1/52ページ
カタログの表紙 カタログの表紙 カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(5.8Mb)

CKD技報 Vol.9(2023年)

ホワイトペーパー

CKD技報は、永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、問題解決への技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。

以下の内容をご紹介。

遠隔ソリューション
デジタル技術による生産ライン立ち上げの効率化
PTP包装機における搬送ローラを通過する
成形フィルムの非線形有限要素解析
基板の異物検査技術
はんだ印刷検査機「VP-01G」
自己復帰機能付きラッチバルブの開発
ソレノイドの高効率磁気回路設計
噴流のシミュレーションと可視化
バイオプロセスへの取り組み

このカタログについて

ドキュメント名 CKD技報 Vol.9(2023年)
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 5.8Mb
登録カテゴリ
取り扱い企業 CKD株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログの内容

Page1

C K D 技 報               V o l ・ 9 CKD技報 Vol.9 CKD Technical Journal 2 0 2 3 年 1 月
Page2

00

規準 Corporate Philosophy, Corporate Commitment, Standards of Conduct 企業理念には、当社グループの進むべき方向を明確にするため 「流体制御と自動化の革新」を明記し、社会に貢献することを宣言 しております。 経営理念は、企業理念を実現するために全社員が守らなければ ならない約束ごとを5項目に分け、全社員が責任を持って実行 できる体制を目指しています。 行動規準は、企業理念および経営理念に基づき、全社員が順守し 実践すべき具体的な事項を定めたものです。 規準 企業理念 Corporate Philosophy 経営理念 Corporate Commitment 1.社会的責任の自覚 1.Recognition of Corporate Social Responsibility 社員全員が社会的責任を自覚し、法を順守し、 Each corporate member recognizes Corporate Social 情報を開示し、社会の信頼が得られるよう誠実に Responsibility, complies with all laws and regulations, 行動します。 discloses information, and honestly conducts oneself to gain social entrustment. 2.地球環境への配慮 2.Care for Global Environment 地球環境に配慮した環境にやさしい商品の 提供と、企業活動を通じて環境保全につとめます。 We shall propose eco-friendly products, and strive for environmental conservation through corporate activities. 3.顧客志向の徹底 3.Thorough Customer Orientation 常に顧客志向の精神と謙虚な心で対応し、 We shall always correspond with a customer oriented and お客様に満足いただける製品とサービスを modest mind, offering products and services to promote 提供します。 customer satisfaction. 4.技術革新への挑戦 4.Challenge to Technology Innovation 世の中のトレンドを見極め、技術革新につとめ、 We shall take a leadership role in the industry by identifying 魅力あふれる商品をタイムリーに提供し、 global trends, striving for technology innovation, and 業界のリーダーシップをとります。 offering effective products in a timely fashion. 5.人材重視の企業風土 5.Corporate Culture with Faith in Human Resource 一人ひとりの可能性と働きがいを大切にし、 We shall build corporate culture with faith in human 失敗を怖れることなく業務改革に取り組み、 potential and satisfaction upon achievement of each 組織の強味を最大限に発揮できる企業風土を member, courageously challenge innovation in operation, つくります。 and capability to demonstrate maximum strength of organization. 1 CKD 技報 2023 Vol.9
Page3

目次 規準 Corporate Philosophy, Corporate Commitment, Standards of Conduct 企業理念には、当社グループの進むべき方向を明確にするため 「流体制御と自動化の革新」を明記し、社会に貢献することを宣言 しております。 経営理念は、企業理念を実現するために全社員が守らなければ ならない約束ごとを5項目に分け、全社員が責任を持って実行 できる体制を目指しています。 行動規準は、企業理念および経営理念に基づき、全社員が順守し 目次 実践すべき具体的な事項を定めたものです。 規準 企業理念 Corporate Philosophy ごあいさつ 1 巻内特集 テーマ「DX」 遠隔ソリューション 2 経営理念 Corporate Commitment デジタル技術による生産ライン立ち上げの効率化 6 1.社会的責任の自覚 1.Recognition of Corporate Social Responsibility 社員全員が社会的責任を自覚し、法を順守し、 Each corporate member recognizes Corporate Social 情報を開示し、社会の信頼が得られるよう誠実に Responsibility, complies with all laws and regulations, PTP包装機における搬送ローラを通過する 行動します。 discloses information, and honestly conducts oneself to gain social entrustment. 成形フィルムの非線形有限要素解析 12 2.地球環境への配慮 2.Care for Global Environment 地球環境に配慮した環境にやさしい商品の 基板の異物検査技術 17 提供と、企業活動を通じて環境保全につとめます。 We shall propose eco-friendly products, and strive for environmental conservation through corporate activities. はんだ印刷検査機「VP-01G」 21 3.顧客志向の徹底 3.Thorough Customer Orientation 常に顧客志向の精神と謙虚な心で対応し、 We shall always correspond with a customer oriented and 自己復帰機能付きラッチバルブの開発 25 お客様に満足いただける製品とサービスを modest mind, offering products and services to promote 提供します。 customer satisfaction. ソレノイドの高効率磁気回路設計 29 4.技術革新への挑戦 4.Challenge to Technology Innovation 世の中のトレンドを見極め、技術革新につとめ、 We shall take a leadership role in the industry by identifying 噴流のシミュレーションと可視化 34 魅力あふれる商品をタイムリーに提供し、 global trends, striving for technology innovation, and 業界のリーダーシップをとります。 offering effective products in a timely fashion. バイオプロセスへの取り組み 39 5.人材重視の企業風土 5.Corporate Culture with Faith in Human Resource 一人ひとりの可能性と働きがいを大切にし、 We shall build corporate culture with faith in human 失敗を怖れることなく業務改革に取り組み、 potential and satisfaction upon achievement of each 組織の強味を最大限に発揮できる企業風土を member, courageously challenge innovation in operation, つくります。 and capability to demonstrate maximum strength of organization. CKD 技報 2023 Vol.9 2
Page4

Table of Contents Greetings 1 Special Report on“ DX” Remote Solution 2 Streamlining Production Line Start-Up Through Digital Technology 6 Non-linear FEM analysis about formed film going through transport rollers on the blister packaging machines 12 Technology for Foreign Material Inspection 17 Solder Paste Inspection Machine“ VP-01G” 21 Development of a Latch Valve with Self-Returning Function 25 High-Efficiency Magnetic Circuit Design for Solenoids 29 Simulation and Visualization of Jet Flows 34 Approach to Bioprocess 39 3 CKD 技報 2023 Vol.9
Page5

ごあいさつ DX社会におけるモノづくりを見据えて “Anticipating manufacturing in a DX society” 林田 勝憲  Katsunori Hayashida CKD株式会社 常務執行役員 コーポレート役員 CKD Corporation Managing Executive Officer Corporate Officer  3年にわたって世界的な規模で影響を及ぼしてい It appears that COVID-19, which has affected the た新型コロナウイルスもやっと沈静化が見えてきま world for three years, is finally beginning to subside. In Europe, the United States and ASEAN した。欧米、アセアンにおいてはほぼコロナ禍前の countries, the situation has returned virtually to 状態に戻っておりますが、中国に限ってはゼロコロ what it was before the pandemic, but just in China, the zero COVID-19 policy has been ナ政策が強力に継続されておりサプライチェーンは maintained strongly and the supply chain has not 未だ完全には戻っておりません。半導体、電子部品、 yet recovered completely. Procurement of semiconductors, electronic parts and resin 樹脂材料などの調達に関しても暫くは厳しい状況が materials is expected to remain difficult for some 続くと見られます。一方で設備投資意欲が非常に高 time. On the other hand, there are some industries い業種もあり、製造業における先の見通しは非常に that are highly motivated towards capital investment, and the outlook for manufacturing 不透明となっています。 industry is very uncertain.  このような状況の中でモノづくりにおいても従来 In such circumstances, conventional manufacturing methods are no longer effective. Efficient の手段が通用しなくなっています。リアルでのコ communication on the web has become more ミュニケーションよりWEBでの効率的なコミュニ important than real communication. Due to staff shortages at manufacturing sites, it is not possible ケーションが重要視されるようになりました。製造 to respond with conventional production lines. 現場においても要員不足により従来の生産ラインで Digitalization anticipating the post-COVID-19 situation is essential. は対応できない状況になっています。アフターコロ The special report in this CKD Technical Journal Vol. 9 ナの状況を見据えたデジタル化は必要不可欠です。 is about ÐX( digital transformation). It describes  今回お届けするCKD技報Vol.9の巻内特集は「ÐX some of the technical themes required for manufacturing today, including remote solutions (デジタルトランスフォーメーション)」です。「遠隔 and increasing the efficiency of production line ソリューション」「デジタル技術による生産ライン立 start-up using digital technology. We hope that this will be of reference to you all in your ち上げの効率化」など今のモノづくりに求められる activities. 技術テーマを掲載しました。皆様の活動に少しでも The CKD Group will move forwards with our customers towards the realization of a sustainable ご参考になれば幸いです。 society.  CKDグループは持続可能な社会の実現に向けて We thank you for your continued support and welcome your guidance and suggestions. お客様と共に歩んでまいります。  引き続き皆様からのご指導、ご鞭撻をよろしくお 願い申しあげます。 CKD 技報 2023 Vol.9 1
Page6

01

巻内特集 テーマ「DX」 遠隔ソリューション Remote Solution 澤田 英明 Hideaki Sawada 日本の製造業が抱える問題の一つに、少子高齢化による労働人口の減少がある。 近年、その影響は加速度的に増加しており、企業は生産性向上等の取り組みについて、優先度を上げ、積極的に推 し進めている。 当社においても、人手不足によるサービス低下や機会損失を未然に防ぐべく、「遠隔ソリューション」と題し、顧 客企業と当社双方の生産性向上に寄与する、新たなサービス体制を構築した。 本サービスは、当社の顧客企業に導入されている薬品包装ラインと、当社小牧工場のサポートセンタを、インター ネットを介して接続し、遠隔にて生産をサポートするものであり、トラブル復旧からバリデーション支援までサポー ト内容は多岐にわたる。 本稿では、当社のDXの一例として遠隔ソリューションの内容について紹介する。 One of the problems faced by Japanese manufacturing industry is the declining working population due to the declining birthrate and aging population. In recent years, the impact has been increasing at an accelerating pace, and companies are raising priority to their efforts to improve productivity and promoting them actively. In our company as well, in order to prevent service degradation and opportunity loss due to labor shortages, we have built a new service system entitled "Remote Solution" that contributes to the productivity improvement of both our client companies and our company. This service connects our pharmaceutical packaging lines delivered to our client companies with the support center at our Komaki Factory via internet to provide remote support for production, and covers a wide range of support contents, from trouble recovery to validation support. This article introduces the content of the remote solution as an example of CKD's DX. 1 はじめに  当社はこれまでにブリスタ包装技術を用いて医療・ 医薬品業界向けの包装機械や食品包装機械を開発して きた。  その中でも医療業界向けの、PTPシートを製造する PTP包装機は国内トップシェアを持ち、海外への販売 Fig. 2  当社のICT 製品一例 も年々増加している(Fig.1)。  それらの取り組みの中で、2021年より遠隔ソリュー ションと題した、新しいサービスである遠隔サポート の提供を開始している。遠隔サポートを導入すること で、以下5点のメリットによって顧客の生産性向上を 目指している。 Fig. 1  PTP 包装機及びPTPシート ・ダウンタイム削減 ・コスト削減 ・属人化の解消  多くの顧客に当社の機械をご使用いただく中で、生 ・オペレータトレーニング 産性及びサービスの向上を目的とし、2019年よりICT ・スムーズな品目追加のスケジューリング を用いた付加価値製品の開発や新しいサービス体制の 構築を推進しており、現在複数のソリューションの提 2 背景 供を開始している(Fig.2)。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による世界 規模でのパンデミックの結果、国内では非常事態宣言、 2 CKD 技報 2023 Vol.9
Page7

【巻内特集】 遠隔ソリューション 海外ではロックダウンと、簡単に顧客工場へ訪問する ことができなくなった。規制が緩和された現在におい ても抗原検査や人数制限など継続的な感染対策は必須 であり、以前と比較して迅速な対応ができているとは 言えない状況が続いている。  このような状況から、多くの顧客でダウンタイムの 増加が大きな課題となっており、労働人口減少による Fig. 4  中継BOX 慢性的な人手不足や属人化も相まって、生産性低下を 防ぐために様々な取り組みを行わざるを得ない状況と なっている。当社としても、顧客増加に伴う人員派遣 4 対象機器 の増加や多能工化が難しい専門性、属人化などが課題 となっており、新たなサービス体制を構築することに  遠隔での即時復旧を目的としているため、当社作業 よる顧客企業と当社双方での生産性向上を目標とし 員が現地調整時に操作する後述の主要機器を網羅して て、遠隔ソリューションによるサービス体制の構築に いる。 着手した。 4-1  各機械のタッチパネル  各機械のHM(I ※1)であるタッチパネルに対して、遠隔 3 システム概要 監視及び遠隔操作が可能であり、各種設定の確認・変  今までのサービス体制は電話や訪問を基本としてお 更が行える。また、設定により機能を制限し遠隔監視 り、機械のメンテナンスやトラブル復旧支援について、 のみとすることも可能となる(Fig.5)。 電話では伝わらずにすぐに訪問といった流れとなって いた。  遠隔サポートでは、機械に対してゲートウェイと呼ば れる通信端末を搭載することで、インターネットを介し て当社小牧工場より機械へのアクセスが可能となる (Fig.3)。 Fig. 5  各機械タッチパネル 4-2  各機械のコントローラ  各機械のコントローラであるPLCに対して遠隔操作 が可能であり、ソフトウェアのモニタリングや変更が 行える。また、遠隔より機械の駆動源であるサーボモー タ等の波形データ取得も可能となる(Fig.6)。 Fig. 3  システム構成図  これにより、機械のタッチパネルやコントローラで あるPLC、検査機であるフラッシュパトリを当社作業 員が現地にいる際と同様に操作することができるた め、即時復旧が容易となった。 Fig. 6  PLCソフト及び波形データ 3-1  導入方法 4-3  フラッシュパトリ  遠隔サポートを導入するには、ゲートウェイを搭載  PTP包装機の各工程で、錠剤や包材などの検査を した中継BOXを機械に設置し、遠隔対象機器に対して 行っている検査装置であるフラッシュパトリに対し LANケーブルを接続するのみであり、装置側のソフト て、遠隔監視及び遠隔操作が可能であり、各種設定の 変更も必要ない。 確認・変更が行える。  なお、BOXサイズは300×300×200mmである  また、設定により機能を制限し遠隔監視のみとする (Fig.4)。 ことも可能となる(Fig.7)。 CKD 技報 2023 Vol.9 3
Page8

5-3  データのバックアップ  生産パラメータの定期的なバックアップを遠隔で実 施し、当社より記憶媒体に格納して提出する。 5-4  日常の問い合わせサポート  日常点検・交換部品等に関する、作業手順・操作方法 の説明・助言による、簡易的なオペレータ教育が可能 Fig. 7  フラッシュパトリ画面 となる。 4-4  ネットワークカメラ 6 セキュリティ  本システムのネットワークに、ネットワークカメラ を設置することで、遠隔での視野共有が可能となる  遠隔サポートを導入することで、対象機のタッチパネ (Fig.8)。 ル等を、インターネットを介して当社小牧工場から直接 監視が可能となり、設定により遠隔操作も可能となる。  顧客が安心して遠隔サポートを受けられるよう本シ ステムには以下三つのセキュリティを設けている。 6-1  ハードセキュリティ  中継BOXにはキースイッチが搭載されており、遠隔 サポートを使用する時以外はゲートウェイに電源が供 給されず、ネットワークには接続されない仕組みと なっている。 6-2  ソフトウェアセキュリティ Fig. 8  ネットワークカメラ  当社の機械にはData integrity対応などのセキュリ ティオプションを用意している。 5 サポート内容  Data integrityは、データの完全性とも呼ばれ、デー タがライフサイクルを通じて一貫性を保ち、欠損がな  遠隔サポートでは、トラブル復旧以外にも様々なサ いこととされており、要件としてはALCOA原則もし ポートを提供しており、内容としては以下のものがある。 くはALCOA+であるといわれている(Fig.9)。 5-1  トラブル原因調査・復旧支援  生産中にトラブルが発生した場合に、電話ではすぐ に伝わらない内容でも、遠隔で ・パラメータ  ・検査画像  ・エラー内容  ・カメラ映像 を直接確認できることで、最短での原因究明・解決が 可能となる。 Fig. 9  Data integrity 要件 5-2  フラッシュパトリバリデーション支援  本オプションを搭載することで、包装ライン全体で  フラッシュパトリの設定変更及びバリデーション支 のアカウント管理・監査証跡などが可能となり、Data 援作業を遠隔にて実施可能であり、現地での作業と同 integrityの要件を網羅できるため、遠隔サポートでの 様に作業完了後にバリデーション書類を提出する。 作業においても正しくデータを管理できる。  なお、安全のため当社作業員が現地にいない場合、 機械の駆動及び不良サンプルの設置は顧客に依頼する 6-3  ネットワークセキュリティ 形となる。  遠隔サポートを導入することで、当社からのアクセ スが可能となるが、システムの特性として、ゲートウェ イ配下の機器は全てクローズドネットワークとなり、 4 CKD 技報 2023 Vol.9
Page9

【巻内特集】 遠隔ソリューション インターネットへの接続及び外部からのアクセスは行 8 おわりに われない。  また、当社からのアクセスについても、認証キーと  本稿では、当社の新しいサービスである遠隔ソ パスワードを用いてクラウドサーバーにログインし、 リューションの概要と活用シーンを述べた。 予め登録された機器に対して認証を行うことで、初め  近年、デジタル庁が発足するなど、国を挙げてデジ て対象機器に対して暗号化された通信が確立される。 タル社会の実現に取り組まれており、各企業としても DXを進めることが当たり前といった時代の潮流と 7 使用例 なっている。当社では、生産性向上・省人化・サポート など様々なICTソリューションを用意している。それ  ここで、遠隔サポートの使用事例を紹介する。 らを活用することが、顧客のDX推進への第一歩として いただけるようこれからもICTソリューションの開発 7-1  フラッシュパトリの良品巻き込み を継続し、顧客企業と当社双方での社会問題解消に貢  生産品種が同じでもロットが変わることで錠剤に微 献していく。 小な変化があり、良品の範囲内であるのに判定値が厳 しく不良となってしまう場合がある(Fig.10)。 ※1 Human Machine Interfaceの略であり、人間と機械が 情報をやり取りするための手段や装置、ソフトウェアなど の総称。 Fig. 10  良品巻き込み  この際に設定値を変更し、不良を削減したいが、フ ラッシュパトリの操作に慣れていない人では容易に修 正ができない。遠隔サポートを活用することで、新人 オペレータが対応していたとしても当社の作業員が迅 速に対応し、即時復旧が可能となる。 7-2  PTPシートのポケットつぶれ  PTPシートのポケットつぶれが発見された際に、発 生源の特定など経験が浅いオペレータでは原因がすぐ に掴めない。遠隔サポートを用いることで、カメラによ る視野共有で発生箇所を特定し、遠隔操作によって関 連するパラメータをすぐに確認できる。復旧後につい 執筆者プロフィール ても視野共有にて改善効果を当社作業員が一緒に確認 し最短で生産の再開が可能となる。 7-3  スムーズな品目追加工事  生産品目を追加する場合、今までは機械・電気・検査 と3名の派遣が必要であったが、遠隔サポートを活用 することで、電気・検査は遠隔での対応が可能なため、 澤田 英明 Hideaki Sawada 機械1名さえ確保できれば工事が実施できる。 自動機械事業本部 Automatic Machinery Business Division CKD 技報 2023 Vol.9 5
Page10

02

巻内特集 テーマ「DX」 デジタル技術による生産ライン立ち上げの効率化 Streamlining Production Line Start-Up Through Digital Technology 谷口 剛一 Koichi Taniguchi 当社は電動とエアによる制御技術を保有し、多様な自動化の用途に対応するための豊富な製品を販売している。 そして、30年にわたってその製品群を活用し社内自動生産ラインを内製し、製品開発にフィードバックすることで、 お客様によりよい製品を提供することに繋げてきた。 近年は少子高齢化による生産年齢人口が減少し、さらに製品販売数の増加による設備投資が増えている。このよ うな状況において、安全性・機能性・品質などを向上しつつ生産準備期間の短縮が必要となっている。 この課題に対し、デジタル技術を活用した事例について紹介する。 We possess both electric and pneumatic control technologies and sell a wide variety of products to meet a wide range of automation applications. For 30 years, we have been providing our customers with better products by utilizing these products to build in-house automated production lines and feeding them back into product development. In recent years, the working-age population has been decreasing due to the falling birthrate and aging population, and capital investment has been increasing due to the increase in the number of products sold. Under these circumstances, it is necessary to shorten production preparation time while improving safety, functionality, and quality. This presentation will introduce examples of the use of digital technology to address this issue. 1 はじめに  市況の悪化により減少していた設備投資は回復基調 にある。人手不足、働き方改革を背景とした労働時間の 適正化に向けた省力化投資や、老朽化した設備の更新 投資などにより、設備投資は今後も増加すると見込ん でいる。また、デジタル化の進展に伴う技術革新や顧客 ニーズの変化の加速に伴い、製品のライフサイクルは 短縮の一途をたどっている。世界経済はめまぐるしく変 Fig. 1  生産ライン立ち上げの現状 化し、不透明な状況が続く中、短期間で生産能力を向上 させ、生産体制を構築していかなければならない。改革  ②工程設計では、組順検証と帳票作成に時間がか に挑戦し、生産ライン立ち上げの品質向上とスピード かっていることが分かった。これは試作ワークがなく、 アップを同時に果たす必要がある。 組立性評価ができずに仕掛りが遅れること、作業標準 帳票をエクセルで手入力作成するため作業時間がかか 2 デジタル技術導入の背景 ることが原因となっている。  ③生産レイアウト検討では、レイアウト配置検討と  新製品発売や、既存製品の増産を行うには生産ライ 変更に問題があることが分かった。これは設備配置の ンの導入、改造が必要となる。①生産企画→②工程設 検討のみ行うことにより細かく生産性の評価ができて 計→③生産レイアウト検討→④設備導入→⑤量産試作 おらず、実際にレイアウト変更を行った後に、工程能 という流れで企画は進む。この中で②から④は生産技 力不足が露呈し、再度レイアウト検討からやり直すと 術が主体となり開発を行う生産ライン立ち上げの工程 いうことが原因となっている。 である。これら各工程が何をどのように行っているか  ④設備導入では、設備設計の付帯作業に時間がか 現状把握を行い、それぞれの工程で問題の洗い出しに かっていた。構成部品のリストアップやアイソメ図(立 取り組んだ(Fig.1)。 体を斜めから見た図)作成など、設計の付帯作業に時 間がかかることや、デザインレビューでの確認が漏れ、 製作段階で不具合が発覚し大きな戻作業工数が発生し ていることが原因となっている。 6 CKD 技報 2023 Vol.9
Page11

【巻内特集】 デジタル技術による生産ライン立ち上げの効率化  各工程は共通して、2D図面データや、エクセル帳票 3-2  生産レイアウト検討工程のツール を用いており、それによる非効率な作業と、不具合に  この工程では、決定した生産ラインの各設備をフロ よる戻作業により作業時間がかかっている。この問題 アに配置し、その生産性とラインに配属される作業者 を解決するため、作業の補助となるデジタルツールの の作業動線を検討している。現状は2Dで書かれた工場 新規導入検討を開始した。 フロアに各設備を配置し、エリアに収まるかどうかを 検討している。人の手作業動線を考慮することや、複 3 デジタルツールの選定 数の案を同時に比較検討し最適な案を出すことは行え ていない。  ツール導入に当たり、以下の項目を重視し導入前検  この為、仮想3D生産ラインを作成し、作業動線長の 討を行った。 計算や作業者の負荷、作業人数の増減による作業バラ  a.現 状把握で洗い出した問題を解決できるための機 ンスの平準化などを複数案同時に行える機能を備えて 能を備えていること いることを導入要件とした(Fig.3)。  b.国 内シェアが大きく継続的なバージョンアップを  人間系を中心とする工程設計が可能であり、工程、 期待できること レイアウトを入力するだけで人の動作や機械の同期を  c.保 守内容に講習と補助機能の開発サポートがある 半自動生成できるソフトウェア「GP4」を導入した。 こと a.はツールを導入するための主目的であり、b.とc.は 導入後速やかに定着し、定着後長期にわたり運用を行 うための要件である。 3-1  工程設計工程のツール  この工程は製品の組順検討やFMEA(故障モード影 響解析)などを行い、それにより生産ラインの構成と設 備を決定する。現状は試作ワークや2D図面を元に検討 を行い、その結果をエクセルの帳票や2D図面に保存し ていた。もし試作ワークが無い状態で3D製品データを Fig. 3  生産レイアウト検討ツールの要件 活用し、ツール内で組立性評価と業務帳票作成が可能 ならば、製品設計の段階から生産準備に取り掛かるこ 3-3  設備導入工程のツール とができる。このため、詳細要件は製品図面を元に製  この工程では決定した各設備の要件をもとに設備設 造フローを作成し、これに基づいて、組立手順、工数算 計、製造を行う。設備設計、設計後のデザインレビュー 出、工程設計、FMEAを検討が可能なこと。そして、検 は2D CADを用いている。デザインレビューでは設計 討結果を一括保存し、作成済の製造フローより作業標 の妥当性や部品同士の干渉の確認、安全性、保守性の 準書、QC工程表、FMEAを自動出力できることとし、 検証を行っているが、レビュー者全員に設計の意図が この機能を満たすソフトウェアを選定した(Fig.2)。 伝わりにくく見落としが発生している。さらにデザイ  しかし、3D製品データが未整備であったため、今回 ンレビュー後の図面出図作業にて部品カウントや3D は導入を見送った。 アイソメ図の作成など付帯業務に時間が多くとられて いる。  このため3D作図により動作や形状の検討や、デザイ ンレビューの効率化ができ、付帯業務の自動化を行え ることを導入要件とした(Fig.4)。  複雑な機械でも軽快に動作し、視認性がよく、付帯 作業の自動作成機能が搭載された3D CADソフトウェ ア「iCAD」を導入した。 Fig. 2  工程設計ツールの要件 CKD 技報 2023 Vol.9 7
Page12

Fig. 4  設備導入ツールの要件 Fig. 7  案2 4 導入事例  「案3」は完成品ワーク棚位置の変更である。検証に  ここからは事例を紹介する。 より歩行動線を減らすことができたため、案3も現場 改善を行った(Fig.8)。 4-1  G P4を使用した生産レイアウト検討    事例1 既存生産ラインレイアウト改善  作業動線に歩行の無駄が生じている既存生産ライン において、3つの改善案を精度よく検討するためにラ インを3D化し、それぞれの改善案の実施可否判定を 行った(Fig.5)。  既存ラインの変更なしで事前に精度よく検討するこ とができ、高品質な現場改善ができた。 Fig. 8  案3 4-2  G P4を使用した生産レイアウト検討    事例2 遠隔工場の生産ライン立ち上げ  遠隔地での工場立ち上げにおいて、現物なしでも具 Fig. 5  製作した3D 生産ライン 体的なイメージを共有する目的で仮想3D工場を製作  「案1」は、マシニングセンタの向きの変更である。比 し、製品動線、作業者動線、見学者動線を検証し効率的 較結果では事前予想と異なり歩行動線は約7メートル なレイアウト、機器の配置を行った(Fig.9)。 増加したため、実施しないことにした。実際に実施す  現地出張なしでも複数案の比較検討を分かりやすく ると約60万円の損失が発生していた(Fig.6)。 行えたため、活発なコミュニケーションが取れ、効率 的な進め方ができた。 Fig. 9  製作した仮想3D 工場 Fig. 6  案1  「案2」は、工具保管位置の変更である。位置を変更し  「製品動線」の検討では搬入エリアでの長物材料の搬 マシニングセンタとの距離を近づけることで作業者の 入向きの決定に活用した。6メートルもの長さの材料 歩行動線が減少した。そのため案2は実際に現場改善 を縦で搬入するか、横向きで搬入するかを3Dで再現し を実施した(Fig.7)。 動かすことにより、スペースの占有状況や、動線に無 8 CKD 技報 2023 Vol.9
Page13

【巻内特集】 デジタル技術による生産ライン立ち上げの効率化 理がないか把握することができた。検討の結果フォー 4-3  i CADを使用した設備導入事例1     クリフト作 業 が 可 能となった 縦 搬 入 を 採 用し た バルブ組立ライン導入 (Fig.10)。  バルブの組立ラインを自動化し、生産従事者を40% 削減、生産能力を2倍とした事例である(Fig.13)。 Fig. 13  製作した組立ライン Fig. 10  製品動線の検討  全体で14工程あるこの生産ラインにおいて、特に難  「作業者動線」の検討では更衣室備品の配置向きの決 度の高かった2つの工程について紹介する。 定に活用した。作業者収容数を最大化しつつ、備品倉  「チューブ供給」工程では自動販売機をヒントにした 庫を備えるために、縦と横の3D図を作成し検討した。 からくりを設計し、従来から使用されている部品供給 検討の結果動線がスムーズで備品倉庫が確保可能な横 用パーツフィーダをやめ、スペース1/3、コスト1/2で 配置を採用した(Fig.11)。 実現した(Fig.14)。 Fig. 14  チューブ供給工程 Fig. 11  作業者動線の検討  「清掃」工程では外周の清掃作業を自動化した。機構  最後は「見学者動線」の検討である。見学者目線から の構造検討で3Dツールの視認性の良さが活躍した 見やすい窓位置の配置を検討した。ツールに備わる作 (Fig.15)。 業者視野機能を活用し、目線を意識した窓配置を採用 することができた(Fig.12)。 Fig. 15  清掃工程 4-4  i CADを使用した設備導入事例2     小型バルブ自動組立ライン導入  最後は小型バルブ自動組立ライン全設備11台の導 Fig. 12  見学者動線の検討 入事例である(Fig.16)。 CKD 技報 2023 Vol.9 9
Page14

ラインミーティングツールを用いた設備メーカーとの 積極的な連携で、開発時の仕様、図面、不具合リストな どデータの一元管理と情報の即時共有ができた。  開発中の調整トラブルが発生した際には、別の場所 の生産技術担当、製品開発担当、設備メーカーが画面 を共有し、設備を映像で確認しながら解決に当たった (Fig.19)。 Fig. 16  製作したバルブ組立ライン  製品の需要が急激に増加しており、既存ラインでは 生産能力が不足することが分かっていた。そのため短 期間で生産能力を増強する必要があった。  この問題に対応するため、設計プロセス全体でデジ タルツールを積極的に使用した。  その結果、Fig.17に示すように従来同規模設備では 10か月かかった設計期間を3か月へと7か月短縮する ことに成功した。 Fig. 19  現場でのオンラインミーティング  続いては付帯作業時間の短縮である。設備フレーム 設計においては、2D CADで4時間かかっていた使用 部品のリストアップ作業がたったの5分となり、アイ ソメ図制作での4時間の作業が、ボタンを1クリックす るだけになるなど劇的な効果を得ることができた (Fig.20)。 Fig. 17  設計期間比較  2D CADによる設計から3D CADにシフトしたこ と、オンラインミーティングツールを使用したことに より、まず高効率のデザインレビューを実施すること Fig. 20  設備フレーム設計の効果 ができた(Fig.18)。 5 導入後、定着までの施策  デジタルツールは2020年度に導入し3年で定着で きるよう計画を立てて運用を行った(Fig.21)。  導入初年度は少人数のチームでソフトウェアの機能 理解とモデルラインを用いての効果の実証活動を行っ た。その効果を確認した2年目は、そのソフトウェアの 活用の場を広げるために、教育活動を開始した。  GP4は社内教育カリキュラム「生産技術講座」にて 「すぐに活かせるデジタルツール」という題名で実践形 Fig. 18  3Dを活用したデザインレビュー 式の操作教育を行った。この講座では受講生が業務に 活用しやすいように、初年度に製作した過去のデータ などを講座内で解説し、データを共有している。iCAD  2D検討では見逃していた不具合を製作前に多く発 は外部専任講師により週1回で3か月間の教育を実施。 見でき、後工程での戻作業を削減できた。さらに、オン 過去の2D図面資産を3D化した。これらの教育を行う 10 CKD 技報 2023 Vol.9
Page15

【巻内特集】 デジタル技術による生産ライン立ち上げの効率化 ことで、最後の3年目はソフトを使える設計者を増や 8 おわりに し、定着を狙った(Fig.22)。  デジタル技術による生産ライン立ち上げの効率化に 取り組んだ事例を紹介した。ものづくりの基本である 現場をおろそかにすることなく、安定した品質を追求 し、お客様により良い製品を提供できるように日々努 力をしていく。 Fig. 21  ツールの導入計画 Fig. 22  ツールの定着施策 6 まとめ  生産レイアウト検討では3Dシミュレーションを実 施することにより以下が可能となった。 ・現 物無しで設備/備品/動線の効率的なレイアウ ト検討と共有が可能 ・生 産現場の作業動線改善で高精度かつ効率的な 検証により、複数案の実施可否判断が可能  設備導入では設備開発の3D化とオンラインミー ティングによる設計業務の効率化により以下が可能と なった。 ・スペース増加無で省人化、生産能力倍増を達成 ・戻 作業や付帯作業の短縮により従来同規模設備 では10か月かかった設計期間を3か月へと7か 月短縮  デジタル技術を活用した施策により生産ライン立ち 執筆者プロフィール 上げの品質向上とスピードアップを果たすことができ た。 7 今後の展望  今後はツールの定着施策を引き続き行い、生産ライ ン立ち上げ事例のデータを共有することでより効率化 を目指していく。デジタルによる業務効率化は今後も 谷口 剛一 Koichi Taniguchi 重要な課題である。今回導入を見送った工程設計での 機器事業本部 導入検討を含めて取り組みを加速させる。 Components Business Division CKD 技報 2023 Vol.9 11
Page16

03

PTP包装機における搬送ローラを通過する 成形フィルムの非線形有限要素解析 Non-linear FEM analysis about formed film going through transport rollers on the blister packaging machines 鴻谷 英志 Hideshi Kohtani 金子 龍一 Ryuichi Kaneko PTP包装機では成形フィルムの搬送手段として成形ポケットを搬送ローラのポケット穴に引っ掛けて搬送する 方式が用いられている。 成形ポケット部はフィルム原反部に比べて変形し難いという特徴がある。この成形ポケット部の影響によって フィルムがロール外周に上手く馴染まず、搬送不良やポケット潰れなどを生じさせる要因のひとつとなっている。 この馴染み具合は、成形ポケットの形状、搬送ローラの曲率半径、及びフィルムの物理的特性などに代表される複 数の要素が影響しているが、この事象を定量的に捉えることが難しい。そこで、非線形有限要素解析を用いて成形 フィルムが搬送ローラを通過する際の変形について定量化を試みた。 本稿では、搬送ローラの外周面と成形フィルムの間に生じる隙間を浮遊量と定義し、浮遊量の解析結果からPTP 包装機におけるロール搬送適性を評価した事例について紹介する。 Pharmaceutical packaging machines apply transporting method of formed film by hooking formed pockets to pocket cavity of transport roller. Formed pocket portion is characterized by not easily deformed compared to original film portion. Due to the influence of formed pocket portion, formed film does not fit well around the outer periphery of the roll, which is one of the factors causing transport defect and formed pocket crushing. This familiarity is influenced by a number of factors represented by shape of formed pocket, curvature radius of transport roller, physical properties of web film, but it is difficult to capture this phenomenon quantitatively. Therefore, we attempted to quantify the deformation of formed film when it passed through transport rollers using nonlinear finite element analysis. In this article, we define the gap between outer peripheral surface of transport roller and formed film as floating volume, and from the analysis results of floating volume we introduce an example of evaluation of suitability for roll transport on pharmaceutical blister packaging machines. 1 はじめに  当社は、これまでブリスタ包装技術を用いて食品包 装機械や医療・医薬品業界向けの包装機械を開発して きた。その中でも、PTP包装機は国内トップシェアを 持ち、海外への事業展開も積極的に進めている主力商 品群のひとつである(Fig.1)。  これまで、当社のPTP包装機は多くの国内製薬会社 に採用され、実績を蓄積しながら技術ノウハウを成熟 させてきた。一方で、海外向けの包装仕様では過去に 実績の無い自由度の高い包装仕様が流通しており、従 来の経験的な知見のみを頼りにした技術検討では判断 Fig. 1  PTP 包装機 が難しく、客観的で定量的な評価による判断基準が必 要とされている。 2 PTP 包装について  PTP包装とは、錠剤やカプセル剤などの固形製剤を 包装する用途として、広く採用されている包装形態の ひとつである。PTPとはPress Through Packの略 称で、内容物を指で押し出して取り出すことに由来し 12 CKD 技報 2023 Vol.9
Page17

PTP包装機における搬送ローラを通過する成形フィルムの非線形有限要素解析 ている(Fig.2)。  フィルム張力を維持させる目的としては、機械停止  PTP包装機では、原反ロールから展開した容器フィ 時に充填ゾーンの成形ポケット位置が収縮により変化 ルムにポケットを成形し、様々な工程を経て一般的に することを防止し、かつシール下ロールにおける成形 知られているシート状にトリミングされる。また、各 ポケットの乗り上げを防止することが挙げられる 工程間における成形フィルムの搬送手段は用途に合わ (Fig.4)。 せて適切な方式を採用している。  成形後は主に包装仕様に対応した専用の搬送ローラ を用いる。また、専用ロール部品は成形ポケットの形 状及び配置に対応した穴を外周に加工し、この穴に成 形ポケットを引っ掛けて搬送している。 Fig. 4  ロッキングドラム説明図 3-3  ポケット送りロール  ポケット送りロールにはスリッタ、刻印、及び打抜 Fig. 2  PTP 包装 き工程に成形フィルムを安定して搬送する役割があ る。また、他の専用ロール部品と異なり、送りと停止を 3 専用ロール部品の種類 繰り返す間欠搬送により動作する(Fig.5)。 3-1  シール下ロール  シール下ロールにはヒートシール工程における受け ローラとしての役割がある。ヒートシール工程では成 形フィルムに蓋フィルムを被せて、シールダイロール で熱間圧接することにより貼り合わせている(Fig.3)。  また、シール下ロールは他の専用ロール部品と比較 して直径が大きい。 Fig. 5  ポケット送りロール説明図 4 搬送不良の要因分析  搬送不良として代表的な不具合現象を抽出し、これ らを1次要因、2次要因に展開して要因分析を実施した。  包装仕様に依存しているものが含まれる2次要因群 の中で最も多岐にわたって影響し、設計都合の変更が 可能であるものとして“搬送ローラの直径が小さい”と Fig. 3  シール下ロール説明図 いう2次要因に着目した(Fig.6)。 3-2  ロッキングドラム  ロッキングドラムにはシール下ロールとの間にフィ ルム張力を維持させる役割がある。 CKD 技報 2023 Vol.9 13
Page18

Fig. 6  搬送不良の要因分析 5 非線形有限要素解析 Fig. 9  解析モデル 5-1  解析概要  成形フィルムが搬送ローラを通過する現象を模し て、非線形有限要素解析によるシミュレーションを実 5-2  ミーゼス応力 施した。解析対象は錠剤向け包装仕様(Fig.7)とカプセ  ミーゼス応力とは方向性を持つベクトル量である各 ル剤向け包装仕様(Fig.8)の2通りを用いる。また、錠 応力成分を合成して、方向性を持たないスカラ量に換 剤向け包装仕様は標準的で搬送不良のリスクが低い事 算したものである。対象物に生じた内力を数値の大小 例を想定しており、カプセル剤向け包装仕様はポケッ でのみ評価することが可能で、ミーゼス応力が降伏応 トサイズが大きく、搬送不良のリスクが高い事例を想 力に到達すると塑性が生じ始めたと判断する。 定している。  そこで、ミーゼス応力を出力とするシミュレーショ  解析モデルの基本は搬送ローラと成形フィルムから ンを実施した。また、搬送ローラの直径と最大ミーゼ 構成される。また、包装仕様が対称となる場合にはミ ス応力の関係をグラフ化した(Fig.10)(Fig.11)。 ラー面を追加する。  グラフの傾向より、ロール直径が大きくなる程、最  成形フィルムには流れ方向に3枚のシートを配置し 大ミーゼス応力は低下することが確認できる。 ており、解析結果を評価する範囲は、1枚目及び3枚目 のシートから2枚目に最も近い成形ポケットを含めた 2枚目の中央シート領域を対象とする(Fig.9)。 Fig. 10  ミーゼス応力解析の様子 Fig. 7  錠剤向け包装仕様 Fig. 8  カプセル剤向け包装仕様 Fig. 11  ローラ直径と最大ミーゼス応力の関係 14 CKD 技報 2023 Vol.9
Page19

PTP包装機における搬送ローラを通過する成形フィルムの非線形有限要素解析 5-3  浮遊量  本稿では、搬送ローラの外周面と成形フィルムとの 間に生じた隙間を浮遊量と呼称する。  浮遊量解析では成形フィルムを展開した流れ方向位 置と浮遊量の関係をグラフ化する。  浮遊量の解析結果は解析モデルのZ軸方向を合算し ているため、上下に大きく振れたデータになる。その ままの状態では、他の条件と比較することが難しいた めn点移動最大処理、及びn点移動最小処理を行い、比 較しやすく変換したデータを用いる(Fig.12)。  n点数は解析精度により異なり、解析結果の特徴を 残す適切な値を用いる必要がある。 Fig. 13  ローラ直径と浮遊量の関係  グラフにおいて、最大浮遊量の推移を移動最大、最 小浮遊量の推移を移動最小と定義する。移動最大グラ 5-4  搬送ローラ大径化のデメリット フは最大値を比較評価することに適しており、移動最  非線形有限要素解析の結果から、大きな成形ポケッ 小グラフは通常では限りなく0に近い値で一定となる。 トに対する搬送不良のリスクを低減させるために、搬  移動最小グラフにおける最大値が0ではない状態と 送ローラ大径化の有効性は明白である。一方で、搬送 は、ローラ外周と成形フィルムに完全な浮きが発生して ローラ大径化によるデメリットも存在する。 いることを意味し、この最大値を全浮遊量と呼称する。   1) 慣性モーメントの増大=エネルギー浪費大  この全浮遊量と移動最大グラフにおける成形ポケッ   2) コンパクトな機械にならない ト間の非成形部に生じる最大浮遊量、及び成形ポケッ   3) 重量の増大=人にやさしくない ト部に生じる最大浮遊量を対象に、ローラ直径との関   4) 温度的安定稼働に時間を必要とする 係をグラフ化した(Fig.13)。  上記の理由により、単純にローラ直径を大きくして  解析結果より、カプセル剤向けの包装仕様を錠剤向 も実用的な方策とは言えない。そこで、搬送ローラ大 けと同等にすることは困難であり、成形ポケット仕様が 径化を回避する手段として、当社の特許技術のひとつ 浮遊量の結果に大きく依存していることが確認できる。 である多角形ロールを紹介する。 6 多角形ロール 6-1  多角形ロール(特許第5159835号)  「成形ポケット部が曲がり難いならば、ポケット受け 部のみを曲げることなく平面にすれば解決する」という 着眼点から発明されたのが多角形ロール技術である。  この技術により、搬送ローラ大径化を回避しながら、 成形ポケットを変形から保護することに十分な効果を 発揮した(Fig.14)。  しかし、多角形ロールにおける特有の課題として、 PTPシートに良好なカールを癖付けることが難しいこ Fig. 12  浮遊量グラフ解説図 とが挙げられる。搬送ローラのポケット受け部を平面 にしたことにより正Xカール方向の変形が抑制され て、逆Yカールなどの望ましくないカール状態が発生 する傾向があった(Fig.15)。  そこで、多角形ロールを更に改良した特殊多角形 ロールを開発した。 CKD 技報 2023 Vol.9 15
Page20

Fig. 14  多角形ロール Fig. 16  特殊多角形ロール 17 おわりに  本稿で紹介した解析手法は、搬送トラブルのリスク 低減策を担うデジタルツールとして活用することを想 定している。また、解析結果は浮遊量解析、応力解析の 他にも、ひずみ解析、接触解析などの多様な項目に対 応することが可能であり、今後も様々な課題に対する 応用が期待できる。  課題解決を図る上で、三現主義(現場、現物、現実)を 基礎としながらシミュレーション技術を活用すること Fig. 15  カールの種類 により、様々な物理的事象を定量的に評価することが 可能であると考えている。シミュレーション技術の進 6-2  特殊多角形ロール(特許第7122292号) 歩は技術者として目下の現象を認識する上で、観察や  本稿では、従来の多角形ロールと区別するため、成 計測だけでは認識できない新たな視点を与えてくれる 形ポケット受け部を平面から任意の曲率面に改良した ものとなった。 ものを特殊多角形ロールと呼称する。  今後も技術の発展と共に、時代の変化を追い風にし  特殊多角形ロールは成形ポケット受け部に大きな て成長を続け、技術開発を通して様々な課題に果敢に ローラ直径と同等の曲率半径を再現することにより、 取り組む所存である。 搬送ローラへの馴染み具合を改善し、PTPシートに適 度な正 Xカールの癖付けを可能とする技術である (Fig.16)。 出願特許 1)PTPシート製造装置   また、円筒形状と多角形ロールの中間的な形状を再   特許第5159835号(特開2012-20774) 現したことによって、両者のメリットを実現した新技 2)PTPシート製造装置  術とも言える。   特許第7122292号(特開2021-20682) 執筆者プロフィール 鴻谷 英志 Hideshi Kohtani 金子 龍一 Ryuichi Kaneko 自動機械事業本部 自動機械事業本部 Automatic Machinery Business Division Automatic Machinery Business Division 16 CKD 技報 2023 Vol.9