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2026年1月20日に開催されたオンラインセミナーの講演録で、世界最大級のテクノロジーショー「CES2026」 の注目トピックを技術・市場の観点から徹底解説しています。
自動車・モビリティ分野の革新、AIの実装フェーズへの移行、半導体技術の進化など、CESで浮き彫りになった最新トレンドを“点ではなく線で捉える”ことで、今後の研究開発や新規テーマ探索に役立つ洞察を提供します。
特にフィジカル(実世界)とAIが交差する先進領域にフォーカスし、技術変化の背景や伸びる領域をわかりやすく整理したレポートです。
◆◇◆ 本資料のポイント ◆◇◆
・CES2026で示された次世代技術トレンドの全体像
・AIが実世界へ広く実装される「Physical AI」潮流
・モビリティと自動運転関連技術の進展
・先端半導体・AIチップの実用化動向
・日常生活・産業領域に浸透するスマート技術の実例
このカタログについて
| ドキュメント名 | CES2026を徹底解説!2026年を制する技術トレンドとは |
|---|---|
| ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
| ファイルサイズ | 25.7Mb |
| 取り扱い企業 | ストックマーク株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
Page1
CES 2026が示した未来像 杉 客兼数日
沼 員自理本
研動情大
Advanced Mobility・AI・半導体から読み解く 浩 究車報学
員
司 工工生
学学産
氏 リ科工
産業構造の転換点 サ講学
ー師︵部
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CESは、もはや単なる家電展示会ではなく、産業構造の変化を映し出す場へと大きく姿を変えている。特に近年は、
Advanced Mobility、AI、半導体といった基盤技術が交差することで、産業の重心そのものが移りつつあることが、会場全
体から明確に感じ取れるようになった。
CES ����では、自動化や知能化が「実験」や「構想」の段階を越え、実装や実行を前提としたフェーズへ移行していることが
随所に示された。一方で、期待が先行する分野と、現実的な価値創出に踏み出した分野との差も、これまで以上に鮮明に
なっている。
本セミナーでは、CESを長年現地で取材・視察してきた日本大学生産工学部数理情報工学科講師(非常勤)兼 自動車工学リ
サーチ・センター客員研究員の杉沼浩司氏を迎え、CES ����の現場から見えたモビリティ、AI、半導体の最新動向と、その背
後にある産業構造の転換点について解説いただいた。
※本記事は、ストックマーク株式会社が2026年1月20日に開催したオンラインセミナー『CES���� 最新報告会— Advanced Mobility × AI × 半導体
から読み解く現場の一手』の内容をもとに構成したものである。
CES ����を読み解く― 飛行体や地上交通を含む「飛ぶもの」を長年見てきた。この視点は、後
モビリティ・AI・半導体を軸にした最新動向と 半で触れる空飛ぶクルマの議論にも関係してくる。
講演者の経歴
ラスベガスおよび展示会との関わりも長い。先日、自宅で1987年の
本日は「CES ���� 最新報告会」として、1月6日から1月9日に開催 展示会資料を見つけた。当時はCESよりもCOMDEXがコンピューター
されたCESにおける動向について報告する。特に、モビリティ分野を中 分野の中心的な展示会であり、ラスベガス・コンベンションセンターで
心に、AIおよび半導体に関する動きを解説したい。 開催されていた。当時は、自ら開発したマルチメディア・オーサリングシ
ステムを展示している。資料を見返し、40年近く展示会に関わり続けて
私(杉沼 浩司氏)は日本大学生産工学部・自動車工学リサーチセン きたことを改めて実感した。
ターの客員研究員を務めている。専門は電気・計算機工学で、博士号
は米国カリフォルニア大学で取得。現在は、日本大学において自動車 CES ����の全体像 ―
工学および数理情報工学、すなわち情報工学・コンピューターサイエ 会場刷新と開催構造の変化、
ンス分野の教育に携わっている。研究領域としては、コンピューターサ 来場者・出展動向から見る転換点
イエンスというより、コンピューターエンジニアリング、すなわち「コン
ピューターの作り方」に近い分野を専門としてきた。 まず会場について触れておきたい。こちらは最も歴史のあるラスベ
ガス・コンベンションセンターであり、セントラル・コリドア、いわゆるグ
研究の原点はコンピューターグラフィックス(CG)である。高品質か ランドロビーにあたるエリアが大きく改修された。昨年は工事中で完
つ高速なCGを実現するためには、計算機そのものの設計が不可欠で 成形が見えなかったが、今年は屋根を備えた新しいロビーとして整備
あり、その過程で半導体技術へと研究領域が広がっていった。すべては されている。
©2026 Koji Suginuma
CGを高度化するための取り組みであり、その周辺技術として無線通信
や信号処理にも関わってきた。
また、趣味として航空分野にも深く関わっている。実際に操縦を行
い、教官資格も持つ。ドローンについてはヨーロッパのプロ操縦士資
格を保有している。無線資格も取得しており、操縦者という立場から、
CES���� CES����
© Stockmark Inc.
また、2022年から使用されているウエストホールは曲線を活かした そして、今年のCESの来場者数は約14万8,000人であり、非常に多
建築が特徴であり、そのデザインの流れが既存施設にも連続すること い水準であった。コロナ以前は約17万人が来場していたが、そこへむ
で、波打つような一体感のある大型コンベンションセンターが完成し けて着実に回復していることが分かる。ただし、17万人規模になると
た。CES ����は、この新しい会場で初めて開催された展示会である。 会場内の混雑が激しく、歩行すら困難になる。展示会としての評価が
下がる要因にもなり、実際、かつて私が出展していたCOMDEXは、来
CESの主催者はコンシューマー・テクノロジー・アソシエーション 場者過多により出展者から敬遠され、それが原因で最終的に消滅し
(CTA)で、かつては家電を中心とした団体であったが、現在は「一般の たといえる。CESの主催者も、同様の事態を避けようとしているように
人々が利用するあらゆる技術」を対象とする組織へと変化している。イ 見受けられる。
ベント名についても、2010年頃から主催者は「コンシューマー・エレク
トロニクス・ショー」ではなく、「CES」という呼称を正式に用いるよう求 一方で、出展社数は前年から約400社減少しており、これは全体の
めてきた。近年になり、メディアでも家電の展示会ではなく「最新技術 約1割に相当する。特に減少が顕著なのが、スタートアップ専用エリア
の展示会」として認識され始めている。 であるユーレカパークであり、減少分の約半分を、ユーレカパークの出
展企業が占めている。新興企業の間では、「ラスベガスまで行ってCES
現在、CESはラスベガス市内の3か所で開催されている。ラスベガ に出展しても意味がない」と判断する動きが出始めていると言えるの
ス・コンベンションセンターでは、モビリティ、IoT、AIなど、特に半導体 ではないだろうか。
技術と密接に関わる分野が中心である。一方、ベネチアン・エキスポ・
センターでは、ライフテクノロジー、ホームテクノロジー、ヘルステクノ こうした状況を踏まえると、来年もCESに出展するという判断や、
ロジーに加え、新興スタートアップの展示が集約されている。 CES出展を支援する事業の妥当性について、改めて検討すべき時期
に来ていると感じる。
さらに、アリア周辺の「Cスペース地区」では、マーケティングや広告
関連技術が扱われている。ただし、会期の制約もあり、今回はこのエリ また、会場の外観や雰囲気だけでなく、内部の演出も変わっている。
アを訪れていない。そのため、本講演では主に前述の2会場に絞って報 2024年は旧ロゴを使用した最後の年であり、昨年からは新しいロゴに
告する。 変更された。また、象徴的なアーチ構造は継続して使用されているも
のの、設置場所が手前に移動したことで、必ずしも全来場者が通過す
るものではなくなった。その結果、アーチの役割や位置付けも変化して
きたと感じている。
CESにおける半導体企業の存在感 ―
主役へと変貌する基盤技術プレイヤー
はじめに、半導体企業の動向について触れていく。CESにはNVIDIA
だけでなく、多くの半導体メーカーが参加している。かつてCESは「コ
ンシューマー・エレクトロニクス・ショー」、すなわち家電の展示会であ
り、半導体メーカーが前面に出る場ではなかった。しかし半導体は、あ
らゆる製品を支える基盤技術であり、その重要性から、以前から存在
感を示してきた企業として、アメリカのクアルコム(Qualcomm)やイ
ンテルが挙げられる。
今年はNVIDIAが基調講演ではなく、大規模な記者会見という形で
存在感を示した。形式上は記者会見であるが、一般参加者も含めた
実質的な単独イベントであり、約6,000人を集めてCESの会場の一つ
である近隣ホテルで開催された。なおNVIDIAは、2日間限定の「CES
Foundry」にも大きく出展していたが、別会場であったため私は訪問
できなかった。
AMDは基調講演とベネチアン地区のベネチアンホテル内ミーティ き点は、関連ツールやモデルを積極的にオープンソースで公開してい
ングルームで展示を行っていた。GPUを軸にAI分野で成長してきた る点にある。さらに、学習に用いたデータの内容まで明らかにするな
NVIDIAに対し、AMDはIntel互換CPUメーカーとして出発し、近年は ど、透明性を強く意識した姿勢が貫かれている。これらのツールは研
GPUやNPUといったAI向けプロセッサにも注力している。その結果、 究者の間でも広く利用されており、実務上も価値が高い。
演算系においてはオールラウンドな半導体メーカーになりつつある。
講演全体を通じて、AIの進化には依然としてハードウェアの進歩が
インテルはこれまで何度も基調講演を担当してきたが、近年はやや 不可欠であるというメッセージが強く感じられた。明確な言葉では語ら
控えめな印象で、今年はミーティングルームでの展示にとどまってい れなかったものの、「ハードウェアが進化しなければAIは本格的に活用
た。Samsung電子は、従来ラスベガス・コンベンションセンターのセン できない」という認識が随所に示されていた。また、近年NVIDIAが注力
トラルホールで大規模展示を行ってきたが、今年は会場を移し、Wynn している「フィジカルAI」の文脈でロボット展示も行われたが、過度に期
ホテル内で展示を実施した。なお、WynnもCESの正式会場の一つで 待を煽る演出はなく、現状を踏まえた堅実な見せ方であった点が印象
ある。 に残った。
そのほか、オランダの大手半導体メーカーであるNXPも出展してい AMDが描く設計集中戦略と
た。NXPはCPUや組み込み向けプロセッサ、画像処理など幅広い製 AI時代の成長シナリオ
品を手がける企業であり、自動車向け半導体の逼迫で話題となった
「Nexperia」とは別会社である。今年はラスベガス・コンベンションセ AMDはCPUに加え、GPUやDPUなど多様な演算ユニットを手がけ
ンターの駐車場に2階建ての大型ブースを設け、もはやブースという る、オールラウンドな半導体メーカーである。今回、AMDの発表を行っ
より建物に近い規模で展示を行っていた。 たCEOのリサ・スー氏は、半導体の製造技術で博士号を取得した技術
者であり、その経歴が同氏を極めて優れた経営者にしていると感じて
さらに、メモリメーカーのSKハイニックス、汎用マイクロプロセッサ いる。設計ではなく量産を含む製造技術を専門としてきた人物が、自
で知られるマイクロチップ、CPUアーキテクチャを提供するARM、日本 社の半導体工場を手放し、製造
企業ではルネサスも出展していた。ただし、ルネサスのブースは小型 を外部委託へ切り替える決断を
アクセサリー系企業が集まるエリアに配置されており、技術や部品を 下した点は特筆すべきである。
訴求する場としては疑問がある。昨年、同様の場所に出展していた他 自らの専門分野をあえて切り捨
社が今年は主要技術展示エリアに移動していることを考えると、来年 て、設計への集中を選択したこ
はルネサスも展示場所を見直すのではないかと感じている。 とで、AMDの成長は大きく加速
したといえる。
NVIDIAが示した次世代AI基盤 ―
Vera Rubinとオープン戦略の真意
続いて、NVIDIAの記者会見について解説する。NVIDIAの記者会見 今回の発表でも、AMDはCPU、GPU、DPUに加え、「Ryzen」に代表
では、CEOのジェンスン・フアン氏は、恒例の革ジャン姿で1時間以上 される統合ユニットや「Ryzen AI」プラットフォームを示し、対応領域の
にわたる講演を行い、「Vera(CPU)」と「Rubin(GPU)」から成る新し 広さを強調していた。「緑(NVIDIA)一強ではない」という姿勢は明確
いプラットフォームを発表。また、それらに用いられているチップ構成 であった。
も公開された。
製品面では、近くMI���シリーズが投入され、2027年にはMI���シリー
フアン氏は2018年以来、講演 ズが登場した。この4年間で演算性能が1,000倍に向上するという説明は、
の場では一貫して黒い革ジャン 現在の半導体業界の異常ともいえるスピード感を象徴している。
を着用しているが、昨年からは
「ラスベガス・スペシャル」と呼ば
れる特別仕様を用意している。
今年の革ジャンは、従来よりも光
沢のある点が特徴的であった。
今回発表された「Vera Rubin」シリーズは、中国向け輸出の可否で
も注目されている「Blackwell」シリーズを大きく上回る演算性能を持
つとされ、Rubin(GPU)は約5倍の演算能力を備えるという。ハード
ウェア性能の向上自体は想定の範囲内であるが、NVIDIAの特筆すべ
NVIDIAとAMDの両社の講演を通じて感じたのは、AIバブルを決して に減少していた。以前はダブルトラックやトリプルトラック、つまり同一
崩壊させてはならないという強い意識である。AIおよび半導体分野に 時間帯に複数社の会見が並ぶことも珍しくなかったが、今年は2社同
投資資金が流れ続けることが不可欠であるとの認識が共有されてお 時が2回あったのみで、ほとんどがシングルトラックであった。中には
り、両社とも他社を否定するのではなく、「自社はここまで準備してい 記者会見が行われない時間帯も見られた。これはCES自体の価値が
る」という姿勢を示していた。その結果として、「この分野への投資を継 下がったというより、企業側が「CESという場で記者会見を行う意義」
続してほしい」というメッセージが、極めて明確に伝わってくる講演で を見直し始めた結果だと考えている。
あった。
また、「アンベールド」と呼ばれるイベントも開催されている。これは
AI半導体は「学習」から「実行」へ ― 10数年前から続くもので、展示会本番の2日前に行われる、いわば事
設計思想の転換とMIPSのRISC-V移行 前公開の場である。「自社はこうした製品を出す」という概要のみを紹
介する位置付けだ。
AI向け半導体は、昨年までは学習、いわゆるトレーニング重視の構
造が中心であったが、今年はNVIDIA、AMDの両社とも「実行重視」へ アンベールドでは、各社に公平に同じサイズの展示スペースが割り
と明確に軸足を移していると述べていた。一般にはインファレンスと 当てられる。基本は机一つ分で、その3時間半の出展に約7,600ドルが
呼ばれるが、ここではあえて「実行」と表現する。この流れはIntelも同 必要となる。今年は約200社が出展していたが、費用を支払ったにも
様である。Intelは2年前、当時のCEOであったパット・ゲルシンガー氏 かかわらず出展していない企業が20社ほど見受けられた。
が基調講演において、実行効率を最大限に重視した製品開発を行っ
ていると語っていた。現在はNVIDIA、AMD、Intelの3社すべてが、実行
重視の半導体設計へ移行していると見てよい。
ここで触れておきたい半導体
メーカーとして、MIPSがある。久
しぶりにその名を目にしたが、
MIPSはスタンフォード大学のヘ
ネシー教授の系譜に連なる企 そして、モビリティに関する基調講演の中で特に印象に残ったのが
業であり、RISCアーキテクチャ キャタピラーである。黄色いブルドーザーで知られる同社は、昨年この
という現代コンピューターの基 会場で創業100周年を祝ったが、今回はCEOのジョー・クリード氏が登
礎を築いた流れを汲んでいる。 壇した。
1990年代から2000年代半ばに
かけて、MIPSアーキテクチャは キャタピラーは現在、鉱山などの現場でレベル4の自動運転をすでに
世界的に広く使われており、ソニーのPlayStation�もこれを基盤とした 実用化している。同社は自動運転に早くから取り組んできた企業であ
構成であった。 り、米国国防総省のDARPAグランドチャレンジにも参加してきた。2006
年の大会では、スタンフォード大学とGoogleのチームが1位となった
しかし近年、その名前を耳にする機会が減っていた。MIPSは生き残り が、2位はキャタピラーとカーネギーメロン大学のチームであった。カー
をかけて、UCバークレーのパターソン教授の流れにあたるRISC-Vへと ネギーメロン大学はロボティクス研究で知られ、自動運転もその延長
切り替えていた。ヘネシー教授とパターソン教授は、ともにRISCアーキ 線上で進められてきた。
テクチャの提唱者として知られ、チューリング賞を共同受賞している。
その一方の流れが、もう一方に合流した形である。MIPSという名称は 私が米国で大学院生だった頃、同大学の研究者から、当時のAIは木
残っているものの、もはやMIPSアーキテクチャではなくRISC-Vを採用 の影を道路と誤認してしまい、テストのために木を切り倒したことがあ
している点に、時代の変化を強く感じた。現地でも「切り替えた」と明確 るという話を聞いたことがある。そうした試行錯誤の積み重ねが現在
に説明されていた。 につながっている。
このように半導体分野では大きな変化が進んでおり、AIについても キャタピラーが自動運転に注力する背景には、工事現場における事
着実に準備が進んでいることが確認できた。 故低減という明確な目的がある。同社は、建設現場の自動化はもはや
実験段階ではなく、「今年実現する技術」であると強調していた。
CESに見るモビリティ展示の変化と
キャタピラーが示す自動化の現在地 CESは「乗用車展示会」から
「 はたらくクルマ」の舞台へ ―
CESでは、記者会見、アンベールド(CES Unveiled)、基調講演など、 基調講演に見る変化
さまざまなイベントが用意されていた。
近年のCESでは、私が「はたらくクルマ」と呼んでいる分野の基調講
記者会見は2日間にわたって実施されたが、登壇企業数は明らか 演が確実に増えている。最初のきっかけは2017年、ジョンディアが大型
トラクターをサウスホールに展示したことだった。その後キャタピラー
が続き、昨年は日本の小松製作所も出展している。そして近年では、こ
れらの企業が基調講演の壇上に立つようになった。2023年はジョン
ディア、2024年はHyundai HD、����年はボルボ・トラックが基調講演
を行っている。
この流れから見えてくるのは、CESを単なる自動車展示会と捉える
のは正確ではないという点である。むしろ「はたらくクルマ」の展示会
と呼ぶ方が実態に近い。自動運転技術も、一部分野では実用化が視
野に入る段階まで到達している。2006年にグランドチャレンジを完走
したスタンレーが、2007年のセルゲイ・ブリン氏の基調講演で紹介さ
れた。それを起点とした流れは、着実にここまで進展してきた。
自動運転が注目を集め始めた7年後の2014年には、アウディが基 ジョンディアも継続して出展し、今年も自動運転技術を披露してい
調講演を行い、NVIDIAのジェンスン・フアン氏が登壇して「NVIDIAの た。一方のトラクターを人が操作し、もう一方が自動で追従する構成
チップで自動運転が可能だ」と説明していた。当時は黒いジャケット姿 で、距離を自動調整しながら収穫物を回収する。さらに工程ごとにAI
で、現在の革ジャン姿になるのはその数年後からである。フォードも同 が判断し、回転数などを最適化しているという。農業分野における自
様に自動運転を強く打ち出していたが、当時語られた「もうすぐ実現す 動化が着実に進んでいることが分かる。
る」という見通しは、実際には時間を要している。私自身は、本格的な
社会実装は2030年以降になると見ている。
こうした背景もあり、完成車メーカーはCESにほとんど姿を見せなく
なった。現在参加しているのはBMW程度であり、CESは車両そのもの
の展示会ではない。車載技術の展示は多いが、自動車展示会と誤解す
べきではない。なお、ソニー・ホンダモビリティが継続して出展している
のは、まだ製品が完成段階にないためであり、販売が始まれば出展し
なくなる可能性が高いと考えている。 キャタピラーもAIを活用した安全技術を紹介していた。上空に高圧
電線があるような危険な状況をAIが検知し、自動的に停止する仕組み
実用段階に入った賢い「はたらくクルマ」― である。また、米国バージニア州のラックストーン鉱山で稼働する自動
EV化と自動化が進む現場モビリティ 運転車両の様子を中継していた。4台の車両が自動で稼働し、採掘した
石を積み込み集積地へ運搬しており、無事故で36万マイルを走行して
一方で、「はたらくクルマ」の分野では出展企業がさらに増えている。
いると説明されていた。
昨年からはオシュコシュ(Oshkosh)が参加するようになった。同社は
米国でも著名な特殊車両・特装車の世界的メーカーであり、空港用の
化学消防車などを手がけている。日本でも自衛隊で使用されている高
性能車両であるが、近年はこれをバッテリーEV化している。
この消防車は、空港内で瞬時に現場へ向かう必要があるため高い
瞬発力が求められる一方、長距離走行は不要で、行動範囲も空港内
に限られる。消火後はタンクが空になり次第、消防基地に戻る運用で
あり、この動き方はEVとの相性が極めて良い。すでにテキサス州のダ
ラス・フォートワース国際空港に配備されているという。
日本企業では、昨年に続きクボタが出展した。モジュール交換によ かつてCESはコンシューマー向け展示が中心であったが、現在は
り多様な作業に対応できるプラットフォームや、既存の農機に自動運 産業用途や開発現場向けの技術展示が主流となっている。主催者、
転や作物分析機能を組み込んだモデルを展示していた。 出展企業ともに、CESはすでにプロフェッショナル向けの場であると
認識している。コンシューマー向け展示はベネチアン会場に集まり、
以上が賢い「はたらくクルマ」の事例である。次に、自動運転そのもの 専門技術はラスベガス・コンベンション・センターに集約されつつあ
の動向について見ていく。先ほどのジョンディアの事例は、農地内に限 ると感じている。
定された自動運転であった。
道路自動運転の現実解 ― 実用化に届かないフィジカルAIロボットと、
Waymo・Zooxと学習手法の進化、SDVへの移行 「 Dragonwing」が示す現実的アプローチ
最後にフィジカルAIロボットについて触れるが、率直に言えば、現
次に、道路における自動運転についてである。完成車として実際に
状では多くが実用段階には達していないと感じた。これらに本格的
運用されている例としては、ZooxとWaymoが挙げられる。Zooxは
な投資を行う意義は乏しいというのが正直な印象である。例えばLG
Amazon系列、WaymoはGoogle系の企業であり、いずれもCESに出
展していた。 電子は、家事支援を掲げたロボットを展示していたが、シャツ1枚を
洗濯機に入れるだけで30秒を要していた。さらに、洗濯後に絡まっ
た衣類を取り出す動作は示されておらず、その段階には至っていない。
Waymoは今回、第5世代の「ドライバー」を投入した。ここでいう
ドライバーとは人ではなく、車両に搭載されたセンサー、センサーユ
ニット、コンピューターを統合したシステム全体を指す。第4世代は多 また、中国企業ではUnitreeなどが二足歩行ロボットによるボク
段構造であったが、第5世代は「座布団の上にお茶碗が載っているよ シングのデモンストレーションを行っていたが、これらのロボットは
うな」形状となり、外観が大きく変化している。 実際には物を持ち上げることができない。構造上、40kgや50kgの
重量物を扱おうとすれば転倒してしまう。物を持てないロボットは
Waymoの担当者によれば、同社が受け入れられている理由は 実用性に欠け、特に産業用途では成立しない。
「安心して乗れる」点にあるという。プライバシーが確保され、車内
で自由に振る舞えることが利用者に評価されている。Zooxについて
も、街中で実際に走行している様子を確認しており、すでにサービス
として運用されている。
また、自動運転の学習手法も変化している。以前は走行距離が安
全性の指標とされたが、現在はCGを用いた学習が主流になりつつ
ある。実写を基に高精度な3D空間を再現し、実走行では再現できな
い事故状況も仮想空間で学習可能となった。英国のWayveなどがこ
の手法を採用している。
二足歩行にこだわるよりも、車輪移動で、柱状の構造に両腕を
また、イスラエルのImagryも出展していた。同社は高精度マップ
備えたロボットの方が現実的である。ダンスはソニーが25年前に
やエンドツーエンド型に依存しない独自方式を採用し、自動運転バ
QRIOで実現しており、走行も本田技研工業がすでに達成している。
スで世界各地に実績を持つ。特定のハードウェアに依存せず、柔軟
こうした歴史を踏まえると、現在展示されている多くのロボットは、
に動作する点を特徴としていた。
やはり娯楽的な存在にとどまっている。本当に産業に必要なロボッ
車載技術では「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」という トとは何かを、改めて冷静に考える必要があるだろう。
言葉が広く使われている。今回、シーメンスはデジタルツインとAIを
一方で、今回特に注目すべき動きとしてQualcommが挙げられ
組み合わせ、すべてを仮想空間で検証した上で実車に反映する仕組
る。同社は米国の大手半導体メーカーであるが、単なる半導体販
み「PAVE���」を提案していた。
売にとどまらず、ソリューション提供型のビジネスへと踏み出して
いる。この取り組みを同社は「Dragonwing」と呼んでいる。 ていないように見受けられた。さらに深刻なのは、認証取得に必
要なコストや、その後の投資回収についての理解が不足している
点である。多額の開発費を投じた後、どのように事業として成立
させるのかというビジネスプランが見えてこない。これは先行者
を含め、市場性そのものに対しても疑問を抱かざるを得ない状況
である。
CESの現在地 ―
自動化・実行重視へ向かう産業構造の転換
ここまでを踏まえて状況をまとめると、アドバンスド・モビリティ
全体として大きな新提案は見られなかった。自動運転は依然とし
て難易度が高いものの、工場敷地内や鉱山のように環境が制御
された場所では、すでに実用段階に入っている。我々の立場で考
えれば、工場内外での簡易な搬送や配達、生産ラインへの定期的
な物資供給などは、自動化・ロボット化が十分可能であり、従来の
AGV(無人搬送車)を超える展開が期待できる。
Qualcommは自動運転を含む幅広い分野に関わっており、
スマートフォンに搭載されるモデムの6~7割を同社製が占め AI分野では、Qualcommが前面に出てきたことが最大のトピッ
るなど、通信分野で圧倒的な強みを持つ企業である。加えてAI分 クである。同社は半導体販売にとどまらず、AIの開発成果そのものを
野でも高い技術力を有しており、そのQualcommがハードウェア 提供するビジネスへと舵を切った、これは大きな転換点といえる。大規
ではなくAIソリューションを前面に押し出し始めた点は非常に示 模言語モデルについても、キャタピラーの事例が示すように、利用を意
唆的である。 識させない形で製品やサービスに組み込まれていく流れになるだろ
う。
Dragonwing自体は昨年2月に発表されていたが、今回の
CESでは初めて具体的な形として示された。ロボットへの応用 総じてCESは、もはや消費者向け製品の展示会ではない。新型家電
や、冷蔵庫などの家電にDragonwingプロセッサーを組み込み、 を披露する場ではなく、プロフェッショナル向けツールと技術を示し、
Qualcommの技術がどのように価値を生み出すかが紹介されて 企業同士がその場で具体的な連携や交渉を行う場へと変化している。
いた。 モビリティも自動化のための手段として再定義され、半導体は学習重
視から実行重視へと移行している。これこそが、今回のCESを象徴する
空飛ぶクルマの現実 ― 大きな動きであった。
技術展示と事業性の大きな乖離 まとめ
最後に空飛ぶクルマについて触れるが、現時点で展示されて CES ����では、AIと半導体、アドバンスド・モビリティが相互に結び
いるものは、正直に言えば事業性が極めて疑わしい。今回展示さ 付き、産業構造が「構想」から「実行」へと明確に移行している姿が示さ
れていた、ある国の自動車部品メーカーの機体も、人目を引くた れた。自動運転や現場モビリティは制御環境下では実用段階に入り、
めの演出に過ぎず、実際の事業につながるとは考えにくい。プラ 半導体も学習重視から実行重視へと設計思想を転換しつつある。
スチック射出成形メーカーによる展示も同様である。すでに開発
が進んでいる先行企業と、今になって参入してきた企業との間に これらの動向は、製造業やモビリティ産業のみならず、あらゆる産業
は大きな隔たりがある。 の競争環境を左右する基盤変化である。だからこそ、AIや半導体といっ
た、最新技術の世界的潮流を継続的に把握し、自社にどう影響するの
かを冷静に見極める視点が不可欠だ。
情報は受動的に収集するのではなく、自ら意識して収集することが
重要だ。また、国内だけでなく、海外の動向も俯瞰し、世界的な動きか
ら判断することが、今後の技術戦略と事業判断を大きく左右するといっ
ても過言ではないだろう。
先行企業は早ければ年内にも商業運航の認証取得が視野に
入っているが、今回展示していた企業の多くは、その入口にも立っ
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CES ����を読み解く― 飛行体や地上交通を含む「飛ぶもの」を長年見てきた。この視点は、後
モビリティ・AI・半導体を軸にした最新動向と 半で触れる空飛ぶクルマの議論にも関係してくる。
講演者の経歴
ラスベガスおよび展示会との関わりも長い。先日、自宅で1987年の
本日は「CES ���� 最新報告会」として、1月6日から1月9日に開催 展示会資料を見つけた。当時はCESよりもCOMDEXがコンピューター
されたCESにおける動向について報告する。特に、モビリティ分野を中 分野の中心的な展示会であり、ラスベガス・コンベンションセンターで
心に、AIおよび半導体に関する動きを解説したい。 開催されていた。当時は、自ら開発したマルチメディア・オーサリングシ
ステムを展示している。資料を見返し、40年近く展示会に関わり続けて
私(杉沼 浩司氏)は日本大学生産工学部・自動車工学リサーチセン きたことを改めて実感した。
ターの客員研究員を務めている。専門は電気・計算機工学で、博士号
は米国カリフォルニア大学で取得。現在は、日本大学において自動車 CES ����の全体像 ―
工学および数理情報工学、すなわち情報工学・コンピューターサイエ 会場刷新と開催構造の変化、
ンス分野の教育に携わっている。研究領域としては、コンピューターサ 来場者・出展動向から見る転換点
イエンスというより、コンピューターエンジニアリング、すなわち「コン
ピューターの作り方」に近い分野を専門としてきた。 まず会場について触れておきたい。こちらは最も歴史のあるラスベ
ガス・コンベンションセンターであり、セントラル・コリドア、いわゆるグ
研究の原点はコンピューターグラフィックス(CG)である。高品質か ランドロビーにあたるエリアが大きく改修された。昨年は工事中で完
つ高速なCGを実現するためには、計算機そのものの設計が不可欠で 成形が見えなかったが、今年は屋根を備えた新しいロビーとして整備
あり、その過程で半導体技術へと研究領域が広がっていった。すべては されている。
CGを高度化するための取り組みであり、その周辺技術として無線通信
や信号処理にも関わってきた。
また、趣味として航空分野にも深く関わっている。実際に操縦を行
い、教官資格も持つ。ドローンについてはヨーロッパのプロ操縦士資
格を保有している。無線資格も取得しており、操縦者という立場から、
また、2022年から使用されているウエストホールは曲線を活かした そして、今年のCESの来場者数は約14万8,000人であり、非常に多
建築が特徴であり、そのデザインの流れが既存施設にも連続すること い水準であった。コロナ以前は約17万人が来場していたが、そこへむ
で、波打つような一体感のある大型コンベンションセンターが完成し けて着実に回復していることが分かる。ただし、17万人規模になると
た。CES ����は、この新しい会場で初めて開催された展示会である。 会場内の混雑が激しく、歩行すら困難になる。展示会としての評価が
下がる要因にもなり、実際、かつて私が出展していたCOMDEXは、来
CESの主催者はコンシューマー・テクノロジー・アソシエーション 場者過多により出展者から敬遠され、それが原因で最終的に消滅し
(CTA)で、かつては家電を中心とした団体であったが、現在は「一般の たといえる。CESの主催者も、同様の事態を避けようとしているように
人々が利用するあらゆる技術」を対象とする組織へと変化している。イ 見受けられる。
ベント名についても、2010年頃から主催者は「コンシューマー・エレク
トロニクス・ショー」ではなく、「CES」という呼称を正式に用いるよう求 一方で、出展社数は前年から約400社減少しており、これは全体の
めてきた。近年になり、メディアでも家電の展示会ではなく「最新技術 約1割に相当する。特に減少が顕著なのが、スタートアップ専用エリア
の展示会」として認識され始めている。 であるユーレカパークであり、減少分の約半分を、ユーレカパークの出
展企業が占めている。新興企業の間では、「ラスベガスまで行ってCES
現在、CESはラスベガス市内の3か所で開催されている。ラスベガ に出展しても意味がない」と判断する動きが出始めていると言えるの
ス・コンベンションセンターでは、モビリティ、IoT、AIなど、特に半導体 ではないだろうか。
技術と密接に関わる分野が中心である。一方、ベネチアン・エキスポ・
センターでは、ライフテクノロジー、ホームテクノロジー、ヘルステクノ こうした状況を踏まえると、来年もCESに出展するという判断や、
ロジーに加え、新興スタートアップの展示が集約されている。 CES出展を支援する事業の妥当性について、改めて検討すべき時期
に来ていると感じる。
さらに、アリア周辺の「Cスペース地区」では、マーケティングや広告
関連技術が扱われている。ただし、会期の制約もあり、今回はこのエリ また、会場の外観や雰囲気だけでなく、内部の演出も変わっている。
アを訪れていない。そのため、本講演では主に前述の2会場に絞って報 2024年は旧ロゴを使用した最後の年であり、昨年からは新しいロゴに
告する。 変更された。また、象徴的なアーチ構造は継続して使用されているも
のの、設置場所が手前に移動したことで、必ずしも全来場者が通過す
るものではなくなった。その結果、アーチの役割や位置付けも変化して
きたと感じている。
©2026 Koji Suginuma
CES���� CES����
CESにおける半導体企業の存在感 ―
主役へと変貌する基盤技術プレイヤー
はじめに、半導体企業の動向について触れていく。CESにはNVIDIA
だけでなく、多くの半導体メーカーが参加している。かつてCESは「コ
ンシューマー・エレクトロニクス・ショー」、すなわち家電の展示会であ
り、半導体メーカーが前面に出る場ではなかった。しかし半導体は、あ
らゆる製品を支える基盤技術であり、その重要性から、以前から存在
感を示してきた企業として、アメリカのクアルコム(Qualcomm)やイ
ンテルが挙げられる。
今年はNVIDIAが基調講演ではなく、大規模な記者会見という形で
存在感を示した。形式上は記者会見であるが、一般参加者も含めた
実質的な単独イベントであり、約6,000人を集めてCESの会場の一つ
である近隣ホテルで開催された。なおNVIDIAは、2日間限定の「CES
Foundry」にも大きく出展していたが、別会場であったため私は訪問
できなかった。
© Stockmark Inc.
AMDは基調講演とベネチアン地区のベネチアンホテル内ミーティ き点は、関連ツールやモデルを積極的にオープンソースで公開してい
ングルームで展示を行っていた。GPUを軸にAI分野で成長してきた る点にある。さらに、学習に用いたデータの内容まで明らかにするな
NVIDIAに対し、AMDはIntel互換CPUメーカーとして出発し、近年は ど、透明性を強く意識した姿勢が貫かれている。これらのツールは研
GPUやNPUといったAI向けプロセッサにも注力している。その結果、 究者の間でも広く利用されており、実務上も価値が高い。
演算系においてはオールラウンドな半導体メーカーになりつつある。
講演全体を通じて、AIの進化には依然としてハードウェアの進歩が
インテルはこれまで何度も基調講演を担当してきたが、近年はやや 不可欠であるというメッセージが強く感じられた。明確な言葉では語ら
控えめな印象で、今年はミーティングルームでの展示にとどまってい れなかったものの、「ハードウェアが進化しなければAIは本格的に活用
た。Samsung電子は、従来ラスベガス・コンベンションセンターのセン できない」という認識が随所に示されていた。また、近年NVIDIAが注力
トラルホールで大規模展示を行ってきたが、今年は会場を移し、Wynn している「フィジカルAI」の文脈でロボット展示も行われたが、過度に期
ホテル内で展示を実施した。なお、WynnもCESの正式会場の一つで 待を煽る演出はなく、現状を踏まえた堅実な見せ方であった点が印象
ある。 に残った。
そのほか、オランダの大手半導体メーカーであるNXPも出展してい AMDが描く設計集中戦略と
た。NXPはCPUや組み込み向けプロセッサ、画像処理など幅広い製 AI時代の成長シナリオ
品を手がける企業であり、自動車向け半導体の逼迫で話題となった
「Nexperia」とは別会社である。今年はラスベガス・コンベンションセ AMDはCPUに加え、GPUやDPUなど多様な演算ユニットを手がけ
ンターの駐車場に2階建ての大型ブースを設け、もはやブースという る、オールラウンドな半導体メーカーである。今回、AMDの発表を行っ
より建物に近い規模で展示を行っていた。 たCEOのリサ・スー氏は、半導体の製造技術で博士号を取得した技術
者であり、その経歴が同氏を極めて優れた経営者にしていると感じて
さらに、メモリメーカーのSKハイニックス、汎用マイクロプロセッサ いる。設計ではなく量産を含む製造技術を専門としてきた人物が、自
で知られるマイクロチップ、CPUアーキテクチャを提供するARM、日本 社の半導体工場を手放し、製造
企業ではルネサスも出展していた。ただし、ルネサスのブースは小型 を外部委託へ切り替える決断を
アクセサリー系企業が集まるエリアに配置されており、技術や部品を 下した点は特筆すべきである。
訴求する場としては疑問がある。昨年、同様の場所に出展していた他 自らの専門分野をあえて切り捨
社が今年は主要技術展示エリアに移動していることを考えると、来年 て、設計への集中を選択したこ
はルネサスも展示場所を見直すのではないかと感じている。 とで、AMDの成長は大きく加速
したといえる。
NVIDIAが示した次世代AI基盤 ―
Vera Rubinとオープン戦略の真意
続いて、NVIDIAの記者会見について解説する。NVIDIAの記者会見 今回の発表でも、AMDはCPU、GPU、DPUに加え、「Ryzen」に代表
では、CEOのジェンスン・フアン氏は、恒例の革ジャン姿で1時間以上 される統合ユニットや「Ryzen AI」プラットフォームを示し、対応領域の
にわたる講演を行い、「Vera(CPU)」と「Rubin(GPU)」から成る新し 広さを強調していた。「緑(NVIDIA)一強ではない」という姿勢は明確
いプラットフォームを発表。また、それらに用いられているチップ構成 であった。
も公開された。
製品面では、近くMI���シリーズが投入され、2027年にはMI���シリー
フアン氏は2018年以来、講演 ズが登場した。この4年間で演算性能が1,000倍に向上するという説明は、
の場では一貫して黒い革ジャン 現在の半導体業界の異常ともいえるスピード感を象徴している。
を着用しているが、昨年からは
「ラスベガス・スペシャル」と呼ば
れる特別仕様を用意している。
今年の革ジャンは、従来よりも光
沢のある点が特徴的であった。
今回発表された「Vera Rubin」シリーズは、中国向け輸出の可否で
も注目されている「Blackwell」シリーズを大きく上回る演算性能を持
つとされ、Rubin(GPU)は約5倍の演算能力を備えるという。ハード
ウェア性能の向上自体は想定の範囲内であるが、NVIDIAの特筆すべ
NVIDIAとAMDの両社の講演を通じて感じたのは、AIバブルを決して に減少していた。以前はダブルトラックやトリプルトラック、つまり同一
崩壊させてはならないという強い意識である。AIおよび半導体分野に 時間帯に複数社の会見が並ぶことも珍しくなかったが、今年は2社同
投資資金が流れ続けることが不可欠であるとの認識が共有されてお 時が2回あったのみで、ほとんどがシングルトラックであった。中には
り、両社とも他社を否定するのではなく、「自社はここまで準備してい 記者会見が行われない時間帯も見られた。これはCES自体の価値が
る」という姿勢を示していた。その結果として、「この分野への投資を継 下がったというより、企業側が「CESという場で記者会見を行う意義」
続してほしい」というメッセージが、極めて明確に伝わってくる講演で を見直し始めた結果だと考えている。
あった。
また、「アンベールド」と呼ばれるイベントも開催されている。これは
AI半導体は「学習」から「実行」へ ― 10数年前から続くもので、展示会本番の2日前に行われる、いわば事
設計思想の転換とMIPSのRISC-V移行 前公開の場である。「自社はこうした製品を出す」という概要のみを紹
介する位置付けだ。
AI向け半導体は、昨年までは学習、いわゆるトレーニング重視の構
造が中心であったが、今年はNVIDIA、AMDの両社とも「実行重視」へ アンベールドでは、各社に公平に同じサイズの展示スペースが割り
と明確に軸足を移していると述べていた。一般にはインファレンスと 当てられる。基本は机一つ分で、その3時間半の出展に約7,600ドルが
呼ばれるが、ここではあえて「実行」と表現する。この流れはIntelも同 必要となる。今年は約200社が出展していたが、費用を支払ったにも
様である。Intelは2年前、当時のCEOであったパット・ゲルシンガー氏 かかわらず出展していない企業が20社ほど見受けられた。
が基調講演において、実行効率を最大限に重視した製品開発を行っ
ていると語っていた。現在はNVIDIA、AMD、Intelの3社すべてが、実行
重視の半導体設計へ移行していると見てよい。
ここで触れておきたい半導体
メーカーとして、MIPSがある。久
しぶりにその名を目にしたが、
MIPSはスタンフォード大学のヘ
ネシー教授の系譜に連なる企 そして、モビリティに関する基調講演の中で特に印象に残ったのが
業であり、RISCアーキテクチャ キャタピラーである。黄色いブルドーザーで知られる同社は、昨年この
という現代コンピューターの基 会場で創業100周年を祝ったが、今回はCEOのジョー・クリード氏が登
礎を築いた流れを汲んでいる。 壇した。
1990年代から2000年代半ばに
かけて、MIPSアーキテクチャは キャタピラーは現在、鉱山などの現場でレベル4の自動運転をすでに
世界的に広く使われており、ソニーのPlayStation�もこれを基盤とした 実用化している。同社は自動運転に早くから取り組んできた企業であ
構成であった。 り、米国国防総省のDARPAグランドチャレンジにも参加してきた。2006
年の大会では、スタンフォード大学とGoogleのチームが1位となった
しかし近年、その名前を耳にする機会が減っていた。MIPSは生き残り が、2位はキャタピラーとカーネギーメロン大学のチームであった。カー
をかけて、UCバークレーのパターソン教授の流れにあたるRISC-Vへと ネギーメロン大学はロボティクス研究で知られ、自動運転もその延長
切り替えていた。ヘネシー教授とパターソン教授は、ともにRISCアーキ 線上で進められてきた。
テクチャの提唱者として知られ、チューリング賞を共同受賞している。
その一方の流れが、もう一方に合流した形である。MIPSという名称は 私が米国で大学院生だった頃、同大学の研究者から、当時のAIは木
残っているものの、もはやMIPSアーキテクチャではなくRISC-Vを採用 の影を道路と誤認してしまい、テストのために木を切り倒したことがあ
している点に、時代の変化を強く感じた。現地でも「切り替えた」と明確 るという話を聞いたことがある。そうした試行錯誤の積み重ねが現在
に説明されていた。 につながっている。
このように半導体分野では大きな変化が進んでおり、AIについても キャタピラーが自動運転に注力する背景には、工事現場における事
着実に準備が進んでいることが確認できた。 故低減という明確な目的がある。同社は、建設現場の自動化はもはや
実験段階ではなく、「今年実現する技術」であると強調していた。
CESに見るモビリティ展示の変化と
キャタピラーが示す自動化の現在地 CESは「乗用車展示会」から
「 はたらくクルマ」の舞台へ ―
CESでは、記者会見、アンベールド(CES Unveiled)、基調講演など、 基調講演に見る変化
さまざまなイベントが用意されていた。
近年のCESでは、私が「はたらくクルマ」と呼んでいる分野の基調講
記者会見は2日間にわたって実施されたが、登壇企業数は明らか 演が確実に増えている。最初のきっかけは2017年、ジョンディアが大型
トラクターをサウスホールに展示したことだった。その後キャタピラー
が続き、昨年は日本の小松製作所も出展している。そして近年では、こ
れらの企業が基調講演の壇上に立つようになった。2023年はジョン
ディア、2024年はHyundai HD、����年はボルボ・トラックが基調講演
を行っている。
この流れから見えてくるのは、CESを単なる自動車展示会と捉える
のは正確ではないという点である。むしろ「はたらくクルマ」の展示会
と呼ぶ方が実態に近い。自動運転技術も、一部分野では実用化が視
野に入る段階まで到達している。2006年にグランドチャレンジを完走
したスタンレーが、2007年のセルゲイ・ブリン氏の基調講演で紹介さ
れた。それを起点とした流れは、着実にここまで進展してきた。
自動運転が注目を集め始めた7年後の2014年には、アウディが基 ジョンディアも継続して出展し、今年も自動運転技術を披露してい
調講演を行い、NVIDIAのジェンスン・フアン氏が登壇して「NVIDIAの た。一方のトラクターを人が操作し、もう一方が自動で追従する構成
チップで自動運転が可能だ」と説明していた。当時は黒いジャケット姿 で、距離を自動調整しながら収穫物を回収する。さらに工程ごとにAI
で、現在の革ジャン姿になるのはその数年後からである。フォードも同 が判断し、回転数などを最適化しているという。農業分野における自
様に自動運転を強く打ち出していたが、当時語られた「もうすぐ実現す 動化が着実に進んでいることが分かる。
る」という見通しは、実際には時間を要している。私自身は、本格的な
社会実装は2030年以降になると見ている。
こうした背景もあり、完成車メーカーはCESにほとんど姿を見せなく
なった。現在参加しているのはBMW程度であり、CESは車両そのもの
の展示会ではない。車載技術の展示は多いが、自動車展示会と誤解す
べきではない。なお、ソニー・ホンダモビリティが継続して出展している
のは、まだ製品が完成段階にないためであり、販売が始まれば出展し
なくなる可能性が高いと考えている。 キャタピラーもAIを活用した安全技術を紹介していた。上空に高圧
電線があるような危険な状況をAIが検知し、自動的に停止する仕組み
実用段階に入った賢い「はたらくクルマ」― である。また、米国バージニア州のラックストーン鉱山で稼働する自動
EV化と自動化が進む現場モビリティ 運転車両の様子を中継していた。4台の車両が自動で稼働し、採掘した
石を積み込み集積地へ運搬しており、無事故で36万マイルを走行して
一方で、「はたらくクルマ」の分野では出展企業がさらに増えている。
いると説明されていた。
昨年からはオシュコシュ(Oshkosh)が参加するようになった。同社は
米国でも著名な特殊車両・特装車の世界的メーカーであり、空港用の
化学消防車などを手がけている。日本でも自衛隊で使用されている高
性能車両であるが、近年はこれをバッテリーEV化している。
この消防車は、空港内で瞬時に現場へ向かう必要があるため高い
瞬発力が求められる一方、長距離走行は不要で、行動範囲も空港内
に限られる。消火後はタンクが空になり次第、消防基地に戻る運用で
あり、この動き方はEVとの相性が極めて良い。すでにテキサス州のダ
ラス・フォートワース国際空港に配備されているという。
日本企業では、昨年に続きクボタが出展した。モジュール交換によ かつてCESはコンシューマー向け展示が中心であったが、現在は
り多様な作業に対応できるプラットフォームや、既存の農機に自動運 産業用途や開発現場向けの技術展示が主流となっている。主催者、
転や作物分析機能を組み込んだモデルを展示していた。 出展企業ともに、CESはすでにプロフェッショナル向けの場であると
認識している。コンシューマー向け展示はベネチアン会場に集まり、
以上が賢い「はたらくクルマ」の事例である。次に、自動運転そのもの 専門技術はラスベガス・コンベンション・センターに集約されつつあ
の動向について見ていく。先ほどのジョンディアの事例は、農地内に限 ると感じている。
定された自動運転であった。
道路自動運転の現実解 ― 実用化に届かないフィジカルAIロボットと、
Waymo・Zooxと学習手法の進化、SDVへの移行 「 Dragonwing」が示す現実的アプローチ
最後にフィジカルAIロボットについて触れるが、率直に言えば、現
次に、道路における自動運転についてである。完成車として実際に
状では多くが実用段階には達していないと感じた。これらに本格的
運用されている例としては、ZooxとWaymoが挙げられる。Zooxは
な投資を行う意義は乏しいというのが正直な印象である。例えばLG
Amazon系列、WaymoはGoogle系の企業であり、いずれもCESに出
展していた。 電子は、家事支援を掲げたロボットを展示していたが、シャツ1枚を
洗濯機に入れるだけで30秒を要していた。さらに、洗濯後に絡まっ
た衣類を取り出す動作は示されておらず、その段階には至っていない。
Waymoは今回、第5世代の「ドライバー」を投入した。ここでいう
ドライバーとは人ではなく、車両に搭載されたセンサー、センサーユ
ニット、コンピューターを統合したシステム全体を指す。第4世代は多 また、中国企業ではUnitreeなどが二足歩行ロボットによるボク
段構造であったが、第5世代は「座布団の上にお茶碗が載っているよ シングのデモンストレーションを行っていたが、これらのロボットは
うな」形状となり、外観が大きく変化している。 実際には物を持ち上げることができない。構造上、40kgや50kgの
重量物を扱おうとすれば転倒してしまう。物を持てないロボットは
Waymoの担当者によれば、同社が受け入れられている理由は 実用性に欠け、特に産業用途では成立しない。
「安心して乗れる」点にあるという。プライバシーが確保され、車内
で自由に振る舞えることが利用者に評価されている。Zooxについて
も、街中で実際に走行している様子を確認しており、すでにサービス
として運用されている。
また、自動運転の学習手法も変化している。以前は走行距離が安
全性の指標とされたが、現在はCGを用いた学習が主流になりつつ
ある。実写を基に高精度な3D空間を再現し、実走行では再現できな
い事故状況も仮想空間で学習可能となった。英国のWayveなどがこ
の手法を採用している。
二足歩行にこだわるよりも、車輪移動で、柱状の構造に両腕を
また、イスラエルのImagryも出展していた。同社は高精度マップ
備えたロボットの方が現実的である。ダンスはソニーが25年前に
やエンドツーエンド型に依存しない独自方式を採用し、自動運転バ
QRIOで実現しており、走行も本田技研工業がすでに達成している。
スで世界各地に実績を持つ。特定のハードウェアに依存せず、柔軟
こうした歴史を踏まえると、現在展示されている多くのロボットは、
に動作する点を特徴としていた。
やはり娯楽的な存在にとどまっている。本当に産業に必要なロボッ
車載技術では「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」という トとは何かを、改めて冷静に考える必要があるだろう。
言葉が広く使われている。今回、シーメンスはデジタルツインとAIを
一方で、今回特に注目すべき動きとしてQualcommが挙げられ
組み合わせ、すべてを仮想空間で検証した上で実車に反映する仕組
る。同社は米国の大手半導体メーカーであるが、単なる半導体販
み「PAVE���」を提案していた。
売にとどまらず、ソリューション提供型のビジネスへと踏み出して
いる。この取り組みを同社は「Dragonwing」と呼んでいる。 ていないように見受けられた。さらに深刻なのは、認証取得に必
要なコストや、その後の投資回収についての理解が不足している
点である。多額の開発費を投じた後、どのように事業として成立
させるのかというビジネスプランが見えてこない。これは先行者
を含め、市場性そのものに対しても疑問を抱かざるを得ない状況
である。
CESの現在地 ―
自動化・実行重視へ向かう産業構造の転換
ここまでを踏まえて状況をまとめると、アドバンスド・モビリティ
全体として大きな新提案は見られなかった。自動運転は依然とし
て難易度が高いものの、工場敷地内や鉱山のように環境が制御
された場所では、すでに実用段階に入っている。我々の立場で考
えれば、工場内外での簡易な搬送や配達、生産ラインへの定期的
な物資供給などは、自動化・ロボット化が十分可能であり、従来の
AGV(無人搬送車)を超える展開が期待できる。
Qualcommは自動運転を含む幅広い分野に関わっており、
スマートフォンに搭載されるモデムの6~7割を同社製が占め AI分野では、Qualcommが前面に出てきたことが最大のトピッ
るなど、通信分野で圧倒的な強みを持つ企業である。加えてAI分 クである。同社は半導体販売にとどまらず、AIの開発成果そのものを
野でも高い技術力を有しており、そのQualcommがハードウェア 提供するビジネスへと舵を切った、これは大きな転換点といえる。大規
ではなくAIソリューションを前面に押し出し始めた点は非常に示 模言語モデルについても、キャタピラーの事例が示すように、利用を意
唆的である。 識させない形で製品やサービスに組み込まれていく流れになるだろ
う。
Dragonwing自体は昨年2月に発表されていたが、今回の
CESでは初めて具体的な形として示された。ロボットへの応用 総じてCESは、もはや消費者向け製品の展示会ではない。新型家電
や、冷蔵庫などの家電にDragonwingプロセッサーを組み込み、 を披露する場ではなく、プロフェッショナル向けツールと技術を示し、
Qualcommの技術がどのように価値を生み出すかが紹介されて 企業同士がその場で具体的な連携や交渉を行う場へと変化している。
いた。 モビリティも自動化のための手段として再定義され、半導体は学習重
視から実行重視へと移行している。これこそが、今回のCESを象徴する
空飛ぶクルマの現実 ― 大きな動きであった。
技術展示と事業性の大きな乖離 まとめ
最後に空飛ぶクルマについて触れるが、現時点で展示されて CES ����では、AIと半導体、アドバンスド・モビリティが相互に結び
いるものは、正直に言えば事業性が極めて疑わしい。今回展示さ 付き、産業構造が「構想」から「実行」へと明確に移行している姿が示さ
れていた、ある国の自動車部品メーカーの機体も、人目を引くた れた。自動運転や現場モビリティは制御環境下では実用段階に入り、
めの演出に過ぎず、実際の事業につながるとは考えにくい。プラ 半導体も学習重視から実行重視へと設計思想を転換しつつある。
スチック射出成形メーカーによる展示も同様である。すでに開発
が進んでいる先行企業と、今になって参入してきた企業との間に これらの動向は、製造業やモビリティ産業のみならず、あらゆる産業
は大きな隔たりがある。 の競争環境を左右する基盤変化である。だからこそ、AIや半導体といっ
た、最新技術の世界的潮流を継続的に把握し、自社にどう影響するの
かを冷静に見極める視点が不可欠だ。
情報は受動的に収集するのではなく、自ら意識して収集することが
重要だ。また、国内だけでなく、海外の動向も俯瞰し、世界的な動きか
ら判断することが、今後の技術戦略と事業判断を大きく左右するといっ
ても過言ではないだろう。
先行企業は早ければ年内にも商業運航の認証取得が視野に
入っているが、今回展示していた企業の多くは、その入口にも立っ
Page3
CES ����を読み解く― 飛行体や地上交通を含む「飛ぶもの」を長年見てきた。この視点は、後
モビリティ・AI・半導体を軸にした最新動向と 半で触れる空飛ぶクルマの議論にも関係してくる。
講演者の経歴
ラスベガスおよび展示会との関わりも長い。先日、自宅で1987年の
本日は「CES ���� 最新報告会」として、1月6日から1月9日に開催 展示会資料を見つけた。当時はCESよりもCOMDEXがコンピューター
されたCESにおける動向について報告する。特に、モビリティ分野を中 分野の中心的な展示会であり、ラスベガス・コンベンションセンターで
心に、AIおよび半導体に関する動きを解説したい。 開催されていた。当時は、自ら開発したマルチメディア・オーサリングシ
ステムを展示している。資料を見返し、40年近く展示会に関わり続けて
私(杉沼 浩司氏)は日本大学生産工学部・自動車工学リサーチセン きたことを改めて実感した。
ターの客員研究員を務めている。専門は電気・計算機工学で、博士号
は米国カリフォルニア大学で取得。現在は、日本大学において自動車 CES ����の全体像 ―
工学および数理情報工学、すなわち情報工学・コンピューターサイエ 会場刷新と開催構造の変化、
ンス分野の教育に携わっている。研究領域としては、コンピューターサ 来場者・出展動向から見る転換点
イエンスというより、コンピューターエンジニアリング、すなわち「コン
ピューターの作り方」に近い分野を専門としてきた。 まず会場について触れておきたい。こちらは最も歴史のあるラスベ
ガス・コンベンションセンターであり、セントラル・コリドア、いわゆるグ
研究の原点はコンピューターグラフィックス(CG)である。高品質か ランドロビーにあたるエリアが大きく改修された。昨年は工事中で完
つ高速なCGを実現するためには、計算機そのものの設計が不可欠で 成形が見えなかったが、今年は屋根を備えた新しいロビーとして整備
あり、その過程で半導体技術へと研究領域が広がっていった。すべては されている。
CGを高度化するための取り組みであり、その周辺技術として無線通信
や信号処理にも関わってきた。
また、趣味として航空分野にも深く関わっている。実際に操縦を行
い、教官資格も持つ。ドローンについてはヨーロッパのプロ操縦士資
格を保有している。無線資格も取得しており、操縦者という立場から、
また、2022年から使用されているウエストホールは曲線を活かした そして、今年のCESの来場者数は約14万8,000人であり、非常に多
建築が特徴であり、そのデザインの流れが既存施設にも連続すること い水準であった。コロナ以前は約17万人が来場していたが、そこへむ
で、波打つような一体感のある大型コンベンションセンターが完成し けて着実に回復していることが分かる。ただし、17万人規模になると
た。CES ����は、この新しい会場で初めて開催された展示会である。 会場内の混雑が激しく、歩行すら困難になる。展示会としての評価が
下がる要因にもなり、実際、かつて私が出展していたCOMDEXは、来
CESの主催者はコンシューマー・テクノロジー・アソシエーション 場者過多により出展者から敬遠され、それが原因で最終的に消滅し
(CTA)で、かつては家電を中心とした団体であったが、現在は「一般の たといえる。CESの主催者も、同様の事態を避けようとしているように
人々が利用するあらゆる技術」を対象とする組織へと変化している。イ 見受けられる。
ベント名についても、2010年頃から主催者は「コンシューマー・エレク
トロニクス・ショー」ではなく、「CES」という呼称を正式に用いるよう求 一方で、出展社数は前年から約400社減少しており、これは全体の
めてきた。近年になり、メディアでも家電の展示会ではなく「最新技術 約1割に相当する。特に減少が顕著なのが、スタートアップ専用エリア
の展示会」として認識され始めている。 であるユーレカパークであり、減少分の約半分を、ユーレカパークの出
展企業が占めている。新興企業の間では、「ラスベガスまで行ってCES
現在、CESはラスベガス市内の3か所で開催されている。ラスベガ に出展しても意味がない」と判断する動きが出始めていると言えるの
ス・コンベンションセンターでは、モビリティ、IoT、AIなど、特に半導体 ではないだろうか。
技術と密接に関わる分野が中心である。一方、ベネチアン・エキスポ・
センターでは、ライフテクノロジー、ホームテクノロジー、ヘルステクノ こうした状況を踏まえると、来年もCESに出展するという判断や、
ロジーに加え、新興スタートアップの展示が集約されている。 CES出展を支援する事業の妥当性について、改めて検討すべき時期
に来ていると感じる。
さらに、アリア周辺の「Cスペース地区」では、マーケティングや広告
関連技術が扱われている。ただし、会期の制約もあり、今回はこのエリ また、会場の外観や雰囲気だけでなく、内部の演出も変わっている。
アを訪れていない。そのため、本講演では主に前述の2会場に絞って報 2024年は旧ロゴを使用した最後の年であり、昨年からは新しいロゴに
告する。 変更された。また、象徴的なアーチ構造は継続して使用されているも
のの、設置場所が手前に移動したことで、必ずしも全来場者が通過す
るものではなくなった。その結果、アーチの役割や位置付けも変化して
きたと感じている。
CESにおける半導体企業の存在感 ―
主役へと変貌する基盤技術プレイヤー
はじめに、半導体企業の動向について触れていく。CESにはNVIDIA
だけでなく、多くの半導体メーカーが参加している。かつてCESは「コ
ンシューマー・エレクトロニクス・ショー」、すなわち家電の展示会であ
り、半導体メーカーが前面に出る場ではなかった。しかし半導体は、あ
らゆる製品を支える基盤技術であり、その重要性から、以前から存在
感を示してきた企業として、アメリカのクアルコム(Qualcomm)やイ
ンテルが挙げられる。
今年はNVIDIAが基調講演ではなく、大規模な記者会見という形で
存在感を示した。形式上は記者会見であるが、一般参加者も含めた
実質的な単独イベントであり、約6,000人を集めてCESの会場の一つ
である近隣ホテルで開催された。なおNVIDIAは、2日間限定の「CES
Foundry」にも大きく出展していたが、別会場であったため私は訪問
できなかった。
AMDは基調講演とベネチアン地区のベネチアンホテル内ミーティ き点は、関連ツールやモデルを積極的にオープンソースで公開してい
ングルームで展示を行っていた。GPUを軸にAI分野で成長してきた る点にある。さらに、学習に用いたデータの内容まで明らかにするな
NVIDIAに対し、AMDはIntel互換CPUメーカーとして出発し、近年は ど、透明性を強く意識した姿勢が貫かれている。これらのツールは研
GPUやNPUといったAI向けプロセッサにも注力している。その結果、 究者の間でも広く利用されており、実務上も価値が高い。
演算系においてはオールラウンドな半導体メーカーになりつつある。
講演全体を通じて、AIの進化には依然としてハードウェアの進歩が
インテルはこれまで何度も基調講演を担当してきたが、近年はやや 不可欠であるというメッセージが強く感じられた。明確な言葉では語ら
控えめな印象で、今年はミーティングルームでの展示にとどまってい れなかったものの、「ハードウェアが進化しなければAIは本格的に活用
た。Samsung電子は、従来ラスベガス・コンベンションセンターのセン できない」という認識が随所に示されていた。また、近年NVIDIAが注力
トラルホールで大規模展示を行ってきたが、今年は会場を移し、Wynn している「フィジカルAI」の文脈でロボット展示も行われたが、過度に期
ホテル内で展示を実施した。なお、WynnもCESの正式会場の一つで 待を煽る演出はなく、現状を踏まえた堅実な見せ方であった点が印象
ある。 に残った。
そのほか、オランダの大手半導体メーカーであるNXPも出展してい AMDが描く設計集中戦略と
た。NXPはCPUや組み込み向けプロセッサ、画像処理など幅広い製 AI時代の成長シナリオ
品を手がける企業であり、自動車向け半導体の逼迫で話題となった
「Nexperia」とは別会社である。今年はラスベガス・コンベンションセ AMDはCPUに加え、GPUやDPUなど多様な演算ユニットを手がけ
ンターの駐車場に2階建ての大型ブースを設け、もはやブースという る、オールラウンドな半導体メーカーである。今回、AMDの発表を行っ
より建物に近い規模で展示を行っていた。 たCEOのリサ・スー氏は、半導体の製造技術で博士号を取得した技術
者であり、その経歴が同氏を極めて優れた経営者にしていると感じて
さらに、メモリメーカーのSKハイニックス、汎用マイクロプロセッサ いる。設計ではなく量産を含む製造技術を専門としてきた人物が、自
で知られるマイクロチップ、CPUアーキテクチャを提供するARM、日本 社の半導体工場を手放し、製造
企業ではルネサスも出展していた。ただし、ルネサスのブースは小型 を外部委託へ切り替える決断を
アクセサリー系企業が集まるエリアに配置されており、技術や部品を 下した点は特筆すべきである。
訴求する場としては疑問がある。昨年、同様の場所に出展していた他 自らの専門分野をあえて切り捨
社が今年は主要技術展示エリアに移動していることを考えると、来年 て、設計への集中を選択したこ
はルネサスも展示場所を見直すのではないかと感じている。 とで、AMDの成長は大きく加速
したといえる。
NVIDIAが示した次世代AI基盤 ― MI���X GPUを示すDr. Lisa Su (AMD)
Vera Rubinとオープン戦略の真意
続いて、NVIDIAの記者会見について解説する。NVIDIAの記者会見 今回の発表でも、AMDはCPU、GPU、DPUに加え、「Ryzen」に代表
では、CEOのジェンスン・フアン氏は、恒例の革ジャン姿で1時間以上 される統合ユニットや「Ryzen AI」プラットフォームを示し、対応領域の
にわたる講演を行い、「Vera(CPU)」と「Rubin(GPU)」から成る新し 広さを強調していた。「緑(NVIDIA)一強ではない」という姿勢は明確
いプラットフォームを発表。また、それらに用いられているチップ構成 であった。
も公開された。
製品面では、近くMI���シリーズが投入され、2027年にはMI���シリー
フアン氏は2018年以来、講演 ズが登場した。この4年間で演算性能が1,000倍に向上するという説明は、
の場では一貫して黒い革ジャン 現在の半導体業界の異常ともいえるスピード感を象徴している。
を着用しているが、昨年からは ©2026 Koji Suginuma
「ラスベガス・スペシャル」と呼ば
れる特別仕様を用意している。
今年の革ジャンは、従来よりも光
沢のある点が特徴的であった。
Vera CPU と Rubin GPU を持つHuang CEO
2027年にはMI���シリーズが投入される MI���で急激な性能向上を見込む
今回発表された「Vera Rubin」シリーズは、中国向け輸出の可否で
も注目されている「Blackwell」シリーズを大きく上回る演算性能を持
つとされ、Rubin(GPU)は約5倍の演算能力を備えるという。ハード
ウェア性能の向上自体は想定の範囲内であるが、NVIDIAの特筆すべ
© Stockmark Inc.
NVIDIAとAMDの両社の講演を通じて感じたのは、AIバブルを決して に減少していた。以前はダブルトラックやトリプルトラック、つまり同一
崩壊させてはならないという強い意識である。AIおよび半導体分野に 時間帯に複数社の会見が並ぶことも珍しくなかったが、今年は2社同
投資資金が流れ続けることが不可欠であるとの認識が共有されてお 時が2回あったのみで、ほとんどがシングルトラックであった。中には
り、両社とも他社を否定するのではなく、「自社はここまで準備してい 記者会見が行われない時間帯も見られた。これはCES自体の価値が
る」という姿勢を示していた。その結果として、「この分野への投資を継 下がったというより、企業側が「CESという場で記者会見を行う意義」
続してほしい」というメッセージが、極めて明確に伝わってくる講演で を見直し始めた結果だと考えている。
あった。
また、「アンベールド」と呼ばれるイベントも開催されている。これは
AI半導体は「学習」から「実行」へ ― 10数年前から続くもので、展示会本番の2日前に行われる、いわば事
設計思想の転換とMIPSのRISC-V移行 前公開の場である。「自社はこうした製品を出す」という概要のみを紹
介する位置付けだ。
AI向け半導体は、昨年までは学習、いわゆるトレーニング重視の構
造が中心であったが、今年はNVIDIA、AMDの両社とも「実行重視」へ アンベールドでは、各社に公平に同じサイズの展示スペースが割り
と明確に軸足を移していると述べていた。一般にはインファレンスと 当てられる。基本は机一つ分で、その3時間半の出展に約7,600ドルが
呼ばれるが、ここではあえて「実行」と表現する。この流れはIntelも同 必要となる。今年は約200社が出展していたが、費用を支払ったにも
様である。Intelは2年前、当時のCEOであったパット・ゲルシンガー氏 かかわらず出展していない企業が20社ほど見受けられた。
が基調講演において、実行効率を最大限に重視した製品開発を行っ
ていると語っていた。現在はNVIDIA、AMD、Intelの3社すべてが、実行
重視の半導体設計へ移行していると見てよい。
ここで触れておきたい半導体
メーカーとして、MIPSがある。久
しぶりにその名を目にしたが、
MIPSはスタンフォード大学のヘ
ネシー教授の系譜に連なる企 そして、モビリティに関する基調講演の中で特に印象に残ったのが
業であり、RISCアーキテクチャ キャタピラーである。黄色いブルドーザーで知られる同社は、昨年この
という現代コンピューターの基 会場で創業100周年を祝ったが、今回はCEOのジョー・クリード氏が登
礎を築いた流れを汲んでいる。 壇した。
1990年代から2000年代半ばに
かけて、MIPSアーキテクチャは キャタピラーは現在、鉱山などの現場でレベル4の自動運転をすでに
世界的に広く使われており、ソニーのPlayStation�もこれを基盤とした 実用化している。同社は自動運転に早くから取り組んできた企業であ
構成であった。 り、米国国防総省のDARPAグランドチャレンジにも参加してきた。2006
年の大会では、スタンフォード大学とGoogleのチームが1位となった
しかし近年、その名前を耳にする機会が減っていた。MIPSは生き残り が、2位はキャタピラーとカーネギーメロン大学のチームであった。カー
をかけて、UCバークレーのパターソン教授の流れにあたるRISC-Vへと ネギーメロン大学はロボティクス研究で知られ、自動運転もその延長
切り替えていた。ヘネシー教授とパターソン教授は、ともにRISCアーキ 線上で進められてきた。
テクチャの提唱者として知られ、チューリング賞を共同受賞している。
その一方の流れが、もう一方に合流した形である。MIPSという名称は 私が米国で大学院生だった頃、同大学の研究者から、当時のAIは木
残っているものの、もはやMIPSアーキテクチャではなくRISC-Vを採用 の影を道路と誤認してしまい、テストのために木を切り倒したことがあ
している点に、時代の変化を強く感じた。現地でも「切り替えた」と明確 るという話を聞いたことがある。そうした試行錯誤の積み重ねが現在
に説明されていた。 につながっている。
このように半導体分野では大きな変化が進んでおり、AIについても キャタピラーが自動運転に注力する背景には、工事現場における事
着実に準備が進んでいることが確認できた。 故低減という明確な目的がある。同社は、建設現場の自動化はもはや
実験段階ではなく、「今年実現する技術」であると強調していた。
CESに見るモビリティ展示の変化と
キャタピラーが示す自動化の現在地 CESは「乗用車展示会」から
「 はたらくクルマ」の舞台へ ―
CESでは、記者会見、アンベールド(CES Unveiled)、基調講演など、 基調講演に見る変化
さまざまなイベントが用意されていた。
近年のCESでは、私が「はたらくクルマ」と呼んでいる分野の基調講
記者会見は2日間にわたって実施されたが、登壇企業数は明らか 演が確実に増えている。最初のきっかけは2017年、ジョンディアが大型
トラクターをサウスホールに展示したことだった。その後キャタピラー
が続き、昨年は日本の小松製作所も出展している。そして近年では、こ
れらの企業が基調講演の壇上に立つようになった。2023年はジョン
ディア、2024年はHyundai HD、����年はボルボ・トラックが基調講演
を行っている。
この流れから見えてくるのは、CESを単なる自動車展示会と捉える
のは正確ではないという点である。むしろ「はたらくクルマ」の展示会
と呼ぶ方が実態に近い。自動運転技術も、一部分野では実用化が視
野に入る段階まで到達している。2006年にグランドチャレンジを完走
したスタンレーが、2007年のセルゲイ・ブリン氏の基調講演で紹介さ
れた。それを起点とした流れは、着実にここまで進展してきた。
自動運転が注目を集め始めた7年後の2014年には、アウディが基 ジョンディアも継続して出展し、今年も自動運転技術を披露してい
調講演を行い、NVIDIAのジェンスン・フアン氏が登壇して「NVIDIAの た。一方のトラクターを人が操作し、もう一方が自動で追従する構成
チップで自動運転が可能だ」と説明していた。当時は黒いジャケット姿 で、距離を自動調整しながら収穫物を回収する。さらに工程ごとにAI
で、現在の革ジャン姿になるのはその数年後からである。フォードも同 が判断し、回転数などを最適化しているという。農業分野における自
様に自動運転を強く打ち出していたが、当時語られた「もうすぐ実現す 動化が着実に進んでいることが分かる。
る」という見通しは、実際には時間を要している。私自身は、本格的な
社会実装は2030年以降になると見ている。
こうした背景もあり、完成車メーカーはCESにほとんど姿を見せなく
なった。現在参加しているのはBMW程度であり、CESは車両そのもの
の展示会ではない。車載技術の展示は多いが、自動車展示会と誤解す
べきではない。なお、ソニー・ホンダモビリティが継続して出展している
のは、まだ製品が完成段階にないためであり、販売が始まれば出展し
なくなる可能性が高いと考えている。 キャタピラーもAIを活用した安全技術を紹介していた。上空に高圧
電線があるような危険な状況をAIが検知し、自動的に停止する仕組み
実用段階に入った賢い「はたらくクルマ」― である。また、米国バージニア州のラックストーン鉱山で稼働する自動
EV化と自動化が進む現場モビリティ 運転車両の様子を中継していた。4台の車両が自動で稼働し、採掘した
石を積み込み集積地へ運搬しており、無事故で36万マイルを走行して
一方で、「はたらくクルマ」の分野では出展企業がさらに増えている。
いると説明されていた。
昨年からはオシュコシュ(Oshkosh)が参加するようになった。同社は
米国でも著名な特殊車両・特装車の世界的メーカーであり、空港用の
化学消防車などを手がけている。日本でも自衛隊で使用されている高
性能車両であるが、近年はこれをバッテリーEV化している。
この消防車は、空港内で瞬時に現場へ向かう必要があるため高い
瞬発力が求められる一方、長距離走行は不要で、行動範囲も空港内
に限られる。消火後はタンクが空になり次第、消防基地に戻る運用で
あり、この動き方はEVとの相性が極めて良い。すでにテキサス州のダ
ラス・フォートワース国際空港に配備されているという。
日本企業では、昨年に続きクボタが出展した。モジュール交換によ かつてCESはコンシューマー向け展示が中心であったが、現在は
り多様な作業に対応できるプラットフォームや、既存の農機に自動運 産業用途や開発現場向けの技術展示が主流となっている。主催者、
転や作物分析機能を組み込んだモデルを展示していた。 出展企業ともに、CESはすでにプロフェッショナル向けの場であると
認識している。コンシューマー向け展示はベネチアン会場に集まり、
以上が賢い「はたらくクルマ」の事例である。次に、自動運転そのもの 専門技術はラスベガス・コンベンション・センターに集約されつつあ
の動向について見ていく。先ほどのジョンディアの事例は、農地内に限 ると感じている。
定された自動運転であった。
道路自動運転の現実解 ― 実用化に届かないフィジカルAIロボットと、
Waymo・Zooxと学習手法の進化、SDVへの移行 「 Dragonwing」が示す現実的アプローチ
最後にフィジカルAIロボットについて触れるが、率直に言えば、現
次に、道路における自動運転についてである。完成車として実際に
状では多くが実用段階には達していないと感じた。これらに本格的
運用されている例としては、ZooxとWaymoが挙げられる。Zooxは
な投資を行う意義は乏しいというのが正直な印象である。例えばLG
Amazon系列、WaymoはGoogle系の企業であり、いずれもCESに出
展していた。 電子は、家事支援を掲げたロボットを展示していたが、シャツ1枚を
洗濯機に入れるだけで30秒を要していた。さらに、洗濯後に絡まっ
た衣類を取り出す動作は示されておらず、その段階には至っていない。
Waymoは今回、第5世代の「ドライバー」を投入した。ここでいう
ドライバーとは人ではなく、車両に搭載されたセンサー、センサーユ
ニット、コンピューターを統合したシステム全体を指す。第4世代は多 また、中国企業ではUnitreeなどが二足歩行ロボットによるボク
段構造であったが、第5世代は「座布団の上にお茶碗が載っているよ シングのデモンストレーションを行っていたが、これらのロボットは
うな」形状となり、外観が大きく変化している。 実際には物を持ち上げることができない。構造上、40kgや50kgの
重量物を扱おうとすれば転倒してしまう。物を持てないロボットは
Waymoの担当者によれば、同社が受け入れられている理由は 実用性に欠け、特に産業用途では成立しない。
「安心して乗れる」点にあるという。プライバシーが確保され、車内
で自由に振る舞えることが利用者に評価されている。Zooxについて
も、街中で実際に走行している様子を確認しており、すでにサービス
として運用されている。
また、自動運転の学習手法も変化している。以前は走行距離が安
全性の指標とされたが、現在はCGを用いた学習が主流になりつつ
ある。実写を基に高精度な3D空間を再現し、実走行では再現できな
い事故状況も仮想空間で学習可能となった。英国のWayveなどがこ
の手法を採用している。
二足歩行にこだわるよりも、車輪移動で、柱状の構造に両腕を
また、イスラエルのImagryも出展していた。同社は高精度マップ
備えたロボットの方が現実的である。ダンスはソニーが25年前に
やエンドツーエンド型に依存しない独自方式を採用し、自動運転バ
QRIOで実現しており、走行も本田技研工業がすでに達成している。
スで世界各地に実績を持つ。特定のハードウェアに依存せず、柔軟
こうした歴史を踏まえると、現在展示されている多くのロボットは、
に動作する点を特徴としていた。
やはり娯楽的な存在にとどまっている。本当に産業に必要なロボッ
車載技術では「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」という トとは何かを、改めて冷静に考える必要があるだろう。
言葉が広く使われている。今回、シーメンスはデジタルツインとAIを
一方で、今回特に注目すべき動きとしてQualcommが挙げられ
組み合わせ、すべてを仮想空間で検証した上で実車に反映する仕組
る。同社は米国の大手半導体メーカーであるが、単なる半導体販
み「PAVE���」を提案していた。
売にとどまらず、ソリューション提供型のビジネスへと踏み出して
いる。この取り組みを同社は「Dragonwing」と呼んでいる。 ていないように見受けられた。さらに深刻なのは、認証取得に必
要なコストや、その後の投資回収についての理解が不足している
点である。多額の開発費を投じた後、どのように事業として成立
させるのかというビジネスプランが見えてこない。これは先行者
を含め、市場性そのものに対しても疑問を抱かざるを得ない状況
である。
CESの現在地 ―
自動化・実行重視へ向かう産業構造の転換
ここまでを踏まえて状況をまとめると、アドバンスド・モビリティ
全体として大きな新提案は見られなかった。自動運転は依然とし
て難易度が高いものの、工場敷地内や鉱山のように環境が制御
された場所では、すでに実用段階に入っている。我々の立場で考
えれば、工場内外での簡易な搬送や配達、生産ラインへの定期的
な物資供給などは、自動化・ロボット化が十分可能であり、従来の
AGV(無人搬送車)を超える展開が期待できる。
Qualcommは自動運転を含む幅広い分野に関わっており、
スマートフォンに搭載されるモデムの6~7割を同社製が占め AI分野では、Qualcommが前面に出てきたことが最大のトピッ
るなど、通信分野で圧倒的な強みを持つ企業である。加えてAI分 クである。同社は半導体販売にとどまらず、AIの開発成果そのものを
野でも高い技術力を有しており、そのQualcommがハードウェア 提供するビジネスへと舵を切った、これは大きな転換点といえる。大規
ではなくAIソリューションを前面に押し出し始めた点は非常に示 模言語モデルについても、キャタピラーの事例が示すように、利用を意
唆的である。 識させない形で製品やサービスに組み込まれていく流れになるだろ
う。
Dragonwing自体は昨年2月に発表されていたが、今回の
CESでは初めて具体的な形として示された。ロボットへの応用 総じてCESは、もはや消費者向け製品の展示会ではない。新型家電
や、冷蔵庫などの家電にDragonwingプロセッサーを組み込み、 を披露する場ではなく、プロフェッショナル向けツールと技術を示し、
Qualcommの技術がどのように価値を生み出すかが紹介されて 企業同士がその場で具体的な連携や交渉を行う場へと変化している。
いた。 モビリティも自動化のための手段として再定義され、半導体は学習重
視から実行重視へと移行している。これこそが、今回のCESを象徴する
空飛ぶクルマの現実 ― 大きな動きであった。
技術展示と事業性の大きな乖離 まとめ
最後に空飛ぶクルマについて触れるが、現時点で展示されて CES ����では、AIと半導体、アドバンスド・モビリティが相互に結び
いるものは、正直に言えば事業性が極めて疑わしい。今回展示さ 付き、産業構造が「構想」から「実行」へと明確に移行している姿が示さ
れていた、ある国の自動車部品メーカーの機体も、人目を引くた れた。自動運転や現場モビリティは制御環境下では実用段階に入り、
めの演出に過ぎず、実際の事業につながるとは考えにくい。プラ 半導体も学習重視から実行重視へと設計思想を転換しつつある。
スチック射出成形メーカーによる展示も同様である。すでに開発
が進んでいる先行企業と、今になって参入してきた企業との間に これらの動向は、製造業やモビリティ産業のみならず、あらゆる産業
は大きな隔たりがある。 の競争環境を左右する基盤変化である。だからこそ、AIや半導体といっ
た、最新技術の世界的潮流を継続的に把握し、自社にどう影響するの
かを冷静に見極める視点が不可欠だ。
情報は受動的に収集するのではなく、自ら意識して収集することが
重要だ。また、国内だけでなく、海外の動向も俯瞰し、世界的な動きか
ら判断することが、今後の技術戦略と事業判断を大きく左右するといっ
ても過言ではないだろう。
先行企業は早ければ年内にも商業運航の認証取得が視野に
入っているが、今回展示していた企業の多くは、その入口にも立っ
Page4
CES ����を読み解く― 飛行体や地上交通を含む「飛ぶもの」を長年見てきた。この視点は、後
モビリティ・AI・半導体を軸にした最新動向と 半で触れる空飛ぶクルマの議論にも関係してくる。
講演者の経歴
ラスベガスおよび展示会との関わりも長い。先日、自宅で1987年の
本日は「CES ���� 最新報告会」として、1月6日から1月9日に開催 展示会資料を見つけた。当時はCESよりもCOMDEXがコンピューター
されたCESにおける動向について報告する。特に、モビリティ分野を中 分野の中心的な展示会であり、ラスベガス・コンベンションセンターで
心に、AIおよび半導体に関する動きを解説したい。 開催されていた。当時は、自ら開発したマルチメディア・オーサリングシ
ステムを展示している。資料を見返し、40年近く展示会に関わり続けて
私(杉沼 浩司氏)は日本大学生産工学部・自動車工学リサーチセン きたことを改めて実感した。
ターの客員研究員を務めている。専門は電気・計算機工学で、博士号
は米国カリフォルニア大学で取得。現在は、日本大学において自動車 CES ����の全体像 ―
工学および数理情報工学、すなわち情報工学・コンピューターサイエ 会場刷新と開催構造の変化、
ンス分野の教育に携わっている。研究領域としては、コンピューターサ 来場者・出展動向から見る転換点
イエンスというより、コンピューターエンジニアリング、すなわち「コン
ピューターの作り方」に近い分野を専門としてきた。 まず会場について触れておきたい。こちらは最も歴史のあるラスベ
ガス・コンベンションセンターであり、セントラル・コリドア、いわゆるグ
研究の原点はコンピューターグラフィックス(CG)である。高品質か ランドロビーにあたるエリアが大きく改修された。昨年は工事中で完
つ高速なCGを実現するためには、計算機そのものの設計が不可欠で 成形が見えなかったが、今年は屋根を備えた新しいロビーとして整備
あり、その過程で半導体技術へと研究領域が広がっていった。すべては されている。
CGを高度化するための取り組みであり、その周辺技術として無線通信
や信号処理にも関わってきた。
また、趣味として航空分野にも深く関わっている。実際に操縦を行
い、教官資格も持つ。ドローンについてはヨーロッパのプロ操縦士資
格を保有している。無線資格も取得しており、操縦者という立場から、
また、2022年から使用されているウエストホールは曲線を活かした そして、今年のCESの来場者数は約14万8,000人であり、非常に多
建築が特徴であり、そのデザインの流れが既存施設にも連続すること い水準であった。コロナ以前は約17万人が来場していたが、そこへむ
で、波打つような一体感のある大型コンベンションセンターが完成し けて着実に回復していることが分かる。ただし、17万人規模になると
た。CES ����は、この新しい会場で初めて開催された展示会である。 会場内の混雑が激しく、歩行すら困難になる。展示会としての評価が
下がる要因にもなり、実際、かつて私が出展していたCOMDEXは、来
CESの主催者はコンシューマー・テクノロジー・アソシエーション 場者過多により出展者から敬遠され、それが原因で最終的に消滅し
(CTA)で、かつては家電を中心とした団体であったが、現在は「一般の たといえる。CESの主催者も、同様の事態を避けようとしているように
人々が利用するあらゆる技術」を対象とする組織へと変化している。イ 見受けられる。
ベント名についても、2010年頃から主催者は「コンシューマー・エレク
トロニクス・ショー」ではなく、「CES」という呼称を正式に用いるよう求 一方で、出展社数は前年から約400社減少しており、これは全体の
めてきた。近年になり、メディアでも家電の展示会ではなく「最新技術 約1割に相当する。特に減少が顕著なのが、スタートアップ専用エリア
の展示会」として認識され始めている。 であるユーレカパークであり、減少分の約半分を、ユーレカパークの出
展企業が占めている。新興企業の間では、「ラスベガスまで行ってCES
現在、CESはラスベガス市内の3か所で開催されている。ラスベガ に出展しても意味がない」と判断する動きが出始めていると言えるの
ス・コンベンションセンターでは、モビリティ、IoT、AIなど、特に半導体 ではないだろうか。
技術と密接に関わる分野が中心である。一方、ベネチアン・エキスポ・
センターでは、ライフテクノロジー、ホームテクノロジー、ヘルステクノ こうした状況を踏まえると、来年もCESに出展するという判断や、
ロジーに加え、新興スタートアップの展示が集約されている。 CES出展を支援する事業の妥当性について、改めて検討すべき時期
に来ていると感じる。
さらに、アリア周辺の「Cスペース地区」では、マーケティングや広告
関連技術が扱われている。ただし、会期の制約もあり、今回はこのエリ また、会場の外観や雰囲気だけでなく、内部の演出も変わっている。
アを訪れていない。そのため、本講演では主に前述の2会場に絞って報 2024年は旧ロゴを使用した最後の年であり、昨年からは新しいロゴに
告する。 変更された。また、象徴的なアーチ構造は継続して使用されているも
のの、設置場所が手前に移動したことで、必ずしも全来場者が通過す
るものではなくなった。その結果、アーチの役割や位置付けも変化して
きたと感じている。
CESにおける半導体企業の存在感 ―
主役へと変貌する基盤技術プレイヤー
はじめに、半導体企業の動向について触れていく。CESにはNVIDIA
だけでなく、多くの半導体メーカーが参加している。かつてCESは「コ
ンシューマー・エレクトロニクス・ショー」、すなわち家電の展示会であ
り、半導体メーカーが前面に出る場ではなかった。しかし半導体は、あ
らゆる製品を支える基盤技術であり、その重要性から、以前から存在
感を示してきた企業として、アメリカのクアルコム(Qualcomm)やイ
ンテルが挙げられる。
今年はNVIDIAが基調講演ではなく、大規模な記者会見という形で
存在感を示した。形式上は記者会見であるが、一般参加者も含めた
実質的な単独イベントであり、約6,000人を集めてCESの会場の一つ
である近隣ホテルで開催された。なおNVIDIAは、2日間限定の「CES
Foundry」にも大きく出展していたが、別会場であったため私は訪問
できなかった。
AMDは基調講演とベネチアン地区のベネチアンホテル内ミーティ き点は、関連ツールやモデルを積極的にオープンソースで公開してい
ングルームで展示を行っていた。GPUを軸にAI分野で成長してきた る点にある。さらに、学習に用いたデータの内容まで明らかにするな
NVIDIAに対し、AMDはIntel互換CPUメーカーとして出発し、近年は ど、透明性を強く意識した姿勢が貫かれている。これらのツールは研
GPUやNPUといったAI向けプロセッサにも注力している。その結果、 究者の間でも広く利用されており、実務上も価値が高い。
演算系においてはオールラウンドな半導体メーカーになりつつある。
講演全体を通じて、AIの進化には依然としてハードウェアの進歩が
インテルはこれまで何度も基調講演を担当してきたが、近年はやや 不可欠であるというメッセージが強く感じられた。明確な言葉では語ら
控えめな印象で、今年はミーティングルームでの展示にとどまってい れなかったものの、「ハードウェアが進化しなければAIは本格的に活用
た。Samsung電子は、従来ラスベガス・コンベンションセンターのセン できない」という認識が随所に示されていた。また、近年NVIDIAが注力
トラルホールで大規模展示を行ってきたが、今年は会場を移し、Wynn している「フィジカルAI」の文脈でロボット展示も行われたが、過度に期
ホテル内で展示を実施した。なお、WynnもCESの正式会場の一つで 待を煽る演出はなく、現状を踏まえた堅実な見せ方であった点が印象
ある。 に残った。
そのほか、オランダの大手半導体メーカーであるNXPも出展してい AMDが描く設計集中戦略と
た。NXPはCPUや組み込み向けプロセッサ、画像処理など幅広い製 AI時代の成長シナリオ
品を手がける企業であり、自動車向け半導体の逼迫で話題となった
「Nexperia」とは別会社である。今年はラスベガス・コンベンションセ AMDはCPUに加え、GPUやDPUなど多様な演算ユニットを手がけ
ンターの駐車場に2階建ての大型ブースを設け、もはやブースという る、オールラウンドな半導体メーカーである。今回、AMDの発表を行っ
より建物に近い規模で展示を行っていた。 たCEOのリサ・スー氏は、半導体の製造技術で博士号を取得した技術
者であり、その経歴が同氏を極めて優れた経営者にしていると感じて
さらに、メモリメーカーのSKハイニックス、汎用マイクロプロセッサ いる。設計ではなく量産を含む製造技術を専門としてきた人物が、自
で知られるマイクロチップ、CPUアーキテクチャを提供するARM、日本 社の半導体工場を手放し、製造
企業ではルネサスも出展していた。ただし、ルネサスのブースは小型 を外部委託へ切り替える決断を
アクセサリー系企業が集まるエリアに配置されており、技術や部品を 下した点は特筆すべきである。
訴求する場としては疑問がある。昨年、同様の場所に出展していた他 自らの専門分野をあえて切り捨
社が今年は主要技術展示エリアに移動していることを考えると、来年 て、設計への集中を選択したこ
はルネサスも展示場所を見直すのではないかと感じている。 とで、AMDの成長は大きく加速
したといえる。
NVIDIAが示した次世代AI基盤 ―
Vera Rubinとオープン戦略の真意
続いて、NVIDIAの記者会見について解説する。NVIDIAの記者会見 今回の発表でも、AMDはCPU、GPU、DPUに加え、「Ryzen」に代表
では、CEOのジェンスン・フアン氏は、恒例の革ジャン姿で1時間以上 される統合ユニットや「Ryzen AI」プラットフォームを示し、対応領域の
にわたる講演を行い、「Vera(CPU)」と「Rubin(GPU)」から成る新し 広さを強調していた。「緑(NVIDIA)一強ではない」という姿勢は明確
いプラットフォームを発表。また、それらに用いられているチップ構成 であった。
も公開された。
製品面では、近くMI���シリーズが投入され、2027年にはMI���シリー
フアン氏は2018年以来、講演 ズが登場した。この4年間で演算性能が1,000倍に向上するという説明は、
の場では一貫して黒い革ジャン 現在の半導体業界の異常ともいえるスピード感を象徴している。
を着用しているが、昨年からは
「ラスベガス・スペシャル」と呼ば
れる特別仕様を用意している。
今年の革ジャンは、従来よりも光
沢のある点が特徴的であった。
今回発表された「Vera Rubin」シリーズは、中国向け輸出の可否で
も注目されている「Blackwell」シリーズを大きく上回る演算性能を持
つとされ、Rubin(GPU)は約5倍の演算能力を備えるという。ハード
ウェア性能の向上自体は想定の範囲内であるが、NVIDIAの特筆すべ
NVIDIAとAMDの両社の講演を通じて感じたのは、AIバブルを決して に減少していた。以前はダブルトラックやトリプルトラック、つまり同一
崩壊させてはならないという強い意識である。AIおよび半導体分野に 時間帯に複数社の会見が並ぶことも珍しくなかったが、今年は2社同
投資資金が流れ続けることが不可欠であるとの認識が共有されてお 時が2回あったのみで、ほとんどがシングルトラックであった。中には
り、両社とも他社を否定するのではなく、「自社はここまで準備してい 記者会見が行われない時間帯も見られた。これはCES自体の価値が
る」という姿勢を示していた。その結果として、「この分野への投資を継 下がったというより、企業側が「CESという場で記者会見を行う意義」
続してほしい」というメッセージが、極めて明確に伝わってくる講演で を見直し始めた結果だと考えている。
あった。
また、「アンベールド」と呼ばれるイベントも開催されている。これは
AI半導体は「学習」から「実行」へ ― 10数年前から続くもので、展示会本番の2日前に行われる、いわば事
設計思想の転換とMIPSのRISC-V移行 前公開の場である。「自社はこうした製品を出す」という概要のみを紹
介する位置付けだ。
AI向け半導体は、昨年までは学習、いわゆるトレーニング重視の構
造が中心であったが、今年はNVIDIA、AMDの両社とも「実行重視」へ アンベールドでは、各社に公平に同じサイズの展示スペースが割り
と明確に軸足を移していると述べていた。一般にはインファレンスと 当てられる。基本は机一つ分で、その3時間半の出展に約7,600ドルが
呼ばれるが、ここではあえて「実行」と表現する。この流れはIntelも同 必要となる。今年は約200社が出展していたが、費用を支払ったにも
様である。Intelは2年前、当時のCEOであったパット・ゲルシンガー氏 かかわらず出展していない企業が20社ほど見受けられた。
が基調講演において、実行効率を最大限に重視した製品開発を行っ ©2026 Koji Suginuma
ていると語っていた。現在はNVIDIA、AMD、Intelの3社すべてが、実行
重視の半導体設計へ移行していると見てよい。
ここで触れておきたい半導体
メーカーとして、MIPSがある。久
しぶりにその名を目にしたが、
MIPSはスタンフォード大学のヘ 約200社が並んだCES Unveiled 独自NPUを開発した仏ASYGN
ネシー教授の系譜に連なる企 そして、モビリティに関する基調講演の中で特に印象に残ったのが
業であり、RISCアーキテクチャ キャタピラーである。黄色いブルドーザーで知られる同社は、昨年この
という現代コンピューターの基 会場で創業100周年を祝ったが、今回はCEOのジョー・クリード氏が登
礎を築いた流れを汲んでいる。 壇した。
1990年代から2000年代半ばに
かけて、MIPSアーキテクチャは キャタピラーは現在、鉱山などの現場でレベル4の自動運転をすでに
世界的に広く使われており、ソニーのPlayStation�もこれを基盤とした 実用化している。同社は自動運転に早くから取り組んできた企業であ
構成であった。 り、米国国防総省のDARPAグランドチャレンジにも参加してきた。2006
年の大会では、スタンフォード大学とGoogleのチームが1位となった
しかし近年、その名前を耳にする機会が減っていた。MIPSは生き残り が、2位はキャタピラーとカーネギーメロン大学のチームであった。カー
をかけて、UCバークレーのパターソン教授の流れにあたるRISC-Vへと ネギーメロン大学はロボティクス研究で知られ、自動運転もその延長
切り替えていた。ヘネシー教授とパターソン教授は、ともにRISCアーキ 線上で進められてきた。
テクチャの提唱者として知られ、チューリング賞を共同受賞している。
その一方の流れが、もう一方に合流した形である。MIPSという名称は 私が米国で大学院生だった頃、同大学の研究者から、当時のAIは木
残っているものの、もはやMIPSアーキテクチャではなくRISC-Vを採用 の影を道路と誤認してしまい、テストのために木を切り倒したことがあ
している点に、時代の変化を強く感じた。現地でも「切り替えた」と明確 るという話を聞いたことがある。そうした試行錯誤の積み重ねが現在
に説明されていた。 につながっている。
このように半導体分野では大きな変化が進んでおり、AIについても キャタピラーが自動運転に注力する背景には、工事現場における事
着実に準備が進んでいることが確認できた。 故低減という明確な目的がある。同社は、建設現場の自動化はもはや
実験段階ではなく、「今年実現する技術」であると強調していた。
CESに見るモビリティ展示の変化と
キャタピラーが示す自動化の現在地 CESは「乗用車展示会」から
「 はたらくクルマ」の舞台へ ―
CESでは、記者会見、アンベールド(CES Unveiled)、基調講演など、 基調講演に見る変化
さまざまなイベントが用意されていた。
近年のCESでは、私が「はたらくクルマ」と呼んでいる分野の基調講
記者会見は2日間にわたって実施されたが、登壇企業数は明らか 演が確実に増えている。最初のきっかけは2017年、ジョンディアが大型
© Stockmark Inc.
トラクターをサウスホールに展示したことだった。その後キャタピラー
が続き、昨年は日本の小松製作所も出展している。そして近年では、こ
れらの企業が基調講演の壇上に立つようになった。2023年はジョン
ディア、2024年はHyundai HD、����年はボルボ・トラックが基調講演
を行っている。
この流れから見えてくるのは、CESを単なる自動車展示会と捉える
のは正確ではないという点である。むしろ「はたらくクルマ」の展示会
と呼ぶ方が実態に近い。自動運転技術も、一部分野では実用化が視
野に入る段階まで到達している。2006年にグランドチャレンジを完走
したスタンレーが、2007年のセルゲイ・ブリン氏の基調講演で紹介さ
れた。それを起点とした流れは、着実にここまで進展してきた。
自動運転が注目を集め始めた7年後の2014年には、アウディが基 ジョンディアも継続して出展し、今年も自動運転技術を披露してい
調講演を行い、NVIDIAのジェンスン・フアン氏が登壇して「NVIDIAの た。一方のトラクターを人が操作し、もう一方が自動で追従する構成
チップで自動運転が可能だ」と説明していた。当時は黒いジャケット姿 で、距離を自動調整しながら収穫物を回収する。さらに工程ごとにAI
で、現在の革ジャン姿になるのはその数年後からである。フォードも同 が判断し、回転数などを最適化しているという。農業分野における自
様に自動運転を強く打ち出していたが、当時語られた「もうすぐ実現す 動化が着実に進んでいることが分かる。
る」という見通しは、実際には時間を要している。私自身は、本格的な
社会実装は2030年以降になると見ている。
こうした背景もあり、完成車メーカーはCESにほとんど姿を見せなく
なった。現在参加しているのはBMW程度であり、CESは車両そのもの
の展示会ではない。車載技術の展示は多いが、自動車展示会と誤解す
べきではない。なお、ソニー・ホンダモビリティが継続して出展している
のは、まだ製品が完成段階にないためであり、販売が始まれば出展し
なくなる可能性が高いと考えている。 キャタピラーもAIを活用した安全技術を紹介していた。上空に高圧
電線があるような危険な状況をAIが検知し、自動的に停止する仕組み
実用段階に入った賢い「はたらくクルマ」― である。また、米国バージニア州のラックストーン鉱山で稼働する自動
EV化と自動化が進む現場モビリティ 運転車両の様子を中継していた。4台の車両が自動で稼働し、採掘した
石を積み込み集積地へ運搬しており、無事故で36万マイルを走行して
一方で、「はたらくクルマ」の分野では出展企業がさらに増えている。
いると説明されていた。
昨年からはオシュコシュ(Oshkosh)が参加するようになった。同社は
米国でも著名な特殊車両・特装車の世界的メーカーであり、空港用の
化学消防車などを手がけている。日本でも自衛隊で使用されている高
性能車両であるが、近年はこれをバッテリーEV化している。
この消防車は、空港内で瞬時に現場へ向かう必要があるため高い
瞬発力が求められる一方、長距離走行は不要で、行動範囲も空港内
に限られる。消火後はタンクが空になり次第、消防基地に戻る運用で
あり、この動き方はEVとの相性が極めて良い。すでにテキサス州のダ
ラス・フォートワース国際空港に配備されているという。
日本企業では、昨年に続きクボタが出展した。モジュール交換によ かつてCESはコンシューマー向け展示が中心であったが、現在は
り多様な作業に対応できるプラットフォームや、既存の農機に自動運 産業用途や開発現場向けの技術展示が主流となっている。主催者、
転や作物分析機能を組み込んだモデルを展示していた。 出展企業ともに、CESはすでにプロフェッショナル向けの場であると
認識している。コンシューマー向け展示はベネチアン会場に集まり、
以上が賢い「はたらくクルマ」の事例である。次に、自動運転そのもの 専門技術はラスベガス・コンベンション・センターに集約されつつあ
の動向について見ていく。先ほどのジョンディアの事例は、農地内に限 ると感じている。
定された自動運転であった。
道路自動運転の現実解 ― 実用化に届かないフィジカルAIロボットと、
Waymo・Zooxと学習手法の進化、SDVへの移行 「 Dragonwing」が示す現実的アプローチ
最後にフィジカルAIロボットについて触れるが、率直に言えば、現
次に、道路における自動運転についてである。完成車として実際に
状では多くが実用段階には達していないと感じた。これらに本格的
運用されている例としては、ZooxとWaymoが挙げられる。Zooxは
な投資を行う意義は乏しいというのが正直な印象である。例えばLG
Amazon系列、WaymoはGoogle系の企業であり、いずれもCESに出
展していた。 電子は、家事支援を掲げたロボットを展示していたが、シャツ1枚を
洗濯機に入れるだけで30秒を要していた。さらに、洗濯後に絡まっ
た衣類を取り出す動作は示されておらず、その段階には至っていない。
Waymoは今回、第5世代の「ドライバー」を投入した。ここでいう
ドライバーとは人ではなく、車両に搭載されたセンサー、センサーユ
ニット、コンピューターを統合したシステム全体を指す。第4世代は多 また、中国企業ではUnitreeなどが二足歩行ロボットによるボク
段構造であったが、第5世代は「座布団の上にお茶碗が載っているよ シングのデモンストレーションを行っていたが、これらのロボットは
うな」形状となり、外観が大きく変化している。 実際には物を持ち上げることができない。構造上、40kgや50kgの
重量物を扱おうとすれば転倒してしまう。物を持てないロボットは
Waymoの担当者によれば、同社が受け入れられている理由は 実用性に欠け、特に産業用途では成立しない。
「安心して乗れる」点にあるという。プライバシーが確保され、車内
で自由に振る舞えることが利用者に評価されている。Zooxについて
も、街中で実際に走行している様子を確認しており、すでにサービス
として運用されている。
また、自動運転の学習手法も変化している。以前は走行距離が安
全性の指標とされたが、現在はCGを用いた学習が主流になりつつ
ある。実写を基に高精度な3D空間を再現し、実走行では再現できな
い事故状況も仮想空間で学習可能となった。英国のWayveなどがこ
の手法を採用している。
二足歩行にこだわるよりも、車輪移動で、柱状の構造に両腕を
また、イスラエルのImagryも出展していた。同社は高精度マップ
備えたロボットの方が現実的である。ダンスはソニーが25年前に
やエンドツーエンド型に依存しない独自方式を採用し、自動運転バ
QRIOで実現しており、走行も本田技研工業がすでに達成している。
スで世界各地に実績を持つ。特定のハードウェアに依存せず、柔軟
こうした歴史を踏まえると、現在展示されている多くのロボットは、
に動作する点を特徴としていた。
やはり娯楽的な存在にとどまっている。本当に産業に必要なロボッ
車載技術では「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」という トとは何かを、改めて冷静に考える必要があるだろう。
言葉が広く使われている。今回、シーメンスはデジタルツインとAIを
一方で、今回特に注目すべき動きとしてQualcommが挙げられ
組み合わせ、すべてを仮想空間で検証した上で実車に反映する仕組
る。同社は米国の大手半導体メーカーであるが、単なる半導体販
み「PAVE���」を提案していた。
売にとどまらず、ソリューション提供型のビジネスへと踏み出して
いる。この取り組みを同社は「Dragonwing」と呼んでいる。 ていないように見受けられた。さらに深刻なのは、認証取得に必
要なコストや、その後の投資回収についての理解が不足している
点である。多額の開発費を投じた後、どのように事業として成立
させるのかというビジネスプランが見えてこない。これは先行者
を含め、市場性そのものに対しても疑問を抱かざるを得ない状況
である。
CESの現在地 ―
自動化・実行重視へ向かう産業構造の転換
ここまでを踏まえて状況をまとめると、アドバンスド・モビリティ
全体として大きな新提案は見られなかった。自動運転は依然とし
て難易度が高いものの、工場敷地内や鉱山のように環境が制御
された場所では、すでに実用段階に入っている。我々の立場で考
えれば、工場内外での簡易な搬送や配達、生産ラインへの定期的
な物資供給などは、自動化・ロボット化が十分可能であり、従来の
AGV(無人搬送車)を超える展開が期待できる。
Qualcommは自動運転を含む幅広い分野に関わっており、
スマートフォンに搭載されるモデムの6~7割を同社製が占め AI分野では、Qualcommが前面に出てきたことが最大のトピッ
るなど、通信分野で圧倒的な強みを持つ企業である。加えてAI分 クである。同社は半導体販売にとどまらず、AIの開発成果そのものを
野でも高い技術力を有しており、そのQualcommがハードウェア 提供するビジネスへと舵を切った、これは大きな転換点といえる。大規
ではなくAIソリューションを前面に押し出し始めた点は非常に示 模言語モデルについても、キャタピラーの事例が示すように、利用を意
唆的である。 識させない形で製品やサービスに組み込まれていく流れになるだろ
う。
Dragonwing自体は昨年2月に発表されていたが、今回の
CESでは初めて具体的な形として示された。ロボットへの応用 総じてCESは、もはや消費者向け製品の展示会ではない。新型家電
や、冷蔵庫などの家電にDragonwingプロセッサーを組み込み、 を披露する場ではなく、プロフェッショナル向けツールと技術を示し、
Qualcommの技術がどのように価値を生み出すかが紹介されて 企業同士がその場で具体的な連携や交渉を行う場へと変化している。
いた。 モビリティも自動化のための手段として再定義され、半導体は学習重
視から実行重視へと移行している。これこそが、今回のCESを象徴する
空飛ぶクルマの現実 ― 大きな動きであった。
技術展示と事業性の大きな乖離 まとめ
最後に空飛ぶクルマについて触れるが、現時点で展示されて CES ����では、AIと半導体、アドバンスド・モビリティが相互に結び
いるものは、正直に言えば事業性が極めて疑わしい。今回展示さ 付き、産業構造が「構想」から「実行」へと明確に移行している姿が示さ
れていた、ある国の自動車部品メーカーの機体も、人目を引くた れた。自動運転や現場モビリティは制御環境下では実用段階に入り、
めの演出に過ぎず、実際の事業につながるとは考えにくい。プラ 半導体も学習重視から実行重視へと設計思想を転換しつつある。
スチック射出成形メーカーによる展示も同様である。すでに開発
が進んでいる先行企業と、今になって参入してきた企業との間に これらの動向は、製造業やモビリティ産業のみならず、あらゆる産業
は大きな隔たりがある。 の競争環境を左右する基盤変化である。だからこそ、AIや半導体といっ
た、最新技術の世界的潮流を継続的に把握し、自社にどう影響するの
かを冷静に見極める視点が不可欠だ。
情報は受動的に収集するのではなく、自ら意識して収集することが
重要だ。また、国内だけでなく、海外の動向も俯瞰し、世界的な動きか
ら判断することが、今後の技術戦略と事業判断を大きく左右するといっ
ても過言ではないだろう。
先行企業は早ければ年内にも商業運航の認証取得が視野に
入っているが、今回展示していた企業の多くは、その入口にも立っ
Page5
CES ����を読み解く― 飛行体や地上交通を含む「飛ぶもの」を長年見てきた。この視点は、後
モビリティ・AI・半導体を軸にした最新動向と 半で触れる空飛ぶクルマの議論にも関係してくる。
講演者の経歴
ラスベガスおよび展示会との関わりも長い。先日、自宅で1987年の
本日は「CES ���� 最新報告会」として、1月6日から1月9日に開催 展示会資料を見つけた。当時はCESよりもCOMDEXがコンピューター
されたCESにおける動向について報告する。特に、モビリティ分野を中 分野の中心的な展示会であり、ラスベガス・コンベンションセンターで
心に、AIおよび半導体に関する動きを解説したい。 開催されていた。当時は、自ら開発したマルチメディア・オーサリングシ
ステムを展示している。資料を見返し、40年近く展示会に関わり続けて
私(杉沼 浩司氏)は日本大学生産工学部・自動車工学リサーチセン きたことを改めて実感した。
ターの客員研究員を務めている。専門は電気・計算機工学で、博士号
は米国カリフォルニア大学で取得。現在は、日本大学において自動車 CES ����の全体像 ―
工学および数理情報工学、すなわち情報工学・コンピューターサイエ 会場刷新と開催構造の変化、
ンス分野の教育に携わっている。研究領域としては、コンピューターサ 来場者・出展動向から見る転換点
イエンスというより、コンピューターエンジニアリング、すなわち「コン
ピューターの作り方」に近い分野を専門としてきた。 まず会場について触れておきたい。こちらは最も歴史のあるラスベ
ガス・コンベンションセンターであり、セントラル・コリドア、いわゆるグ
研究の原点はコンピューターグラフィックス(CG)である。高品質か ランドロビーにあたるエリアが大きく改修された。昨年は工事中で完
つ高速なCGを実現するためには、計算機そのものの設計が不可欠で 成形が見えなかったが、今年は屋根を備えた新しいロビーとして整備
あり、その過程で半導体技術へと研究領域が広がっていった。すべては されている。
CGを高度化するための取り組みであり、その周辺技術として無線通信
や信号処理にも関わってきた。
また、趣味として航空分野にも深く関わっている。実際に操縦を行
い、教官資格も持つ。ドローンについてはヨーロッパのプロ操縦士資
格を保有している。無線資格も取得しており、操縦者という立場から、
また、2022年から使用されているウエストホールは曲線を活かした そして、今年のCESの来場者数は約14万8,000人であり、非常に多
建築が特徴であり、そのデザインの流れが既存施設にも連続すること い水準であった。コロナ以前は約17万人が来場していたが、そこへむ
で、波打つような一体感のある大型コンベンションセンターが完成し けて着実に回復していることが分かる。ただし、17万人規模になると
た。CES ����は、この新しい会場で初めて開催された展示会である。 会場内の混雑が激しく、歩行すら困難になる。展示会としての評価が
下がる要因にもなり、実際、かつて私が出展していたCOMDEXは、来
CESの主催者はコンシューマー・テクノロジー・アソシエーション 場者過多により出展者から敬遠され、それが原因で最終的に消滅し
(CTA)で、かつては家電を中心とした団体であったが、現在は「一般の たといえる。CESの主催者も、同様の事態を避けようとしているように
人々が利用するあらゆる技術」を対象とする組織へと変化している。イ 見受けられる。
ベント名についても、2010年頃から主催者は「コンシューマー・エレク
トロニクス・ショー」ではなく、「CES」という呼称を正式に用いるよう求 一方で、出展社数は前年から約400社減少しており、これは全体の
めてきた。近年になり、メディアでも家電の展示会ではなく「最新技術 約1割に相当する。特に減少が顕著なのが、スタートアップ専用エリア
の展示会」として認識され始めている。 であるユーレカパークであり、減少分の約半分を、ユーレカパークの出
展企業が占めている。新興企業の間では、「ラスベガスまで行ってCES
現在、CESはラスベガス市内の3か所で開催されている。ラスベガ に出展しても意味がない」と判断する動きが出始めていると言えるの
ス・コンベンションセンターでは、モビリティ、IoT、AIなど、特に半導体 ではないだろうか。
技術と密接に関わる分野が中心である。一方、ベネチアン・エキスポ・
センターでは、ライフテクノロジー、ホームテクノロジー、ヘルステクノ こうした状況を踏まえると、来年もCESに出展するという判断や、
ロジーに加え、新興スタートアップの展示が集約されている。 CES出展を支援する事業の妥当性について、改めて検討すべき時期
に来ていると感じる。
さらに、アリア周辺の「Cスペース地区」では、マーケティングや広告
関連技術が扱われている。ただし、会期の制約もあり、今回はこのエリ また、会場の外観や雰囲気だけでなく、内部の演出も変わっている。
アを訪れていない。そのため、本講演では主に前述の2会場に絞って報 2024年は旧ロゴを使用した最後の年であり、昨年からは新しいロゴに
告する。 変更された。また、象徴的なアーチ構造は継続して使用されているも
のの、設置場所が手前に移動したことで、必ずしも全来場者が通過す
るものではなくなった。その結果、アーチの役割や位置付けも変化して
きたと感じている。
CESにおける半導体企業の存在感 ―
主役へと変貌する基盤技術プレイヤー
はじめに、半導体企業の動向について触れていく。CESにはNVIDIA
だけでなく、多くの半導体メーカーが参加している。かつてCESは「コ
ンシューマー・エレクトロニクス・ショー」、すなわち家電の展示会であ
り、半導体メーカーが前面に出る場ではなかった。しかし半導体は、あ
らゆる製品を支える基盤技術であり、その重要性から、以前から存在
感を示してきた企業として、アメリカのクアルコム(Qualcomm)やイ
ンテルが挙げられる。
今年はNVIDIAが基調講演ではなく、大規模な記者会見という形で
存在感を示した。形式上は記者会見であるが、一般参加者も含めた
実質的な単独イベントであり、約6,000人を集めてCESの会場の一つ
である近隣ホテルで開催された。なおNVIDIAは、2日間限定の「CES
Foundry」にも大きく出展していたが、別会場であったため私は訪問
できなかった。
AMDは基調講演とベネチアン地区のベネチアンホテル内ミーティ き点は、関連ツールやモデルを積極的にオープンソースで公開してい
ングルームで展示を行っていた。GPUを軸にAI分野で成長してきた る点にある。さらに、学習に用いたデータの内容まで明らかにするな
NVIDIAに対し、AMDはIntel互換CPUメーカーとして出発し、近年は ど、透明性を強く意識した姿勢が貫かれている。これらのツールは研
GPUやNPUといったAI向けプロセッサにも注力している。その結果、 究者の間でも広く利用されており、実務上も価値が高い。
演算系においてはオールラウンドな半導体メーカーになりつつある。
講演全体を通じて、AIの進化には依然としてハードウェアの進歩が
インテルはこれまで何度も基調講演を担当してきたが、近年はやや 不可欠であるというメッセージが強く感じられた。明確な言葉では語ら
控えめな印象で、今年はミーティングルームでの展示にとどまってい れなかったものの、「ハードウェアが進化しなければAIは本格的に活用
た。Samsung電子は、従来ラスベガス・コンベンションセンターのセン できない」という認識が随所に示されていた。また、近年NVIDIAが注力
トラルホールで大規模展示を行ってきたが、今年は会場を移し、Wynn している「フィジカルAI」の文脈でロボット展示も行われたが、過度に期
ホテル内で展示を実施した。なお、WynnもCESの正式会場の一つで 待を煽る演出はなく、現状を踏まえた堅実な見せ方であった点が印象
ある。 に残った。
そのほか、オランダの大手半導体メーカーであるNXPも出展してい AMDが描く設計集中戦略と
た。NXPはCPUや組み込み向けプロセッサ、画像処理など幅広い製 AI時代の成長シナリオ
品を手がける企業であり、自動車向け半導体の逼迫で話題となった
「Nexperia」とは別会社である。今年はラスベガス・コンベンションセ AMDはCPUに加え、GPUやDPUなど多様な演算ユニットを手がけ
ンターの駐車場に2階建ての大型ブースを設け、もはやブースという る、オールラウンドな半導体メーカーである。今回、AMDの発表を行っ
より建物に近い規模で展示を行っていた。 たCEOのリサ・スー氏は、半導体の製造技術で博士号を取得した技術
者であり、その経歴が同氏を極めて優れた経営者にしていると感じて
さらに、メモリメーカーのSKハイニックス、汎用マイクロプロセッサ いる。設計ではなく量産を含む製造技術を専門としてきた人物が、自
で知られるマイクロチップ、CPUアーキテクチャを提供するARM、日本 社の半導体工場を手放し、製造
企業ではルネサスも出展していた。ただし、ルネサスのブースは小型 を外部委託へ切り替える決断を
アクセサリー系企業が集まるエリアに配置されており、技術や部品を 下した点は特筆すべきである。
訴求する場としては疑問がある。昨年、同様の場所に出展していた他 自らの専門分野をあえて切り捨
社が今年は主要技術展示エリアに移動していることを考えると、来年 て、設計への集中を選択したこ
はルネサスも展示場所を見直すのではないかと感じている。 とで、AMDの成長は大きく加速
したといえる。
NVIDIAが示した次世代AI基盤 ―
Vera Rubinとオープン戦略の真意
続いて、NVIDIAの記者会見について解説する。NVIDIAの記者会見 今回の発表でも、AMDはCPU、GPU、DPUに加え、「Ryzen」に代表
では、CEOのジェンスン・フアン氏は、恒例の革ジャン姿で1時間以上 される統合ユニットや「Ryzen AI」プラットフォームを示し、対応領域の
にわたる講演を行い、「Vera(CPU)」と「Rubin(GPU)」から成る新し 広さを強調していた。「緑(NVIDIA)一強ではない」という姿勢は明確
いプラットフォームを発表。また、それらに用いられているチップ構成 であった。
も公開された。
製品面では、近くMI���シリーズが投入され、2027年にはMI���シリー
フアン氏は2018年以来、講演 ズが登場した。この4年間で演算性能が1,000倍に向上するという説明は、
の場では一貫して黒い革ジャン 現在の半導体業界の異常ともいえるスピード感を象徴している。
を着用しているが、昨年からは
「ラスベガス・スペシャル」と呼ば
れる特別仕様を用意している。
今年の革ジャンは、従来よりも光
沢のある点が特徴的であった。
今回発表された「Vera Rubin」シリーズは、中国向け輸出の可否で
も注目されている「Blackwell」シリーズを大きく上回る演算性能を持
つとされ、Rubin(GPU)は約5倍の演算能力を備えるという。ハード
ウェア性能の向上自体は想定の範囲内であるが、NVIDIAの特筆すべ
NVIDIAとAMDの両社の講演を通じて感じたのは、AIバブルを決して に減少していた。以前はダブルトラックやトリプルトラック、つまり同一
崩壊させてはならないという強い意識である。AIおよび半導体分野に 時間帯に複数社の会見が並ぶことも珍しくなかったが、今年は2社同
投資資金が流れ続けることが不可欠であるとの認識が共有されてお 時が2回あったのみで、ほとんどがシングルトラックであった。中には
り、両社とも他社を否定するのではなく、「自社はここまで準備してい 記者会見が行われない時間帯も見られた。これはCES自体の価値が
る」という姿勢を示していた。その結果として、「この分野への投資を継 下がったというより、企業側が「CESという場で記者会見を行う意義」
続してほしい」というメッセージが、極めて明確に伝わってくる講演で を見直し始めた結果だと考えている。
あった。
また、「アンベールド」と呼ばれるイベントも開催されている。これは
AI半導体は「学習」から「実行」へ ― 10数年前から続くもので、展示会本番の2日前に行われる、いわば事
設計思想の転換とMIPSのRISC-V移行 前公開の場である。「自社はこうした製品を出す」という概要のみを紹
介する位置付けだ。
AI向け半導体は、昨年までは学習、いわゆるトレーニング重視の構
造が中心であったが、今年はNVIDIA、AMDの両社とも「実行重視」へ アンベールドでは、各社に公平に同じサイズの展示スペースが割り
と明確に軸足を移していると述べていた。一般にはインファレンスと 当てられる。基本は机一つ分で、その3時間半の出展に約7,600ドルが
呼ばれるが、ここではあえて「実行」と表現する。この流れはIntelも同 必要となる。今年は約200社が出展していたが、費用を支払ったにも
様である。Intelは2年前、当時のCEOであったパット・ゲルシンガー氏 かかわらず出展していない企業が20社ほど見受けられた。
が基調講演において、実行効率を最大限に重視した製品開発を行っ
ていると語っていた。現在はNVIDIA、AMD、Intelの3社すべてが、実行
重視の半導体設計へ移行していると見てよい。
ここで触れておきたい半導体
メーカーとして、MIPSがある。久
しぶりにその名を目にしたが、
MIPSはスタンフォード大学のヘ
ネシー教授の系譜に連なる企 そして、モビリティに関する基調講演の中で特に印象に残ったのが
業であり、RISCアーキテクチャ キャタピラーである。黄色いブルドーザーで知られる同社は、昨年この
という現代コンピューターの基 会場で創業100周年を祝ったが、今回はCEOのジョー・クリード氏が登
礎を築いた流れを汲んでいる。 壇した。
1990年代から2000年代半ばに
かけて、MIPSアーキテクチャは キャタピラーは現在、鉱山などの現場でレベル4の自動運転をすでに
世界的に広く使われており、ソニーのPlayStation�もこれを基盤とした 実用化している。同社は自動運転に早くから取り組んできた企業であ
構成であった。 り、米国国防総省のDARPAグランドチャレンジにも参加してきた。2006
年の大会では、スタンフォード大学とGoogleのチームが1位となった
しかし近年、その名前を耳にする機会が減っていた。MIPSは生き残り が、2位はキャタピラーとカーネギーメロン大学のチームであった。カー
をかけて、UCバークレーのパターソン教授の流れにあたるRISC-Vへと ネギーメロン大学はロボティクス研究で知られ、自動運転もその延長
切り替えていた。ヘネシー教授とパターソン教授は、ともにRISCアーキ 線上で進められてきた。
テクチャの提唱者として知られ、チューリング賞を共同受賞している。
その一方の流れが、もう一方に合流した形である。MIPSという名称は 私が米国で大学院生だった頃、同大学の研究者から、当時のAIは木
残っているものの、もはやMIPSアーキテクチャではなくRISC-Vを採用 の影を道路と誤認してしまい、テストのために木を切り倒したことがあ
している点に、時代の変化を強く感じた。現地でも「切り替えた」と明確 るという話を聞いたことがある。そうした試行錯誤の積み重ねが現在
に説明されていた。 につながっている。
このように半導体分野では大きな変化が進んでおり、AIについても キャタピラーが自動運転に注力する背景には、工事現場における事
着実に準備が進んでいることが確認できた。 故低減という明確な目的がある。同社は、建設現場の自動化はもはや
実験段階ではなく、「今年実現する技術」であると強調していた。
CESに見るモビリティ展示の変化と
キャタピラーが示す自動化の現在地 CESは「乗用車展示会」から
「 はたらくクルマ」の舞台へ ―
CESでは、記者会見、アンベールド(CES Unveiled)、基調講演など、 基調講演に見る変化
さまざまなイベントが用意されていた。
近年のCESでは、私が「はたらくクルマ」と呼んでいる分野の基調講
記者会見は2日間にわたって実施されたが、登壇企業数は明らか 演が確実に増えている。最初のきっかけは2017年、ジョンディアが大型
トラクターをサウスホールに展示したことだった。その後キャタピラー
が続き、昨年は日本の小松製作所も出展している。そして近年では、こ
れらの企業が基調講演の壇上に立つようになった。2023年はジョン
ディア、2024年はHyundai HD、����年はボルボ・トラックが基調講演
を行っている。
この流れから見えてくるのは、CESを単なる自動車展示会と捉える
のは正確ではないという点である。むしろ「はたらくクルマ」の展示会
と呼ぶ方が実態に近い。自動運転技術も、一部分野では実用化が視
野に入る段階まで到達している。2006年にグランドチャレンジを完走
したスタンレーが、2007年のセルゲイ・ブリン氏の基調講演で紹介さ
れた。それを起点とした流れは、着実にここまで進展してきた。 Oskoshの空港用科学消防自動車(BEV)
自動運転が注目を集め始めた7年後の2014年には、アウディが基 ジョンディアも継続して出展し、今年も自動運転技術を披露してい
調講演を行い、NVIDIAのジェンスン・フアン氏が登壇して「NVIDIAの た。一方のトラクターを人が操作し、もう一方が自動で追従する構成
チップで自動運転が可能だ」と説明していた。当時は黒いジャケット姿 で、距離を自動調整しながら収穫物を回収する。さらに工程ごとにAI
で、現在の革ジャン姿になるのはその数年後からである。フォードも同 が判断し、回転数などを最適化しているという。農業分野における自
様に自動運転を強く打ち出していたが、当時語られた「もうすぐ実現す 動化が着実に進んでいることが分かる。
る」という見通しは、実際には時間を要している。私自身は、本格的な ©2026 Koji Suginuma
社会実装は2030年以降になると見ている。
©2026 Koji Suginuma
巨大コンバインにはAI技術が詰まっている 重機もつくる
Audi CES���� Ford @ CES����
こうした背景もあり、完成車メーカーはCESにほとんど姿を見せなく
なった。現在参加しているのはBMW程度であり、CESは車両そのもの
の展示会ではない。車載技術の展示は多いが、自動車展示会と誤解す
べきではない。なお、ソニー・ホンダモビリティが継続して出展している
のは、まだ製品が完成段階にないためであり、販売が始まれば出展し 種、籾殻などの状態を解析し回転刃を自動調整する 回収トラクター(右)は自動運転で追随する
なくなる可能性が高いと考えている。 キャタピラーもAIを活用した安全技術を紹介していた。上空に高圧
電線があるような危険な状況をAIが検知し、自動的に停止する仕組み
実用段階に入った賢い「はたらくクルマ」― である。また、米国バージニア州のラックストーン鉱山で稼働する自動
EV化と自動化が進む現場モビリティ 運転車両の様子を中継していた。4台の車両が自動で稼働し、採掘した
石を積み込み集積地へ運搬しており、無事故で36万マイルを走行して
一方で、「はたらくクルマ」の分野では出展企業がさらに増えている。
いると説明されていた。
昨年からはオシュコシュ(Oshkosh)が参加するようになった。同社は
米国でも著名な特殊車両・特装車の世界的メーカーであり、空港用の
化学消防車などを手がけている。日本でも自衛隊で使用されている高
性能車両であるが、近年はこれをバッテリーEV化している。
この消防車は、空港内で瞬時に現場へ向かう必要があるため高い
瞬発力が求められる一方、長距離走行は不要で、行動範囲も空港内
に限られる。消火後はタンクが空になり次第、消防基地に戻る運用で
あり、この動き方はEVとの相性が極めて良い。すでにテキサス州のダ
ラス・フォートワース国際空港に配備されているという。
© Stockmark Inc.
日本企業では、昨年に続きクボタが出展した。モジュール交換によ かつてCESはコンシューマー向け展示が中心であったが、現在は
り多様な作業に対応できるプラットフォームや、既存の農機に自動運 産業用途や開発現場向けの技術展示が主流となっている。主催者、
転や作物分析機能を組み込んだモデルを展示していた。 出展企業ともに、CESはすでにプロフェッショナル向けの場であると
認識している。コンシューマー向け展示はベネチアン会場に集まり、
以上が賢い「はたらくクルマ」の事例である。次に、自動運転そのもの 専門技術はラスベガス・コンベンション・センターに集約されつつあ
の動向について見ていく。先ほどのジョンディアの事例は、農地内に限 ると感じている。
定された自動運転であった。
道路自動運転の現実解 ― 実用化に届かないフィジカルAIロボットと、
Waymo・Zooxと学習手法の進化、SDVへの移行 「 Dragonwing」が示す現実的アプローチ
最後にフィジカルAIロボットについて触れるが、率直に言えば、現
次に、道路における自動運転についてである。完成車として実際に
状では多くが実用段階には達していないと感じた。これらに本格的
運用されている例としては、ZooxとWaymoが挙げられる。Zooxは
な投資を行う意義は乏しいというのが正直な印象である。例えばLG
Amazon系列、WaymoはGoogle系の企業であり、いずれもCESに出
展していた。 電子は、家事支援を掲げたロボットを展示していたが、シャツ1枚を
洗濯機に入れるだけで30秒を要していた。さらに、洗濯後に絡まっ
た衣類を取り出す動作は示されておらず、その段階には至っていない。
Waymoは今回、第5世代の「ドライバー」を投入した。ここでいう
ドライバーとは人ではなく、車両に搭載されたセンサー、センサーユ
ニット、コンピューターを統合したシステム全体を指す。第4世代は多 また、中国企業ではUnitreeなどが二足歩行ロボットによるボク
段構造であったが、第5世代は「座布団の上にお茶碗が載っているよ シングのデモンストレーションを行っていたが、これらのロボットは
うな」形状となり、外観が大きく変化している。 実際には物を持ち上げることができない。構造上、40kgや50kgの
重量物を扱おうとすれば転倒してしまう。物を持てないロボットは
Waymoの担当者によれば、同社が受け入れられている理由は 実用性に欠け、特に産業用途では成立しない。
「安心して乗れる」点にあるという。プライバシーが確保され、車内
で自由に振る舞えることが利用者に評価されている。Zooxについて
も、街中で実際に走行している様子を確認しており、すでにサービス
として運用されている。
また、自動運転の学習手法も変化している。以前は走行距離が安
全性の指標とされたが、現在はCGを用いた学習が主流になりつつ
ある。実写を基に高精度な3D空間を再現し、実走行では再現できな
い事故状況も仮想空間で学習可能となった。英国のWayveなどがこ
の手法を採用している。
二足歩行にこだわるよりも、車輪移動で、柱状の構造に両腕を
また、イスラエルのImagryも出展していた。同社は高精度マップ
備えたロボットの方が現実的である。ダンスはソニーが25年前に
やエンドツーエンド型に依存しない独自方式を採用し、自動運転バ
QRIOで実現しており、走行も本田技研工業がすでに達成している。
スで世界各地に実績を持つ。特定のハードウェアに依存せず、柔軟
こうした歴史を踏まえると、現在展示されている多くのロボットは、
に動作する点を特徴としていた。
やはり娯楽的な存在にとどまっている。本当に産業に必要なロボッ
車載技術では「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」という トとは何かを、改めて冷静に考える必要があるだろう。
言葉が広く使われている。今回、シーメンスはデジタルツインとAIを
一方で、今回特に注目すべき動きとしてQualcommが挙げられ
組み合わせ、すべてを仮想空間で検証した上で実車に反映する仕組
る。同社は米国の大手半導体メーカーであるが、単なる半導体販
み「PAVE���」を提案していた。
売にとどまらず、ソリューション提供型のビジネスへと踏み出して
いる。この取り組みを同社は「Dragonwing」と呼んでいる。 ていないように見受けられた。さらに深刻なのは、認証取得に必
要なコストや、その後の投資回収についての理解が不足している
点である。多額の開発費を投じた後、どのように事業として成立
させるのかというビジネスプランが見えてこない。これは先行者
を含め、市場性そのものに対しても疑問を抱かざるを得ない状況
である。
CESの現在地 ―
自動化・実行重視へ向かう産業構造の転換
ここまでを踏まえて状況をまとめると、アドバンスド・モビリティ
全体として大きな新提案は見られなかった。自動運転は依然とし
て難易度が高いものの、工場敷地内や鉱山のように環境が制御
された場所では、すでに実用段階に入っている。我々の立場で考
えれば、工場内外での簡易な搬送や配達、生産ラインへの定期的
な物資供給などは、自動化・ロボット化が十分可能であり、従来の
AGV(無人搬送車)を超える展開が期待できる。
Qualcommは自動運転を含む幅広い分野に関わっており、
スマートフォンに搭載されるモデムの6~7割を同社製が占め AI分野では、Qualcommが前面に出てきたことが最大のトピッ
るなど、通信分野で圧倒的な強みを持つ企業である。加えてAI分 クである。同社は半導体販売にとどまらず、AIの開発成果そのものを
野でも高い技術力を有しており、そのQualcommがハードウェア 提供するビジネスへと舵を切った、これは大きな転換点といえる。大規
ではなくAIソリューションを前面に押し出し始めた点は非常に示 模言語モデルについても、キャタピラーの事例が示すように、利用を意
唆的である。 識させない形で製品やサービスに組み込まれていく流れになるだろ
う。
Dragonwing自体は昨年2月に発表されていたが、今回の
CESでは初めて具体的な形として示された。ロボットへの応用 総じてCESは、もはや消費者向け製品の展示会ではない。新型家電
や、冷蔵庫などの家電にDragonwingプロセッサーを組み込み、 を披露する場ではなく、プロフェッショナル向けツールと技術を示し、
Qualcommの技術がどのように価値を生み出すかが紹介されて 企業同士がその場で具体的な連携や交渉を行う場へと変化している。
いた。 モビリティも自動化のための手段として再定義され、半導体は学習重
視から実行重視へと移行している。これこそが、今回のCESを象徴する
空飛ぶクルマの現実 ― 大きな動きであった。
技術展示と事業性の大きな乖離 まとめ
最後に空飛ぶクルマについて触れるが、現時点で展示されて CES ����では、AIと半導体、アドバンスド・モビリティが相互に結び
いるものは、正直に言えば事業性が極めて疑わしい。今回展示さ 付き、産業構造が「構想」から「実行」へと明確に移行している姿が示さ
れていた、ある国の自動車部品メーカーの機体も、人目を引くた れた。自動運転や現場モビリティは制御環境下では実用段階に入り、
めの演出に過ぎず、実際の事業につながるとは考えにくい。プラ 半導体も学習重視から実行重視へと設計思想を転換しつつある。
スチック射出成形メーカーによる展示も同様である。すでに開発
が進んでいる先行企業と、今になって参入してきた企業との間に これらの動向は、製造業やモビリティ産業のみならず、あらゆる産業
は大きな隔たりがある。 の競争環境を左右する基盤変化である。だからこそ、AIや半導体といっ
た、最新技術の世界的潮流を継続的に把握し、自社にどう影響するの
かを冷静に見極める視点が不可欠だ。
情報は受動的に収集するのではなく、自ら意識して収集することが
重要だ。また、国内だけでなく、海外の動向も俯瞰し、世界的な動きか
ら判断することが、今後の技術戦略と事業判断を大きく左右するといっ
ても過言ではないだろう。
先行企業は早ければ年内にも商業運航の認証取得が視野に
入っているが、今回展示していた企業の多くは、その入口にも立っ
Page6
CES ����を読み解く― 飛行体や地上交通を含む「飛ぶもの」を長年見てきた。この視点は、後
モビリティ・AI・半導体を軸にした最新動向と 半で触れる空飛ぶクルマの議論にも関係してくる。
講演者の経歴
ラスベガスおよび展示会との関わりも長い。先日、自宅で1987年の
本日は「CES ���� 最新報告会」として、1月6日から1月9日に開催 展示会資料を見つけた。当時はCESよりもCOMDEXがコンピューター
されたCESにおける動向について報告する。特に、モビリティ分野を中 分野の中心的な展示会であり、ラスベガス・コンベンションセンターで
心に、AIおよび半導体に関する動きを解説したい。 開催されていた。当時は、自ら開発したマルチメディア・オーサリングシ
ステムを展示している。資料を見返し、40年近く展示会に関わり続けて
私(杉沼 浩司氏)は日本大学生産工学部・自動車工学リサーチセン きたことを改めて実感した。
ターの客員研究員を務めている。専門は電気・計算機工学で、博士号
は米国カリフォルニア大学で取得。現在は、日本大学において自動車 CES ����の全体像 ―
工学および数理情報工学、すなわち情報工学・コンピューターサイエ 会場刷新と開催構造の変化、
ンス分野の教育に携わっている。研究領域としては、コンピューターサ 来場者・出展動向から見る転換点
イエンスというより、コンピューターエンジニアリング、すなわち「コン
ピューターの作り方」に近い分野を専門としてきた。 まず会場について触れておきたい。こちらは最も歴史のあるラスベ
ガス・コンベンションセンターであり、セントラル・コリドア、いわゆるグ
研究の原点はコンピューターグラフィックス(CG)である。高品質か ランドロビーにあたるエリアが大きく改修された。昨年は工事中で完
つ高速なCGを実現するためには、計算機そのものの設計が不可欠で 成形が見えなかったが、今年は屋根を備えた新しいロビーとして整備
あり、その過程で半導体技術へと研究領域が広がっていった。すべては されている。
CGを高度化するための取り組みであり、その周辺技術として無線通信
や信号処理にも関わってきた。
また、趣味として航空分野にも深く関わっている。実際に操縦を行
い、教官資格も持つ。ドローンについてはヨーロッパのプロ操縦士資
格を保有している。無線資格も取得しており、操縦者という立場から、
また、2022年から使用されているウエストホールは曲線を活かした そして、今年のCESの来場者数は約14万8,000人であり、非常に多
建築が特徴であり、そのデザインの流れが既存施設にも連続すること い水準であった。コロナ以前は約17万人が来場していたが、そこへむ
で、波打つような一体感のある大型コンベンションセンターが完成し けて着実に回復していることが分かる。ただし、17万人規模になると
た。CES ����は、この新しい会場で初めて開催された展示会である。 会場内の混雑が激しく、歩行すら困難になる。展示会としての評価が
下がる要因にもなり、実際、かつて私が出展していたCOMDEXは、来
CESの主催者はコンシューマー・テクノロジー・アソシエーション 場者過多により出展者から敬遠され、それが原因で最終的に消滅し
(CTA)で、かつては家電を中心とした団体であったが、現在は「一般の たといえる。CESの主催者も、同様の事態を避けようとしているように
人々が利用するあらゆる技術」を対象とする組織へと変化している。イ 見受けられる。
ベント名についても、2010年頃から主催者は「コンシューマー・エレク
トロニクス・ショー」ではなく、「CES」という呼称を正式に用いるよう求 一方で、出展社数は前年から約400社減少しており、これは全体の
めてきた。近年になり、メディアでも家電の展示会ではなく「最新技術 約1割に相当する。特に減少が顕著なのが、スタートアップ専用エリア
の展示会」として認識され始めている。 であるユーレカパークであり、減少分の約半分を、ユーレカパークの出
展企業が占めている。新興企業の間では、「ラスベガスまで行ってCES
現在、CESはラスベガス市内の3か所で開催されている。ラスベガ に出展しても意味がない」と判断する動きが出始めていると言えるの
ス・コンベンションセンターでは、モビリティ、IoT、AIなど、特に半導体 ではないだろうか。
技術と密接に関わる分野が中心である。一方、ベネチアン・エキスポ・
センターでは、ライフテクノロジー、ホームテクノロジー、ヘルステクノ こうした状況を踏まえると、来年もCESに出展するという判断や、
ロジーに加え、新興スタートアップの展示が集約されている。 CES出展を支援する事業の妥当性について、改めて検討すべき時期
に来ていると感じる。
さらに、アリア周辺の「Cスペース地区」では、マーケティングや広告
関連技術が扱われている。ただし、会期の制約もあり、今回はこのエリ また、会場の外観や雰囲気だけでなく、内部の演出も変わっている。
アを訪れていない。そのため、本講演では主に前述の2会場に絞って報 2024年は旧ロゴを使用した最後の年であり、昨年からは新しいロゴに
告する。 変更された。また、象徴的なアーチ構造は継続して使用されているも
のの、設置場所が手前に移動したことで、必ずしも全来場者が通過す
るものではなくなった。その結果、アーチの役割や位置付けも変化して
きたと感じている。
CESにおける半導体企業の存在感 ―
主役へと変貌する基盤技術プレイヤー
はじめに、半導体企業の動向について触れていく。CESにはNVIDIA
だけでなく、多くの半導体メーカーが参加している。かつてCESは「コ
ンシューマー・エレクトロニクス・ショー」、すなわち家電の展示会であ
り、半導体メーカーが前面に出る場ではなかった。しかし半導体は、あ
らゆる製品を支える基盤技術であり、その重要性から、以前から存在
感を示してきた企業として、アメリカのクアルコム(Qualcomm)やイ
ンテルが挙げられる。
今年はNVIDIAが基調講演ではなく、大規模な記者会見という形で
存在感を示した。形式上は記者会見であるが、一般参加者も含めた
実質的な単独イベントであり、約6,000人を集めてCESの会場の一つ
である近隣ホテルで開催された。なおNVIDIAは、2日間限定の「CES
Foundry」にも大きく出展していたが、別会場であったため私は訪問
できなかった。
AMDは基調講演とベネチアン地区のベネチアンホテル内ミーティ き点は、関連ツールやモデルを積極的にオープンソースで公開してい
ングルームで展示を行っていた。GPUを軸にAI分野で成長してきた る点にある。さらに、学習に用いたデータの内容まで明らかにするな
NVIDIAに対し、AMDはIntel互換CPUメーカーとして出発し、近年は ど、透明性を強く意識した姿勢が貫かれている。これらのツールは研
GPUやNPUといったAI向けプロセッサにも注力している。その結果、 究者の間でも広く利用されており、実務上も価値が高い。
演算系においてはオールラウンドな半導体メーカーになりつつある。
講演全体を通じて、AIの進化には依然としてハードウェアの進歩が
インテルはこれまで何度も基調講演を担当してきたが、近年はやや 不可欠であるというメッセージが強く感じられた。明確な言葉では語ら
控えめな印象で、今年はミーティングルームでの展示にとどまってい れなかったものの、「ハードウェアが進化しなければAIは本格的に活用
た。Samsung電子は、従来ラスベガス・コンベンションセンターのセン できない」という認識が随所に示されていた。また、近年NVIDIAが注力
トラルホールで大規模展示を行ってきたが、今年は会場を移し、Wynn している「フィジカルAI」の文脈でロボット展示も行われたが、過度に期
ホテル内で展示を実施した。なお、WynnもCESの正式会場の一つで 待を煽る演出はなく、現状を踏まえた堅実な見せ方であった点が印象
ある。 に残った。
そのほか、オランダの大手半導体メーカーであるNXPも出展してい AMDが描く設計集中戦略と
た。NXPはCPUや組み込み向けプロセッサ、画像処理など幅広い製 AI時代の成長シナリオ
品を手がける企業であり、自動車向け半導体の逼迫で話題となった
「Nexperia」とは別会社である。今年はラスベガス・コンベンションセ AMDはCPUに加え、GPUやDPUなど多様な演算ユニットを手がけ
ンターの駐車場に2階建ての大型ブースを設け、もはやブースという る、オールラウンドな半導体メーカーである。今回、AMDの発表を行っ
より建物に近い規模で展示を行っていた。 たCEOのリサ・スー氏は、半導体の製造技術で博士号を取得した技術
者であり、その経歴が同氏を極めて優れた経営者にしていると感じて
さらに、メモリメーカーのSKハイニックス、汎用マイクロプロセッサ いる。設計ではなく量産を含む製造技術を専門としてきた人物が、自
で知られるマイクロチップ、CPUアーキテクチャを提供するARM、日本 社の半導体工場を手放し、製造
企業ではルネサスも出展していた。ただし、ルネサスのブースは小型 を外部委託へ切り替える決断を
アクセサリー系企業が集まるエリアに配置されており、技術や部品を 下した点は特筆すべきである。
訴求する場としては疑問がある。昨年、同様の場所に出展していた他 自らの専門分野をあえて切り捨
社が今年は主要技術展示エリアに移動していることを考えると、来年 て、設計への集中を選択したこ
はルネサスも展示場所を見直すのではないかと感じている。 とで、AMDの成長は大きく加速
したといえる。
NVIDIAが示した次世代AI基盤 ―
Vera Rubinとオープン戦略の真意
続いて、NVIDIAの記者会見について解説する。NVIDIAの記者会見 今回の発表でも、AMDはCPU、GPU、DPUに加え、「Ryzen」に代表
では、CEOのジェンスン・フアン氏は、恒例の革ジャン姿で1時間以上 される統合ユニットや「Ryzen AI」プラットフォームを示し、対応領域の
にわたる講演を行い、「Vera(CPU)」と「Rubin(GPU)」から成る新し 広さを強調していた。「緑(NVIDIA)一強ではない」という姿勢は明確
いプラットフォームを発表。また、それらに用いられているチップ構成 であった。
も公開された。
製品面では、近くMI���シリーズが投入され、2027年にはMI���シリー
フアン氏は2018年以来、講演 ズが登場した。この4年間で演算性能が1,000倍に向上するという説明は、
の場では一貫して黒い革ジャン 現在の半導体業界の異常ともいえるスピード感を象徴している。
を着用しているが、昨年からは
「ラスベガス・スペシャル」と呼ば
れる特別仕様を用意している。
今年の革ジャンは、従来よりも光
沢のある点が特徴的であった。
今回発表された「Vera Rubin」シリーズは、中国向け輸出の可否で
も注目されている「Blackwell」シリーズを大きく上回る演算性能を持
つとされ、Rubin(GPU)は約5倍の演算能力を備えるという。ハード
ウェア性能の向上自体は想定の範囲内であるが、NVIDIAの特筆すべ
NVIDIAとAMDの両社の講演を通じて感じたのは、AIバブルを決して に減少していた。以前はダブルトラックやトリプルトラック、つまり同一
崩壊させてはならないという強い意識である。AIおよび半導体分野に 時間帯に複数社の会見が並ぶことも珍しくなかったが、今年は2社同
投資資金が流れ続けることが不可欠であるとの認識が共有されてお 時が2回あったのみで、ほとんどがシングルトラックであった。中には
り、両社とも他社を否定するのではなく、「自社はここまで準備してい 記者会見が行われない時間帯も見られた。これはCES自体の価値が
る」という姿勢を示していた。その結果として、「この分野への投資を継 下がったというより、企業側が「CESという場で記者会見を行う意義」
続してほしい」というメッセージが、極めて明確に伝わってくる講演で を見直し始めた結果だと考えている。
あった。
また、「アンベールド」と呼ばれるイベントも開催されている。これは
AI半導体は「学習」から「実行」へ ― 10数年前から続くもので、展示会本番の2日前に行われる、いわば事
設計思想の転換とMIPSのRISC-V移行 前公開の場である。「自社はこうした製品を出す」という概要のみを紹
介する位置付けだ。
AI向け半導体は、昨年までは学習、いわゆるトレーニング重視の構
造が中心であったが、今年はNVIDIA、AMDの両社とも「実行重視」へ アンベールドでは、各社に公平に同じサイズの展示スペースが割り
と明確に軸足を移していると述べていた。一般にはインファレンスと 当てられる。基本は机一つ分で、その3時間半の出展に約7,600ドルが
呼ばれるが、ここではあえて「実行」と表現する。この流れはIntelも同 必要となる。今年は約200社が出展していたが、費用を支払ったにも
様である。Intelは2年前、当時のCEOであったパット・ゲルシンガー氏 かかわらず出展していない企業が20社ほど見受けられた。
が基調講演において、実行効率を最大限に重視した製品開発を行っ
ていると語っていた。現在はNVIDIA、AMD、Intelの3社すべてが、実行
重視の半導体設計へ移行していると見てよい。
ここで触れておきたい半導体
メーカーとして、MIPSがある。久
しぶりにその名を目にしたが、
MIPSはスタンフォード大学のヘ
ネシー教授の系譜に連なる企 そして、モビリティに関する基調講演の中で特に印象に残ったのが
業であり、RISCアーキテクチャ キャタピラーである。黄色いブルドーザーで知られる同社は、昨年この
という現代コンピューターの基 会場で創業100周年を祝ったが、今回はCEOのジョー・クリード氏が登
礎を築いた流れを汲んでいる。 壇した。
1990年代から2000年代半ばに
かけて、MIPSアーキテクチャは キャタピラーは現在、鉱山などの現場でレベル4の自動運転をすでに
世界的に広く使われており、ソニーのPlayStation�もこれを基盤とした 実用化している。同社は自動運転に早くから取り組んできた企業であ
構成であった。 り、米国国防総省のDARPAグランドチャレンジにも参加してきた。2006
年の大会では、スタンフォード大学とGoogleのチームが1位となった
しかし近年、その名前を耳にする機会が減っていた。MIPSは生き残り が、2位はキャタピラーとカーネギーメロン大学のチームであった。カー
をかけて、UCバークレーのパターソン教授の流れにあたるRISC-Vへと ネギーメロン大学はロボティクス研究で知られ、自動運転もその延長
切り替えていた。ヘネシー教授とパターソン教授は、ともにRISCアーキ 線上で進められてきた。
テクチャの提唱者として知られ、チューリング賞を共同受賞している。
その一方の流れが、もう一方に合流した形である。MIPSという名称は 私が米国で大学院生だった頃、同大学の研究者から、当時のAIは木
残っているものの、もはやMIPSアーキテクチャではなくRISC-Vを採用 の影を道路と誤認してしまい、テストのために木を切り倒したことがあ
している点に、時代の変化を強く感じた。現地でも「切り替えた」と明確 るという話を聞いたことがある。そうした試行錯誤の積み重ねが現在
に説明されていた。 につながっている。
このように半導体分野では大きな変化が進んでおり、AIについても キャタピラーが自動運転に注力する背景には、工事現場における事
着実に準備が進んでいることが確認できた。 故低減という明確な目的がある。同社は、建設現場の自動化はもはや
実験段階ではなく、「今年実現する技術」であると強調していた。
CESに見るモビリティ展示の変化と
キャタピラーが示す自動化の現在地 CESは「乗用車展示会」から
「 はたらくクルマ」の舞台へ ―
CESでは、記者会見、アンベールド(CES Unveiled)、基調講演など、 基調講演に見る変化
さまざまなイベントが用意されていた。
近年のCESでは、私が「はたらくクルマ」と呼んでいる分野の基調講
記者会見は2日間にわたって実施されたが、登壇企業数は明らか 演が確実に増えている。最初のきっかけは2017年、ジョンディアが大型
トラクターをサウスホールに展示したことだった。その後キャタピラー
が続き、昨年は日本の小松製作所も出展している。そして近年では、こ
れらの企業が基調講演の壇上に立つようになった。2023年はジョン
ディア、2024年はHyundai HD、����年はボルボ・トラックが基調講演
を行っている。
この流れから見えてくるのは、CESを単なる自動車展示会と捉える
のは正確ではないという点である。むしろ「はたらくクルマ」の展示会
と呼ぶ方が実態に近い。自動運転技術も、一部分野では実用化が視
野に入る段階まで到達している。2006年にグランドチャレンジを完走
したスタンレーが、2007年のセルゲイ・ブリン氏の基調講演で紹介さ
れた。それを起点とした流れは、着実にここまで進展してきた。
自動運転が注目を集め始めた7年後の2014年には、アウディが基 ジョンディアも継続して出展し、今年も自動運転技術を披露してい
調講演を行い、NVIDIAのジェンスン・フアン氏が登壇して「NVIDIAの た。一方のトラクターを人が操作し、もう一方が自動で追従する構成
チップで自動運転が可能だ」と説明していた。当時は黒いジャケット姿 で、距離を自動調整しながら収穫物を回収する。さらに工程ごとにAI
で、現在の革ジャン姿になるのはその数年後からである。フォードも同 が判断し、回転数などを最適化しているという。農業分野における自
様に自動運転を強く打ち出していたが、当時語られた「もうすぐ実現す 動化が着実に進んでいることが分かる。
る」という見通しは、実際には時間を要している。私自身は、本格的な
社会実装は2030年以降になると見ている。
こうした背景もあり、完成車メーカーはCESにほとんど姿を見せなく
なった。現在参加しているのはBMW程度であり、CESは車両そのもの
の展示会ではない。車載技術の展示は多いが、自動車展示会と誤解す
べきではない。なお、ソニー・ホンダモビリティが継続して出展している
のは、まだ製品が完成段階にないためであり、販売が始まれば出展し
なくなる可能性が高いと考えている。 キャタピラーもAIを活用した安全技術を紹介していた。上空に高圧
電線があるような危険な状況をAIが検知し、自動的に停止する仕組み
実用段階に入った賢い「はたらくクルマ」― である。また、米国バージニア州のラックストーン鉱山で稼働する自動
EV化と自動化が進む現場モビリティ 運転車両の様子を中継していた。4台の車両が自動で稼働し、採掘した
石を積み込み集積地へ運搬しており、無事故で36万マイルを走行して
一方で、「はたらくクルマ」の分野では出展企業がさらに増えている。
いると説明されていた。
昨年からはオシュコシュ(Oshkosh)が参加するようになった。同社は
米国でも著名な特殊車両・特装車の世界的メーカーであり、空港用の
化学消防車などを手がけている。日本でも自衛隊で使用されている高
性能車両であるが、近年はこれをバッテリーEV化している。
この消防車は、空港内で瞬時に現場へ向かう必要があるため高い
瞬発力が求められる一方、長距離走行は不要で、行動範囲も空港内
に限られる。消火後はタンクが空になり次第、消防基地に戻る運用で
あり、この動き方はEVとの相性が極めて良い。すでにテキサス州のダ
ラス・フォートワース国際空港に配備されているという。
日本企業では、昨年に続きクボタが出展した。モジュール交換によ かつてCESはコンシューマー向け展示が中心であったが、現在は
り多様な作業に対応できるプラットフォームや、既存の農機に自動運 産業用途や開発現場向けの技術展示が主流となっている。主催者、
転や作物分析機能を組み込んだモデルを展示していた。 出展企業ともに、CESはすでにプロフェッショナル向けの場であると
認識している。コンシューマー向け展示はベネチアン会場に集まり、
以上が賢い「はたらくクルマ」の事例である。次に、自動運転そのもの 専門技術はラスベガス・コンベンション・センターに集約されつつあ
の動向について見ていく。先ほどのジョンディアの事例は、農地内に限 ると感じている。
定された自動運転であった。
道路自動運転の現実解 ― 実用化に届かないフィジカルAIロボットと、
Waymo・Zooxと学習手法の進化、SDVへの移行 「 Dragonwing」が示す現実的アプローチ
最後にフィジカルAIロボットについて触れるが、率直に言えば、現
次に、道路における自動運転についてである。完成車として実際に
状では多くが実用段階には達していないと感じた。これらに本格的
運用されている例としては、ZooxとWaymoが挙げられる。Zooxは
な投資を行う意義は乏しいというのが正直な印象である。例えばLG
Amazon系列、WaymoはGoogle系の企業であり、いずれもCESに出
展していた。 電子は、家事支援を掲げたロボットを展示していたが、シャツ1枚を
©2026 Koji Suginuma 洗濯機に入れるだけで30秒を要していた。さらに、洗濯後に絡まっ
た衣類を取り出す動作は示されておらず、その段階には至っていない。
ZOOX Waymo
Waymoは今回、第5世代の「ドライバー」を投入した。ここでいう
ドライバーとは人ではなく、車両に搭載されたセンサー、センサーユ
ニット、コンピューターを統合したシステム全体を指す。第4世代は多 また、中国企業ではUnitreeなどが二足歩行ロボットによるボク
段構造であったが、第5世代は「座布団の上にお茶碗が載っているよ シングのデモンストレーションを行っていたが、これらのロボットは
うな」形状となり、外観が大きく変化している。 実際には物を持ち上げることができない。構造上、40kgや50kgの
重量物を扱おうとすれば転倒してしまう。物を持てないロボットは
Waymoの担当者によれば、同社が受け入れられている理由は 実用性に欠け、特に産業用途では成立しない。
「安心して乗れる」点にあるという。プライバシーが確保され、車内 ©2026 Koji Suginuma
で自由に振る舞えることが利用者に評価されている。Zooxについて
も、街中で実際に走行している様子を確認しており、すでにサービス
として運用されている。
また、自動運転の学習手法も変化している。以前は走行距離が安
全性の指標とされたが、現在はCGを用いた学習が主流になりつつ
ある。実写を基に高精度な3D空間を再現し、実走行では再現できな
い事故状況も仮想空間で学習可能となった。英国のWayveなどがこ Unitree Engineal
(中国:YuShu Tecnology) (中国:ShenZhen Zhongqing
の手法を採用している。 Robotics Technology)
二足歩行にこだわるよりも、車輪移動で、柱状の構造に両腕を
また、イスラエルのImagryも出展していた。同社は高精度マップ
備えたロボットの方が現実的である。ダンスはソニーが25年前に
やエンドツーエンド型に依存しない独自方式を採用し、自動運転バ
QRIOで実現しており、走行も本田技研工業がすでに達成している。
スで世界各地に実績を持つ。特定のハードウェアに依存せず、柔軟
こうした歴史を踏まえると、現在展示されている多くのロボットは、
に動作する点を特徴としていた。
やはり娯楽的な存在にとどまっている。本当に産業に必要なロボッ
車載技術では「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」という トとは何かを、改めて冷静に考える必要があるだろう。
言葉が広く使われている。今回、シーメンスはデジタルツインとAIを
一方で、今回特に注目すべき動きとしてQualcommが挙げられ
組み合わせ、すべてを仮想空間で検証した上で実車に反映する仕組
る。同社は米国の大手半導体メーカーであるが、単なる半導体販
み「PAVE���」を提案していた。
売にとどまらず、ソリューション提供型のビジネスへと踏み出して
© Stockmark Inc.
いる。この取り組みを同社は「Dragonwing」と呼んでいる。 ていないように見受けられた。さらに深刻なのは、認証取得に必
要なコストや、その後の投資回収についての理解が不足している
点である。多額の開発費を投じた後、どのように事業として成立
させるのかというビジネスプランが見えてこない。これは先行者
を含め、市場性そのものに対しても疑問を抱かざるを得ない状況
である。
CESの現在地 ―
自動化・実行重視へ向かう産業構造の転換
ここまでを踏まえて状況をまとめると、アドバンスド・モビリティ
全体として大きな新提案は見られなかった。自動運転は依然とし
て難易度が高いものの、工場敷地内や鉱山のように環境が制御
された場所では、すでに実用段階に入っている。我々の立場で考
えれば、工場内外での簡易な搬送や配達、生産ラインへの定期的
な物資供給などは、自動化・ロボット化が十分可能であり、従来の
AGV(無人搬送車)を超える展開が期待できる。
Qualcommは自動運転を含む幅広い分野に関わっており、
スマートフォンに搭載されるモデムの6~7割を同社製が占め AI分野では、Qualcommが前面に出てきたことが最大のトピッ
るなど、通信分野で圧倒的な強みを持つ企業である。加えてAI分 クである。同社は半導体販売にとどまらず、AIの開発成果そのものを
野でも高い技術力を有しており、そのQualcommがハードウェア 提供するビジネスへと舵を切った、これは大きな転換点といえる。大規
ではなくAIソリューションを前面に押し出し始めた点は非常に示 模言語モデルについても、キャタピラーの事例が示すように、利用を意
唆的である。 識させない形で製品やサービスに組み込まれていく流れになるだろ
う。
Dragonwing自体は昨年2月に発表されていたが、今回の
CESでは初めて具体的な形として示された。ロボットへの応用 総じてCESは、もはや消費者向け製品の展示会ではない。新型家電
や、冷蔵庫などの家電にDragonwingプロセッサーを組み込み、 を披露する場ではなく、プロフェッショナル向けツールと技術を示し、
Qualcommの技術がどのように価値を生み出すかが紹介されて 企業同士がその場で具体的な連携や交渉を行う場へと変化している。
いた。 モビリティも自動化のための手段として再定義され、半導体は学習重
視から実行重視へと移行している。これこそが、今回のCESを象徴する
空飛ぶクルマの現実 ― 大きな動きであった。
技術展示と事業性の大きな乖離 まとめ
最後に空飛ぶクルマについて触れるが、現時点で展示されて CES ����では、AIと半導体、アドバンスド・モビリティが相互に結び
いるものは、正直に言えば事業性が極めて疑わしい。今回展示さ 付き、産業構造が「構想」から「実行」へと明確に移行している姿が示さ
れていた、ある国の自動車部品メーカーの機体も、人目を引くた れた。自動運転や現場モビリティは制御環境下では実用段階に入り、
めの演出に過ぎず、実際の事業につながるとは考えにくい。プラ 半導体も学習重視から実行重視へと設計思想を転換しつつある。
スチック射出成形メーカーによる展示も同様である。すでに開発
が進んでいる先行企業と、今になって参入してきた企業との間に これらの動向は、製造業やモビリティ産業のみならず、あらゆる産業
は大きな隔たりがある。 の競争環境を左右する基盤変化である。だからこそ、AIや半導体といっ
た、最新技術の世界的潮流を継続的に把握し、自社にどう影響するの
かを冷静に見極める視点が不可欠だ。
情報は受動的に収集するのではなく、自ら意識して収集することが
重要だ。また、国内だけでなく、海外の動向も俯瞰し、世界的な動きか
ら判断することが、今後の技術戦略と事業判断を大きく左右するといっ
ても過言ではないだろう。
先行企業は早ければ年内にも商業運航の認証取得が視野に
入っているが、今回展示していた企業の多くは、その入口にも立っ
Page7
CES ����を読み解く― 飛行体や地上交通を含む「飛ぶもの」を長年見てきた。この視点は、後
モビリティ・AI・半導体を軸にした最新動向と 半で触れる空飛ぶクルマの議論にも関係してくる。
講演者の経歴
ラスベガスおよび展示会との関わりも長い。先日、自宅で1987年の
本日は「CES ���� 最新報告会」として、1月6日から1月9日に開催 展示会資料を見つけた。当時はCESよりもCOMDEXがコンピューター
されたCESにおける動向について報告する。特に、モビリティ分野を中 分野の中心的な展示会であり、ラスベガス・コンベンションセンターで
心に、AIおよび半導体に関する動きを解説したい。 開催されていた。当時は、自ら開発したマルチメディア・オーサリングシ
ステムを展示している。資料を見返し、40年近く展示会に関わり続けて
私(杉沼 浩司氏)は日本大学生産工学部・自動車工学リサーチセン きたことを改めて実感した。
ターの客員研究員を務めている。専門は電気・計算機工学で、博士号
は米国カリフォルニア大学で取得。現在は、日本大学において自動車 CES ����の全体像 ―
工学および数理情報工学、すなわち情報工学・コンピューターサイエ 会場刷新と開催構造の変化、
ンス分野の教育に携わっている。研究領域としては、コンピューターサ 来場者・出展動向から見る転換点
イエンスというより、コンピューターエンジニアリング、すなわち「コン
ピューターの作り方」に近い分野を専門としてきた。 まず会場について触れておきたい。こちらは最も歴史のあるラスベ
ガス・コンベンションセンターであり、セントラル・コリドア、いわゆるグ
研究の原点はコンピューターグラフィックス(CG)である。高品質か ランドロビーにあたるエリアが大きく改修された。昨年は工事中で完
つ高速なCGを実現するためには、計算機そのものの設計が不可欠で 成形が見えなかったが、今年は屋根を備えた新しいロビーとして整備
あり、その過程で半導体技術へと研究領域が広がっていった。すべては されている。
CGを高度化するための取り組みであり、その周辺技術として無線通信
や信号処理にも関わってきた。
また、趣味として航空分野にも深く関わっている。実際に操縦を行
い、教官資格も持つ。ドローンについてはヨーロッパのプロ操縦士資
格を保有している。無線資格も取得しており、操縦者という立場から、
また、2022年から使用されているウエストホールは曲線を活かした そして、今年のCESの来場者数は約14万8,000人であり、非常に多
建築が特徴であり、そのデザインの流れが既存施設にも連続すること い水準であった。コロナ以前は約17万人が来場していたが、そこへむ
で、波打つような一体感のある大型コンベンションセンターが完成し けて着実に回復していることが分かる。ただし、17万人規模になると
た。CES ����は、この新しい会場で初めて開催された展示会である。 会場内の混雑が激しく、歩行すら困難になる。展示会としての評価が
下がる要因にもなり、実際、かつて私が出展していたCOMDEXは、来
CESの主催者はコンシューマー・テクノロジー・アソシエーション 場者過多により出展者から敬遠され、それが原因で最終的に消滅し
(CTA)で、かつては家電を中心とした団体であったが、現在は「一般の たといえる。CESの主催者も、同様の事態を避けようとしているように
人々が利用するあらゆる技術」を対象とする組織へと変化している。イ 見受けられる。
ベント名についても、2010年頃から主催者は「コンシューマー・エレク
トロニクス・ショー」ではなく、「CES」という呼称を正式に用いるよう求 一方で、出展社数は前年から約400社減少しており、これは全体の
めてきた。近年になり、メディアでも家電の展示会ではなく「最新技術 約1割に相当する。特に減少が顕著なのが、スタートアップ専用エリア
の展示会」として認識され始めている。 であるユーレカパークであり、減少分の約半分を、ユーレカパークの出
展企業が占めている。新興企業の間では、「ラスベガスまで行ってCES
現在、CESはラスベガス市内の3か所で開催されている。ラスベガ に出展しても意味がない」と判断する動きが出始めていると言えるの
ス・コンベンションセンターでは、モビリティ、IoT、AIなど、特に半導体 ではないだろうか。
技術と密接に関わる分野が中心である。一方、ベネチアン・エキスポ・
センターでは、ライフテクノロジー、ホームテクノロジー、ヘルステクノ こうした状況を踏まえると、来年もCESに出展するという判断や、
ロジーに加え、新興スタートアップの展示が集約されている。 CES出展を支援する事業の妥当性について、改めて検討すべき時期
に来ていると感じる。
さらに、アリア周辺の「Cスペース地区」では、マーケティングや広告
関連技術が扱われている。ただし、会期の制約もあり、今回はこのエリ また、会場の外観や雰囲気だけでなく、内部の演出も変わっている。
アを訪れていない。そのため、本講演では主に前述の2会場に絞って報 2024年は旧ロゴを使用した最後の年であり、昨年からは新しいロゴに
告する。 変更された。また、象徴的なアーチ構造は継続して使用されているも
のの、設置場所が手前に移動したことで、必ずしも全来場者が通過す
るものではなくなった。その結果、アーチの役割や位置付けも変化して
きたと感じている。
CESにおける半導体企業の存在感 ―
主役へと変貌する基盤技術プレイヤー
はじめに、半導体企業の動向について触れていく。CESにはNVIDIA
だけでなく、多くの半導体メーカーが参加している。かつてCESは「コ
ンシューマー・エレクトロニクス・ショー」、すなわち家電の展示会であ
り、半導体メーカーが前面に出る場ではなかった。しかし半導体は、あ
らゆる製品を支える基盤技術であり、その重要性から、以前から存在
感を示してきた企業として、アメリカのクアルコム(Qualcomm)やイ
ンテルが挙げられる。
今年はNVIDIAが基調講演ではなく、大規模な記者会見という形で
存在感を示した。形式上は記者会見であるが、一般参加者も含めた
実質的な単独イベントであり、約6,000人を集めてCESの会場の一つ
である近隣ホテルで開催された。なおNVIDIAは、2日間限定の「CES
Foundry」にも大きく出展していたが、別会場であったため私は訪問
できなかった。
AMDは基調講演とベネチアン地区のベネチアンホテル内ミーティ き点は、関連ツールやモデルを積極的にオープンソースで公開してい
ングルームで展示を行っていた。GPUを軸にAI分野で成長してきた る点にある。さらに、学習に用いたデータの内容まで明らかにするな
NVIDIAに対し、AMDはIntel互換CPUメーカーとして出発し、近年は ど、透明性を強く意識した姿勢が貫かれている。これらのツールは研
GPUやNPUといったAI向けプロセッサにも注力している。その結果、 究者の間でも広く利用されており、実務上も価値が高い。
演算系においてはオールラウンドな半導体メーカーになりつつある。
講演全体を通じて、AIの進化には依然としてハードウェアの進歩が
インテルはこれまで何度も基調講演を担当してきたが、近年はやや 不可欠であるというメッセージが強く感じられた。明確な言葉では語ら
控えめな印象で、今年はミーティングルームでの展示にとどまってい れなかったものの、「ハードウェアが進化しなければAIは本格的に活用
た。Samsung電子は、従来ラスベガス・コンベンションセンターのセン できない」という認識が随所に示されていた。また、近年NVIDIAが注力
トラルホールで大規模展示を行ってきたが、今年は会場を移し、Wynn している「フィジカルAI」の文脈でロボット展示も行われたが、過度に期
ホテル内で展示を実施した。なお、WynnもCESの正式会場の一つで 待を煽る演出はなく、現状を踏まえた堅実な見せ方であった点が印象
ある。 に残った。
そのほか、オランダの大手半導体メーカーであるNXPも出展してい AMDが描く設計集中戦略と
た。NXPはCPUや組み込み向けプロセッサ、画像処理など幅広い製 AI時代の成長シナリオ
品を手がける企業であり、自動車向け半導体の逼迫で話題となった
「Nexperia」とは別会社である。今年はラスベガス・コンベンションセ AMDはCPUに加え、GPUやDPUなど多様な演算ユニットを手がけ
ンターの駐車場に2階建ての大型ブースを設け、もはやブースという る、オールラウンドな半導体メーカーである。今回、AMDの発表を行っ
より建物に近い規模で展示を行っていた。 たCEOのリサ・スー氏は、半導体の製造技術で博士号を取得した技術
者であり、その経歴が同氏を極めて優れた経営者にしていると感じて
さらに、メモリメーカーのSKハイニックス、汎用マイクロプロセッサ いる。設計ではなく量産を含む製造技術を専門としてきた人物が、自
で知られるマイクロチップ、CPUアーキテクチャを提供するARM、日本 社の半導体工場を手放し、製造
企業ではルネサスも出展していた。ただし、ルネサスのブースは小型 を外部委託へ切り替える決断を
アクセサリー系企業が集まるエリアに配置されており、技術や部品を 下した点は特筆すべきである。
訴求する場としては疑問がある。昨年、同様の場所に出展していた他 自らの専門分野をあえて切り捨
社が今年は主要技術展示エリアに移動していることを考えると、来年 て、設計への集中を選択したこ
はルネサスも展示場所を見直すのではないかと感じている。 とで、AMDの成長は大きく加速
したといえる。
NVIDIAが示した次世代AI基盤 ―
Vera Rubinとオープン戦略の真意
続いて、NVIDIAの記者会見について解説する。NVIDIAの記者会見 今回の発表でも、AMDはCPU、GPU、DPUに加え、「Ryzen」に代表
では、CEOのジェンスン・フアン氏は、恒例の革ジャン姿で1時間以上 される統合ユニットや「Ryzen AI」プラットフォームを示し、対応領域の
にわたる講演を行い、「Vera(CPU)」と「Rubin(GPU)」から成る新し 広さを強調していた。「緑(NVIDIA)一強ではない」という姿勢は明確
いプラットフォームを発表。また、それらに用いられているチップ構成 であった。
も公開された。
製品面では、近くMI���シリーズが投入され、2027年にはMI���シリー
フアン氏は2018年以来、講演 ズが登場した。この4年間で演算性能が1,000倍に向上するという説明は、
の場では一貫して黒い革ジャン 現在の半導体業界の異常ともいえるスピード感を象徴している。
を着用しているが、昨年からは
「ラスベガス・スペシャル」と呼ば
れる特別仕様を用意している。
今年の革ジャンは、従来よりも光
沢のある点が特徴的であった。
今回発表された「Vera Rubin」シリーズは、中国向け輸出の可否で
も注目されている「Blackwell」シリーズを大きく上回る演算性能を持
つとされ、Rubin(GPU)は約5倍の演算能力を備えるという。ハード
ウェア性能の向上自体は想定の範囲内であるが、NVIDIAの特筆すべ
NVIDIAとAMDの両社の講演を通じて感じたのは、AIバブルを決して に減少していた。以前はダブルトラックやトリプルトラック、つまり同一
崩壊させてはならないという強い意識である。AIおよび半導体分野に 時間帯に複数社の会見が並ぶことも珍しくなかったが、今年は2社同
投資資金が流れ続けることが不可欠であるとの認識が共有されてお 時が2回あったのみで、ほとんどがシングルトラックであった。中には
り、両社とも他社を否定するのではなく、「自社はここまで準備してい 記者会見が行われない時間帯も見られた。これはCES自体の価値が
る」という姿勢を示していた。その結果として、「この分野への投資を継 下がったというより、企業側が「CESという場で記者会見を行う意義」
続してほしい」というメッセージが、極めて明確に伝わってくる講演で を見直し始めた結果だと考えている。
あった。
また、「アンベールド」と呼ばれるイベントも開催されている。これは
AI半導体は「学習」から「実行」へ ― 10数年前から続くもので、展示会本番の2日前に行われる、いわば事
設計思想の転換とMIPSのRISC-V移行 前公開の場である。「自社はこうした製品を出す」という概要のみを紹
介する位置付けだ。
AI向け半導体は、昨年までは学習、いわゆるトレーニング重視の構
造が中心であったが、今年はNVIDIA、AMDの両社とも「実行重視」へ アンベールドでは、各社に公平に同じサイズの展示スペースが割り
と明確に軸足を移していると述べていた。一般にはインファレンスと 当てられる。基本は机一つ分で、その3時間半の出展に約7,600ドルが
呼ばれるが、ここではあえて「実行」と表現する。この流れはIntelも同 必要となる。今年は約200社が出展していたが、費用を支払ったにも
様である。Intelは2年前、当時のCEOであったパット・ゲルシンガー氏 かかわらず出展していない企業が20社ほど見受けられた。
が基調講演において、実行効率を最大限に重視した製品開発を行っ
ていると語っていた。現在はNVIDIA、AMD、Intelの3社すべてが、実行
重視の半導体設計へ移行していると見てよい。
ここで触れておきたい半導体
メーカーとして、MIPSがある。久
しぶりにその名を目にしたが、
MIPSはスタンフォード大学のヘ
ネシー教授の系譜に連なる企 そして、モビリティに関する基調講演の中で特に印象に残ったのが
業であり、RISCアーキテクチャ キャタピラーである。黄色いブルドーザーで知られる同社は、昨年この
という現代コンピューターの基 会場で創業100周年を祝ったが、今回はCEOのジョー・クリード氏が登
礎を築いた流れを汲んでいる。 壇した。
1990年代から2000年代半ばに
かけて、MIPSアーキテクチャは キャタピラーは現在、鉱山などの現場でレベル4の自動運転をすでに
世界的に広く使われており、ソニーのPlayStation�もこれを基盤とした 実用化している。同社は自動運転に早くから取り組んできた企業であ
構成であった。 り、米国国防総省のDARPAグランドチャレンジにも参加してきた。2006
年の大会では、スタンフォード大学とGoogleのチームが1位となった
しかし近年、その名前を耳にする機会が減っていた。MIPSは生き残り が、2位はキャタピラーとカーネギーメロン大学のチームであった。カー
をかけて、UCバークレーのパターソン教授の流れにあたるRISC-Vへと ネギーメロン大学はロボティクス研究で知られ、自動運転もその延長
切り替えていた。ヘネシー教授とパターソン教授は、ともにRISCアーキ 線上で進められてきた。
テクチャの提唱者として知られ、チューリング賞を共同受賞している。
その一方の流れが、もう一方に合流した形である。MIPSという名称は 私が米国で大学院生だった頃、同大学の研究者から、当時のAIは木
残っているものの、もはやMIPSアーキテクチャではなくRISC-Vを採用 の影を道路と誤認してしまい、テストのために木を切り倒したことがあ
している点に、時代の変化を強く感じた。現地でも「切り替えた」と明確 るという話を聞いたことがある。そうした試行錯誤の積み重ねが現在
に説明されていた。 につながっている。
このように半導体分野では大きな変化が進んでおり、AIについても キャタピラーが自動運転に注力する背景には、工事現場における事
着実に準備が進んでいることが確認できた。 故低減という明確な目的がある。同社は、建設現場の自動化はもはや
実験段階ではなく、「今年実現する技術」であると強調していた。
CESに見るモビリティ展示の変化と
キャタピラーが示す自動化の現在地 CESは「乗用車展示会」から
「 はたらくクルマ」の舞台へ ―
CESでは、記者会見、アンベールド(CES Unveiled)、基調講演など、 基調講演に見る変化
さまざまなイベントが用意されていた。
近年のCESでは、私が「はたらくクルマ」と呼んでいる分野の基調講
記者会見は2日間にわたって実施されたが、登壇企業数は明らか 演が確実に増えている。最初のきっかけは2017年、ジョンディアが大型
トラクターをサウスホールに展示したことだった。その後キャタピラー
が続き、昨年は日本の小松製作所も出展している。そして近年では、こ
れらの企業が基調講演の壇上に立つようになった。2023年はジョン
ディア、2024年はHyundai HD、����年はボルボ・トラックが基調講演
を行っている。
この流れから見えてくるのは、CESを単なる自動車展示会と捉える
のは正確ではないという点である。むしろ「はたらくクルマ」の展示会
と呼ぶ方が実態に近い。自動運転技術も、一部分野では実用化が視
野に入る段階まで到達している。2006年にグランドチャレンジを完走
したスタンレーが、2007年のセルゲイ・ブリン氏の基調講演で紹介さ
れた。それを起点とした流れは、着実にここまで進展してきた。
自動運転が注目を集め始めた7年後の2014年には、アウディが基 ジョンディアも継続して出展し、今年も自動運転技術を披露してい
調講演を行い、NVIDIAのジェンスン・フアン氏が登壇して「NVIDIAの た。一方のトラクターを人が操作し、もう一方が自動で追従する構成
チップで自動運転が可能だ」と説明していた。当時は黒いジャケット姿 で、距離を自動調整しながら収穫物を回収する。さらに工程ごとにAI
で、現在の革ジャン姿になるのはその数年後からである。フォードも同 が判断し、回転数などを最適化しているという。農業分野における自
様に自動運転を強く打ち出していたが、当時語られた「もうすぐ実現す 動化が着実に進んでいることが分かる。
る」という見通しは、実際には時間を要している。私自身は、本格的な
社会実装は2030年以降になると見ている。
こうした背景もあり、完成車メーカーはCESにほとんど姿を見せなく
なった。現在参加しているのはBMW程度であり、CESは車両そのもの
の展示会ではない。車載技術の展示は多いが、自動車展示会と誤解す
べきではない。なお、ソニー・ホンダモビリティが継続して出展している
のは、まだ製品が完成段階にないためであり、販売が始まれば出展し
なくなる可能性が高いと考えている。 キャタピラーもAIを活用した安全技術を紹介していた。上空に高圧
電線があるような危険な状況をAIが検知し、自動的に停止する仕組み
実用段階に入った賢い「はたらくクルマ」― である。また、米国バージニア州のラックストーン鉱山で稼働する自動
EV化と自動化が進む現場モビリティ 運転車両の様子を中継していた。4台の車両が自動で稼働し、採掘した
石を積み込み集積地へ運搬しており、無事故で36万マイルを走行して
一方で、「はたらくクルマ」の分野では出展企業がさらに増えている。
いると説明されていた。
昨年からはオシュコシュ(Oshkosh)が参加するようになった。同社は
米国でも著名な特殊車両・特装車の世界的メーカーであり、空港用の
化学消防車などを手がけている。日本でも自衛隊で使用されている高
性能車両であるが、近年はこれをバッテリーEV化している。
この消防車は、空港内で瞬時に現場へ向かう必要があるため高い
瞬発力が求められる一方、長距離走行は不要で、行動範囲も空港内
に限られる。消火後はタンクが空になり次第、消防基地に戻る運用で
あり、この動き方はEVとの相性が極めて良い。すでにテキサス州のダ
ラス・フォートワース国際空港に配備されているという。
日本企業では、昨年に続きクボタが出展した。モジュール交換によ かつてCESはコンシューマー向け展示が中心であったが、現在は
り多様な作業に対応できるプラットフォームや、既存の農機に自動運 産業用途や開発現場向けの技術展示が主流となっている。主催者、
転や作物分析機能を組み込んだモデルを展示していた。 出展企業ともに、CESはすでにプロフェッショナル向けの場であると
認識している。コンシューマー向け展示はベネチアン会場に集まり、
以上が賢い「はたらくクルマ」の事例である。次に、自動運転そのもの 専門技術はラスベガス・コンベンション・センターに集約されつつあ
の動向について見ていく。先ほどのジョンディアの事例は、農地内に限 ると感じている。
定された自動運転であった。
道路自動運転の現実解 ― 実用化に届かないフィジカルAIロボットと、
Waymo・Zooxと学習手法の進化、SDVへの移行 「 Dragonwing」が示す現実的アプローチ
最後にフィジカルAIロボットについて触れるが、率直に言えば、現
次に、道路における自動運転についてである。完成車として実際に
状では多くが実用段階には達していないと感じた。これらに本格的
運用されている例としては、ZooxとWaymoが挙げられる。Zooxは
な投資を行う意義は乏しいというのが正直な印象である。例えばLG
Amazon系列、WaymoはGoogle系の企業であり、いずれもCESに出
展していた。 電子は、家事支援を掲げたロボットを展示していたが、シャツ1枚を
洗濯機に入れるだけで30秒を要していた。さらに、洗濯後に絡まっ
た衣類を取り出す動作は示されておらず、その段階には至っていない。
Waymoは今回、第5世代の「ドライバー」を投入した。ここでいう
ドライバーとは人ではなく、車両に搭載されたセンサー、センサーユ
ニット、コンピューターを統合したシステム全体を指す。第4世代は多 また、中国企業ではUnitreeなどが二足歩行ロボットによるボク
段構造であったが、第5世代は「座布団の上にお茶碗が載っているよ シングのデモンストレーションを行っていたが、これらのロボットは
うな」形状となり、外観が大きく変化している。 実際には物を持ち上げることができない。構造上、40kgや50kgの
重量物を扱おうとすれば転倒してしまう。物を持てないロボットは
Waymoの担当者によれば、同社が受け入れられている理由は 実用性に欠け、特に産業用途では成立しない。
「安心して乗れる」点にあるという。プライバシーが確保され、車内
で自由に振る舞えることが利用者に評価されている。Zooxについて
も、街中で実際に走行している様子を確認しており、すでにサービス
として運用されている。
また、自動運転の学習手法も変化している。以前は走行距離が安
全性の指標とされたが、現在はCGを用いた学習が主流になりつつ
ある。実写を基に高精度な3D空間を再現し、実走行では再現できな
い事故状況も仮想空間で学習可能となった。英国のWayveなどがこ
の手法を採用している。
二足歩行にこだわるよりも、車輪移動で、柱状の構造に両腕を
また、イスラエルのImagryも出展していた。同社は高精度マップ
備えたロボットの方が現実的である。ダンスはソニーが25年前に
やエンドツーエンド型に依存しない独自方式を採用し、自動運転バ
QRIOで実現しており、走行も本田技研工業がすでに達成している。
スで世界各地に実績を持つ。特定のハードウェアに依存せず、柔軟
こうした歴史を踏まえると、現在展示されている多くのロボットは、
に動作する点を特徴としていた。
やはり娯楽的な存在にとどまっている。本当に産業に必要なロボッ
車載技術では「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」という トとは何かを、改めて冷静に考える必要があるだろう。
言葉が広く使われている。今回、シーメンスはデジタルツインとAIを
一方で、今回特に注目すべき動きとしてQualcommが挙げられ
組み合わせ、すべてを仮想空間で検証した上で実車に反映する仕組
る。同社は米国の大手半導体メーカーであるが、単なる半導体販
み「PAVE���」を提案していた。
売にとどまらず、ソリューション提供型のビジネスへと踏み出して
いる。この取り組みを同社は「Dragonwing」と呼んでいる。 ていないように見受けられた。さらに深刻なのは、認証取得に必
要なコストや、その後の投資回収についての理解が不足している
点である。多額の開発費を投じた後、どのように事業として成立
させるのかというビジネスプランが見えてこない。これは先行者
を含め、市場性そのものに対しても疑問を抱かざるを得ない状況
である。
CESの現在地 ―
自動化・実行重視へ向かう産業構造の転換
ここまでを踏まえて状況をまとめると、アドバンスド・モビリティ
全体として大きな新提案は見られなかった。自動運転は依然とし
て難易度が高いものの、工場敷地内や鉱山のように環境が制御
された場所では、すでに実用段階に入っている。我々の立場で考
えれば、工場内外での簡易な搬送や配達、生産ラインへの定期的
な物資供給などは、自動化・ロボット化が十分可能であり、従来の
AGV(無人搬送車)を超える展開が期待できる。
Qualcommは自動運転を含む幅広い分野に関わっており、
スマートフォンに搭載されるモデムの6~7割を同社製が占め AI分野では、Qualcommが前面に出てきたことが最大のトピッ
るなど、通信分野で圧倒的な強みを持つ企業である。加えてAI分 クである。同社は半導体販売にとどまらず、AIの開発成果そのものを
野でも高い技術力を有しており、そのQualcommがハードウェア 提供するビジネスへと舵を切った、これは大きな転換点といえる。大規
ではなくAIソリューションを前面に押し出し始めた点は非常に示 模言語モデルについても、キャタピラーの事例が示すように、利用を意
唆的である。 識させない形で製品やサービスに組み込まれていく流れになるだろ
う。
Dragonwing自体は昨年2月に発表されていたが、今回の
CESでは初めて具体的な形として示された。ロボットへの応用 総じてCESは、もはや消費者向け製品の展示会ではない。新型家電
や、冷蔵庫などの家電にDragonwingプロセッサーを組み込み、 を披露する場ではなく、プロフェッショナル向けツールと技術を示し、
Qualcommの技術がどのように価値を生み出すかが紹介されて 企業同士がその場で具体的な連携や交渉を行う場へと変化している。
いた。 モビリティも自動化のための手段として再定義され、半導体は学習重
視から実行重視へと移行している。これこそが、今回のCESを象徴する
空飛ぶクルマの現実 ― 大きな動きであった。
技術展示と事業性の大きな乖離 まとめ
最後に空飛ぶクルマについて触れるが、現時点で展示されて CES ����では、AIと半導体、アドバンスド・モビリティが相互に結び
いるものは、正直に言えば事業性が極めて疑わしい。今回展示さ 付き、産業構造が「構想」から「実行」へと明確に移行している姿が示さ
れていた、ある国の自動車部品メーカーの機体も、人目を引くた れた。自動運転や現場モビリティは制御環境下では実用段階に入り、
めの演出に過ぎず、実際の事業につながるとは考えにくい。プラ 半導体も学習重視から実行重視へと設計思想を転換しつつある。
スチック射出成形メーカーによる展示も同様である。すでに開発
が進んでいる先行企業と、今になって参入してきた企業との間に これらの動向は、製造業やモビリティ産業のみならず、あらゆる産業
は大きな隔たりがある。 の競争環境を左右する基盤変化である。だからこそ、AIや半導体といっ
た、最新技術の世界的潮流を継続的に把握し、自社にどう影響するの
かを冷静に見極める視点が不可欠だ。
情報は受動的に収集するのではなく、自ら意識して収集することが
重要だ。また、国内だけでなく、海外の動向も俯瞰し、世界的な動きか
ら判断することが、今後の技術戦略と事業判断を大きく左右するといっ
ても過言ではないだろう。
先行企業は早ければ年内にも商業運航の認証取得が視野に
※記事内容および、ご所属等はセミナー開催当時のものです。
入っているが、今回展示していた企業の多くは、その入口にも立っ
© Stockmark Inc.
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