプロイ)に分類します。 シミュレーション シミュレーターは、実際のデバイスの動作や構成を模擬する環境を作成します。自動車会社は、センサーや制御 モジュールのソフトウェア・イン・ザ・ループ(SIL)テストによる環境シミュレーションに多くの時間を費やして います。図1に示すように、自動車開発者は、テストをインテグレーションし、微調整(tweak)して、再びループ させます。 ミュレーション デ コー ド プ シ プロラ イ ン DEV ース リリ OPS シミュレーション試験 モニター 図1. シミュレーション:ソフトウェア・イン・ザ・ループのテスト、インテグレーション、微調整(tweak)、ループの例 4 構築 シミ ュレーション
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エミュレーション ソフトウェアである程度シミュレートできたら、次に、実際のハードウェアをいくつか追加します。これにより、 エミュレーターは、実際のデバイスのハードウェアやソフトウェアの機能を確認することができます。複雑なマ シンを組み立てる場合、ハードウェア・イン・ザ・ループのセットアップにある実際のコンポーネントを使って システムの一部をラボで再現することが、安全で信頼性の高いマシンを実現する1つの重要なステップになり ます。このステップによってシミュレーションと路上試験のギャップを埋め、時間とコストを削減することがで きます。アルゴリズムの複雑さが増しているため、このステップはAD/ADASシステムの開発ではますます重要 になっています。 エミュレーション ミュレーション コー ド プ シ デプロイラン ス DEV リー OPS リ シミュレーション試験 モニター テストモニタリング 図2. エミュレーション:実際のデバイスを使ったハードウェア・イン・ザ・ループのテストプロセス 5 構築 テスト操作 シミ ュレーション
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公道での走行試験 完成車両を用いた路上試験や試験コースでの運転には、プロトタイプ車や公道仕様車用に統合されたシステムが 必要です。このテストで、OEMは、最終製品を市場投入前に検証します。路上試験や試験コースでの運転は危険 で費用もかかります。設計エンジニアはソフトウェアを更新するチャンスは得られますが、システムレベルの 設計そのものを更新することは困難で、最初からやり直しになると開発時間が長くなります。 テス トドライブデプロイ エミュレーション ミュレーション コー ド プ シ デプロイラン DEV ース OPS リリ シミュレーション試験 モニター テストモニタリング モニター 図3. 路上試験:統合システムを備えたフルビークル試験 思考の転換 図3では、シミュレーション結果がエミュレーションに、それから路上試験に送られています。各ループは前 ループの結果に基づいています。設計/テストエンジニアは、シミュレーションの一部を基本コンポーネント(ブ レーキ、ステアリング・ホイール・サブシステムなど)に置き換えて、このテストプロセスを採用しています。 かつては、このテストプロセスにレーダーシステムを実装することは容易ではありませんでした。公道走行に 向けた準備とレーダーアルゴリズムの学習に十分な、現実に近いシナリオをエミュレートする方法がなかったの です。これは、シンプルなシナリオでは問題ではありません。公道試験では実施できない複雑なコーナーケース においては重要な問題です。 6 構築 操作 テスト操作 シミ ュレーション
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レベル3+ 1の自動運転の実現は、AD機能の対象が運転者、同乗者、歩行者の安全性に留まらないことを意味して います。AD機能は、車両の路上でのすべての操縦を監視しますので、法的に潜在的な影響を与える可能性があり ます。 自動車OEMは、運転機能、特に完全に自動化された機能を開発する際には注意が必要です。実際のレーダーセン サーと実信号を使用したリアルなシーンのエミュレーションは、ADASとAVテストを新しいレベルに引き上げる でしょう。 成功するAVのセットアップ 今やソフトウェアは、自動運転や電動化などの車両開発のトレンドや話題をけん引しています。これは、車両 開発の焦点がハードウェアからソフトウェアにシフトしていることを表しています。ADASレベル3以上の車両は、 増え続けるシナリオと周囲環境に対するテストや検証が必要です。テストの数だけでなく、テストの複雑さも 増しています。 例えば、今までのアダプティブ・クルーズ・コントロールは、前方車両に注意を払うだけで十分でした。しかし、 今日のシステムレベルのテストでは、さまざまな道路利用者についても考慮する必要があります。その一例が 高速道路の運転です。先行車に追従し、安全な距離を保つことに加えて、テストでは、車線を外れて、追い越し、 車線に戻るといった、自動操縦についても考慮する必要があります。都市部の運転ではさらに複雑さが増します。 歩行者、自転車、電動スクーターが関わる交差点や方向転換のシナリオを考えてみましょう。実車の試乗では、 このレベルの複雑さや統計的なバラツキはわかりません。このため、AVシステムの開発や検証には、シミュレー ションが欠かせないのです。 1. レベル3以上は、SAE(Society of Automotive Engineers)によって、条件付き自動化、高度な自動化、完全自動化と定義されています。 7
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NCAPによる標準化されたシナリオ 新車アセスメントプログラム(NCAP)のテストは、OEMが、運転者、同乗者、第三者にとって共通の安全基準を 確保することを目標として開始されました。これは、自主的な安全性の評価システムですが、今や急速に普及し、 消費者側で認知されたベンチマーク方法となっています。OEMにとっては、便利であるものの、難しい販売/マー ケティング戦略ともなっています。自動車OEMはしばしば、コントロールされた環境でダミー人形を使用した 衝突試験を実施します。ブランド戦略やコマーシャルメッセージのために、5つ星の安全評価を得ることを目指 しています。 車両の自動運転性能向上の推進により、衝突試験の複雑さが増しています。これまでは、シートベルト・プリテ ンショナー、サイド・ヘッド・エアバック、またはチャイルドシートで十分でしたが、現在は、自動車が路上の 特定の距離にある対象物を検知した場合、それが歩行者、自転車などの交通弱者(VRU)であろうと、割り込んで くる別の低速車両であろうと、自動的にブレーキをかける機能もテストする必要があります。 表1は、NCAPおよび米国運輸省道路交通安全局(NHTSA) 2のテストケースから一般的なレーダーベースの ADAS/AD機能に至るまで、テストでカバーすべきシナリオを示しています。このリストはすべてを網羅してい るわけではありません。テストが必要な項目を集めたライブラリは、別の技術記事のトピックになる可能性があ ります。 表1. テストシナリオ NCAP/NHTSAテストプロトコル 一般的なレーダーベースの自動運転車と先進運転支援 システム 安全性アシスト 自動運転システム • 衝突被害軽減ブレーキ(AEB) • アクティブ・クルーズ・コントロール(ACC) • レーン・サポート・システム(LSS) • 車線維持支援(LKA) • 衝突回避ステアリングアシスト(ESA) 交通弱者(VRU)の保護 先進運転支援システム • 歩行者用AEB • 死角検知(BSD) • 自転車用AEB • クロストラフィックアラート(CTA) • 前方衝突警告(FCW) • 車線離脱警告(LDW) • 後方自動ブレーキ(RAB) • 後方衝突警告(RCW) 2. NCAPとNHTSAは地域機関です。他の地元/地域機関もこれらの規格を管理しています。 8
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自動運転の人工知能(AI)開発者の間での思考実験では、衝突時に車両の同乗者の命を救うか、歩行者を助けるか の選択を行います。MITの研究者たちは、開発者がAIアルゴリズムに組み込む人間のバイアスを決定するために、 広範囲にわたる倫理的な研究を実施しました。目標は、AVが人間よりも速く、合理的な情報に基づいた方法で、 こうしたシナリオをナビゲートすることです。 そのシーンを正確に再現する必要があるため、NCAPシナリオはラボでのテストに適しているといえます。自動 車OEMに対する市場投入期間の短縮へのプレッシャーが高まっていることから、製品は設計サイクルの早い段階 で動作する必要があります。 自動車OEMは、NCAPシナリオを早期にラボでテストすることで、コンポーネントレベルからシステムレベルま で設計サイクル全体を通して、時間とコストを削減できることを認識していました。また、シーンエミュレーショ ン機能を用いることにより、自動車OEMは、ラボの早い段階でレーダーのインテグレーションを検証し、公道 試験や認定コースでの試験にしっかり備えることができます。また、このプロセスは、テストで不合格になるリ スクを大幅に軽減するのにも役立ちます。 9
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NCAPシナリオ1: 衝突被害軽減ブレーキ 例として、1つのNCAPシナリオ、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)について見てみましょう。Euro NCAPのウェブ サイトによると、公道での衝突事故で最も発生頻度が高いのが追突事故です。追突事故は、後方車両の運転者の 不注意により、前方の自動車の減速や停止に気づかない場合に発生します。 衝突被害軽減ブレーキ(AEB)システムのテストは、速度、車両、交通状況など広範囲に及びます。 FCWシステムとAEBシステムは、潜在的な損害を回避もしくは軽減することを目的としています。これらのシス テムは、前方の危険な状況を運転者に知らせたり、運転者が危険を察知できなかった場合に自動的にブレーキを かけます。こうした状況を検知するには、潜在的な危険の緊急性と、問題となる路上障害物の近さから、見通し 内(LOS)センサーが最適とされています。そのため自動車メーカーは、カメラ、LiDAR、レーダーセンサーを 単独もしくは組み合わせて使用し(センサーフュージョン)、異なる性能レベルのセンサーの特長を生かしてさま ざまな状況に対応します。 これらのセンサーをラボ内でエミュレートするには、少なくとも1つのターゲットが必要です。前の車は必須です。 今日のレーダー・ターゲット・シミュレーターを用いればそれは非常に簡単に実現できます。ただし、それは、 理論上正しいものの非現実的なシナリオのテストとなるでしょう。実際の道路には、ガードレール、道路標識か らの反射、他の車などが存在しています。レーダーがそれらを正しく認識しなかったらどうなるでしょうか? 図4. 衝突被害軽減ブレーキのダイアグラム(画像提供:NHTSAウェブサイト) 10
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AEBシナリオの実験 AVSimulation社のSCANeRは、NCAPシナリオのライブラリの中にAEB CCRm(対定速走行車両)用のNCAPシナ リオを備えています。視点は、自車両または被試験レーダーが搭載されている自動車です。 図6と7は、SCANeRシミュレーション上で、道路のXY平面を上から見たところです。このツールには、想定され るレーダーターゲットと検出されたレーダーターゲットの両方が含まれています。レーダーベースのADAS/AD アルゴリズムのシナリオに対する反応をリアルタイムで検証できます。赤いコーンは長距離レーダーを示し、 青いコーンは短距離レーダーを示しています。ガードレールを含む、画像の類似性に注目してください。 長距離 レーダー 図5. AVSimulation SCANeRソフトウェアを使用した NCAPシナリオ 短距離 レーダー テストで 避ける車両 右側 左側 ガードレール ガードレール 図6. これは、シミュレーションで示されているのと同じシーンを、レーダー画像に変換したものです。丸く囲われた部分はエ ミュレーションで、緑の矢印は検出された対象物です 今日では、シンプルなRTSシステムでも、車両2台のシナリオをエミュレートすることができます。ただし、AV システムをより正確に検証するためには、ガードレールの反射を追加して実環境シナリオを作成します。 11
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NCAPシナリオ2: 交通弱者 NCAPがテストすべきもう1つの重要な領域として声を大にして言いたいのは、交通弱者(VRU)への対応です。 NCAPテストでは、車の搭乗者をどれだけ保護されているかの評価に加えて、車両が衝突する可能があるVRU(歩 行者や自転車運転者)を車がどれだけよく保護できるかが評価されます。上述のAEBと同様に、差し迫った衝突を 運転者に知らせ、運転者がすぐに対応しない場合には、自動ブレーキをかけるという考え方です。 これらのテストにより、自動車OEMは怪我のリスクを評価することができます。運転者や同乗者ではなく、歩行 者や自転車運転者を保護する車両の性能に重点が置かれています。すべてのNCAPテストと同様に、これにも 評価システムがあります。歩行者や自転車を認識できるAEBシステムを搭載している場合、成績の良い車は追加 ポイントが得られます。 図7は、AEBシステムのテストをエミュレートできる2つの対象物のシナリオを示しています。ここで、歩行者や 自転車が駐車車両の間から出てきた場合はどうなるでしょうか?あるいは複数の歩行者が横断、または行き交っ ている場合はどうでしょうか?これは、車両や被試験レーダーに近接する対象物はエミュレートできないという、 多くのターゲット・シミュレーション・システムの弱点を指摘しています。 図7. NHTSAのVRU NCAPシナリオのダイアグラム(画像提供:NHTSAウェブサイト) 12
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解像度と近距離性能が生死を分ける類似した状況が他にも多くあるため、このシナリオは重要です。テスト車両 が交差点に近づいて、歩行者や近づいてくる自動車がいないことをよく確認した上で、右折しようとしている(赤 信号での右折が合法な地域の場合)シナリオを想定してください。車両はゆっくり近づいているため、カメラ、 長距離レーダー、LiDARセンサーはほとんど役に立ちません。それよりも、この場合は横方向の短距離レーダー を導入すべきでしょう。このレーダーは広い視野角と高い解像度を備えています。そして、車両に非常に近い 対象物を検知しなければいけません。 道路を横断している歩行者がベビーカーを押しているお母さんだったとします。その場合、レーダーは、実際の シナリオのように、ベビーカーと車両の距離が4 m以内だったとしても、ベビーカーとお母さんの両方を検知して、 間に合うように車を停止させる必要があります。 13
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VRUシナリオの実験 この実験には、IPG AutomotiveのCarMakerとVRUに関するNCAPシナリオパッケージの1つが必要です。このシ ナリオでは、自車両の前方にある駐車中の2台の車の間から、歩行者が右から左に道路を走って渡っています (図8参照)。視点は、自車両または被試験レーダーが搭載されている自動車になります。自車両は、自動的にブレー キをかけなければいけません。 最初の実験と同様に、図9は、想定されるターゲットと検出されたレーダーターゲットの両方を示しています。ユー ザーは、レーダーベースのADAS/AVアルゴリズムのシナリオに対する反応をリアルタイムで検証できます。この 場合も、駐車車両やその他の歩行者の詳細を含む、画像の類似性に注目してください。 図8. 歩行者は、被試験車両(黄色の車)に搭載されているレーダーの 前方4 m以内にいます 図9. VRUシナリオの3Dモデリングを示すレーダー画像。道路の片側には 車両、真ん中には歩行者、道路のもう片側には居合わせた人が、緑のドッ トで示されています 現在使われている、シンプルな2ポイントまたは4ポイントのレーダー・ターゲット・シミュレーション・システム では、複数の歩行者と複数の駐車車両が存在するという複雑さを加えることはできません。 14
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テクノロジーのギャップを埋める イノベーション ラボでさまざまな例をエミュレートするには、自動車OEMは、シミュレーションソフトウェアの出力を実信号に 変換して、レーダーモジュールに印加する必要があります。 エミュレーションの仕組み 自動車OEMがラボテスト用にシーンをエミュレーションする方法について、以下の技術コンセプトをご紹介し ます。 ポイントクラウド(点群データ) ポイントクラウドは、対象物または対象物の集まりを表す点群のデータセットを表します。X軸、Y軸、Z軸の 座標で構成された点により、大量の空間情報を1つのセットにすることができます。3Dレーダースキャナー、 LiDAR、およびレーダーテクノロジーは、多くの場合、ポイントクラウドを生成して表示します。このホワイトペー パーでは、3Dシナリオシミュレーターのポイントクラウドを採用しています。 ポイントクラウドにより、シーンに詳細情報が加わり、テスト中のアルゴリズムが、近い距離にある2つの対象 物を区別できるようになります。従来のレーダー・ターゲット・シミュレーター (RTS)では、距離とは無関係な 1つの反射だけが返されていました。それに対しレーダー・シーン・エミュレーションでは、対象物が近づくに つれて反射の数が増えます。このような「動的解像度」は、距離に応じて対象物を表現するポイント数を変化させ ることができます。 ポイントクラウドを表示するセットアップは、以下の2つのハードウェア面を満たす必要があります。 • レイトレーシング • リクセルの壁 15
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リクセルとは リクセルは、チップサイズのユニットに収まるほど小さいRFトランシーバーです。1つ1つは、テレビ画面 の画素(ピクセル)のようなものです。 8つのリクセルで1つのボードを構成し、複数のボードを並べて積み重ねることで、リクセルのマトリクス による高解像度の壁面を実現します。 これは、さまざまな色や輝度を表示するピクセルで構成される高解像度画面に似ています。同様に、リク セルは距離、速度、対象物の大きさを「表示」します。 レイトレーシング レイトレーシング・テクノロジーは、テスト中にレーダーやカメラなどのセンサーに必要な情報を抽出します (図10)。 光源 表示面 アイポイント 対象物 図10. 自動運転車に搭載されているセンサーに必要な情報を抽出するレイトレーシング・テクノロジー 16
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レイトレーシングのコンセプトは、コンピューターグラフィックスや、光の物理的挙動をシミュレートすることで、 デジタルの3Dオブジェクトを2D画面にレンダリングする機能にまでさかのぼります。対象物をスティミュラス レスポンス(刺激応答)システムに配置することにより、その対象物が可視化される仕組みです。このダイアグラ ムでは、光源が対象物を照らし、光線が反射して複数の方向に散乱しています。ユーザーの視点に収束するもの だけが投影面にマッピングされます。画面の解像度は、投影面の特性と対象物のメッシュの粗さによって決まり ます。対象物のレンダリングには、材料特性やその他の関連情報(対象物の色や輝度など)が含まれます。 この説明は可視光線のものですが、LOS放射に基づくスティミュラスレスポンス(刺激応答)レンダリングアルゴ リズム(レーダービジョンなど)にも同じ原理が適用されます。光源はレーダートランスミッターで、関連の材料 特性はレーダー放射の反射率に関係します。空間速度はドップラー効果に変換されます。 リクセルの壁 レイトレーシングによって抽出された情報を、レーダーセンサーが認識可能なものに変換するために次のことを 行います。 • 各車両をオブジェクト(対象物)に変換 • シミュレーションで各対象物に方向と速度を割り当て RSEが持つテストアレイは、RFフロントエンド(リクセル)の壁で構成されています。被試験システム(SUT)がシー ンの要素検出に必要なパラメーター用に変調された信号をエコーバックします。64×8のアレイで構成されるリ クセルが動的なレーダー環境を作り出すので、機械的に動く装置で構成されたテストシステムよりも短時間で多 くのケースを評価することができます。さらに、安定性、予測性、再現性、信頼性も向上します。 超小型のリクセルは、設計上レーダーセンサーからは見えませんが、3Dシミュレーションソフトウェアと共に 動作することで、今まで機械的に行っていた作業を完全に置き換えることができます。アレイ内の各リクセルは、 対象物までの距離とエコー強度をエミュレートします。対象物が接近するにつれて、多重反射により、対象物の 検出や識別をする能力が向上します。 17
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最小距離1.5 mで重要な機能を検証 多くのテストケース(AEB、FCW、LDW、LKAなど)では、SUTと至近距離にある対象物をエミュレートする必要 があります。例えば、赤信号で停止中の車間距離は、前後左右とも2 m以内が一般的です。そのような状況で、 自転車、オートバイ、スクーターなどの2輪車が車線に入ってきたり、歩行者が突然道路を渡ろうとしたりする 可能性があります。図11の緑の円は、1.5 mの距離(最小エミュレーション距離)を示しています。これは、自車 両に近接する対象物をエミュレートして重要な安全機能を確認することができる距離です。このようなシナリオ をラボ環境で再現するのは困難です。 1.5 m 図11. 緑の円は、1.5 mの距離(最小エミュレーション距離)を示しています 18
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ラボでのフルシーンエミュレーションにより、 次世代の自動運転を実現 自動車業界の多くのOEMは、事故ゼロ、排出ゼロ、渋滞ゼロという目標を掲げて突き進んでいます。これらの 目標は、自動車の設計とテストのあらゆる側面において革新的なソリューションを必要とする複雑な問題もあり ます。自動運転アルゴリズムの信頼性は、テストの包括性にかかっています。 ADAS/AVテストの変化 キーサイトのレーダー・シーン・エミュレーター (RSE)を使用すれば、自動車業界のOEMは、 非常に複雑でマルチターゲットなシーンでも、迅速にレーダーセンサーを搭載した自動運転シス テムのテストを実施することができます。RSEでは、自動車から1.5 mの近距離に最大512個の 対象物を含むシナリオを作成することができます。これらのシナリオには、速度、方向、自動車 からの距離、角度などの従属属性を含めることもできます。RSEでは、300 mという遠距離や1.5 m という近距離にある対象物をエミュレートできます。扱える対象物の速度は-400~+400 km/h の範囲です。 図12. キーサイトのRSEによって表現される複雑なシナリオ 19
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シーンエミュレーションにより ラボの早い段階でADAS/AVテストを加速 自動車OEMは、複雑な運転シナリオのテストを路上試験からラボに移行することにより、何百万マイルも運転す る必要がなくなるので、テスト速度が大幅に向上します。また、サイクルの早い段階で、複雑で再現性のある 高密度なシーンに対して、静止中/移動中の対象物を想定した状況判断テストを徹底的に実施できるので、 ADAS/ADアルゴリズムからの洞察を加速できます。 キーサイト・テクノロジーの製品、アプリケーション、サービスの詳細については、以下のウェブサイトを ご覧ください:www.keysight.com 本書の情報は、予告なしに変更されることがあります。 © Keysight Technologies, 2022, Published in Japan, June 1, 2022, 7122-1061.JA