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主に車載ECUの入力部保護に使用するデバイスの必要性や保護の方法、保護用デバイスの種類についてまとめました。
また、ISO7637-2、ISO16750-2 に対して新電元製デバイスの使用例も記載しています。
車載ECU用途に新電元製品をご使用する際にお役立てください。
このカタログについて
ドキュメント名 | 車載アプリケーション技術資料 |
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ドキュメント種別 | ハンドブック |
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取り扱い企業 | 新電元工業株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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kofafa
CAT.No. TN1_MF_21_jp
車載用アプリケーション技術資料
~入力保護用デバイス~
Rev.2.1
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CAT.No. TN1_MF_21_jp
目次
はじめにお読みください................................................................................................................................................................ 3
0.はじめに ................................................................................................................................................................................. 4
1.背景 ....................................................................................................................................................................................... 4
2.逆接続保護 ............................................................................................................................................................................. 5
2-1.逆接続保護の概要 ..................................................................................................................................................... 5
2-2.ダイオードを用いた逆接続保護 ................................................................................................................................. 5
2-3.PchMOSFETを用いた逆接続保護 ............................................................................................................................. 6
2-4.逆接続保護と逆電流保護の違い ................................................................................................................................. 6
3.理想ダイオード ...................................................................................................................................................................... 7
3-1.理想ダイオードの概要(MF2003SV / MF2007SW) .............................................................................................. 7
3-2.当社理想ダイオードの動作 ........................................................................................................................................ 7
3-2-1.基本動作(MF2003SV) ............................................................................................................................ 7
3-2-2.基本動作(MF2007SW) ........................................................................................................................... 7
3-3.当社理想ダイオードの特性と機能.............................................................................................................................. 8
3-3-1.順方向特性(MF2003SV / MF2007SW).................................................................................................. 8
3-3-2.入力逆接続対策(MF2003SV / MF2007SW) ........................................................................................... 8
3-3-3.並列接続(MF2003SV / MF2007SW) ..................................................................................................... 9
3-3-4.クランキング対策(MF2003SV) ............................................................................................................. 10
3-3-5.アクティブクランプ(MF2003SV) ......................................................................................................... 11
3-3-6.暗電流対策(MF2003SV / MF2007SW)................................................................................................ 11
4.車載規格について ................................................................................................................................................................. 12
4-1.車載規格の概要 ....................................................................................................................................................... 12
4-2.ISO7637-2 ............................................................................................................................................................ 12
4-2-1.Pulse1 ...................................................................................................................................................... 13
4-2-2.Pulse2a .................................................................................................................................................... 14
4-2-3.Pulse3a .................................................................................................................................................... 15
4-2-4.Pulse3b .................................................................................................................................................... 16
4-3.ISO16750-2 .......................................................................................................................................................... 17
4-3-1.重畳交流電圧試験 ...................................................................................................................................... 18
4-3-2.電源電圧の緩速増減 .................................................................................................................................. 22
4-3-3.電源電圧の瞬時低下 .................................................................................................................................. 22
4-3-4.電圧低下時のリセット挙動 ........................................................................................................................ 24
4-3-5.始動プロファイル ...................................................................................................................................... 24
4-3-6. ロードダンプ ............................................................................................................................................ 26
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CAT.No. TN1_MF_21_jp
はじめにお読みください
1. ご採用に際しては、別途仕様書をご請求の上、ご確認をお願いいたします。
2. 本資料に記載されている当社製品の品質水準は、一般的な信頼度が要求される標準用途を意図しています。
その製品の故障や誤動作が直接生命や人体に影響を及ぼすような極めて高い品質、信頼度を要求される特別、特定用途の機器、
装置にご使用の場合には必ず事前に当社へご連絡の上、確認を得て下さい。 当社製品の品質水準は以下のように分類しておりま
す。
【標準用途】
コンピュータ、OA 等の事務機器、通信用端末機器、計測器、AV 機器、アミューズメント機器、家電、
工作機器、パーソナル機器、産業用機器等
【特別用途】
輸送機器(車載、船舶等)、基幹用通信機器、交通信号機器、防災/防犯機器、各種安全機器、医療機器等
【特定用途】
原子力制御システム、航空機器、航空宇宙機器、海底中継機器、生命維持のための装置、システム等
3. 当社は品質と信頼性の向上に絶えず努めていますが、必要に応じ、安全性を考慮した冗長設計、延焼防止設計、
誤動作防止設計等の手段により結果として人身事故、火災事故、社会的な損害等が防止できるようご検討下さい。
4. 本資料に記載されている内容は、製品改良などのためお断りなしに変更することがありますのでご了承下さい。
製品のご購入に際しましては事前に当社または特約店へ最新の情報をご確認下さい。
5. 本資料の使用によって起因する損害または特許権その他権利の侵害に関しては、当社は一切その責任を負いません。
6. 本資料によって第三者または当社の特許権その他権利の実施に対する保証または実施権の許諾を行うものでは
ありません。
7. 本資料に記載されている製品が、外国為替及び外国貿易管理法に基づき規制されている場合、輸出には同法に基づく
日本国政府の輸出許可が必要です。
8. 本資料の一部または全部を当社に無断で転載または複製することを堅くお断りいたします。
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0.はじめに
本資料は主に車載 ECU の入力部保護に使用するデバイスの必要性や保護の方法、保護用デバイスの種類について説明していま
す。また、ISO7637-2、ISO16750-2に対して当社デバイスの使用例を載せていますので、参考としてご活用ください。
1.背景
自動車の電子化は進み、走行や運転の補助、事故を未然に防ぐシステムなどに様々な ECU が搭載されています。ECU 搭載数は
車種によって差はありますが20~30個とも言われており、今後も完全自動運転化などでECUの搭載数が増えることや高機能化、
冗長化などの要求も増えてきます。また、ECU の搭載数が増えていくことでスペースの問題が発生し ECU は小型化が求められま
す。他にも単純にECUを増やすのではなく、複数のECUを統合ということもあります。こうした中でECUは、統合や高機能化に
よる消費電流の増加や部品点数増加への対応が求められています(図1)。
自動車の電子化=ECUの増加
複数のECU⇒統合ECU ECUの高機能、冗長化
ECUの消費電流増加 ECUの部品点数増加
図1 今後の車載ECUで想定される事象
消費電流の増加、搭載部品増加について、搭載される部品の中で入力保護部に着目したとき、これまで使用してきた部品では
ECU の仕様を満足できないことも考えられます。ECU の仕様を満足できない例としては、部品の発熱、低入力電圧時の ECU 動作
不良、ECUサイズなどが挙げられます。いずれの例も使用する部品のスペック、サイズが影響するため、新たな部品の検討が必要
になってくることが考えられます(図2)。
ECUの消費電流増加 ECUの部品点数増加
ECUが受ける影響 発熱大 低入力電圧時の動作不良 ECUサイズ大
逆接続・逆電流保護用のデバイス(ダイオード)が原因となるスペック、サイズ
動作時のVF電圧 パッケージサイズ
図2 今後の車載ECUで想定される問題点
なお、本資料では入力保護部の逆接続、逆電流保護用として使われるダイオードや低損失で小型化が実現できる理想ダイオード、
サージ吸収用のデバイスについて説明していきます。
ここまで車載ECUに絡めた内容になっていますが、逆接続、逆電流保護用のデバイスを必要とする機器は他にもあり、問題点は
共通していますので、用途が異なる場合でも参考資料としてお使いください。
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2.逆接続保護
2-1.逆接続保護の概要
決められた極性を入力として動作する車載 ECU などの機器は必ずしも正しい極性でバッテリなどの入力源が接続されるとは限り
ません。したがって、接続される側の機器には誤接続されたことを想定した対策が必要となります。この対策を一般的に逆接続保護
と言い、対策を施すことでその機器が壊れないようにします。なお、本資料では保護をする方法の一部を紹介しますが、本資料で紹
介しない他の逆接続保護の方法も存在します。
2-2.ダイオードを用いた逆接続保護
従来、ダイオードを用いた逆接続保護が使われています。ダイオードの順方向特性(A → Kの向きに電圧を掛けると電流が流れ
る特性)と逆方向特性(K → Aの向きに電圧を掛けても電流が流れない特性)を活かした方法で、一般ダイオード、ファストリカ
バリダイオード、ショットキーバリアダイオードが使われます。
使用するダイオードは、機器の使用温度範囲や動作電圧範囲などによって逆電流特性 IR が低リークであること、低 VF であるこ
とが求められる場合があるため、ダイオードの選定には注意が必要です。特に VF には注意が必要で、VF の値が大きいダイオード
を選定してしまうと機器の動作電圧下限値付近における誤動作や停止を引き起こしてしまうことが考えられます。また、消費電流
によっては導通損失(VF × 消費電流)による自己発熱や煽り熱が機器内部に影響を及ぼすこともあります(図3)。このようなこ
とを起こさない対策として低 VFのダイオードを選定するのが一般的ですが、消費電流が大きく増加してしまうと低 VFのダイオー
ドでも仕様が満足できないということも考えられるため、2-3項のような逆接続保護の方法をとる場合があります。
●VFによる電圧降下 機器の動作電圧下限値付近における誤動作や停止の原因
消費電流が増加するとダイオードを用いた逆接続保護では仕様成立しない恐れあり
●VFによる導通損失 自己発熱、煽り熱が機器の内部に影響
図3 ダイオードによる逆接続保護のデメリット
他にも車載 ECU で求められる規格(例として ISO7637-2、ISO16750-2)を考慮したうえで TVS との組合せからダイオードを
選定してください。図4と図5はTVSとダイオードの組合せ例となります。
図4 高耐圧Di + 片方向TVSでの回路保護例 図5 双方向TVS + SBDでの回路保護例
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2-3.PchMOSFETを用いた逆接続保護
消費電流が大きく増加してしまうとダイオードを用いた逆接続保護では仕様成立しない恐れがあるため、電圧降下が小さく、低
損失な逆接続保護が必要になります。その方法の一つとして PchMOSFET を用いた逆接続保護があります。PchMOSFET はダイオ
ードと異なりゲート端子を制御することでON / OFF動作をさせるデバイスですが、図6のような接続をすることで逆接続保護と
して使用することができます。
PchMOSFETを使用するメリットは選定するPchMOSFETで変わってきますが、ON抵抗(Ron)の低い製品を選定することで電
圧降下を小さく、導通損失を少なく、発熱も抑えることができます。また、ダイオードと比較してパッケージの小型化も実現でき
る可能性があります。
●SBD逆接続保護の電圧降下、損失例
条件:消費電流3A VF=0.45V
電圧降下:0.45V 導通損失:1.35W
●PchMOSFET逆接続保護の電圧降下、損失例
条件:消費電流3A RON=50mΩ
電圧降下:0.15V 導通損失:0.45W
図6 PchMOSFETでの回路保護例
ただし、PchMOSFET はダイオードのような片方向の特性(A → K の向きに電圧を掛けると電流が流れる順方向特性)ではなく、
ゲート ON 時は両方向(ドレイン → ソース、ソース→ドレイン)に導通する特性のため、逆電流を防止することができませんの
で注意が必要です(図7)。ダイオードでは仕様が成立せず、逆接続保護と逆電流を防止しなければならない機器に対しては後述す
る理想ダイオードを使用した方法が必要になります。
PchMOSFET はゲート ON 時、両方向(ド
レイン → ソース、ソース → ドレイン)に導
通します。
逆電流保護が必要な場合は別途検出回路を
設けるなどの対策をとるか、後述する理想ダ
イオードを使用してください。
図7 PchMOSFETによる保護回路のデメリット
2-4.逆接続保護と逆電流保護の違い
機器の仕様によっては逆電流に対する保護が求められることがあります。逆接続保護にダイオードを使用する場合は、高温時な
どのリーク電流を考慮していれば逆電流保護が求められていても別の対策をとる必要はありませんが、PchMOSFET を使用した逆
接続保護の場合は、逆電流保護の対策が別途必要になります。このように逆接保護の対策が出来ていれば必ず逆電流保護も出来る
ということにはなりませんので、逆電流保護が必要な場合は、選定するデバイスに注意をしてください。
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3.理想ダイオード
3-1.理想ダイオードの概要(MF2003SV / MF2007SW)
前述の通り電子機器の多機能化に伴う大電流化によりダイオードの電圧降下(VF)や発熱の増加が懸念され、大電流での電圧降
下や発熱を抑えられる逆接続保護・逆電流防止用素子が求められます。そこで、低 VF・低損失・低発熱を可能とし、逆接続保
護・逆電流防止機能を備えた理想ダイオードIC(MF2003SV / MF2007SW)を製品化しました。
3-2.当社理想ダイオードの動作
3-2-1.基本動作(MF2003SV)
MF2003SVは、PchMOSFETと制御回路を内蔵し、低損失なダイオード
VIN OUT
動作(理想ダイオード動作)を実現したデバイスです。図8のように、順 Batt LOAD
Pch
方向「Batt → LOAD」に電流を流し、逆方向「LOAD → Batt」には電流を MOSFET
流しません。 制御回路
制御回路内のコンパレータで VIN と OUT の電圧を比較し、ゲートを制 MF2003SV GND
御してPchMOSFETをON / OFFさせて、Batt - LOAD間を導通 / 遮断させ
ています。
図8 MF2003SV概略図
3-2-2.基本動作(MF2007SW)
①MF2007SWは、NchMOSFETと組み合わせて、低損失なダイ
オード動作(理想ダイオード動作)が可能です。図9のように、順
Batt LOAD
方向「Batt → LOAD」 に電流を流し、逆方向「LOAD → Batt」には
電流を流さない動作となります。IC内ではVINとOUTの電圧を比
較し、ゲートを制御してNchMOSFETをON / OFFさせて、Batt - SOURCE GATE OUT
LOAD間を導通 / 遮断させています。 制御回路
VIN
MF2007SW
図9 MF2007SW理想ダイオードタイプの概略図
②MF2007SWは図10のように、ハイサイドの外部NchMOSFETを
外部 NchMOSFET
ON / OFFするための制御ICとなります。MF2007SWのIC内では Source Drain
Batt
SOURCE端子電位を基準電位として、チャージポンプ(Charge Pump)
が働きます。チャージポンプからGATEに駆動信号が出力され、外部 Gate
SOURCE GATE
NchMOSFETをON / OFFさせます。
VIN
Charge Pump
MF2007SW
図10 MF2007SW外部 NchMOSFETの接続図
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3-3.当社理想ダイオードの特性と機能
3-3-1.順方向特性(MF2003SV / MF2007SW)
MF2003SV
順方向特性は従来のダイオード VFと比べ、MF2003SV を使用
することにより、PchMOSFET の ON 抵抗(Ron)による電圧降
下が低いため、低損失・低発熱を実現できます。図 11 は
MF2003SV の VF - IF特性図になります。PchMOSFET の Ron を
VFに換算しています。図11では、15Aクラスの当社ショットキ
ーバリアダイオード(SBD)と比較しています。4A 以下で使用
する場合、D15FR4STよりMF2003SVのVFが低く、損失や発熱
は小さくなります。
図11 MF2003SVのVF - IF特性図
図12は回路動作させた時の特性になります。SBDは当社の代表的なD15FR4STとD30FDC4S(30Aクラス)で比較しました。
D30FDC4S と MF2003SV を比較すると 5A 以下であれば、MF2003SV の方が損失は小さくなります。D15FR4ST と比較すると、
出力電流 5A の条件では MF2003SV の方が、42%損失が小さくなります。また、MF2003SV は D15FR4ST と D30FDC4S に比べ
て外形サイズが小さいため、小型化が実現できます(図13)。
図12 MF2003SVとSBDの損失特性比較 図13 MF2003SV外形サイズ比較
MF2007SW
MF2007SWについては選定するMOSFETによって、理想ダイオードとしてのVFと回路損失はMF2003SVより低くなります。
3-3-2.入力逆接続対策(MF2003SV / MF2007SW)
バッテリ逆接続時(VIN < 0V)の対策については、MF2003SVとMF2007SW
VIN OFF OUT
で動作が異なります。
MF2003SV
制御回路
Batt
MF2003SVは、右図紫色矢印のようにGND端子から内蔵PchMOSFETのゲー
IC内GND
トを制御する向きに電流が流れます。その際、PchMOSFETのVgsは+側電位と
なりますので、PchMOSFET は OFF し続けます。また、IC 内部の逆接続保護用 逆接続保護用
MOSFET
MOSFETがOFFすることで「GND端子 → VIN端子」の経路でも電流を流さな MF2003SV GND
いため、逆接続時のバッテリショートを防ぎます。また、GND 端子と IC 内
GNDはショートされずに、IC内に電源が供給されません。そのため、制御回路 図14 MF2003SVの入力逆接続対策
が働かず、内蔵PchMOSFETの誤ONも防ぎます(図14)。
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MF2007SW
MF2007SW は、図 15 の紫色矢印の経路で GND 端子より IC 内へ電流が流れて急速放電用 MOSFET を ON させるので、外部
NchMOSFET は OFF となります。同時に、MF2007SW はGND端子と IC内 GND の間に逆接続保護用 NchMOSFET を配置してい
ます(図 16)。入力逆接続時には逆接続保護用 MOSFET が OFF するので、「GND 端子 → VIN 端子」の経路で電流を流さないた
め、逆接続時のバッテリショートを防ぎます。GND 端子と IC内 GND はショートされずに、IC内に電源が供給されません。その
ため、制御回路が働かないためにGATE電圧は立ち上がらず、外部NchMOSFETの誤ONも防ぎます。
OFF
外部NchMOSFET
SOURCE GATE
VIN VIN
急速放電用 制御回路
Batt
MOSFET
Batt
IC内GND
MF2007SW 逆接続保護用
MOSFET MF2007SW
GND GND
図15 MF2007SWの入力逆接続対策1 図16 MF2007SWの入力逆接続対策2
3-3-3.並列接続(MF2003SV / MF2007SW)
ダイオードを並列接続して使用する場合、同じ製品であっても順電圧 VF にはバラツキがあり、それぞれのダイオードに流れる
電流に不均衡が生じることを考慮しなければなりません。特に、温度が高くなると VFは下がるため、より VFが低い方に電流が多
く流れ、電流分担の不均衡が生じます。一方、MOSFET は温度が高くなると ON 抵抗(Ron)は大きくなります。並列接続する場
合、Ronのバラツキがあっても、ダイオードに比べて電流分担の不均衡は小さくなります。
MF2003SV
MF2003SV は図 17 の通り、並列接続を容易に実現できます。図 18 が、MF2003SV のそれぞれの温度上昇特性となります。ほ
ぼ均等に電流分担がされますので、温度上昇差が小さくなります。並列接続によって大きな電流への対応も可能となります。
MF2003SV
1 VIN OUT 8
2 VIN OUT 7
3 VIN TUB
OUT 6
4 VIN GND 5
Batt LOAD
MF2003SV
1 VIN OUT 8
2 VIN OUT 7
TUB
3 VIN OUT 6
4 VIN GND 5
図17 MF2003SVの並列接続図 図18 MF2003SVの並列接続での温度上昇
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MF2007SW
図19の通り、MF2007SWは外部MOSFETを並列に接続することで実現可能です。それぞれのMOSFETの温度上昇特性は図20
の通りです。ほぼ均等に電流分担がされますので、温度上昇差が小さくなります。MOSFETを並列接続することによって大きな電
流への対応も可能となります。
Q1
P240FZ4QNK
Q2
P240FZ4QNK
Batt
LOAD
5 4 3 2 1
VIN NC GATE OUT
SOURCE
MF2007SW
EN REV NC GND IDET
6 7 8 9 10
図19 MF2007SW使用時のFET並列接続例 図20 MF2007SWの並列接続での温度上昇
3-3-4.クランキング対策(MF2003SV)
MF2003SVは入力電圧が低い場合にも、PchMOSFETをONできるようにするためクランキング対策をしています。
図21 はMF2003SV内蔵MOSFETの入力電圧によるRon特性です。入力電圧が約3V以上でPchMOSFETを ONできていること
が分かります。
図21 MF2003SV内蔵MOSFETのVINによるRon特性
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3-3-5.アクティブクランプ(MF2003SV)
アクティブクランプは、入力側の急峻な変動による負サージ電圧への対策として、PchMOSFET の Vds を保護するための機能で
す。図 22 のように、VIN 端子に高周波・負サージパルスを印加した場合、PchMOSFET の Vds電圧(OUT - VIN 端子間電圧)が
アクティブクランプ動作開始電圧 40V に達すると、クランプ動作が働きます。PchMOSFET の Vds 電圧をクランプするので、
PchMOSFET の Vds 耐圧オーバーを防ぎます。このとき、OUT 端子に接続したコンデンサは十分充電されているので、OUT の低
下が抑えられ、Vds = 40V以下になると、クランプ動作が解除されます。
GND 負サージ波形
20V/div.
500us/div.
Active Clamp
動作期間
OUT 10V/div.
GND VIN 10V/div.
Vds=40V以下で
Active Clamp 解除
Active Clampによる 500us/div.
クランプ動作
図22 MF2003SVアクティブクランプ動作例
3-3-6.暗電流対策(MF2003SV / MF2007SW)
理想ダイオードの回路構成は制御ICを備えているため、MOSFETがOFFした状態でも消費電流(暗電流)が発生します。この
暗電流対策として、MF2003SV及びMF2007SWでは、以下のようなIC消費電流の低減機能を有しています。
・MF2003SV:IC内の消費電流は、3uA以下を実現します。
・MF2007SW:IC内の消費電流は、スタンバイモード(EN = LOW)にすることで5uA以下を実現します。
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4.車載規格について
4-1.車載規格の概要
車載電装品は、エンジン始動時のバッテリ電圧降下、入力電圧の瞬停、サージ等、不安定条件での正常動作が求められます。本
章では、当社製品の MF2003SV、MF2007SW、TVS、および MOSFET を使用した理想ダイオード回路に於いて、上記のような不
安定条件での動作を確認するため、ISO7637-2およびISO16750-2を基に各種サージ印加試験を実施した結果を以降に記載してい
ます。
4-2.ISO7637-2
ISO 7637-2 は、過渡妨害に対するイミュニティの試験方法を規定しています。スイッチの開閉などの過渡的な動作に伴って、
車両の公称12 V や24 V の直流電圧値に変動が生じる可能性を想定した試験となります。本項ではPulse1、2a、3a、3b、を実施
しました。試験を実施した回路図、および波形測定点を図23、図24に示します。
※部品定数、負荷条件、実装基板の放熱性能やパターン引き回しにより、IC や TVS の発熱、挙動が異なりますので、本資料は参
考資料としてお使いください。
+ 1 VIN OUT 8
Iin VIN OUT
サ 2 VIN OUT 7 C3
ー MF2003SV 50V
3 VIN OUT 6 1u
ジ
印 C21
4 VIN GND 5 63V
加 ZD1 R1
1000u
装 10k
置
ー
図23 MF2003SV回路図
Q2
+ OUT
Iin VIN
サ ZD3 C18
ー PDZV16B 100V
ジ 16V, 1W 4.7u
ZD1
印 C9 C21
63V
加 ZD2 GATE - SOURCE 100V
0.47u 1000u
装
置 C8
100V
ー 5 4 3 2 1
0.22u
VIN NC SOURCE GATE OUT
MF2007SW
EN REV NC GND IDET
6 7 8 9 10
R6
43k
C11
50V R5
1000p 1k
R4
1k
C10
50V
1000p
IDET
EN GND VDD
図24 MF2007SW回路図
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4-2-1.Pulse1
Pulse1は誘導性負荷への電源が遮断された時、電源ラインに発生する逆電圧サージ(負サージ)を模擬しています。
表1 Pulse1試験条件
12V系 24V系
UA 13.5V 27V
US -150V -600V
Ri 10Ω 50Ω
td 2ms 1ms
tr 1us 3us
t1 0.5 s
図25 Pulse1模式図 t2 200 ms
t3 <100 us
※Riは 試験装置の内部抵抗の値
MF2003SV 12V系 MF2007SW 12V系 MF2007SW 24V系
ZD1: なし ZD1: ST04-18F1 ZD2: ST04-33F1 ZD1: ST06-33CE ZD2:ST06-39CE
Q2: P140LF4QNK Q2:P72LF7R5SNK
負サージ印加時拡大 負サージ印加時拡大 負サージ印加時拡大
負サージ電圧が印加された場合、出力側から入力側への逆電流を防止します。入力復帰時は出力コンデンサに電荷を供給するの
で、突入電流が確認できます。
★MF2003SV
アクティブクランプ機能(3-3-5参照)を有しており、VIN - OUT間電圧を内蔵PchMOSFETの耐圧以下にクランプします。
★MF2007SW
TVSでVIN - GND間電圧をICの耐圧以下にクランプする必要があります。上記試験例は、12V系ではZD1にST04-18F1、ZD2
にST04-33F1を使用し、24V系ではZD1にST06-33CE、ZD2にST06-39CEを使用した結果になります。
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4-2-2.Pulse2a
Pulse2a は、DUT と並列の大きな負荷が遮断された場合、ワイヤーハーネスのインダクタンスにより電源ラインに発生する一次
的な過電圧(正サージ)を模擬します。本試験は出力側の電解コンデンサ(C21)は未実装で実施しました。
表2 Pulse2a試験条件
12V系 24V系
UA 13.5V 27V
US 112V
Ri 2Ω
td 0.05ms
図26 Pulse2a模式図 tr 1us
t1 0.2s
※Riは 試験装置の内部抵抗の値
MF2003SV 12V系 MF2007SW 12V系 MF2007SW 24V系
ZD1: DL04-33F1 ZD1: DL04-33F1 ZD1: ST06-33CE ZD2:ST06-39CE
Q2: P140LF4QNK Q2: P98LF6QNK
正サージ(1パルス目)印加時拡大 正サージ(1パルス目)印加時拡大 正サージ(1パルス目)印加時拡大
正サージの立ち上がりでは、MOSFETはONしていますが、立下りの期間ではOUT > VINとなることで、MOSFETはOFFして
います。そのため、OUTはVINのピーク電圧(Us値)を保持します。
★MF2003SV
VINの絶対最大定格範囲内にクランプする必要があります。上記試験は、当社TVSのDL04-33F1を使用した結果になります。
★MF2007SW
VINの絶対最大定格と、外部NchMOSFETのVDSS耐圧以内にクランプする必要があります。上記試験例は、12V系では当社TVS
のDL04-33F1を、24V系ではZD1にST06-33CE、ZD2にST06-39CEを使用した結果になります。
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4-2-3.Pulse3a
Pulse3a は、電源ラインのスイッチ開閉の際、配線間の容量やインダクタンスによって発生するパルスのバーストを模擬します。
Pulse3aは負極性のパルスです。本試験は、出力側のコンデンサ(C21)とTVSダイオード(ZD1)は未実装で実施しました。
表3 Pulse3a試験条件
12V系 24V系
UA 13.5V 27V
US -220V -300V
Ri 50Ω
td 150ns ± 45ns
図27 Pulse3a模式図 tr 5ns ± 1.5ns
t1 100us
t4 10m s
t5 90ms
※Riは 試験装置の内部抵抗の値
MF2003SV 12V系 Pulse3a MF2007SW 12V系 Pulse3a MF2007SW 24V系 Pulse3a
Q2: P140LF4QNK Q2: P98LF6QNK
★MF2003SV / ★MF2007SW
Pulse3aはパルス幅が狭小で、回路の容量によりサージが吸収されるため、VINがICの絶対最大定格以内に収まっています。回
路の容量が小さい等で、絶対最大定格を超えたサージが入力される場合は、TVSを追加してください。例えば、12V系ではDL04-
33F1、24V系ではST06-39CEを推奨します。
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4-2-4.Pulse3b
Pulse3b は、電源ラインのスイッチ開閉の際、配線間の容量やインダクタンスによって発生するパルスのバーストを模擬します。
Pulse3bは正極性のパルスです。本試験は、出力側のコンデンサ(C21)とTVSダイオード(ZD1)は未実装で実施しました。
表4 Pulse3b試験条件
12V系 24V系
UA 13.5V 27V
US 150V 300V
Ri 50Ω
td 150ns ± 45ns
図28 Pulse3b模式図 tr 5ns ± 1.5ns
t1 100us
t4 10m s
t5 90ms
※Riは 試験装置の内部抵抗の値
MF2003SV 12V系 Pulse3b MF2007SW 12V系 Pulse3b MF2007SW 24V系 Pulse3b
Q2 Q2: P140LF4QNK Q2: P98LF6QNK
★MF2003SV / ★MF2007SW
Pulse3bはパルス幅が狭小で、回路の容量によりサージが吸収されるため、VINがICの絶対最大定格以内に収まっています。回
路の容量が小さい等で、絶対最大定格を超えたサージが入力される場合は、TVSを追加してください。例えば、12V系ではDL04-
33F1、24V系ではST06-39CEを推奨します。
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4-3.ISO16750-2
ISO16750-2 は、車両搭載機器に対する電気的負荷の電圧変動イミュニティについて記載しています。本項では ISO16750-2 を
参考にした電源電圧変動試験を行い、MF2003SV および MF2007SW の挙動を確認しました。試験を実施した回路図、および波形
測定点は図29、図30の通りです。
※部品定数、負荷条件、実装基板の放熱性能やパターン引き回しにより、IC や TVS の発熱、挙動が異なりますので、本資料は参
考資料としてお使いください。
+ 1 VIN OUT 8
VIN OUT
試 Iin 2 VIN OUT 7 C3
験 MF2003SV 50V
波 3 VIN OUT 6 1u
R21
形 12
発 4 VIN GND 5 C21
生 R1 63V
10k 1000u
装
置
ー
図29 MF2003SV回路図
Q2
OUT
+
試 Iin VIN
C21 R21
験 C18 63V 12V系
波 100V 1000u 12
4.7u
形 C9
発 GATE - SOURCE 24V系
100V 24
生 0.47u
装
置 C8
100V
ー 5 4 3 2 1
0.22u
VIN NC SOURCE GATE OUT
MF2007SW
EN REV NC GND IDET
6 7 8 9 10
R6
43k
R5
1k
R4
1k
IDET
GND VDD
図 30 MF2007SW回路図
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4-3-1.重畳交流電圧試験
本試験は、オルタネータに起因するリップルのような、直流電源に残留する交流成分の影響を評価します(図 31)。重畳する交
流の周波数を、60秒かけて50Hzから25kHzまで掃引します。その後60秒かけて、25kHzから50Hzまで掃引します。最大電圧
(Usmax)および交流成分の振幅(Upp)の条件を表5に示します。
表5 重畳交流試験条件
12V系 24V系
USmax 16V 32V
Upp 4V 10V
図31 重畳交流試験波形模式図
MF2003SV 12V系
⓪全体波形 ①50Hz付近 ②10kHz 付近
周波数 ③25kHz付近 ④25kHz付近 (左波形拡大)
縦
軸
□
対
数
表
示
MF2003SVでの重畳交流電圧印加試験結果は上図の通りです。⓪が全帯域で、①~④が各帯域での拡大波形となります。
「①50Hz付近」、「②10kHz付近」の拡大波形が示す通り、逆電流を防いでいることが確認できます。
「④25kHz付近の拡大」波形からVINが低下してOUT > VINとなると内蔵PchMOSFETがOFFし、逆電流を防いでいることが
分かります。ICの仕様によりターンOFF遅延時間がありますので、逆電流は僅かに発生します。VINが上昇しVIN > OUTとなる
と、ICのターンON遅延時間により、MOSFETがONするまでの期間は、ボディダイオード経由で電流が流れます。その際、VIN
- OUTの電位差はボディダイオードのVbodyとなりますが、MOSFETがONすると、VIN - OUTの電位差は小さくなります。
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MF2003SV 12V系 R1=1kΩ
⓪全体波形 ①50Hz付近 ②10kHz 付近
周波数 ④25kHz付近 ⑤25kHz付近 (左波形拡大)
縦
軸
□
対
数
表
示
GND 抵抗の推奨最小値である R1=1kΩでの試験結果を示します。R1=10kΩ時と比較して、ターン ON/OFF 応答が速くなるた
め、ボディダイオード導通期間が短くなります。特に「⑤25kHz付近」で発生する逆電流も小さくなります。
MF2007SW 12V系 Q2 : P140LF4QNK Ron=1.2mΩ Qg=96nC
⓪全体波形 ①500Hz付近 ②570Hz付近
周波数 ③1kHz付近 ④25kHz付近
縦
軸
□
対
数
表
示
MF2007SW の場合は、外部 NchMOSFET によって重畳交流電圧印加試験での挙動が変わります。上記結果は、P140LF4QNK で
の試験結果を示しています。⓪が全帯域で、①~④が各帯域での拡大波形となります。
「⓪全体波形」より、50~600Hz付近で逆電流が発生していることが分かります。
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「②570Hz付近」の拡大波形では、MOSFETのON / OFF動作を示しています。OUT - VINの電位差が逆電流保護閾値(13mV)
以上となったタイミングで、逆電流保護が働いてMOSFETがOFFします。MOSFETがP140LF4QNKの場合は逆電流が6A程度流
れます。
VIN が上昇し VIN > OUT となると、ターン ON 遅延時間により ON するまでの期間は、MOSFET のボディダイオード経由で電
流が流れます。その際、VIN - OUTの電位差はボディダイオードのVSDとなりますが、MOSFETがONすると、VIN - OUTの電位
差は小さくなります。
①50-500Hz付近では、OUT - VINの電位差が逆電流保護閾値以下のため、MOSFETが常にONし、逆電流が流れます。
「③1kHz 付近」から「④25kHz 付近」では、MOSFET が ON 状態になる前に VIN が低下し始めるため、常に OFF の状態とな
り、逆電流は発生しません。その際、MOSFETのボディダイオード経由で電流が流れます。
MF2007SW 12V系 Q2 : P24LF4QNK Ron=11mΩ Qg=17nc
⓪全体波形 ①200Hz付近 ②1kHz付近
周波数 ③5kHz付近 ④25kHz付近
縦
軸
□
対
数
表
示
上記結果は、P24LF4QNKでの試験結果を示しています。
「⓪全体波形」より、全帯域に渡りP140LF4QNKと比較して逆電流が小さくなっていることが分かります。
「①200Hz付近」の波形から外部NchMOSFETがON / OFF動作していることが分かります。OUT - VINの電位差が逆電流保護
閾値(13mV)以上となったタイミングで、逆電流保護が働いて MOSFET が OFF します。MOSFET が P24LF4QNK の場合は逆電
流が1A程度流れます。P24LF4QNKはP140LF4QNKよりON抵抗(Ron)が高いため、逆電流が小さくなります。
また、P24LF4QNKのゲート全電荷量Qgは、P140LF4QNKよりも小さいので、GATEの充電が速く、高い周波数でもONするこ
とが可能となります。
P140LF4QNKの「③1kHz付近」の波形(前ページ)ではMOSFETはONしていませんが、P24LF4QNKでは「②1kHz付近」で
もMOSFETがONしていることが分かります。同じ周波数でもMOSFETによって挙動が異なることが確認できます。
「③5kHz 付近」から「④25kHz 付近」では、MOSFET が ON 状態になる前に VIN が低下し始めるため、常に OFF の状態とな
り、逆電流は発生しません。その際、MOSFETのボディダイオード経由で電流が流れます。
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