プログラマブルコントローラ(PLC) 編
据付け配線と試運転段階
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4.1 据付け、配線から試運転までのフロー、4.2 据付け、4.2.1 開梱、4.2.2 盤内配置と実装の確認、(1) 実装上の注意点、(ⅰ) CPUの配置、(ⅱ) 入出力モジュールの配置
4.据付け、配線と試運転段階
4.1 据付け、配線から試運転までのフロー
この段階は着荷から据付け、盤外配線を経て試運
転を行うまでの段階で、そのフローチャートを(図
4.1)に示す。特にこの章は、PLC本体と外部シス
テム(被制御部)とをインタフェースする際によく起
こりそうなトラブルの原因となる色々な条件を少し
でも低減して、システムとして信頼性の高い長期運
転ができるように、接地環境やノイズ対策及び盤外
配線方法の他に、調整中に重大な事故につながらな
いよう安全に試運転が終えられるような方策、及び
システムの維持に欠かせないプログラムのドキュメ
ント方式について述べる。
4.2 据付け
4.2.1 開梱 く手の届く高さ位置に実装しなければならない。ま
今まで保管されていた期間や場所及び輸送途上で たプログラマなどのデバッグツールの接続と操作の
のトラブルの有無を考慮し、次のような項目に注意 しやすさも考えた位置に実装した方が良い。
する。また注意事項がカートン上や注意書などで明 CPUはノイズの影響も受けやすいため、供給電
示されている場合には、その注意書に従うと良い。 源の引込部及び入出力配線から分離できるように配
① 注文した形式どおりに入荷しているか。 置することも必要である。
② 破損や変形などの外観上の損傷はないか。 (ⅱ) 入出力モジュールの配置
③ 取付金具、接続ケーブルなどの付属品の個数 入出力モジュールには外部配線をつなぎ込むため、
が揃っているか。 配線作業のやりやすさを一番に考慮する必要がある。
④ その他締付けビスなどのゆるみや部品などの 入出力モジュールには各入出力の動作表示灯がつい
脱落はないか。 ているものが多く、この場合には動作表示灯を目視
4.2.2 盤内配置と実装の確認 できる位置でないとせっかくの機能を失うことにな
(1) 実装上の注意点 る。またテストラン時には、入出力の短絡線を用い
PLCは、盤内に実装して使用されることが多い。 て強制的にON-OFFされることも多く、このた
このような場合に特に留意しなければならない点に めにも安全面から自然な姿勢で短絡線の取付、除去
ついて述べる。 ができることも考慮しなければならない。
(ⅰ) CPUの配置 入力と出力の配置については、入出力ナンバーの
CPUは入出力部に比べると部品点数も多く回路 割付と関係するが、入力部分と出力部分を分けた配
も複雑なので、温度の影響をなるべく受けないよう 置とする方がノイズ対策としてはやり易くなる。そ
にしなければならない。すなわち、盤内の暖められ の反面、外部装置単位に入出力をまとめて配置した
た空気がよどみやすい最上部は避けることである。 方がメンテナンス上は楽である。
CPUの正面にはメンテナンス用の操作器具やエ 以上のように、入出力モジュールの配置計画に当
ラー表示灯が付いているため、オペレータが見やす たっては、ノイズ対策、メンテナンスの両面から十
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(ⅲ) 電源引込部分、(2) 設置、(ⅰ) 環境から設置場所を決める。
分な検討を加えることが大切である。 ところに配置するのが原則である。これは電源供給
PLCを用いた制御システムにおいては、後々 線にのってきたノイズをできるだけ盤内に持ち込ま
の改造、増設が多分に考えられるので将来用のス ないようにするためである。とくにノイズフィルタ
ペースを考えておくことが必要である。制御システ は電源引込口に近づけ、ノイズフィルタの1次側、
ムによって異なるが、一般に1~2割程度の増設ス 2次側ともにツイストペアにして互いを近づけない
ペースを考えておくことが必要である。 ことが大切である。
(ⅲ) 電源引込部分 絶縁トランスは銅と鉄の二重シールドされたもの
電源の引込部は、絶縁トランス、ブレーカ、ノイ を使用するのがより効果的である。
ズフィルタなどで構成され、これらは引込口に近い 図4.2にこれまで述べられてきたことを考慮した
模範的な配置図の参考例を示す。
(2) 設置 方法としては、図4.3に示すように、
(ⅰ) 環境から設置場所を決める。 ① 盤の上下によろい窓を設けて自然通風する。
(a) 温度 ② 盤の上部にファンを設けて強制通風する。
PLCの使用温度は素子部品の使用部分の関係か ③ 塵埃の多い場所では盤を密閉構造とし、ファ
ら0~55 ℃に規制されている機種が多い。閉鎖形ま ンにより強制循環通風を行う。
たは密閉形の制御箱に実装する場合は、盤内温度上 ④ PLCを実装した盤を設置した部屋全体を
昇(通常10~15 ℃程度)を差し引いて周囲温度の上 クーラで冷やす。
限を決める。 などの方法がある。①、②の方法は、塵埃の少ない
PLC単体では、ブレーカやリレーに匹敵する温 部屋内に盤を設置した場合のみ適用可能で、塵埃の
度条件が実現しつつある。しかし使用温度範囲を多 ある場所に設置される場合は、③か④の手段を講じ
少越えても電磁接触器やリレーなどでは即誤動作に なければならない。特にファンによる強制通風方式
はつながらないが、PLCについては誤動作につな では、盤内が負圧になるために、外気の塵埃も盤内
がる危険が多分にあるので、この点からもPLCを に入りやすくなる。従って外気の吸込口にはエアー
使用する場合には使用温度範囲に注意する必要があ フィルタをつけて、外気に含まれる塵埃の進入を防
る。 ぐ手段をとる必要がある。なお、エアーフィルタは、
PLCや他の部品が発生する熱が盤内にこもり、 塵埃、オイルミストなどで目づまりが起こり通風効
PLCの使用制限温度を超えることもあるので、こ 果を下げるため、定期的な洗浄を行わなければなら
のような場合は冷却装置を考える必要がある。冷却 ない。
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いずれにしても、ファンや空調機などの外部装 を用いないですむように考慮することが最良である。
置を用いての冷却に頼るということは、裏を返せば 逆に寒冷地などで朝のスタート時に0℃より低く
ファンや空調機が故障した時にはPLCが危険な状 なる場合は、小容量のスペースヒータを盤内に取付
態におかれるわけであるから、PLCの近くに温度 け、盤内の空気を5℃程度に予熱しておくことが望
センサをつけて警報を発するなどの異常検知/通報 ましい。このようにしてPLCの周囲温度を規定内
手段を設けておく必要がある。 で使うことが、PLCの機能を十分に発揮させるた
したがって、PLCの実装盤の設置場所を計画 めの前提条件である。
するにあたっては、ファンやクーラなどの冷却装置
図4-3 盤の冷却手段
(b) 湿度 衝撃発生源から盤を分離したり、盤を防振ゴム
PLCの絶縁特性を維持するために、相対湿度は で固定するなどの方法がある。
35~85%を範囲として規制している機種が多い。湿 ② 盤内の電磁接触器などが動作する時の衝撃に対
度に対して特に注意することは、冷暖房の入切で急 しては、衝撃源の方を防振ゴムで固定し、衝撃
激な温度変化が起きる際に発生する結露である。P が伝わらないようにしたほうがよい。
LCの基板に結露が発生し、ショートによる誤動作 (d) 雰囲気
を招くおそれがある。したがって、急激な温度変化 次のような場所でPLCを使う場合は、コネクタ
は絶対に避けるべきであり、結露の可能性がある場 部の接触不良や部品の腐食が誘発されるので、それ
合にはPLCの電源を常にONしておくか、スペー ぞれ対策を講じる必要がある。
スヒータにより常時予熱して置く必要もある。 ① 塵埃の多い場所
なお、相対湿度が35%以下では、静電気の発生に ② 水蒸気や油煙や有害ガスの漂っているような
よる誤動作が誘発される可能性がある。 場所
(c) 振動・衝撃 これらの場所では、PLCを実装した盤を完全
PLCへの振動・衝撃は誤動作の原因となるため、 に密閉構造にするか、盤内をきれいな空気でパージ
振動・衝撃の伝わらないように実装面で配慮してお し、盤内を加圧ぎみにして、外部からの進入を防ぐ
く必要がある。 ようすることが望ましい。
① 盤外部からの振動・衝撃に対しては、振動・
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4.3 配線、4.3.1 配線、(1) 誤配線の防止
4.3 配線
種々のノイズに対して強いシステムを作り、よ 4.3.1 配線
り高い信頼性のもとにシステムが稼動できるのも、 線には従来からの電線・ケーブル配線と、光
配線の上手下手によって大きく左右されるといって ファイバケーブルを使用した配線がある。ここでは
も過言ではない。配線作業に際し、特にノイズ対策 それらのケーブルについて配線上での注意する事項
は経験に負うべきところが多く、解説やマニュアル を述べることとする。
などを基によく管理された体制で作業を進めるのが
良い。
図4.4 入出力モジュール配線例
(1) 誤配線の防止 のである。
① ケーブルにマークバンドなどを付けて行き先 ② 色分け配線をする。
表示をすれば、配線時の誤配線をチェックで ③ 同じような種類の信号を伝送するケーブルは
きるのみならず、配線後のチェックや保守点 同じダクトに入れてグループ分け配線をする。
検が容易になる。図4.4はその一例を示したも
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(2) 電線・ケーブル配線、(ⅰ) 一般的注意事項、(ⅱ) 配線ルート、下記のものは別ケーブルを使用するか、別ルート配線を行うことを原則とする。、(ⅲ) 配線方法
(2) 電線・ケーブル配線 下記のものは別ケーブルを使用するか、別ルート
(ⅰ) 一般的注意事項 配線を行うことを原則とする。
① 電線は端子から端子までの配線に継ぎ合わせ ① 電力線と信号線
のないこと。 ② 入力信号と出力信号
② 多芯ケーブルの終端は電線の端に引張り力が ③ アナログ信号とディジタル信号
加わらないように適切に支持したり固定した ④ 高レベル信号と低レベル信号
りしなければならない。 ⑤ 高速パルス列信号と低速パルス列信号
③ 可動部分への接続は、一方を固定部分に、他 ⑥ 直流信号と交流信号
方を可動部分に電線を固定し、可とう電線を なぜなら上記の組み合わせは、信号の種
用い、扉の開閉などによって損傷しないこと。 類・性質やレベルが異なるために電気的誘導など
④ 線の末端には圧着端子を用い、端子への接続 によってS/N(信号対ノイズ)比が低下する原因
はトルクドライバを用いて適切な圧力でビス になる。また区分・整理して配線しておくと後々
を締め付けて接続する。 の保守やシステム変更時の作業にも都合が良い。
(ⅱ) 配線ルート (ⅲ) 配線方法
① 性質の異なる信号ケーブルを同一ダクト内に
入れる場合は必ず隔離する(図4.5)。
② 複数の電源線を同一ダクトに収容することは ③ 電源線と電線管を用いて配線する時は、
極力避ける。やむをえず収容する時は、ダク 1回路の電線を別々の電線管に入れてはなら
ト内に隔壁を設け、この隔壁を接地する。 ない。電線管が発熱する(図4.6)。
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④ 動力ケーブルと信号ケーブルは平行させては 避け、図4.7のように高圧、動力系からできる
ならない(4.4.3 外部入出力信号線の布線とノ だけ分離して配線、接地をする。
イズ対策の(3)の①を参照のこと)
⑤ 高圧機器が接地されている盤内での取付けは
図4-7 高圧機器の設置されている盤内での配置例
⑥ 高圧線や動力線から200mm以上離しPLC 線を金属管配線して金属管を完全に第3種接
を取り付けるか、又は高圧線や動力 地にする(図4.8)。
図4-8 動力線からPLCを隔離する 方法の一例
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(ⅳ) その他の注意事項、(3) 各ケーブルの特長、(ⅰ) ツイストペア配線、(ⅱ) 同軸ケーブル配線、(ⅲ) 光ファイバケーブル配線、4.3.2 電源、(ⅰ) 電源系統
(ⅳ) その他の注意事項
① 入出力モジュールは、機種によりマイナスコ (ⅲ) 光ファイバケーブル配線
モンとプラスコモンがある。極性に注意して 光ファイバケーブルの利点としては、
配線する必要がある。 ① 石英系のファイバは、低損失のため長距離伝
② 入出力モジュールの未使用端子や、電位の定 送に適している。
まらない宙ぶらりんの部分があれば必ず接地 ② 広帯域のため大量の情報を伝送できる。多重
してノイズの進入を防ぐ必要がある。 伝送も可能なため、省スペースや軽量化を計
(3) 各ケーブルの特長 り、コストを下げることができる。
設置場所の様々な条件から最も適したケーブル ③ ノイズを拾わないので、外部ノイズに対する
を選定するが、ここではツイスト、同軸ケーブル、 耐ノイズ性が高い。
光ファイバケーブルの特長を簡単にあげていく。 などが挙げられる。注意しなければならない点は、
(ⅰ) ツイストペア配線 保護をしても折れやすいので、ねじったり強い衝撃
ツイストペアとは、2本の小さい断面の絶縁導 を与えたり、引張り応力を加えないように配線の際
体を互いによじって作ったものである。簡単な構造 注意しなければならない。(図4.10、表4.1参照)
であるが、こうすることで相互インダクタンスによ
る誘導ノイズが大幅に減る。また、耐熱、耐屈曲、
耐油性などのケーブルがある。
(図4.9)
(ⅱ) 同軸ケーブル配線
同軸ケーブルの利点としては衝撃やねじれに対
して強い構造を持っているという点である。同軸
ケーブルの弱点は、非常に線が太くなるのでコスト
が上がることと、石英系のファイバに比べて長距離
伝送の際の損失が高くなる点である。(図4.9)
図4-10 光ケーブルの断面構造の例
表4.1 光ファイバケーブルの仕様
項目 仕様 備考
目安として
動作温度範囲 -20℃~+80℃
-10℃~+70℃
許容引張力 10kg~20kg
信号の減衰を考
許容曲げ半径 10mm~20mm
慮して50mm以上
図4-9 ツイストペア・同軸ケーブルの構造
4.3.2 電源 電源がある。
(ⅰ) 電源系統 PLC用電源は、大もとの受電トランスから専
PLCに関連する電源は、PLCへの電源供給 用に引かれた制御用電源からとれれば理想的である
(PLC用電源)と入出力回路用電源に大別される。 が、一般的には図4.11のように電源系統からブラン
こ の 他 に 動 力 用 電 源 と 操 作 回 路 用 チすることが多い。
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図4-11 電源系 統図
後者の場合では、PLC用電源は少なくとも絶 ログ値を参考にして、定格電圧の変動範囲やリップ
縁トランスを用い、動力側と絶縁してPLCに供給 ルの許容値の範囲内におさまる電源を用意する(図
する。このトランスはシールド付きとし、トランス 4.12参照)。
の1次側にノイズフィルタ(ラインフィルタ)をいれ 最近は、スイッチングレギュレータが安価で小
ることが望ましい(図4.17参照)。 形になってきたので、入出力用電源などで直流電源
ごく小規模のシステムでは、入力用電源をPLC用 が必要な場合に使用するとよい。負荷短絡などでも
電源と共用したり、出力回路の電源トランスを省略 直流出力が垂下特性を示し、過大電流を防止するの
することもある。しかし、出力回路は負荷の性質に で手軽に安心できる電源系統を構成できる。
より突入電流が流れたり、ノイズが発生したりする PLCの入出力モジュールの電源許容範囲が広
確率が高いので、このような場合でも出力回路電源 い場合でも、相手側がパルス入力やディジタル回路
だけは、他の電源と分離することが基本である。 だったりすると入出力用電源が外部のロジック回路
PLCに接続される周辺装置(プログラミング の電源と共用になることが多いので、外部ロジック
ツールなど)に対しても、シールドトランスの後に 回路側の制約事項を満足する電源を使用する必要が
専用のコンセントを設けるのが望ましい。 ある。
(ⅱ) 入出力用電源 アナログ入出力モジュール用の電源は、安定度
ディジタル入出力モジュール電源は、PLC入 が高く電源自身よりノイズを発生することのない直
出力回路の動作許容範囲を満足していればよい。カ 流安定化電源を使用するのが原則である。
タ
図4-12 入出力機器用 DC電源仕様
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(ⅲ) 電源の電圧変動、(ⅳ) 電源容量、4.3.3 接地、(1) 接地の目的、(2) 接地工事の規定、(3) 接地の仕方と注意事項
(ⅲ) 電源の電圧変動 の機能を果たすために必要な接地-機能接地であ
PLCの交流電源の電圧変動範囲は、+10%、 る。
-15%以内が一般的である。 これらの接地については、経験的に時には実験
70~80%程度に一定時間以上、電源電圧が低下 的に解決しなければならない場合がある。事前に
した場合や、20数mS以上停電した場合には、P 十分な検討と注意を払って接地を行うことが大切
LCが検知して運転を停止する機種が多い。マ である。
ニュアルにしたがってシステム的なチェックを加 (2) 接地工事の規定
えておく。 「電気設備技術基準」第18条に接地工事の種類と
(ⅳ) 電源容量 接触抵抗値が、また第19条には接地線の太さ(表
PLC用電源はCPUなどの演算回路に消費さ 4.2)が、そして第28条には機械器具の鉄台や外箱の
れ、その電源容量はメーカのカタログの消費電力 接地(表4.3)が規定されている。その他JIS C 0445、
で知ることができる。 0446では保護接地線と接地側電線の色別並びに端
入力回路の電源は、入力モジュールの定格表の 子記号について規定している。なお、この解説の
入力電流×入力点数で算定できる。出力回路の電 中で次に掲げる①~⑥は接地線で接地極に接続さ
源容量は、出力モジュールに接続される負荷(電磁 れ、そのうち①~③は保護接地に、③~⑥は機能
接触器、リレー、ランプ、バルブなど)の定格電流 接地におのおの該当し、前者の保護接地について
同時動作個数で算定されるが、トランスや安定化 はこの通則を準用するよう推奨している。
電源の容量に十分余裕を持たせることが望ましい。 ① 電気機器の金属製フレーム又は外箱
② 金属性の電線管、ダクトの類
4.3.3 接地 ③ ケーブルの金属被覆
(1) 接地の目的 ④ 電路の中性点又は一線
接地には二つの目的がある。その一つは漏えい ⑤ 避雷器
や誘導、時には故障などによって生じた電位を接 ⑥ その他接地の目的
地電位に保つことにより、人体を感電から防止す
るための保安上の目的である保護接地である。他
の一つは外部から進入してくるノイズを防止した
り、機器や装置自体から発生するノイズを防止し
たり、機器や装置自体から発生するノイズによっ
て他の機器や装置に障害を与えないためのノイズ
防止用の接地などを含め、その機器又はシステム
表4-2 接地工事の異種類
接地工事の種類 適用範囲,使用目的など 抵抗値 接地線の太さ
1 高圧(60V~7kV)及び特高圧A種(第 種)接地工事 7kV 10Ω以下 直径2.6mm以下( 以上)の機器に使用
B 2 高圧又は特高圧により低圧にお種(第 種)接地工事 詳しい規定あり 直径4mm以下
とす変圧器の混触時の保護
100Ω以下又は500Ω以
D 3 300V 以下の低圧機器の筐体,種(第 種)接地工事 下
電線管などの接地 感電防止
(遮断機使用時のみ) 直径1.6mm以上
300Vを超える低圧機器の筐体
C種(特別第3種)接地工事 10Ω以下
感電防止
表4-3 接地工事の種類
機械器具の区分 接地工事
300V以下の低圧用のもの D種(第3種)接地工事
300Vを超える低圧用のもの C種(特別第3種)接地工事
高圧用又は特別高圧用のもの A種(第1種)接地工事
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(ⅰ) 1点接地の原則、(ⅱ) 接地はできるだけ専用接地(その接地極を他の接地極から10m以上離す)とする。、(ⅲ) 接地工事
(3) 接地の仕方と注意事項 ② 専用接地が取れない時は図4.13.(2)のよう
(ⅰ) 1点接地の原則 に接地極で他の機器の接地極と接続する共用
接地線は「電位で決めるもの」と考えておく方が 接地となる。
無難である。正常状態では接地線に電流を流して ③ 特にモーターなどの大電力機器との共通接地
はいけない(電流の帰ってくるリターン回路には接 は絶対に避け相互に影響を受けぬよう個別に
地を共用してはならない)。 設ける。
(ⅱ) 接地はできるだけ専用接地(その接地極を他の ④ 単に感電防止が目的で多くの機器がつながれ
接地極から10m以上離す)とする。 た接地極(時には鉄骨のこともある)への接地
① 接地工事は第3種接地で行い、他の機器の接 は避ける。
地とは分離した専用接地が最良である(図4.13 ⑤ 接地極はできるだけPLC側の近くとし、接
-(1))。 地線は短くする。
図4-13 接地方 法
(ⅲ) 接地工事 しかし土質によっては規定の接地抵抗が取り
接地は通常市販の接地棒を2本程度打ち込ん 難い場合があったり、また接地抵抗は土質、
で並列に接続すれば第3種接地はできる(図4.1 含水率、季節、埋設後の経過時間などで変化
4)。 するので注意が必要である。
図4-14 接地施 行の加工例
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(ⅳ) 接地上の注意事項 は、それらとチャネルベースとは絶縁体
① 信号線接地と筐体接地が同一である場合 による絶縁が必要である(図4.15)。
図4-15 筐体を絶縁して接地する方法
② PLCを収納した盤は電気的に他の機器 地するとともにPLCを収納した盤自体も
と絶縁して接地する。これは他の電気機 確実に接地する。
器からの漏えい電流による影響を防止す ④ シールドケーブルを用いて入出力を配線す
るためである。 る場合のシールド導体の接地は、図4.16に
③ 高周波設備がある時は、高周波設備を接 示すようにPLC側に近いシールド導体を
筐体接地端子に接続する。
図4-16 シールドケ ーブルの接地
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4.4.1 モジュールの配列と盤内配置、4.4.2 電源系統のノイズ対策
4.4 ノイズ対策
PLCはノイズを考慮して製品化されているが、 できる。
予期せぬノイズを拾った場合の対策は苦労の多いも PLC市場の拡大により需要家各位の用途が多
のである。したがって、ノイズ対策はシステム設計 様になっていること、ノイズ対策には経験に負うと
の時点から実施することが基本であるといわれてお ころが多いこと、ノイズ対策を初めから完璧に実施
り、また効果的な対策ができる。ノイズ対策の基本 すると不経済になること、などからシステム構築の
は「ノイズ出すな、通すな、応ずるな」といわれてい 際のポイントについて以下で述べる。
る。現在、PLCは各国への輸出が頻繁になされる 以下のいくつかの対策は、すべて実施しなけれ
ようになっている。各国で製品を流通させるための ば実用上PLCが使用できなくなるというものでは
規格UL/CSAやCEを取得するためには、IECなどで なく、実際の制御対象物の重要度や使用環境(熔接
定められている一定の基準を満たさなければな 機などの様な高いノイズ発生源が近辺にある)、使
らず、そのマーキングを取得している製品は一定水 用PLCのノイズ耐量などを総合的に判断し実施す
準でノイズ対策が施されているので、各メーカのマ る。表4.4はノイズの種類と対策をまとめたもので
ニュアル、解説などに基づいたレベルで通常は対応 あるが、主要な項目について以下に補足する。
表4.4 ノイズの対 策と種類
雑音の種類 対策
・開閉器雑音(電磁開閉器,接触器 ・盤内配 置及びその配線
等) ・漏電遮 断器,配線用遮断器,電磁開閉器などアークが発生
・Voltage Dip(脈動・瞬断) する機器とはできるだけ分離接地
・雷サージ ・大規模 システムでは,高圧盤又は動力盤と分離接地
・入出力線又は制御信号線伝送ケーブ ・電源線 は,密にツイストする
ルに誘導する雑音 ・入力線と出力線の分離
・静電気雑音 ・異電圧レベル,信号線,動力線の束線厳禁
・強電磁界発生源による電磁誘導雑音 ・盤及び 外部との中継
・絶縁ト ランス
・最短距離配線
・定電圧 トランス
・フィル タ
・盤外配 線
・シールドケーブルの採用
・入力線 と出力線との分離
・光伝送 ケーブルの活用
・接地
・専用接地・・・・最良
・供用接 地・・・・良
・共通接 地・・・・不可
・その他
・サージ吸収式電磁接触器
・リレー コイル(DCの場合) フライホイルダイオードの接
続
・サージアブソーバの接続
4.4.1 モジュールの配列と盤内配置 また,外部回路の電磁接触器やリレー類はその
入出力の割付段階で、DC用の入出力部とAC コイルや接点がノイズ発生源であるため、PLCと
用の入出力部を分けて割り付けるのが基本で、CP は離して配置する必要がある。
Uの周りには、AC用の入出力部は避けてDC用の
入出力部を配置したほうがよい。そしてDC回路配 4.4.2 電源系統のノイズ対策
線とAC回路配線は盤内で分離できるように配置す 電源回路に重畳しているノイズがPLCの誤動作の
べきである。 最も大きな要因となるため、電源回路の対策は十分
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過ぎる程行っておくことが重要である。一般には、 ① ブレーカによりPLC電源と入出力機器
電源引込部にノイズフィルタを付ける程度であるが、 の電源を分離すると、配線も分離されノイズ
絶縁トランスを追加しておくことがより効果的であ の低減にもなり都合が良い(図4.18)。
る。 ② 絶縁トランスなどを使用する。これは外来ノ
図4.17に電源回路のノイズ対策例を示す。図のうに、 イズが特に多いと予想される場合、またシス
ノイズフィルタは電源引込口の近くに付け、ノイズ テム納入先のこの種の事情が不明な場合には
の重畳した配線を盤内に引張らないことが必要であ 絶縁トランス、シールドトランス、ノイズ
り、電源回路の配線はすべてツイストにすることが カットトランス、フィルタなどを介して入力
重要である。ノイズフィルタの1次側と2次側を束 すると効果的である(図4.19)。
ねることはノイズフィルタの効果を低減させるため、 ③ トランスとPLC間の配線は最短距離で、密
絶対に避けなければならない。 にツイストして重畳している線と束ねないよ
うに配線する。
図4-17 電源回路のノイズ対策例
図4-18 電源系統 の分離
図4-19 絶縁トラン スなどの使用
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4.4.3 外部入出力信号線の布線とノイズ対策、(1) 入力信号線のノイズ対策、(2) 出力信号線のノイズ対策、(3) 入出力信号線のノイズ対策共通項目
4.4.3 外部入出力信号線の布線とノイズ対
策
(1) 入力信号線のノイズ対策
入力信号へのノイズ対策としては次のことを考
慮しておく必要がある。
① 入力信号線は動力回路とは盤の内外とも別ダ
クトにして布線する。
② どうしても別ダクトできない場合には、シー
ルド線を使用する。
③ DCの入力信号線の場合には他のAC回路と
は分離して布線し、この場合にも分離できな
い時はシールド線を使用する。
④ 入力信号に誘導負荷をパラに接続する場合は、 図4-21 出力信号のノイズ対策
誘導負荷にサージキラーを付ける。(図4.2) (3) 入出力信号線のノイズ対策共通項目
入力信号線・出力信号線共通の対策として次の
ことを考慮しておく必要がある。
① 入出力信号線は、高圧線や動力線との束線、
近接、並行配線は絶対に避けること。近接す
る時は、ダクトで分離したり、別電線管配線
をする。ダクトや電線管は必ず接地する(図4.
22)。
② ダクトで分離できない時は一括シールドケー
ブルを使用し、PLC側接地端子に接続し入
力機器側は開放する。(図4.16)
図4-20 入力信号のノイズ対策
③ 入出力信号線の配線距離が長い場合(例えば
(2) 出力信号線のノイズ対策 30m以上)は、AC入力モジュールを使うと
出力信号へのノイズ対策としては次のことを考 誘導電圧が大きくなることがある。DC入力
慮しておく必要がある。 モジュールを使用するとよい(図4.23)。
① 出力信号線も入力信号線と同様に、動力回路 ④ 入出力信号に誘導負荷が接続されている場合
線、AC回路とDC回路の分離布線を行う。 には、ノイズを吸収するために交流回路では
分離できない時はシールド線を使用する。 サージキラーを、直流回路ではダイオードを
② 誘導負荷をON-OFFする場合には、負荷 おのおの誘導負荷のごく近くに接続するか、
にサージキラーを取付ける。この場合のサー 又はリレーによる中継などの措置を取る(図4.
ジキラーは負荷のごく近くに付けなければ効 24)
果が少なくなる。(図4.21) ⑤ 共通インピーダンスを持たないように配線す
③ トライアック出力では、交流波形の0V付近で ることが理想である。しかしこのような場合、
OFFになり、ノイズがほとんど発生しない 配線数が多くなるのでリターン回路を共用す
ので、サージキラーを付ける必要はない。し ることがある。リターン回路は十分余裕のあ
かし、誘導負荷とシリーズに外部のハードイ る太い電線を使用し、同じような信号レベル
ンターロック用接点を挿入する場合、この接 を一まとめにして配線する。
点のON、OFF時にノイズが発生するので、 ⑥ 長い入出力線では入力信号線と出力信号線は
誘導負荷にサージキラーを付けることが必要 分離して配線する。
である。 ⑦ パイロットランプ(特にフィラメント形)はツ
イストペア線で配線する。
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入力機器や出力負荷機器のノイズ発生源をCR PUと離して布線する。
サージアブソーバ、ダイオードなどで対策する方法 ③ 入出力線とCPUも、目安として100mm以
がある。しかしPLC自体の入力モジュールや出力 上離して布線する。
モジュールにはそれなりの処置がなされているので、 ④ CPUと入出力装置のI/Oケーブルとの間
ケースバイケースの対策で良い。 は、電圧も低く、スピードの速い信号伝送を
行っているため、他の線と同一ダクト内に格
4.4.4 盤内配線のノイズ対策 納しない。
盤内配線でのノイズ対策としては、次の点を考慮し 最後にノイズ問題はPLCを扱う信頼性や安全
ておく必要がある。 性の立場からは、最も重要な事項であることには違
① 動力線は、目安として200mm以上PLCと いないが、経験に負うところが大きい。PLCメー
離して布線する。 カと需要家各位が一体となって対応することが望ま
② 外部AC回路は、目安として100mm以上C れる。
図4-23 入力電源の直流化
表4-24 入力の誘導電圧対策
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4.5 デバッグ、4.5.1 シミュレーションによるプログラムの確認、(1)プログラムのダウンロード、(2)プログラムの照合、(3)動作シミュレーション、(ⅰ)モニタ画面、(ⅱ)強制入出力機能
4.5 デバッグ
4.5.1 シミュレーションによるプログラ 面でモニタする方法、強制入出力機能を使用する方
ムの確認 法、及び模擬入力を使用する方法がある。
PLCラダー図からプログラムを作成し、修正し (ⅰ)モニタ画面
ていくことでプログラムは完成する。そのプログラ モニタ画面には、大きく分けて2種類の画面が
ムをPLCにダウンロードして、デバッグ、試運転 ある。
を繰り返し、プログラムの修正・変更をすることに ひとつは、ラダー図(回路形式)でプログラムの
よりプログラムを完成させる。ここでは、プログラ 状態を表示する回路モニタ画面である(図4.26参照)。
ミングツールのパソコン専用ソフトを使用して、一 もうひとつは、指定したデバイスを、1画面上
般的なシミュレーションによるプログラムの確認の に連続表示して、そのデバイスの状態をモニタする
方法について説明する。図4.25にデバッグのフロー 一括モニタ画面である。(図4.27参照)
を示す。 その他にモニタを停止する機能がある。
(1)プログラムのダウンロード 各デバイスの立ち上がりなどの条件を設定する
プログラムをPLCにダウンロードする時にエ ことによりモニタを停止し、そのタイミングでのデ
ラーが発生する場合がある。エラーの原因としては、 バイスの動作を容易に見ることができる。また動作
作成したプログラムに文法上の誤りや通信ケーブル シミュレーション中にエラーが発生すると、そのエ
の異常など、様々な場合が考えられる。その際、パ ラーの内容を表示することのできる機能もある。
ソコン画面のエラーコードによりエラー内容が表示 (ⅱ)強制入出力機能
されている部分を参照して、エラー原因を取り除い 強制入力命令とは、PLCをRUN状態にして
ていくようにする。 モニタ画面での操作で入力のON/OFFを切り替
(2)プログラムの照合 えたり、各パラメータ(タイマやカウンタなど)の設
各社のソフトには、ダウンロードしたプログラ 定値、及び現在値などを変更して、出力状態を確認
ムと作成したプログラムを照合する機能がある。こ するものである。
の機能により正常に書込まれたかどうかを確認する 強制出力命令とは、PLCをRUNさせない
ことができる。 モードの状態で出力をモニタ画面での操作で出力を
(3)動作シミュレーション ON、OFさせるもので、負荷の動作確認を行うも
ダウンロード後、モニタ画面に切り替えて動作 のである。
シミュレーションにより動作確認を行う。モニタ画
図4.25 デバッグフロー
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図4.26 回路モニタの画面例
図4.27 一括モニタの画面例
強制入出力機能を用いる場合の注意事項は、 いように行うこと。
① 負荷をつないで行う場合は、機械の動作を ② 保持形の内部データを強制出力させた場合
よく確認し、機械の破損など事故を生じな は、次にPLCをRUNさせた時、その
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(ⅲ)模擬入力によるシミュレーション、4.5.2 プログラムのデバッグ時の一般注意、4.6 試運転、4.6.1 事前チェック、(1) 使用環境のチェック、(2) PLCの各モジュールの取付け状態チェック、(ⅰ)制御盤の構造及び設置状況、(ⅱ)各モジュールの取付け状況
データを保持して動作することになるので 4.5.2 プログラムのデバッグ時の一般注意
注意すること。
(ⅲ)模擬入力によるシミュレーション プログラムの修正を行うために外部メモリーの
最終的には、模擬入力(操作SWなど)を用い 抜差しをする時には、必ず電源をOFFにして行う。
て、出力状態をPLCの出力LEDやプログラミン 万一RUN状態で外部メモリーを抜くと、PLCは
グツール(パソコンなど)のモニタ画面で確認する。 暴走し負荷を誤動作させることもあるので、電源を
(4)修正・変更作業 OFFにすることは必ず守る。装着時も同様である。
シミュレーションプログラムの修正・変更がある プログラムが完成したら、そのプログラムを外
場合は、第3章で説明された方法で行う。この際、 部メモリーに保管する。その外部メモリーには何の
通常はCPUをSTOPしてプログラムを修正するが、 プログラムが入っているかが分かるように、ファイ
RUNの状態で修正できるものもある。これは例え ル名やラベルなどをつけておくこと。
ば、プロセス制御のような大規模で、途中で制御を 外部メモリーについては、後述5.4.2の「予備の保
止めることが容易でないような制御の場合に威力を 管」の項を参照すること。
発揮する。
4.6 試運転
図4.28に試運転のフローを示す。 注意することが望ましい。なお、個々の環境要
求事項については、(JIS B 3502)を参照すること。
(2) PLCの各モジュールの取付け状態チェック
PLCの各モジュールが正しく取り付けられ
ていることを、次の項目についてチェックする。
(ⅰ)制御盤の構造及び設置状況
制御盤の構造は、その設置環境に適したもので
なければならない。塵埃、オイルミストの多い
工場では、制御盤は密閉構造でなければならな
い。このため扉にパッキングが正しく貼られて
いるか、歪みなどによる隙間は無いか、不要な
配線穴は無いか、配線穴のシールは良いかなど
をチェックする。
その他、周囲温度が特別に高いとか、振動が
多いなどの環境の場合は、制御箱の構造がそれ
に適したものとなっていることも合わせて
チェックする。
(ⅱ)各モジュールの取付け状況
各モジュールがPLCメーカの指定通り正し
く取り付けられていることをチェックする。多
くのメーカが指定している項目には次のような
ものがある。
① モジュールの配置。
② モジュール取付けネジのゆるみの無きこと。
4-28 ③ モジュールの近傍に発熱部品無きこと。 図 試運転フロー ④ モジュールの近傍に電気的ノイズをだす装
置無きこと。
⑤ 電線の切りくずからモジュールを保護する
カバーなどは温度が上がるので除去するこ
4.6.1 事前チェック と。
(1) 使用環境のチェック ⑥ モジュールの取付け方向。
使用者はシステムを据付けする以前に、温度、 ⑦ モジュール間ケーブルコネクタの固定(ネ
汚染物質、衝撃、振動及び電磁気の影響などを ジ止め)。
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(3) 配線チェック、(4) 絶縁・耐電圧試験、(5) 電源電圧測定、4.6.2 試運転、(1) 電源投入テスト、(2) 外部配線のチェック
⑧ 運転に必要なモジュールが実装されている 験電圧は通常AC1500Vとする。
こと。 ⑦ 1分間試験電圧を印加して、異常が無い場
⑨ PLCの各種設定スイッチが正しく設定さ 合を合格とする。ただし、PLCの電源部
れていること。 のノイズフィルタより通常1mA(定格入力
(3) 配線チェック 時)の漏えい電流があるので、あらかじめ
PLC周辺の配線がPLCメーカの指定通り 試験器にセットしておくこと。
に正しく行われているかをチェックする。多く ここでもし測定個所間のショートを省略し
のメーカが指定している項目には次のようなも て測定を行うと、ある測定個所が地絡して
のがある。 いた場合、その個所と現在測定中の個所の
① 入出力配線と強電配線の分離 間に高圧が印加されることになり場合に
② モジュール間ケーブルと入出力配線及び強 よってはPLCを損傷させることもありう
電配線の分離 るので注意すること。
③ 電源配線はPLCの仕様通りに電圧の電源 (5) 電源電圧測定
に接続されていること。またPLCの電源 電源投入前に電源電圧を測定し、PLCの仕
電圧の切替えができる物は、セット状態と 様と合っているか調べる。またPLCによって
一致していること。 は電源電圧を選択できる様になっているものも
④ 接地配線が正しく行われていること。接地 あるが、その選択が正しく行われていることも
配線はPLCメーカ毎に最適な方法が若干 合わせて調べる。
に異なるので、各メーカ指示通りに行うこ
と。一般には、他の機器とは別に制御盤内 4.6.2 試運転
の接地のブロックまで配線すればよい。 (1) 電源投入テスト
⑤ 電源や入出力配線、バッテリ配線などのP 電源を投入する前に誤配線があった場合の被
LC周辺の配線にゆるみが無いこと。 害を少なくするために必要な処置を行う。
⑥ 特殊入出力モジュールや、接地の配線には、 ① 動力回路をOFFにする(サーキットブ
電線の種類や太さが指定してあることが多 レーカをOFFにする)。
いので、それらが指定通りであること。 ② 空気圧の元バルブをOFFにする。
(4) 絶縁・耐電圧試験 ③ 誤配線があった場合に安全上問題があった
PLCを使用した機械や設備の絶縁チェック り、機器の破損が予想できる個所は配線を
は、PLCが電子装置であることから、チェッ 外す。
クによりPLCを破損させないように注意する 次に電源を投入し、異状の有無を確認する。
必要がある。すなわちPLCの外部端子の中に ① 異常な音などは発生していないか。
はDC5VやDC24Vの個所があり、これらは通常 ② PLCのCPU部分にある表示ランプの点
絶縁電圧が低く設定されているので、高圧のメ 灯状況は正常か。
ガーにて絶縁チェックを実施すると、場合に ③ 入出力モジュールの表示ランプの点灯状況
よってはPLCを破損することがあるので注意 に異常はないか。
を要する。 ④ PLCに印加されている電圧及びPLCか
次に絶縁チェックのステップを示す。 らの出力されている電圧を測定し、規定値
① 絶縁測定を行う個所と行ってはならない個 を満足しているか確認する。
所を区別し、後者は分離する。 (2) 外部配線のチェック
② 測定を行う個所をすべてショートする。 PLCを動作させて機械・設備の試運転を行
③ 測定電圧を決める。AC100V及びAC200V う前に、リミットスイッチやソレノイドバルブ
回路では通常DC500Vを使用する。 とPLCを結んでいる外部配線を先に調べた方
④ 測定個所とグランド間の絶縁抵抗の測定を がトータルの試験時間が短くなる場合が多い。
行う。 これは異常個所がシーケンス回路部と外部配線
⑤ 測定値が所定の値以上である場合は合格と の両方にあると、その発見に多くの時間を要す
する。所定の値は通常10MΩ~1MΩであ ることがあるためである。チェックをする方法
る。 にはテスターを使用して電線を1本ずつ調べてい
⑥ メガーによる絶縁チェックの次に絶縁耐圧 く方法と、実際に電源を投入して調べる方法が
試験を行う。試験個所及び試験方法はメ ある。ここでは作業も容易で間違いが少ない後
ガーによるテストと同様に行う。ただし試 者の方法について説明する。ただし、この方法
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