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金属製ベルトとプーリーのデザインガイドと技術者用参考資料

ハンドブック

Belt Technologies は多くの産業に金属製ベルトのカスタムソリューションをお届けしています。

Belt Technologies社では、エンジニアの方々に金属ベルトの設計および用途の基本を解説する参考資料として、本設計ガイ ドを作成しました。本書で取り上げています主な内容は以下のとおりです。

・金属製ベルトを考慮する理由
・金属製ベルト、ドライブテープ、用途
・プーリー
・表面処理
・設計に関する留意事項
・ベルトの寿命
・金属製ベルトの素材(別表)

本書に記載の諸事項が、皆様に金属ベルトの多くのメリットをご理解いただく一助となり、必要な基本事項としてお役に立てることを希望しております。

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このカタログについて

ドキュメント名 金属製ベルトとプーリーのデザインガイドと技術者用参考資料
ドキュメント種別 ハンドブック
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登録カテゴリ
取り扱い企業 Belt Technologies,inc. (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログの内容

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金属ベルトと プーリーの 設計ガイドおよび 技術者用参考資料
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Belt Technologies社では、お客様が精密位置決 め、タイミング、搬送、動力伝達、パッケージング、自 動化された製造工程などの機械設備から最適性 能を引き出すお手伝いをいたします。過去25年以 上、弊社はユーザーのニーズに合わせ設計製作し た、金属ベルト、金属テープ、およびプーリー並び その関連機器を製作しております。 金属ベルトは多くの物理的特性を有しており、 それが優れた精度や制御、耐用性、コストパフォー マンスにつながります。 多くの場合、金属ベルトシ ステムは、他のベルトタイプ(例:ゴムやファイバ ーグラス製)および他の動力伝達装置、または移 動制御装置(例:リニアアクチュエータ、親ネジ、チ ェーンなど)よりも優れた機能を持っています。 ま た、しばしば金属ベルトしか選定出来ない事があ ります。 金属ベルトシステムの長所を活かせるよ う、Belt Technologies社では以下のような事項をご 用意しています。 エン• ジニアリングおよび設計支援 治金• に関する専門的アドバイス 高エ• ネルギー電子ビーム使用の製作 治具• の設計から製作まで一貫対応 弊社の空調制御された工場施設は、金属ベル ト、駆動テープ、およびそれらに合わせたプーリー を、試作品製作から大量生産まで対応いたします。 本資料は、金属ベルトの基本設計事項の参考資料として提 供するものです。 設計ガイドであり、設計教則本ではありま せん。 Belt Technologies社は、本書を基にして実際の設計を 弊社に相談なく独自に実行された結果に対しては、責任を 負うことはできません。 読者の方々は、更に詳しい情報や、 非常に複雑な使用目的についてのアドバイスを必要とされ る場合は、弊社のエンジニアリングスタッフにご自由に連絡 下さい。
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はじめに 2 目次 Belt Technologies社では、エンジニアの方々に金属ベルトの 3 設計および用途の基本を解説する参考資料として、本設計ガイ 貴社の設計に金属ベルト導入を検討す ドを作成しました。本書で取り上げています主な内容は以下の る理由 とおりです: 4 金属ベルト、駆動テープ • 貴社の設計に金属ベルト導入を および各種用途 検討する理由 5 - 6 プーリー 設計 • 金属ベルト、駆動テープ 材質 および各種用途 公差 プーリーの形状 • プーリー 7 表面処理 テフロン • 表面処理 ネオプレンまたはウレタン シリコーン 硬質アルマイト • 設計における考慮事項 その他 • ベルトの寿命 8 - 14 設計における考慮事項 システム設計ガイドライン • 金属ベルト材質(付録) 荷重 精度 位置決め精度 本書に記載の諸事項が、皆様に金属ベルトの多くのメリット 再現性 ベルトトラッキング をご理解いただく一助となり、必要な基本事項としてお役に立 タイミング てることを希望しております。 引張力 システムフレームの強さ 逆曲げ 個々のお客様はそれぞれ異なるニーズをお持ちの為、Belt 片受けシャフト Technologies社では、各々の製品をそれぞれ特別の仕様で設計 透磁率 ベルトのたるみ しています。 従いまして、本設計ガイドも可能性のあるすべて 高温環境 の用途をカバーできるものではないことをご承知願います。 ま ベルトのクリープ 設計要因による制約 た、本ガイドには記載されていない、お客様の金属ベルトに適 ベルトの寿命 した用途がある可能性もございます。 15 付録: 是非Belt Technologies社に連絡いただき、皆様のアイデアを弊 金属ベルトの材質 社のエンジニアリングスタッフと打ち合わせしてください。 その 16 - 23 際は、皆様の計画に対し、弊社の理解の一助となりますよう、本 プーリー設計ガイド 書の裏表紙内側にあります設計チェックリストのご利用をお願 金属ベルトに使用されるプーリーの 一般的な設計コンセプト概要 いいたします。 弊社の長年にわたり蓄積されたノウハウは、今 後益々金属ベルトの応用工学を発展させ、新たなテーマを解決 金属ベルト設計チェックリスト する可能な力として寄与する事が出来ると考えております。 裏表紙内側
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3 第1章 貴社の設計に金属ベルト導入を検討する理由 金属ベルトを採用する担当エンジニ • 正確な再現可能: アには、他の製品や材質を使用する際に 金属タイミングベルトは、位置間 は得られない恩恵が与えられます。 その ±0.013mmのピッチ精度での加工が可能 幾つかの重要な特長やメリットを以下に です。 このような高い精度は、間欠動作、 示します。 位置決め、加工処理設備を設計する際 に、極めて有益です。 • 重量に比較して高い強度: これは、高強度、軽量、またはその両方 • 熱および電気の が重要となるほぼすべての用途におい 伝導率良好: てメリットとなります。 金属ベルトは、熱、冷気、電気といった形 態のエネルギーを伝導します。 • 耐久性: 金属ベルトは、高温や低温、厳しい環 • 静電気の帯電なし: 境、真空状態に長時間さらされても耐 金属ベルトは静電気を放電します。これ えることができます。 化学物質や湿度、 はICや表面取付機器などの電子部品の 腐食などに対しそれぞれ独自の耐性を 製造工程で極めて重要な特性です。 持つ様々な合金が使用可能です。 一般 的にエンジニアは、物理特性、入手可能 • クリーン: 性、コストを基にベルトの材質を選定し HTDベルトや平坦なネオプレンベルト ます。 とは異なり、金属ベルトはダストの発生 がないので、食品や医薬品の処理に最 • 潤滑油不要: 適です。 連結金具でつながれたチェーンとは異 なり、金属ベルトは一体物ですから、潤 • クリーンルームに最適: 滑を必要とするような構成部品同士の 金属ベルトは、クリーンルームの環境に 摩擦が生じることはありません。 これに 異物を導く要因となる潤滑剤を必要とせ よりシステムの保守作業は軽減され、信 ず、また塵の発生もありません。 さらに、 頼性は向上し、システムはクリーンに保 必要であればオートクレーブ殺菌処理も たれます。 可能です。 • 伸びない: • 高精密な仕上がり: 弾性係数の高いバネ鋼を使用する金属 各端部はスムーズに加工処理されてお ベルトは、 他のベルトタイプやチェーン り、寸法は厳しい公差で管理されてい と比較して、事実上伸張しないと言えま ます。 す。 これにより、金属ベルトは、精密な位 置決めを必要とする高性能装置には不 可欠なものとなります。 • スムーズな動作: 金属ベルトは、他のベルトタイプやチェ ーンでよく見かけられる絃振動による脈 動がありません。 それ故、高精度制御シ ステムが可能となります。
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金属ベルト、駆動テープおよびその適用性 第2章 4 平坦ベルト: アタッチメント付きベルト: ベルト・テープの各種組み合わせ: 平坦金属ベルトは、金属テープの両 穴あき金属ベルトには、精密機械加工 システムの目的を満たすために、ベル 端部を溶接接合し、エンドレスベルトの や鋳造、あるいは成形によるアタッチメン トの各種オプションの組み合わせが必要 形にして製作されます。 宇宙計画の中か トを取り付け、精密な位置決め精度と再現 である場合がしばしばあります。 搬送中、 ら生まれた高エネルギー電子ビーム溶 性を達成し、製品搬送装置として、または 部品を定位置に保持するために、 ベルト 接技術が、極めて強度のある信頼性の高 製造ラインでの規定の工程管理に利用で の穴を通してバキュームをかける方式を用 い溶接を達成いたします。 平坦金属ベル きます。 用途には次のものがあります: いながら、 アタッチメントやポケットを利 トの一般的な用途を以下に挙げます。 用して 部品の位置付けを行う場合があり • 自動組立用の精密位置合わせ ます。 アタッチメントにより部品の位置付 • 搬送 • リードフレーム駆動 けとタイミングの要件を満たしておいて、 • ヒートシーリング • 時限搬送ライン 一方で部品の外形に合うよう特殊のエッジ • 鋳造 • 包装システム 形状物を取付けしたりすることもあります。 • 印字面 用途には次のものがあります: 駆動テープ: 穴あきベルト: 金属製駆動テープは、金属ベルトと同 • 時間限定した部品のネスティング(入れ子) 穴あきベルトは、平坦金属ベルトに精 様の高品質帯状素材から作られています • 部品の整列と搬送 密穴あけ加工を施したもので、穴あきには が、ベルトと違い、駆動テープはエンドレス • 自動化された寸法・電気的検査 機械的方式ないしは非衝撃方式が用いら ではありません。駆動テープの両終端部に • 高速自動包装装置 れます。 このタイプのベルトの用途には次 は、特殊なエンドアタッチメントまたは穴が • 切断作業 のものがあります。 設けられています。駆動テープは以下の用 途において、バックラッシュ皆無またはほぼ • タイミング ゼロの動作を約束します。 • 往復動作位置決め • バキューム搬送 • 往復動作位置決め • 巻取り搬送 • 作図装置 • インデックス • ロボットアーム • 読取り書込みヘッドの位置決め • 光学素子駆動 図1. 平坦ベルト 図5. 組み合わせベルト 図3. アタッチメント付きベルト 図2. 穴あきベルト 図4. 駆動テープ
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5 第3章 プーリー 金属ベルトおよび駆動テープは、いず 材質: ステンレススチール れもプーリーの円周に沿って移動します。 ユーザーのニーズに対応して、プーリ 腐食性の使用環境にあっては、ステン Belt Technologies社では、 金属ベルトの特 ーは広範な種類の材質から製作可能で レススチールが最適です。 またステンレス 徴を最大限に活かすカスタム設計ならび す。 スチールには、優れた耐摩耗性、そして強 に製作を行っています。 度という特性もあります。 アルミ 設計: アルミに硬質アルマイト処理を施した 使用可能な多くの異なる合金が存 在し、それぞれ独特の利点があります。 ベルトシステムに使用されるプーリー ものがよく使用されます。 この組み合わせ のほとんどは、 円柱形、I形ビーム、キャッ は強度があり、軽量、強靭、高コスト効率で 非金属素材 プ付き円筒のいずれかのタイプとなりま す。 ただし、使用温度が制限されるほか、 す。 どのプーリータイプでも、駆動用突起 真空環境ではガス抜けの問題が起こる可 プラスチック材の中には、優れた耐摩 耗性と強度を有しているものがあります。 部型タイミングポケットやリリーフチャン 能性があります。 用途によっては、また量が多い場合には、 ネル、また従来式のタイミング歯あるいは プラスチックは金属プーリーよりもコスト Belt Technologies社の特許技術であるボー を低く抑えられます。 ルベアリング型タイミング歯を加えた設計 が可能です。 公差: 表1にタイミングプーリーおよび摩擦駆動プーリーの主要設計寸法に対する標準的公 円柱形 差を示します。 これらの公差は、円柱、I形ビーム、キャップ付き円筒の 3種のプーリーボデ 比較的安価であるために、円柱形は大 ィー設計に適用できます。 半のシステムの設計に取り入れられてい ます。 通常、円柱形プーリーは、外形6インチ 表1. 最大14インチ(355mm)径までのプーリーの公差 (152mm)まで、幅4インチ(102mm)までの サイズが使用されます。 タイミングプーリー 摩擦プーリー インチ(mm) インチ(mm) I形ビーム テープサポート部の径(外径) ±.0015” ± .002 径および幅を拡大するに伴い、回転の (.025) (.051) 慣性を考慮すると、I形ビーム断面形状のプ ーリーが必要となってきます。 I形ビーム形 状は、構造的完全性を維持しながらも、相当 プーリー面幅 ±.010” ±.010” の重量を削り取ることで回転慣性の効果を (.127) (.127) 低減するように、円柱プーリーを機械加工し て成形します。 プーリー巻取面に、幾つかの 穴をくり抜けば、さらに重量は低減します。 内径 +.001”/-0.0000” +.002”/-0.0000” (+.025/-0.00) (+.051/-0.00) キャップ付き円筒形 このタイプのプーリーは、円筒状の両端 同心度 .002” .002” に、適切な強度を確保できるに充分な肉厚 のキャップを取り付けたものです。 キャップ (.025) (.025) 取り付け後のアセンブリは、真円度および同 心度の厳しい仕様に合うように機械加工さ タイミング位置 ±10秒 該当なし(N/A) れます。 この場合も、強度を損なうことなし に重量を削減することが非常に重要です。
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プーリー 第3章 6 プーリーのタイプ: 摩擦駆動 タイミング このように形状、材質、設計上の特徴に 摩擦駆動プーリーは、通常はなんら加工 タイミングプーリーには、プーリー本体 より様々なプーリーがありますが、一般的に のされていない平滑な表面となっています。 の外径全周に歯またはポケットが付いて はプーリーは、摩擦駆動かタイミングのい います。歯は金属ベルトのタイミング穴に ずれか一方の役目を果たします。 また通常は、プーリーにクラウン加工を かみ合います。ポケットはベルトの内周上することはお勧めいたしません。 その理由 に施されている駆動突起部とかみ合いま についての詳細をお求めの方は、金属ベル 図 す。このようなプーリーにあっても、動力の6. ポケット付きプーリーおよびボール トの力学に詳しいBelt Technologies社のエ 伝達そのものは、平坦なベルトとプーリー ベアリング埋め込みプーリー ンジニアにお尋ねください。 クラウン加工 の表面の間に発生する摩擦力によって達 が適切である場合には、全体にRを持たせ 成されることに注意してください。歯やポケ るものと台形の2通りの方式があります。 全 ットは、単にタイミング確保のためであり、 体にRを持たせたクラウンは、ベルトへのス 動力伝達のためではありません。 トレス度が少ないですが、機械加工が難し く、それだけコストがかさみます。 台形クラ タイミング構成部分、特にタイミング歯 ウンの方がコスト効率がよく効果もありま は硬くなければなりません。ベルトとプーリ すが、ベルトの引張荷重が大きい用途では、 ーの継続的かみ合いによる摩耗を最小限 クラウンの角度の異なる面の間で転移点に に抑えるために、硬度は極めて重要です。 応力が過度に集中することになるので、避 例えば、Belt Technologies社が特許を保有 ける必要があります。 転移点を滑らかにす するプーリーでは、硬化ボールベアリングを ることで多少の改善は可能ですが、高応力 歯として使用しています。 集中部が無くなるわけではありません。 プーリーを2個使用したタイミングシス テムを設計する際、タイミング構成部分は、 駆動プーリー側のみに適用すればよく、他 方のプーリーには不要です。 注) 摩擦プーリーもタイミングプーリーも、幅の狭 いロールとして設計可能です。 ここで幅の狭いロ ールとは、その上を走るベルトの幅よりも狭い幅の プーリーを指します。 このタイプは、ベルトトラッキ ングが容易であり、プーリーの総重量およびコスト の削減となります。プーリー面は通常、ベルト幅の 1/2以下にはならない様にします。
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7 第4章 表面処理 表面処理により、金属製のベルト、テー また、上塗りがフッ素重合体を多く含む一 硬質アルマイト: プ、またはプーリーの素材表面特性を改質 方で、中塗り(実際には他の補強システムに 硬質アルマイトは、電気化学処理の一 させる事が可能です。表面処理は、ベルトや 使用される下塗り)は特殊な補強要素を含 種で、アルミ製プーリーの硬度、耐摩耗性、 テープの片面あるいは両面に、またはプー んでおり、剥離性(こびりつき防止)に完全 耐腐食性を増大するために利用されていま リーに対し施すことができます。処理方法に に特化しています。 す。この処理により、酸化アルミの層が形成 は、コーティング、メッキ、ラミネート、および され金属層の一部となり、プーリーの表面 接着があります。 ウレタンまたはネオプレン: 全体に浸透および積層します。コーティング ウレタンも、開放または独立気泡のネ の厚さは均一で、プーリーそのものの精度 選択する処理方法にもよりますが、表 オプレンも、金属ベルト表面の摩擦係数を を保存します。 面の厚さは0.002インチ(0.025mm)といっ 変え、デリケートな部品を保護するクッショ た薄いものもあります。表面は均一に、また ンの役目を果たします。これらの表層材は、 オプション: 小サイズの機械部品の搬送用に打ち抜き 金属ベルト面にしっかりと接着されていま 表面処理のオプションの幅は広く、本書 されたベルト表面にポケットを設けること す。特殊なポケット形状を保持する場合に ですべてに言及することはできません。特 もできます。デリケートな部品については、 は、接着前に打ち抜き加工が可能です。 異な表面処理として、フルオロカーボン化 搬送中に所定の向きを維持し固定しておけ 合物、銅張合わせ加工、金メッキ、粉末ダイ るよう、ポケットにバキューム穴を組み合わ シリコーン: ヤモンド接着などがあります。適切な仕様 せることも可能です。 他のコーティングでは環境に適さない は、用途および技術により何を選定するか 場合に、シリコーンなら適合することがあり によります。 一般的な表面処理の主要な機械特性 ます。シリコーンは、高い表面摩擦、高い剥 や物理特性については、表2を参照してくだ 離性、耐熱性、極めて高い柔軟性といったユ Belt Technologies社のエンジニアリング さい。 ニークな特性を有しています。シリコーンを スタッフは、皆様の各々のニーズに関連し 金属ベルト面に接着させることは困難です た問題についてのご相談を喜んでお受け が、有効な解決策はあります。 いたします。 表2. 表面処理の特性 図7. 表面処理 コーティング 使用温度 使用温度 厚さ 色 素材 インチ(mm) テフロン®: テフロン® TFE こびりつきにくい 上限600º F .001” ブラック テフロンは、調理具のこびりつかない 上限315º C (.025) グリーン コーティングとして家庭でなじみ深い言葉 となっています。実際にはテフロンは様々 テフロン® FEP 耐腐食性 上限428º F .001”~.030” メタリック な処方があり、剥離性、潤滑性、耐摩耗性、 耐低温性 上限220º C (.025~.75) グレー 耐熱性、色など、それぞれの特性を持って います。 下限-328º F 下限-200º C ECLIPSE®: テフロン® 食品との接触 上限600º F .001”~.006” メタリック FDAに準拠したEclipseコーティング GATORCOAT 可能 上限315º C (.025~0.15) グレー は、高い剥離性と非常に優れた耐摩耗性 を有するコーティングです。その独自の3重 テフロン® 耐摩耗性の 上限446º F .001”~.0015” ブラック コーティング、高再生、内部補強、こびりつ き防止を有する表面は、テフロンの10倍以 550 硬質テフロン 上限230º C (.025~.038) 上の耐食性をもたらします。また、家庭用 薬品に対する耐性、こびりつき防止、耐汚 シリコーン 優れた剥離性と 上限392º F .004” 多様 染、高温での高い性能を有します。下塗り ゴム 高摩擦性 上限200º C (0.10) に慎重に選択・ブレンドされたレジンが含 まれる点で、その他すべてのこびりつき防 ポリウレタン 高摩擦性 上限158º F .008”~.125” 多様 止コーティングと異なります。 成形可能 上限70º C (.203~3.175) ネオプレン 伸縮性 上限158º F .016”~.250” ブラック ゴム ポケット成形可能 上限70º C (.40~6.4)
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設計における考慮事項 第5章 8 設計者の方へ: これまでの章からの解説を基 に、既に金属ベルトの設計につ いて考え始められているのでは ありませんか。本章は、システム の性能を有効に発揮させる為の 参考資料となります。すべての設 計は固有なものですから、すべて 図8. 負荷応力 の設計の考慮事項について言及 1. ベルト上の 2. ベルト上の することは不可能です。皆様の設 使用荷重(Fw)を 最大荷重(F1)を 計のアイデア、数値、および方法 計算する。 計算する。 を、Belt Technologies社のエンジニ アとご一緒に再検討されてみて 使用荷重は、駆動モーターの定格トル ステップ1のプーリー2個のシステムで はいかがですか。 ク、移送または加速対象の荷重、もしくは 示したように、Fw = F1 – F2 ですから、F1が システム要件の解析を基に算出可能です。 ベルト上の最大荷重となります。この力に システム設計ガイドライン: 図8に示すような単純なプーリー2個のシ 起因する応力条件を設計するためには、ステムでの、ベルト上の使用荷重(Fw)は、 その値を計算する必要があります。 金属ベルトを用いたいかなるシステム 次の式で表されます。 摩擦駆動システムが滑りなしに動作す でも、一般的に以下のガイドラインに従う F = F – F 、ここで る場合、2つの力、F1 および F2 の関係は次 ことで機能が発揮されます。 w 1 2 の式で表されます。 • 可 能な限り使用するプーリー数は少なくする。 D および D • プ ーリーの径は大きなものを使用する。 1 2 = = プーリーの径 F1 - Fc mu F - F = e • 逆 曲げを避けたプーリーシステムを使用 t 1 および 2 c t 2= 各プーリー上のする。 トルク作用 • 長 さと幅の比率は大きなものを使用する。 ここで e = 2.71828 F 荷重: 1 および F2 = 各プーリー位置での m= ベルトとプーリー間の摩擦係数 ベルトにかかる力(ニュートン) u = プーリーに対する ベルトの巻き角 適切なシステム設計には、使用中のベ 度(ラジアン) ルトに伝達される各種負荷の検討が必要 Fw とトルクの関係は次の式で 表され F = ベルトにかかる遠心力 です。安定した状態での稼働条件のほか ます。 c に、何らかの異常で間欠した可能性や立 t t ち上げ時の高負荷、位置割出しなどどいっ 1 2 標準的仕上げ(例えば0.4ミクロン)の F = = た、異常な条件も考慮に入れる必要があり w D D 金属ベルトで、機械加工の金属プーリー1/2 1 1/2 2 ます。一般的に、万が一高負荷が発生する を使用する場合、経験から m の値は 0.25また動力との関係は次の式です。 場合にも、それがベルトの極限強度を超え ~0.45の間にあることが分かっています。 ることのないように、ベルトを設計する必 F = 33000 x HP 要があります。 w V 薄いベルトの長所のひとつは、Fc が通 常取るに足らないほど小さく、無視できるここで: V = 速度(ft/min) ベルト上の応力要因を判定するには、 ことです。従って、ほどんどの場合、式は次 以下の ステップからなる計算を実行して のように簡略化できます。4 そして加速度との関係は次の式です。 ください。 F Fw=ma=(L/g) x a 1 =e mu F2 ここで F2に代入を行い F1 の値を求めると、 次のようになります。 L = ベルト上の荷重(lbs) F e muw g= 32.2 ft/sec2 F1 = e m u -1 a = 荷重加速度 ft/sec2
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9 第5章 設計における考慮事項 3. ベルト上の曲げ応力(Sb)を 4. ベルト上の合計応力(St)を 計算する。 割り出す。 一般的なサイズおよび仕様 金属ベルトには、それがプーリーに対 ベルト上の合計応力は、許容応力 (Sw ) 金属ベルトは一般的に、厚さが し繰り返し曲げられることで、かなりの曲 と曲げ応力 (Sb )の和です。 0.002” (0.51mm)~0.032+” (0.8mm) げ応力が生じます。 ベルトにかかる合計応 力 を算出するためには、この曲げ応力 、プーリー径が2” (50mm)~10” St St = Sw + Sb を計算し、許容応力 Sw に加算(ステップ4 (254mm)です。 厚さが0.005” 参照)する必要があります。 FS = 1 (0.127mm)で寿命が1,000,000サイw b x t クルの一般的な金属ベルトには、径 曲げ応力の式は次のとおりです。 ここで が3.125” (79.4mm)のプーリーが必 Et 要となります。 サイズ範囲は、考慮 S = b = ベルト幅b (1- u2)D される用途および荷重により異な t = ベルトの厚み るため、Belt Technologies社のセー ここで ルスエンジニアにお客様の設計に Belt Technologies社では、St がベル 関するアイデアをご相談ください。 E = 弾性係数(psi) ト材の降伏強さの1/3を超えない事をお 勧めいたします。詳細については、Belt t = ベルトの厚み(in) Technologies社のエンジニアにお問い合 ここまで来たら、様々なパラメータを選 わせ下さい。 択して、各計算手順を振り返って検討し、設 D = 最小プーリーの径(in) 計要件を満たす組み合わせを見付ける必 ポアソン比 Belt Technologies社は、タイミングベ 要があります。より幅の広いベルトを使用 u = ルトではストランドごとに1000 psi (6.9 N/ すれば、曲げ応力を変えることなく使用応 この計算では、ベルト厚みとプーリー mm2)、平坦ベルトではストランドごとに 力を低減できることは明らかです。プーリー 径の想定が必要です。設置空間の制限あ 2000~5000 psi (13.8 - 34.5 N/mm2) の張力 径を大きくすれば、曲げ応力の低減、また るいは他の設計上の要件のために、プー を推奨します。 はより厚いベルトの使用が可能になり、そ リー径の方が決定しやすいでしょう。そう れがさらに使用応力を低減させることにも であれば、できる限り最大のプーリー径を なります。 選び、それから表3を基に、適切なベルト厚 みを計算します。 表3. ベルトの寿命 プーリー径 ベルトの 対ベルト厚み 予想寿命 比率 625:1 1,000,000 サイクル 以上 400:1 500,000 333:1 165,000 200:1 85,000 ここでの関係は、プーリー2個の摩擦 駆動システムを基にしたものです。
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設計における考慮事項 第5章 10 ベルト長さ精度: BELT STRETCH: ゼロバックラッシュ: 金属ベルトの最も重要な長所のひ 金属ベルトは、通常運転では伸張せ ゼロまたはほぼゼロに近いバックラッ とつは、その全体的精度です。穴あきベ ず、通常の前負荷張力を得た後に独自の シュの位置システムは、金属ベルトの使用 ルトまたはアタッチメント付きベルト ものとなります。平坦ベルトの前負荷伸 によって実現可能です。これらのドライブ は、±0.0005”(0.013mm)のピッチ精度で製 張を計算するには、以下の式を使用して は、ペアで、または独創的な設計アイデアを 作可能です。平坦ベルトや駆動テープも同 ください。穴あきベルトについては、Belt 基に稼働させることで、厳しい配置精度が 様に、高度な精度で製作できます。 Technologies社のセールスエンジニアまで 必要となるすべての場所で使用できます。 お問い合わせ下さい。 以下の図では、典型的なゼロバックラッシ ベルトの長さ: ュ・ドライブを2つ紹介しています。. 金属ベルトの長さを計算するには、以 DL = PL/AE 下の式を使用してください。ベルトの長さを ゼロバックラッシュ・ドライブ 計算する前に、理想とするお客様のシステ ここで ムの設計範囲を知っておくことが重要とな ります。より大きなプーリー径は通常、最適 DL = 伸張(インチ) 340ºの プーリー回転 なベルト寿命をもたらし、またプーリー径か マスター らベルト厚を推定することができます。ベル P = 引張荷重(ポンド) トの寿命については表3を参照してくださ い。最大プーリー径が分かれば、それを表3 L = 初期のベルト長さ(インチ) のプーリー径対ベルト厚比率で割ることで、 お客様の用途に最適なベルト寿命が分か A = ベルト断面積(インチ) ります。一般的なベルト厚の範囲は0.002” スレーブ [0.05mm]~0.032” [0.813mm]で、一般的な E = ヤング率 アイドラー プーリー径の範囲は2”以上です。 (15頁の材質表を参照してください) アウトプット L=(2 x C)+(D + t) p ここで 約 L = ベルトの長さ 360ºの プーリー回転 C = 2個のプーリーの中心間距離 D = プーリー径 t = ベルトの厚み p = 3.14159 これにより、同一の径をもつ2個のプーリーを組み 込んだ金属ベルトシステムの適切な長さを割り出 せます。複数のプーリー、または異なる径をもつプ ーリーのシステムについては、Belt Technologies社 のエンジニアにお問い合わせ下さい。お問い合わ せ先は裏表紙内側に記載されています。
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11 第5章 設計における考慮事項 位置決め精度: 位置決め精度は、金属タイミングベル トでは通常±0.0005” (0.013mm) といった、 ベルトのピッチ公差に直接関係します。 特殊工具を使用することにより、ピッチは 図9にPlとあるプラス側に寄るようにも、ま た図面でPsとあるマイナス側に寄るよう 図9. 位置決め精度 にも加工できます。要件については、Belt Technologies社のエンジニアにお問い合 わせ下さい。 再現性: 再現性とは、単一のピッチがベルトの 継続的回転で、指定の許容範囲内で定位 置に戻ってくる能力です。 金属ベルトは伸びませんから、弊社の お客様には0.002” (0.051mm) の再現性を 実現しています。 平坦ベルトまたは穴あきベルト、アタ ッチメント付きベルト、あるいは駆動テー 図10. 再現性 プについて、精密な動きが高精度で計算 可能です。システムの仕様決定に支援をお どのようなトラッキング手法でも、 求めの場合は、Belt Technologies社のセー その主目的は累積するマイナスのトラ ルスエンジニアにご連絡ください。 ッキング応力や各種の力(前に定義し たシステムの直角度、抑制できていな いプーリー軸の偏り、差異のある荷重、 ベルトトラッキング: ベルトの反り)を、抑制下の応力や力で無 金属ベルトは張力下にあっても著しく 効にすることで、ベルトがシステム上を走 伸びたりすることはないので、金属ベルト 行するよう調整することにあります。 のトラッキングは、他のベルトタイプに比 較して難しくなります。金属ベルトでは伸 びないので、次の状態を修正することはで 調節可能プーリー: きません。 Belt Technologies社は、金属ベルト等すべての平滑ベルトのトラッキングを助 • システムの直角度または直線性の不備 ける、独立可動プーリー(ISP)の特許を取 • 抑制できていないプーリー軸の偏り 得しました。自動システムでは、ISPをセン 図11. 反り • 差異のある荷重 サーおよびサーボモーター・パッケージ • ベルトの反り に取り付け、ハンズフリーな金属ベルト の自動トラッキングを実現できます。Belt 摩擦プーリーまたはタイミングプーリー、 これらのうちで、設計エンジニアはお Technologies社のセールスエンジニアから あるいは双方を使用するシステムでのベ そらくベルトの反りに最もなじみが薄いこ 独立可動プーリーに関する補足の技術書 ルトトラッキングには、次の3つの基本手 とでしょう。反り、言い換えると「端の曲が をお求めいただき、お客様の用途にもたら 法が用いられます。 り」は、ベルトの縁が直線から外れている す恩恵をご理解ください。 • プーリー軸の調整 状態です。反りは大なり小なりどのベルト • 摩擦駆動プーリーのクラウン加工 にもあります。金属ベルトの反りは、一般的 • 強制トラッキング に 8’ (2.44m) で .050” (1.27mm) といったわ ずかなものです。金属ベルトを直角形状の プーリー2個のシステムに取り付け、張力 をかけると、ベルトの片側に他方の側より も大きな張力がかかります。これはそちら 側の縁の全周長が他方より短いからです。 これにより、ベルトが回転する際、ベルトは 縁の張力が大きい側から張力の小さい側 図12. トラッキング へと蛇行するようになります。
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設計における考慮事項 第5章 12 プーリー軸の調整: 図13. プーリー軸の調整 図13に示すように、金属ベルトシステ ムでプーリー軸を調節するのが、金属ベル トのトラッキングでは最も効果的な方法で す。ベルトの縁の張力は制御された状態で 変えられるので、ベルトの舵を取ることにな ります。この手法は、平らな面のプーリーに もクラウン加工のプーリーにも同じように 有効です。 ドライブプーリーもアイドラープーリー 強制トラッキング タイミング: も、双方調節可能な軸を備えているのが理 単なる軸の調節では蛇行を完全には 金属ベルト用のタイミングプーリーは、 想です。しかし現実は、アイドラープーリー 解消できない場合、カム従動子またはガラ 歯が付いているかポケットが付いているか のみが調節されます。駆動プーリーは、モー ス含有テフロン® フランジなどの強制トラ のいずれかで、それぞれ対応するベルトの ターまたは他の動力伝達装置と接続され ッキング手法が必要である場合がありま 穴ないしは駆動突起部とかみ合います。 ているため、軸の調節は普通困難です。 す。この場合には、強制トラッキング手法が ベルトの予測耐用寿命を縮小させるよう作 タイミングプーリーの設計にあたって •摩擦駆動プーリーのクラウン加工 用しますから、厚めのベルトを使用するな は、必ずすべてのタイミング要素が球状ま クラウン加工の摩擦駆動プーリーを使 ど、システム設計上の関係に修正を加える たはインボリュート状半径を保持するよう 用する必要がある場合は、それは軸調節の 必要があります。 常に注意する必要があります。これにより、 代わりではなく、軸調節と併用で行います。 確実にベルトとプーリーが相互にスムーズ これは、クラウン加工のプーリーのみでは、 幅広のベルトでは、別な強制トラッキン にかみ合い外れ合うことになります。許容誤 金属ベルトが自動的に中心に戻るようには グ手法として、金属ベルトの内周にVベルト 差の累積による問題を回避するため、駆動 できないからです。クラウン加工のプーリー を接合して用いる方法があります。この2つ 部分と従動部分との間の径の差は、一般的 は、ベルトの面がプーリーのクラウン面にぴ の要素からなるベルトは、Belt Technologies に少なくとも±0.005” (0.127mm)~±0.007” ったりとなじむ必要があるので、板厚の薄 社では Metrak©と呼ぶものですが、トラッキ (0.178mm)の範囲内にあるようにします。バ いベルトの方がよい効果を得られます。ベ ング応力を金属ベルト上にではなく、Vベル ックラッシュがゼロないしはゼロに近い用 ルトがプーリー面にぴったりと沿うよう張力 トの方に分配することで、強制トラッキング 途は、特殊な場合です。 を上げることはできますが、恒久的にベル システム(図14)でのベルト寿命はより永く トを変形させる原因ともなるので、それほ なります。 歯付プーリーの製作時には、各タイミン ど張力を高められません。クラウン加工の グ歯をプーリー本体に機械加工した穴に挿 プーリーのベストな形状は、全体にRをつ 次のページで説明するタイミング歯は、 入していきます。この際、全体のピッチ精度を けたもので、クラウンの高さがベルトの厚 タイミングのためのみのものであり、 トラッキ 確保するために、各歯の放射状の取り付け みを超えないものです。 ング手法として使用するものではありません。 位置には充分な注意を払う必要があります。 図14. 強制トラッキング タイミングプーリーの設計にあたって は、ピッチ径がベルトのほぼ中心点(薄い平 板ベルトではベルト厚みの1/2)に来るよう にすることが大変重要です。金属ベルトは一 般的に薄いものですから、プーリー側のテ ープサポート径の計算時に、ベルトの厚み を無視したくなりがちです。これらの計算に ベルトの厚みを入れることを怠ると、タイミ ング要素の不一致という結果になります。 テープサポート径の算出には次の式を 用います。 D = NPp – t ここで N = プーリー上のピッチ長さまたは歯の数 P = 穴あけピッチ t = ベルトの厚み
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13 第5章 設計における考慮事項 引張力: システムフレームの強さ: 透磁率: 摩擦駆動システムでは、張力を自転車の タイミングやベルトトラッキングのた 透磁率とは、物質が磁性を持ち運ぶこ チェーンのように緩くしても、またギターの めの微調整が可能であるためには、剛性の とのできる能力を、空気のそれを1として測 絃のようにきつくしても動作可能です。タイ あるシステムフレームが必要です。システム 定する単位である、と通例定義されるもの ミングシステムにあってはベルトの張力は極 のフレームに制御されていない屈曲があ です。 めて重要であり、可能な限り低いレベルに保 る場合、ベルトに張力がかかるとシステム 持するようにします。一般的に言って、低いベ は湾曲してしまいます。ひとつの力(システ ステンレススチール300シリーズでは、 ルト張力はベルトの寿命を向上し、その他の ムの屈曲)を別の力(軸の調節)で埋め合わ 非磁性であるとされていますが、それから システム機器の摩耗を低く抑えます。 せしても、制御されたシステムができるわ スプリングテンパーや高張力強度を造り出 プーリー間のたるみを取るためにベル けではなく、トラッキングの問題が生じたり すために用いられる冷間加工では、透磁率 トの張力を増大するべきではありません(本 します。確実にどの軸調節も制御できるよ が増大する結果となります。従って、301フル 頁の「ベルトのたるみ」参照)。張力をかけ過 うにするためには、設計段階でシステムに ハードは、301ハーフハードよりも高い透磁 ぎると、巻尺で見られるようなクロスボー 十分な剛性を持たせることが重要です。 率を示します。一般的に316ステンレスが、 ( ベルト両端面の反り)現象がベルト上に 最も低い透磁率ですが、そのハーフハード 現れることがあります。これらの反りのほか 逆曲げ: のものは入手困難です。 にも、張力のかけ過ぎは、ムラのある動きを ベストなシステム設計は、2つのプー 引き起こしたり、再現性やベルト寿命の縮小 リーを使用したものです。システムに逆曲 一般的な金属ベルト用合金の定格透 につながります。 げを加えることは、曲げ応力を加えること 磁率特性については、付録を参照してくだ ベルトの取付張力は、システムを稼働さ であり、ベルトの寿命に悪影響を及ぼしま さい。 せた後、実際的で可能な限り低い張力を選 す。各々のプーリーは、舵取りに対する影 択するようにして決定します。張力の維持に 響力を持っていますから、トラッキングの ベルトのたるみ: は、エアシリンダー、バネ、またはスクリュー 問題が生じてくる場合もあります。 プーリー間の距離が長い場合、ベルト ジャッキなどが使用できます。 はたるみます。 片受けシャフト: 張力が高めであっても、幾らかのたるみは Belt Technologies社は、摩擦システムで プーリーのシャフトは、両端がしっかり あるものです。 は1000~5000 psi (6.9~34.5 N/mm2)、タイ と固定されていることが望ましいです。片 適切な張力を確保し、たるみを回避するに ミングシステムでは1000 psi (6.9 N/mm2)を 受けシャフトでは、旋回(首振り)の動きが は、ベルトの作業面を超高分子量(UHMW) 推奨します。 生じる可能性があります。張力がかけられ 材質でできた固定サポート面上で引きずる た時、シャフトが偏ってトラッキングの問題 ようにします。 が起こることになりかねません。片 図15. タイミングプーリー 受けシャフトが必要である場合 には、その剛性が、フレームの 設計及びシャフトの硬直性 により確保される必要があ ります。
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設計における考慮事項 第5章 14 高温環境: 金属ベルトが高温環境にさらされるこ 合金 温度 熱膨張の 対象温度範囲での 範囲 ºF 平均係数 平均降伏強度 とになる場合には、ベルト用に適した素材 (ºC) 平均係数 温度 ばかりでなく、いかなるアタッチメントまた 10-6IN/IN/ºF 1000 PSI は表面処理も、同様に温度に対する耐熱 (cm/cm/ºCx10-6) (N/mm2) 性を有していることが非常に重要です。ま た、温度が上下するに伴う材質の膨張なら 301/302 68º~400º 9.8 160~135 びに収縮に対しても、考慮する必要があり Full Hard (20º~205º) (17.6) (1100~930) ます。温度による変化は、タイミング、トラッ キング、張力、平坦性、その他の要素に影 17-7 CH-900 400º to 800º 6.6 220~170 (205º~425º) (11.9) (1500~1170) 響を及ぼします。 Inconel® 718 800º~1,000º 8.4 157~155 表4に、主要合金について特定使用温 Solution (425~540) (15.1) (1080~1070) 度範囲とそれぞれ対応する熱膨張係数お 徐冷および よび降伏応力を示します。表5では、17-7 熱処理 CH-900の物理特性が温度の変化に従いど のように推移するかを示します。 表4. 主要合金の高温度特性 ベルトのクリープ 表5. 温度変化に対する物理特性(17-7 CH-900) ベルトのクリープは、駆動プーリーと 有効弧域内では、ベルトとプーリーの ベルトの張力部材との間での動力伝達に 各面はすべりながらの接触であり、プーリ 260 関わる現象です。摩擦駆動システムにおけ ーの表面速度はベルトのそれよりも速くな 240 るクリープのために、プーリーはベルトよ ります。この現象は、ベルトがプーリーの周 りもわずかですが速く回転移動します。 りを移動するにつれベルトに対し作用す 220 る力のずれによる、ベルトの寸法変化が引 200 図16を見てみましょう。駆動プーリーと き起こすものです。すべり接触が起こると、 180 ベルトが重なっている180º の範囲は、次の ベルトの張力の変化に合わせて摩擦力が ように2つの弧の部分に分けられます。 発生し、動力が伝達されます。 240 220 • ア イドル弧(動力伝達のない領域) 金属ベルトの張力部材は、高弾性係数 200 を有する金属ベルトですから、金属ベルト 180 • 有 効弧、クリープ角ともよばれる(動 で見られるクリープは、大半の他の材質に比較してずっと少ないものです。 160 力伝達が行われる領域) 6 アイドル弧域内では、ベルトとプーリー とは言え、制御なしの場合には、摩擦 の各面は、静的接触状態で、動力の伝達は 駆動金属ベルトでのクリープは、再現性を4 2 ありません。ベルトは引張りサイドの張力 失う結果になります。幸いなことに、金属ベルトでのクリープの制御は容易です。 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000ºF T1と、駆動プーリーの表面速度V1にマッチ する速度V1でプーリー上に走行します。接 触がアイドル弧域内で継続する間、速度、 タイミング歯またはタイミング突起部 張力、どちらも一定のままで推移します。 が、クリープの対策に最も一般的な方法です。タイミング位置の数は、クリープの発生 を防ぐに足る最小の数にとどめるようにし ます。多くのシステムにおいて、プーリーの 全周で6箇所から8箇所のタイミング位置 図16. クリープ理論 さえあれば大丈夫です。 ABはアイドル弧。 BCは有効弧。 A T1 B V1 V2 C T2 2”での伸び、% 0.2% 降伏応力、ksi 最大抗張力、ksi
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15 付録 金属ベルトの材質 付録:金属 • 金属ベルトは、6.35mm(0.25”)と行ったごく では、あなたの金属ベルトはどれほど ベルトの材質 狭い幅のプーリー上でも動作しますが、ベ もつでしょうか。当然な質問を避けようとし 高温、極めて腐食性のある環境、また ルトの寿命は縮まります。 ているわけではありませんが、最善の答えは は特殊な電気的もしくは磁性の要件を伴う 「場合によりけり」でしょう。• 金属ベルトは炉内温度最高590℃(1,094F°)ま ような、特に要求の厳しい用途では、金属 での環境で使用できますが、ベルトの強度の ベルトや駆動テープの材質として、特定合 システムの設計、材質の強度、環境、応大部分は、冷間加工や特定の熱処理により得 金の使用を除外する場合もあります。次に 力、張力、表面処理、アタッチメント、そのられたものなので、このような高温ではベルト 示す材料表は、重要な選定基準をまとめた 他、といった要因により異なります。システの強度が減少します。表6を参照してください。 ものです。 ムの設計および金属ベルトに影響するもろ • ベルト走行ガイド用ドクターブレードの使 もろの要因が、そのままそっくりベルトの寿 用が、ベルトの幅方向でベルト面に変形を 命にも影響を及ぼします。 設計要因による 生じさせます。適切にデザインされたドクタ 上述の内容を念頭におきながらも、確 制約: ーブレード、例えばUHMW材などで作られ かに金属ベルトは他のベルトタイプやチェ 空間の制約や、異例の薬品・熱・電気・ たものを使用することで、このようなマイナ ーンよりもかなり長持ちする可能性を持っ システム要件などの用途の制約が、設計上 スの効果を最小に抑えることは可能です。 ていると言っていいでしょう。また、より精 の交換取引を要求することがあります。 度が高く、再現性があり、軽量、高速、コスト 以下の例を検討してみてください。 ベルトの寿命: 効率も良くなる可能性も備えています。 ベルトの寿命と言っても、人により、またプ ロセスにより、別の意味を持つものです。10,000 弊社エンジニアリングスタッフのメン 回転のベルト寿命は、ある用途にとっては素晴 バーとの話し合いが、御社の使用される種 表6. 最も一般的な金属ベルト用合金の一部とそれぞれの らしいものであるかも知れません。別のベルト 々の用途で期待できるベルト寿命を予測す 常温での光学的性質 は毎時10,000回転するかも知れません。 る助けとなるでしょう。 熱伝導率 熱膨張係数 降伏強度 抗張力 引張弾性係数 (32°~212° F) (32° TO 212° F) (0.2% オフセット) STRENGTH 伸び MODULUS ポアソン比 密度 BTU/FT2/HR/ºF/IN cm/cm/°C x 10-6 1000 PSI 1000 PSI 51mmで IN 106 PSI 比率 #/IN3 cm/cm/ºC x10-6 (0º~100º C) 合金 (N/mm2) (N/mm2) % 硬度 (in 105 n/mm2) (g/cm3) cal/cm2/sec/ºC/cm (0º~100º C) in/in/º F 透磁率 耐食性 301 FULL HARD 160 180 5-15 RC40-45 28 .285 0.29 113 9.4 L-M M (1100) (1240) (1.93) (7.9) (.039) 16.9 301 HIGH YIELD 260 280 1 該当なし(N/A) 26 .285 0.29 113 9.4 M-H M (1790) (1930) (1.79) (7.9) (.039) 16.9 302 FULL HARD 160 180 1-5 RC40-45 26 .285 0.29 113 9.6 L-M M-H (1100) (1240) (1.93) (7.9) (.039) 17.3 304 FULL HARD 160 180 1-5 RC40-45 26 .285 0.29 113 9.6 L-M M-H (1100) (1240) (1.93) (7.9) (.039) 17.3 316 FULL HARD 175 190 1-2 RC35-45 28 .285 0.28 97 8.9 L H (1200) (1310) (1.93) (7.9) (.036) 16.0 716 FULL HARD 210 260 5-10 RC52 32 .285 0.28 170 5.9 H L-M (1450) (1790) (2.20) (7.9) (.059) 10.6 17-7 CONDITION C 185 215 5 RC43 28 .305 0.28 114 8.5 M-H M-H (1275) (1480) (1.93) (7.8) (.037) 15.3 17-7 CH-900 240 250 2 RC49 29 .305 0.28 114 6.1 M-H M-H (1655) (1720) (2.00) (7.8) (.037) 10.9 INCONEL® 718 175 210 17 RC41 29 .284 0.29 86 6.6 L H 炭素鋼 (1200) (1450) (2.00) (7.9) (.030) 11.9 炭素鋼 240 260 7-10 RC50-55 30 .287 0.29 360 5.8 H L SAE 1095 (1650) (1790) (2.07) (7.9) (.124) 10.5 チタン 150 165 11 RC35 15 .300 0.17 56 5.5 L H 15V-3CR-3AI-3SN (1030) (1140) (1.03) (4.7) (.019) 9.7 INVAR 36 50 75 30 RB80 20 .317 0.30 120 2.1 L M-H (340) (520) (1.38) (7.9) 1.2
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金属ベルトに使用されるプーリー 第6章 16 金属ベルトに使用される プーリーの 一般的な 設計コンセプト 概要 • ベルトに関与するタイミング要素の数を 最小限に抑えます。 • クラウン加工やフランジ加工のプーリー の使用は、金属ベルトの用途には通常、推 奨されません。これらの設計は選択のも とで行い、ベルトの力学および用途の特 性の両方に通じたBelt Technologies社の エンジニアに相談してから使用されるべ きです。 • 金属ベルトを使用した精度システム用の 摩擦ドライブまたはタイミングプーリーの 製造は、円形金属材料の単純な加工の問 題ではありません。金属ベルトの精度およ び再現性は、補足するプーリーの精度と同 等のものになります。 表5. 温度変化に対する物理特性(17-7 CH-900)
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17 プーリーに不適当な材質 プーリーに不適当な材質: ステンレススチールは、金属ベルト 以下は、示された材質から成る硬質 の用途においてプーリー本体の材質とし の円形金属材料の重さ(ポンド)を割り出 プーリー径が決定された後、設計エ て選択的に用いられます。タイプ304が耐 すための式です。 ンジニアはプーリー本体に最善の材質、 食性のために用いられる一方で、タイプ 即ちプーリーの重さ、腐食性、耐摩耗性、 440-Cは耐食性では劣りますが、RC50程 ステンレススチール (.223 x D2) x 幅 摩擦係数、コストを考慮して決める必要 度の硬度が必要となる用途に用いられま アルミ (.077 x D2) x 幅 があります。Belt Technologies社が指定・製 す。これらの選択においては、重さやコス プラスチック (.040 x D2) x 幅 造したほとんどのプーリーは、ハードコー トが非常に増加します。タイプ304のケー ト処理された6061-T6アルミでできていま スでは、プーリーが加工される際、温度上 幅に関しては、ほとんどの金属ベルト す。アルミは軽量かつ加工が容易で、負荷 昇とそれによる熱膨張により、厳格な精 プーリーはベルト幅と同じ表面幅を有し 時でも安定しています。これらのプーリー 度を保持することが難しくなります。 ています。200mm (8”)以上のベルト幅を使 がハードコート処理されると、金属ベルト 用する用途では、プーリーの表面幅をベ 駆動の際に適切な摩擦係数をもつ耐摩 また、プラスチックおよび複合材料 ルト幅のほぼ半分にすることが、実行可 耗性を表面にもたらします。タイミングプ もプーリー本体の材質として使用されま 能な設計オプションとなります。この種の ーリーには、硬質化されたタイミング要 す。それらは最も軽量ですが、最もコスト プーリーは、幅の狭いプーリーとして知ら 素をアルミ製プーリー本体に圧入させる がかからないとは限りません。アルミを れています。設計エンジニアは、ベルトト ことが可能です。歯付プーリーは、ボール 使用する際は、硬質化されたタイミング ラッキングを容易かつ軽量にし、コストを ベアリングをタイミング歯として使用する 要素をプーリー本体に圧入させることが 抑えるために幅の狭いプーリーを使用し Belt Technologies社の特許取得済みデザ 可能です。また、QD®ブッシングを用いて ます。 イン(米国特許番号 5,129,865)をベース 穴やキー溝、タップを追加することが可 にしています。代替のタイミング設計で 能です。適切な材質を選択することで、優 は、プーリーのTSD表面に圧入された改 れた耐摩耗性をもたらし、粒子状物質を 良ドリルブッシングを使用します。これら 生成させず、摩擦係数を金属ベルトに適 のブッシングは、ベルトのタイミング突起 合させることができます。 に関わるタイミングポケットの役目を果 たします。 タイミング歯付きアルミ ステンレススチール タイミングポケットおよびQD® Hushing付きプラスチック
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設計における考慮事項 - プーリー 第6章 18 径: プーリーを金属ベルト用途に設計する 際、必須となる設計事項はプーリーの径で す。径を決定する際には、2つの考慮事項が あります。システムの設計制約に対する最 善の径、そして金属ベルトで最適な性能お よび寿命を確保するための曲げ応力に対 する最善の径があります。 与えられた用途における適切な径は、 プーリー径対ベルト厚比率によって決定さ れます。理想では、この比率は625:1以上に なります。この関係は通常、金属ベルトの降 表1. 摩擦駆動システムでの各プーリー径対ベルト厚比率において予想 伏力の1/3である合計応力をもたらします( されるベルトの寿命 合計応力は曲げ・使用量・負荷応力を足し たものです)。 金属ベルトを用いたタイミングプーリ ーは、金属タイミングベルトが中立軸で駆 径対厚み比率が減ると、ベルトの曲げ 動するように、O.D(. またはテープサポート 応力が増し、ベルトの寿命が減ります。Belt 径として知られる金属ベルト、もしくはTSD) Technologies社が行った曲げ応力寿命テス で設計されなければなりません。これによ トをもとに、以下の表では、摩擦駆動システ り、確実にベルトとプーリーが相互にスム ムでの各プーリー径対ベルト厚比率にお ーズにかみ合い外れ合うことになります。 いて予想されるベルトの寿命を示していま す。ベルトの寿命に影響を与え得るその他 の応力は考慮されていません。 ほとんどのシステムでは、中心軸はベ ルト厚の半分で決定されます。ベルトが中 心軸で駆動する結果となる、プーリーの TSDを決定する式を以下に示します。 TSD = NxP - t ここで TSD = テープサポート部の径 N = タイミング要素の数 P = タイミングピッチ t = ベルトの厚み タイミングプーリーのTSDは、推奨される 625:1のプーリー径対ベルト厚比率により 推定され、それから適切なTSDを得るため に、タイミング要素数、タイミングピッチ、ベ ルト厚間でバランスを取るために調節さ れます。