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エアコンで「どの様な空気を作るべきか」説明します!
みなさんの家や職場、また、駅やビルの中など、あらゆるとこ
ろに空調機は設置されています。空調機からは冷房の時は冷たい
空気が、暖房の時には暖かい空気が流れてきますが、具体的には
どのような温度や湿度の空気が流れてくるのでしょう?また、そ
れらを決定する考え方とはどのようなものでしょうか?
本資料では“空気線図“という道具を使いながら、快適な空気の作
り方について簡単にみていきたいと思います。
※本資料はなるべく簡単に説明することを心掛けて作成しました。
詳しい説明は別途市販書等をご参考ください。
【目次】
顕熱と潜熱
空気線図
顕熱比
空気の調整
このカタログについて
ドキュメント名 | 快適な空気の作り方 ~エアコン設計の基礎~ |
---|---|
ドキュメント種別 | その他 |
ファイルサイズ | 1.5Mb |
取り扱い企業 | 株式会社松井製作所 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
Page1
快適な空気の作り方
~エアコン設計の基礎~
URL http://matsui-ss.com/
(2022年3月作成)
Page2
目次
前書き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.2
顕熱と潜熱・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.3
空気線図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.4
顕熱比・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.5
空気の調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.7
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前書き
みなさんの家や職場、また、駅やビルの中など、あらゆるとこ
ろに空調機は設置されています。空調機からは冷房の時は冷たい
空気が、暖房の時には暖かい空気が流れてきますが、具体的には
どのような温度や湿度の空気が流れてくるのでしょう?また、そ
れらを決定する考え方とはどのようなものでしょうか?
本資料では“空気線図“という道具を使いながら、快適な空気の作
り方について簡単にみていきたいと思います。
※本資料はなるべく簡単に説明することを心掛けて作成しました。
詳しい説明は別途市販書等をご参考ください。
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顕熱と潜熱
空気線図の話の前に、まずは熱の種類について見ていきます。
いま、やかんに入った水をコンロで加熱していくとします。最初
の水の温度は20℃でしたが、加熱により50℃、80℃、100℃と
徐々に温度が上がっていきます。また、100℃で沸騰した水はそれ
以上温度は上がらず、水(液体)が水蒸気(気体)へと状態変化
していきます。
上記の現象の中で、水が20℃から100℃へと温度が上昇する際に
必要な熱を“顕熱”、一方、100℃になった後に水蒸気へと変化する
のに必要な熱を“潜熱”といいます。
一般的に“熱”というと“顕熱”のことだけを考えがちかもしれませ
んが、身近な例でも“潜熱”について説明することができます。例え
ば病院で注射を打つ前に、アルコールで腕を消毒する際にひんや
りすると思います。これは、液体だったアルコールが腕の熱を奪
い、気体に蒸発する現象のためです。また、暑い夏の日に玄関先
に打ち水をすると涼しくなりますが、これも水が蒸発する際に道
路から熱を奪い取ってくれるからです。このように、液体から気
体への状態変化に伴う熱のやり取りは色々なところで発生してい
ます。
簡単に捉えると、水蒸気が無い場合の温度変化は“顕熱”によるも
の、水蒸気がある場合の温度変化は“潜熱”によるものといえます。
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空気線図
空気の状態について、我々人間が快適かどうかを判断するのに
重要な指標として、「温度」と「湿度」があります。それらの関
係性を図として見やすくしたものが「空気線図」と呼ばれるもの
です。空気線図にも色々な種類がありますが、本資料では横軸に
温度(乾球温度)、縦軸に水分量(絶対湿度)をとる「湿り空気
線図」を用いて説明します。
いま現在の温度は15℃、絶対湿度は5g/kg(空気1kg中に水分
5g)とします。この状態を空気線図で表すと以下図中黒丸(●)
の様になります。なお、横軸を5g/kgのまま左方向に真横に移動し
ていくと、曲線と衝突します。この曲線は“飽和曲線”と呼ばれ、
“温度ごとに含むことができる水分量の上限”を示しています。例え
ば〔15℃、5g/kg〕の状態の空気を徐々に冷やしていくと、〔4℃、
5g/kg〕のところで飽和曲線に衝突します。このとき、空気は含め
る限り最大の水分を含んだ状態となっており、例えば更に冷やし
て1℃まで温度を下げると、1℃での飽和水蒸気量は4g/kgですから
差の1g/kg(5g/kg-4g/kg)分が液体(水滴)として凝縮されます。
なお、〔1℃、4g/kg〕の状態になった空気を温めて15℃にした
際、空気の状態は〔15℃、4g/kg〕となって最初の状態〔15℃、
5g/kg〕と比べて水分量が少なくなります(除湿の原理)。
先ほどの顕熱と潜熱が空気線図上ではどの様に関係あるのか、
次ページで見ていきましょう。
飽和曲線
絶対湿度
5g/Kg
4g/Kg
1℃ 4℃ 15℃
乾球温度
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顕熱比
部屋を借りるときに「日差しが入って暖かいから南向きの部屋
が良い」とか「窓は大きい方が良い」ということも考慮しながら
決めたことがある人もいらっしゃると思います。また、満員電車
では蒸し暑く感じる一方、空いている電車では比較的ひんやりし
た感覚をもったりしませんでしょうか。このように、部屋の間取
りや、人の人数によって温度や湿度の変わり方は部屋ごとに異な
ります。この、「部屋ごとに温度・湿度がどのように変化するの
か」を定量的に考える際に、顕熱と潜熱が非常に役立ちます。ど
ういうことか見ていきましょう。
部屋について考えるとき、代表的な顕熱の一つは「ガラス窓か
ら入ってくる太陽の熱」です。他にも、「外壁や屋根から伝わっ
てくる熱」「人間が発する熱」なども考えられます。一方、代表
的な潜熱は「人間が発する水蒸気による熱」や「湯沸かし器など
の設備からでる熱」です。それぞれを合計することで、部屋ごと
の顕熱と潜熱それぞれの合計値が分かります。
一方、実は空気線図上では顕熱の変化は横軸上の動きで表され、
潜熱の変化は縦軸上の動きで表されます。次に、“顕熱比”というも
のについて次ページでみていきましょう。
潜
熱
の 絶対湿度
変
化
顕熱の変化
乾球温度
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顕熱比
いま、部屋の中に湯沸かし器と送風機があるとします。湯沸か
し器からは顕熱と潜熱が両方出ているとします。このとき、湯沸
かし器を通る前の状態Aと、通った後の状態Bそれぞれの空気の状
態を、空気線図上で示すと以下のようになったとします。
状態B 状態A
送
風
機
湯沸かし器
状態B 絶対湿度
潜
状態A 熱
の
変
顕熱の変化 化
乾球温度
“顕熱比“は一般に以下の式で定義されます。
顕熱変化量
顕熱比=
顕熱変化量+潜熱変化量
“顕熱比“が小さいほど全熱変化量(=顕熱変化量+潜熱変化量)
のうち顕熱変化量が小さい、つまり、潜熱変化量が占める割合が
大きいという事になります。例えば炊事場やレストランなど、水
分を発生させる原因がたくさんある場所では顕熱比は小さくなり
ます。また、そのような顕熱比が小さい場所ほど空気線図上での
傾きABは大きくなります。
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空気の調整
2ページ前の部屋の例にもどりましょう。窓から差し込む太陽光
による顕熱量、また、人間が発する潜熱量などから、その部屋の
顕熱比が計算できます。顕熱比が計算できるという事は、空気線
上でどのような傾きで空気の状態が変化するのかが予測できると
いうことになります。例えば〔26℃、10g/kg〕の状態Aから
〔28℃、11g/kg〕の状態Bになるだろうという様に。この時、空
調機によって一定の状態Aを保とうとしようとするとき、どのよう
な空気を送り込んだらよいでしょうか?
下の空気線図をご参考の様に、直線AB上の状態Cという空気を
送り込めば良いことがわかります。すると、状態Bの空気と状態C
の空気が混じり合って、状態Aの空気を作り出すことが可能になり
ます。なおこの場合、状態Cは直線AB上の状態Aよりも左下の箇所
であればどこでも構いません。あまり冷たくない空気であれば状
態Cの空気を送る風量を多くすることで、冷たい空気であれば送る
風量を小さくすることで調整できます。通常、風量が大きくなる
とダクトも大きくなってしまい設備費が上がってしまう、また、
ダクトスペースが大きくなってしまうというデメリットが発生し
てしまうため、冷房の場合は冷ための空気を送ることで風量を少
なくすることが多い様です。
上記の様な考慮がされた結果、我々の周りには常に快適な空気
が流れているという状態を保つことができるのです。
B 絶対湿度
状態
状態A
状態C
乾球温度
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